冬来りて   作:人外美少女すきすき神官

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凍死せるもの彼の地にて待ちいたる


1話

 ◆月I日

 

 よう、転生者だぜ。

 気づいたら雪の中に埋もれてて、転生人生開始数分で神様のところに逆戻りするところだった俺だが、奇特なおっちゃんが助けてくれたおかげで何とか生きているぜ。

 雪の中で犬神家状態だったのを拾ってくれたおっちゃんに感謝だわ。

 おっちゃんも人間が雪に刺さってるのなんてびっくりしてたしな。

 

 というかここどこなんだろう? 

 今はおっちゃんのキャンプカーっぽいのの中で休憩中というより経過観察って感じ? 

 凍傷とかないっぽいけど安静にしとけっておっちゃんに言われた。医療の心得があるみたいなので従っておくに越したことはないし、おっちゃんがスープ振舞ってくれるそうな、マジで感謝やで。

 そんで、やる事ないんで暇を潰そうとして一緒に埋もれてたっぽいバックパックにあったルーズリーフのまとめに記録をしたためているんだが、これ……転生っていうより憑依じゃね? 

 

 こんな雪まみれな世界のキャラって割かしハズレなんじゃ……もしかして『人○の国』とかそっち系のアポカリプスワールドに憑依転生したとかマジで笑えないんだが。

 鏡ないけどなんかスマホっぽい電子端末に顔を映してみたけど身に覚えない顔してるし、若返ってるなこれ……前世? より若いな。

 あ、電源は入らないな、このスマホ(暫定)

 

 充電器は見当たらないし放置でいいや。

 しかし、外を見てみると雪しか見えぬ。

 銀世界なんてちゃちなもんじゃ──(ここで途切れている)

 

 

 ◆月C日

 

 よう、転生者? やで。

 中途半端に空いちまったが元気やで。

 昨日はちょいヤバかった。

 何がヤバいって狼っぽいでけえワンコの群れに襲われたんだ。

 

 おっちゃん曰く、普通は襲い掛かってこない種だとの事だが襲われたんで何とも言えない。

 おっちゃんがスープ作ってた匂いに誘われたのかは分からないけど、俺の背丈よりでけえイッヌに睨まれて死にかけたわ。

 すんでのところで、発煙筒とアツアツのスープひっかけてなかったら俺が晩御飯になるとこだった。

 おっちゃんにすんげえ謝られたけど、俺がお世話になってる側だからええんやで……。

 

 そんで改めて自分の持ち物……と言っていいのかわからないバックをひっくり返して確認してたら日を跨いじまったって感じやな。

 中にあったのは携帯食と何日か分の着替えやロープ等のサバイバルキットっぽいもの。

 なんかやけに物々しい医療器具セットも入ってて、一瞬それが医療系と判断できなかった。

 注射器とかすんげえスマートになってたし。

 

 あまりの身に覚えのなさに無量空処喰らった某ウマ娘の真似してたら、おっちゃんが使い方教えてくれた。

 すんげえハイテク。

 

 ……割かし、というか結構避けてたんだけどこの世界って結構な近未来なのか? 

 あんなでかイッヌとか居たし、雪で視界不良MAXであれだったけど、ビルの廃墟群が見える……。

 おっちゃんの車のナンバーが日本基準だったから、日本だと高を括ってたけど怪しくなってきたな、おい。

 おっちゃんに後で聞いてみよう。

 

 ◆月E日

 

 終わった。

 マジ、ぴえん。

 ぴえん通り越して、アポってる。

 

 嫌な予感は当たった。

 ここ、ゲームや物語系の中世ファンタジーの世界じゃないわ。

 現代系近未来の末世ワールドだ。

 

 ワンチャン、そういった創作品に転生憑依した可能性も存在するが、正直なところキツい。

 おっちゃん曰く、少なくとも俺がいた年代より200年以上が経過していると思われる。

 しかもこの場所が日本である確証も得られてしまい、さあ大変。

 まあこれは、日本語表記っぽいのの残骸がチラホラあったんで、お察し。

 

 そんでヤバいのはおっちゃんと物資調達に無理言って同伴させてもらった時、小高い山があるなーって思ってたらビックリ、でかい怪獣の凍死体だったことだ。

 俺も何言ってるのか正気を疑いそうになるが事実、目の当たりにすると怖気が止まらない。

 おっちゃんからすれば見慣れたものらしいが、転生パンピーの俺から見ればSAN値チェック待ったなしだ。

 なんなんだあの、モ〇ハンワールドのネ○ミェールみたいの。

 水属性から氷属性にジョブチェンジするのミスって氷漬けになったんか? アホすぎんか、それ? 

 イヴェ〇カーナ氏から許可もらったんかいな。

 

 ……話を戻そう。

 あのでかいのは氷魔(おっちゃん命名)っていうらしいのだが、200年以上前に全世界に現れて人類文明を無茶苦茶にしまくった超弩級の怪獣らしい。

 特撮真っ青なレベルに、このサイズのデカブツがウヨウヨ湧いて近代兵器? が豆鉄砲ぐらいにしかならんとは……。

 ゴジラでも、もうちょい控えめな勢いしてそうだけど、コイツらタチ悪いのが異常気象と共に進軍してくるんだと。

 

 なんじゃらほいって感じなんだが、おっちゃん曰くその時代、温暖化の影響で異常気象が日常茶飯事だったそうな。

 南極大陸の氷が解けて海面上昇が気象を変動させるってのは俺でも聞いたことがある。

 似たような状況の映画を見たこともあるし、それが現実に起こったんだろうと俺は見る。

 

 ただ、こいつらの出所は謎っぽい。

 南極が怪しいとは言われているらしい(現地民の予想)

 ともあれ異常気象に悪い意味で慣れてた人々は、度重なる寒波に対して危機感が薄れていた。

 普段と同じく巣籠に勤しむところ、招かれざるでっかい怪獣に対して初動は完全に遅れてしまったらしい。

 主導権(イニシアチブ)を取られた人類は、多種多様な怪獣の物量電撃戦に見事に嵌る。

 

 なんとかデカいのの数匹を道連れにする形で一部、戦線の鎮静化を図ることに成功したらしいが、全国土は疲弊。

 通信途絶に各国の状況は分からず仕舞い。

 日本も鎮静化に成功した例に挙げられるらしいが、インフラは崩壊し、都市部は壊滅。

 人口の把握も儘ならず、国家としての体裁は完全に崩壊した。

 

 つまり、国家と引き換えに国土を死守って感じ? 

 はぁ~つっかえ、つっかえ、このゲーム辞めたらって感じね、おかのした。

 タチ悪過ぎンゴねえ……しかもこれ、()()()()()でかいのを道連れにしただけであって、まだいる可能性あるよね? 

 道連れ方法も禄でもなさそうやし、自分リトライよろしいか……? 

 あ、ダメっすか、ハイ……。

 

 おっちゃん、なにわろてんねん。

 こっちはガクブルやでほんまに──え? ここまででかいのは10年ほど見てない? 

 ってことは中小タイプは居るってことですやん、やだー! 

 

 でっかいシフもどき(数匹)ですらチビり散らかしそうなのに、これ以上なにを求めるんですか!? 

 救い……救いは、ないんですか? 

 もういやだ、俺はふて寝する! 

 はっ! ていうかあのイッヌは氷魔のなんて言うやつなのかおしえ──(後の記載は乱雑に消されている)

 

 ◆月H日

 

 よう、氷の末世に転生した一般チートなしパンピーやで。

 前回の日記から割かし間が開いてしまったのはご愛敬。

 おっちゃんと一緒にサバイバルすんのが楽しくてよ……日記付けるの忘れちまったッピ。

 最近は廃墟ビル群と地下鉄の名残っぽい所を行き来するのがマイブーム。

 

 物資が結構あるのが嬉しい。

 特に缶詰が最高。

 わけわからん異常寒波と特撮怪獣(ガチ)が闊歩してて、死にかけでも200年以上の年月は技術進化をさせるのね。

 

 缶切り(近未来)のダイヤルこねくり回して開けると、対応する缶詰のサイズを鍋サイズから一人用に変更して開けれるのはびっくらぽん。

 一個見っければ、その日の食事がクリアできるのは強すぎる。

 バリエーション豊富やし、食べたことのない料理もあって俺、感激やで。

 

 おっちゃん曰く、缶詰なんかより上等なもんもあるらしいのでワクテカっすわ。

 あ、そうそう。氷魔について少し知ったんやが、あいつら如何やら明確に弱点が存在するらしい。

 頭部や胸部もしくはそれに準ずるどちらかに赤い宝石、ルビー染みた感覚器官があって、そこを攻撃して上手いこと破壊できると、どうやら免疫や代謝が著しく低下する。

 そうすると近代兵器が通じるようになる。

 つまり、豆鉄砲がちゃんと銃火器に変身する。

 

 しかしながらそこは怪獣クオリティ。

 生命力は理外を超えたゴキブリ並みで、そもそもの弱点部位もカッチカチで運良く破壊できても殺しきれずに逃がすか、こちらの撤退が余儀なくされるレベルに精強だ。

 そら人類は衰退するわな、こりゃ。

 映画のトゥモローワー〇ドも真っ青じゃん。

 

 あと、氷魔は近くにいるだけで環境、とりわけ外気の温度と空気濃度に変化を齎すらしい。

 つまり、奴らが近くにいるだけで息苦しくなったり、いつもより寒く感じるようになる。

 それらを基に危機察知をしていくのが、セオリーだ。

 

 おまけに死骸はとんでもないエネルギー、栄養を蓄えているらしく、土壌や環境に大きく影響を及ぼす。

 それがあのでかいイッヌの正体やな。

 でかいのの死肉を漁るだけでもとんでもない糧になるだろうが、カチコチに凍っちまって割に合わないらしい(現地民の感想)

 そんな新鮮なの野生動物のエサまっしぐらやし、それがこんな寒い大地で生き物が存在する理由やね。

 

 氷魔に現地の叩き上げ野生動物(猛獣)がいっぱいやで、たまげたわ。

 なんや、ここはカ〇ラの里か? 猛き炎なんてここには居らんぞ(錯乱)

 まあ、そんな感じでアイスワールドを満喫中や。

 

 中型、小型の氷魔を見つけても遠くだったり、やり過ごしができてたから少しは慣れてきたわ(震え声)

 まじで、おっちゃんには感謝やで……ほんまに。

 野垂れ死にまっしぐらの俺を拾ってくれなかったらどうなってたことやら……。

 ……なに照れてんだよおっちゃん、顔ニヤけてんの見えてっからな──あ、ちょ(ここから先は不自然に途切れてる)

 

 ◆月E日

 

 ヤバい。

 おっちゃんとはぐれた。

 地下巡り切り上げて、地上に上ったらでけえゴリラみたいのの群れに遭遇して、倒れてたビルの窓ガラスを踏み割っちまって地下に真っ逆さまだ。

 

 なんなんだあのでかいの。

 ふざけた体躯をしてたし、氷の鎧? 甲冑みたいのを纏ってた。

 小さいのは氷のつぶて投げてきたし、どうなってるんだここの生物は。

 

 あの高さを真っ逆さまに落ちて骨折とかないのは奇跡だ。

 おっちゃんのくれたダウンコートのおかげだ。

 これがなかったら死んでたかもしれないと思うと怖気がする。

 

 荷物も無事だし、足元には線路が見える。

 たしか都心部に近い場所だっておっちゃん言ってたし、地下鉄とかは既存の物を流用した形だと思う。

 巧くたどれば地上には出れると思うが……問題はどうやっておっちゃんと合流するかだ。

 

 ……おっちゃんは無事だろうか? 

 あまりに突発的な遭遇だったし、あの数は最初に遭遇した狼達より多い。

 見るからに猛獣な雰囲気を出していた。

 

 ……やめだ。

 おっちゃんはきっと無事だし、俺もこっから抜け出せる。

 あの雪狒々みたいなのなんてどうにかできるさ

 

 取り敢えず現状をしたためて行こう。

 歩きながら書いてるから汚いが読むのなんて俺ぐらいだろうし、いいか。

 というか、地下鉄とかってこんなでかい幅をしていただろうか? 

 

 新型の車両を走らせてたのなら理解できるが、いくらなんでもでかい。

 某エイリアン専門の黒スーツグラサンエージェントに出てくる頭頂部に花をつけた芋虫みたいな宇宙生物でも通ったのだろうか。

 ん? 一部貫通してて結構広めの空間が見える。

 

 ……旧式の看板が生きてて駅のプラットフォームまでは少し歩くみたいだし

 小休憩入れるにはいいだろうか? 

 入口らへんでうずくまれば線路側から死角になりそうだしワンチャン? 

 

 うん、そうしよう。

 危険なんて隣り合わせの隣人だと思っとけば気が楽だし、なるようになるだろう。

 一旦、これで野営の準備やな。

 

 ◆月L日

 

 おっちゃんを見つけた

 ケガをしている

 右腕がない

 

 どう、すればいい? 

 おちつけ

 

 止血は済んでる

 

で、も

 

 

 でも傷が開くかもしれない

 

 狒々の絶叫が聞こえる。

 いやだ

 死にたくない

 

 

 い

 

 地  しん

 

──(泥汚れで先は読めそうにない)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆月L日

 

 

 

 

 おっちゃんがしん だ

 

 

 お れのめのまえで

 

 

 おれの せいだ

 

 

(以下、解読不明)

 

 

 




設定開示

 ・主人公……
 文字通りの転生或いは憑依した現代パンピー。
 転生先が現代より推定200年以上未来の氷地獄ポストアポカリプスワールドだと知り絶望
 意識浮上と同時に積もった雪に犬神家を敢行し、黄泉へとUターンしかけるも『おっちゃん』に救われる
 恩人を失い現在、傷心中。かわいいね
 ヒロインとの邂逅はちょっと先

 ・おっちゃん……
 聖人。
 ガチモンのいい人。主人公のことを短いながらも救い導いてくれた恩人
 かつて、この異常気象の原因を突き止めるべく動いていた経験あり
 実は生き別れの息子がいたそうだが……果たして主人公を救ったのは気まぐれだろうか? 

 ・IHMシリーズ(アイスヘルモンスター(氷獄の怪物)
 推定200年以上前に突如として世界を寒波と共に襲った巨大生物群
 俗称:氷魔
 目的及び知性の有無については一切不明。
 人間を襲う敵性生命体にして災害級の被害を齎す一方で膨大なエネルギーを蓄え活動限界(死亡)を迎えると土壌、環境に多大な影響を与える。
 しかし、同時に膨大な酸素と超高濃度窒素に似た酵素を生成する特殊な冷却機構を備えており蓄えたエネルギーは冷却機構に使用されるので、大規模な寒冷化が甚大化する。
 一説には、光合成に近い作用をもたらし自然環境を再生もしくは適応可能な環境に整備するとの見方もある。
 総じて胸部、頭部に紅色の器官が見られる。
 一部を除き多くのIHMシリーズの弱点としており、破壊損傷を受けると代謝機能と免疫作用が大幅に低下し、現代兵器での突破が可能となる。
 しかし、現代に至るまで駆除できた個体数は極めて少なく、人類は衰退の一途を辿っている。


 ・ユキグンロウ(IHM:M型)雪群狼
 主人公が最初に遭遇したIHM。
 この種はM型種とも呼称され、現存する野生動物の多くはM型種へ遷移または進化を遂げている。
 IHMの高濃度エネルギーに影響され、後天的に適応した進化のひとつとされ、適者生存を提唱する大いなる一部として認識されている。
 この種は既存のIHMとは異なり、紅色の器官を有しておらず現代銃火器で対応が可能。
 しかし、各種能力は元となった種を大いに凌駕しており、個人での対応はほぼ不可能である。
 比較的温厚な種であり、地域によっては共生共存が可能。もふもふ


 ・ヒツブテショウジョウ(IHM:M型)氷礫猩々
 主人公を襲った狒々に似たIHM。
 5頭以上の群れで行動し、極めて凶暴である。
 名の由来の通り礫や投擲による攻撃手段を有しており、集団による投擲での狩猟を行う。
 紅色の器官を有しておらず、個々での撃破は可能である。
 上位種にグソクショウジョウが存在する。

 ・グソクショウジョウ(IHM:M型)具足猩々
 主人公を襲った狒々に似たIHM。
 上記の上位種であり、IHM特有の紅色の器官を獲得している
 由来の通り冷却機構を応用し、エネルギーの生成過程で具足に似た氷の鎧を用いる。
 上記種より巨大であり、雪色の毛並みを逆立て獲物へ苛烈さを発揮する。
 胸部の弱点器官を攻略しなければ、まともに相手ができない。
 また鎧を弱点部分に纏わせるため、レーザー兵器や特殊兵器を用いる代表格でもある 
 遭遇時の殉職率は上位であり、一般人もしくはアマチュアのハンターは撤退を推奨される。
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