波は高くうねり、船は暴れるように進む。
常人ならば酷く酔ってしまい耐えられないであろうそれは、俺らにはなんの障害にはならない。
たったそれだけならなんら普通の航海に変わりない。単に天候が悪いだけだろう。
ただ、そこには普通とは言い難いあまりにも不自然なものが存在している。
「マネキ鯨を発見しました!」
そう、鯨だ。
高く波打つ海面には鯨が複数匹見える。
その鯨はまるで人の腕のような器官を海面から出しており、
それはいますぐにでも俺らを
いや、実際にそういうやつなのだが。
それはそうと今回の依頼は「マネキ鯨の群れの討伐」である。
マネキ鯨は生物を腕で引きずりこんで狩りを行う。
一頭でも力が強いが複数頭となると船までも引きずりこむのだ。
今回の依頼はどこぞの商会からだ。多分その商会の船でも沈んだかしたのだろう。
討伐対象のマネキ鯨は海底に生息し、基本的にその場から動かないという生態である。
俺らが持っている捕鯨砲は拘束特化だ。威力はあるにはあるけど使う必要がない。
ならばどうするか、
「直接叩くしかないだろ」
俺は銛銃を手に持ち、マネキ鯨がいるであろう場所に向ける。
狙いは完璧だろう、多分。
そのままマネキ鯨に狙いを定め、
銛銃の引き金を引いた。
ドゴォォォン!
まるで雷が落ちたかのような轟音が大空と海に響き渡る。
銛が落ちた影響か波はさらに高くうねり始める。
鯨のいるであろう場所が赤黒く染まりはじめた。命中だ。
「狩猟成功なんだが...何かがおかしい」
今回の依頼は商会からのものだ。
個人的な見立てとしては今回の依頼は商会の船が沈んだからと考えているのだが、
それにしては船を引きずり込めるほどの鯨がいない。
場所はちゃんと確認した。ここであっているはずだ。
単純にヘマやらかして沈んだ場所がちょうどここだったか、
そもそも見立てが間違っていたと言われればそれまでなのだが。
「ま、そんなどうでもいいこと考えなくていいか」
そんなこと気にしても何にもならない。
むしろ狩らなければならない頭数が減ったぶんうれしいまである。
ただ、違和感が拭えないのでギルドに着いたら報告しておいたほうがいいと思った。
ちゃんと銛を回収し終えた俺は船を進め帰路をたどる。
そして、
吐いた
「ヴォエッ!エ゙ーーーーーーッ!ゲボォッ!オロロロロロロロロロロロロロロロ!」
船酔いである。
かなり行き当たりばったりです