一級呪詛師の青江さん   作:白白明け

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皆様の暇つぶしになれば幸いですm(_ _)m




クソなパイセン

 

一級呪詛師、青江の朝は早い。早朝四時に目を覚まし、五時に成れば外に出て活動を開始する。呪詛師の仕事は呪殺。一般人を呪術で殺し、報酬を得る。緑髪をポマードでなで付け、オールバックでキメる。使用するのは勿論、世界のYANAGI屋。一個七百円足らずで買えるジャパンクオリティ。身嗜みが良いのは仕事の出来る男の基本。縦縞のグレースーツを着こなし、髪色にあわせた緑のネクタイを締めれば青江を呪詛師なんていう胡散臭い職業だと思う者は居なくなる。

 

青江は今日も仕事をする為、駅へと向かう。埼玉県さいたま市某所のオフィス街。その街の最寄り駅に、青江は仕事をしに来た。駅のホーム。特急電車の通過を待ちながら、青江は笑った。

 

呵呵(かか)ッ」

 

青江の特徴的な笑い声に隣で電車を待っていたOLが不審な視線を送ったが、青江の顔面偏差値が平均以上である事を確認すると、スルーした。イケメンは得だ。奇怪な行為もある程度は許される。これが青江の知る中で一番のイケメンで有る五条にでもなれば、ホームで逆立ちをしたところで誰もとがめはしないだろう。

 

「そういう映画の撮影か?どういう映画だよ!呵呵(かか)ッ」

 

一人でボケて一人でツッコむ寂しい青江。

丁度その時、ホームに特急電車が通過するアナウンスが流れた。

 

《○○行き特急電車が通過します。ご注意ください。○○行き特急電車が通過します。ご注意ください》

 

繰り返されるアナウンス。しかし、その注意も空しく一人の男がホームから線路に落っこちた。

 

「う、うわあアアアアア‼ば、化物‼ばけえええええええええぇぇぇ⁉⁉⁉」

 

そして、電車にひかれて死んだ。飛び散る赤色(血液)。潰れるピンク(肉体)。香しい内臓の臭いが立ちこめる中、人々は悲鳴を上げて恐れおののく。その中で一人、隣でOLが吐いているのを見て、汚いものを見たと顔を顰めた青江はホームから立ち去って行く。階段を上り、改札へと進みながら携帯を取り出し、依頼人に電話をかける。

 

「もしもーし、金森さん?仕事、終わりましたー。ええ、料金は何時も通りにこっちが指定した駅のコインロッカーに入れて置いてください。かかっ、(イロ)なんて付けなくて良いですよ。どんな呪殺(仕事)も百万ポッキリ。呪殺界の百均が俺様ですから!かかかっ、ええ、また何時でもどうぞ。たった百万円であなたの人生の邪魔者を殺しますよー。かかかかかー!」

 

青江は仕事に向かう為に駅に来たのでは無く、仕事をする為に駅に来ていた。呪殺を依頼された者に術式で幻覚を見せて、ホームに飛び込ませる。監視カメラがある駅でそうすれば、事件化することなく精神錯乱者の自殺として処理される。我ながらの鮮やかな手並みに気を良くしつつ、青江はそれなりの規模の駅には必ず存在している牛丼チェーン店へと軽い足取りで向かって行く。仕事終わりの一杯(牛丼)。これが堪らない。

 

しかし、青江の足は牛丼チェーン店の前で止まった。良かった気分が台無しだ。店の前で自分を待ち構えていた相手を見て、地面に唾を吐きながら青江は眉を八の字にしていた。

 

「青江パイセン。おひさー」

 

白髪に真っ黒なサングラス。黒色コーデの長身。駅のホームで逆立ちをしたところで見咎められないイケメン。青江の呪術高専時代の後輩にして特級“呪術師”、五条(ごじょう)(さとる)が其処に居た。

“呪詛師”と“呪術師”。本来、出会えば始まる戦いだが、始まらない。青江は再び唾を吐いた後、五条を無視して店内へと入っていく。

 

「・・・どけよ。朝飯も喰ってねぇんだ。話があんなら、中で聞いてやるよ。クソが」

 

五条は横を通り過ぎる際、わざと肩をぶつけていった糞のような先輩に舌打ちをしつつ、素直に青江の後に続いて店の中へと入っていた。

 

長身の男が並んで牛丼を食べている店内。片や緑髪。片や白髪。異様な雰囲気に二人が並んで座るカウンター席の周りから人は消えていた。

 

「で、俺様になんの様だ?まさか態々、特級(お前)一級(俺様)を殺しに来た訳じゃねぇだろ」

「うーん、見かけたら捕まえるか殺す様に言われてはいるけど、ま、今は良いでしょ。久しぶりに青江パイセンが見られたし、珍しいから殺さないでおくよ」

「良かねぇだろ。あと俺様を珍獣みたいな理由で生かすんじゃねぇよ。クソが。殺せるもんなら、殺してみろ」

「あ?余裕だけど。パイセンの術式、雑魚いもん」

「かか、かかかかかー!!殺す!犯す!クソ五条!ゴング鳴らしたのはテメェだからな‼クソが‼」

 

五分後、青江は店内の床にぶっ倒れていた。一週間の間を空けずに再び学生時代の後輩にボコられた青江だったが、しかし、前回とは違い今回は意識を失ってはいなかった。

 

「・・・クソが。テメェ、手を抜きやがったな」

「言ったでしょ。今回は捕まえる気も殺す気もなーし!気絶されちゃ、青江パイセンには逃げられましたって言い訳が出来なくなるじゃん。そこんところ、考えて発言してくれる?」

 

カウンターテーブルに肘を付き、自分をニヤニヤしながら見下ろしてくる後輩に歯ぎしりをしながら青江は立ち上がり、椅子に座り直す。

 

「・・・で、なんのようだよ」

「ああ、ようやく話が出来るよ。まったく青江パイセンは雑魚い癖にいちいち突っかかってくるんだから、脳味噌あるのか心配になっちゃうよねー」

「かか。かかかかかー!ヨッシャ、良い度胸だ。第二ラウンドと行こうかー‼」

「行かないよ。僕、同じボケ(てんどん)嫌いなんだよね。青江パイセンさ、この間、(すぐる)に会ったでしょ?」

「・・・・・・・・・会ったが、なんだよ、あのクソ。俺との接触をこのクソに速攻で知られてるじゃねぇか。情報ダダ漏れってか、相変わらず“窓”の情報収集能力はクソ高だな」

 

呪術高専が誇る諜報部隊-“窓”。普段は一般の職業に就き日常生活に紛れながら、何か異常があった際には呪術師や補助監督に連絡する彼らの存在は呪詛師にとっては呪術師以上に目障りだ。なにしろ呪術師と違って数が多い。

そんな“窓”を青江が褒める中、五条は「いやいや」と首を横に振る。

そして、青江を指さして言った。

 

「傑の情報管理がそんなに甘いわけ無いじゃん。今のは青江パイセンにカマかけただけ。傑の情報を漏らした馬鹿はー、パイセンでしたー!わー、パイセンってばホントにクソだなー。傑ってばカワイソー」

「・・・、・・・・・・・・・、か、かか、」

(からーす)、何故鳴くのー、鴉は()ーくーのー、カァカァ♡」

「かかかかかー‼殺す!俺様をこんなにコケにしやがってッ、生きて帰れると思うなよ‼」

「いやー、本当に青江パイセンってば雑魚敵が言いそうな台詞がよく似合うよねー。雑魚専の声優にでも成れば?呪詛師よりずっと向いていると思うけどなー」

 

直江は五条に殴りかかり、一分で返り討ちにあって食べ終えた牛丼のどんぶりに顔を突っこんでいた。顔面を米粒まみれにしながら顔を上げた青江を見ながら、五条は笑いを噛み殺していた。

 

(パイセン、相変わらずクソだなー)

 

青江は呪術高専時代からこうだった。尊大にして不遜。夜郎自大さが制服を着て歩いて居る糞みたいな先輩。吹かせる先輩風が気に食わなくて何度叩き潰しても、次の瞬間には立ち上がって懲りること無く先輩風を吹かせまくっていた。術式が『幻覚』では無く、『復活』なんじゃ無いかと五条は真剣(マジ)で思った。“六眼(りくがん)”で看破した術式を疑ったのは、あれが最初で最後だった。

 

(ほんと、面白れーや)

 

青江貞次はクソだ。人の命で小銭を稼ぐ呪詛師。しかし、五条は嫌いじゃ無い。それは親友である夏油も同じだと五条は思っている。だから、夏油が呪詛師に落ちた後、何か大きな事件を起こすなら必ず青江に連絡を取ると考えていた。

だから、こうして五条は青江に会いに来ていた。

 

「傑が宗教団体を作った。あの傑が、だ。何を企んでいるか、教えてくれない」

「・・・かか、なんだ、親友の夢も知らねぇのか?クソだな。いいぜ、教えてやるよ。代わりに今日一日、俺に手を出さねぇ“縛り”を結べ」

 

“縛り”とは利害に及ぶ制約を設けることで能力強化を得る呪術的行為。他者間で結んだ“縛り”には誓約を強制させる効果が伴い、破った側には(ペナルティー)が下る。

その(ペナルティー)は現代最強の呪術師である五条でも無視できるものでは無い。

 

「捕らえる気も殺す気も無いって言っているのに、僕ってばそんなに信用無いわけ?」

「あるかよ、クソが。いいから、結べ」

「はいはい、わかったよ」

 

“縛り”を結び、青江は語る。

 

「相変わらずクソみてぇな価値観でクソみてぇな夢想して、硬いクソをひねり出す時みてぇに苦労してるぞ。術師だけの世界を作るんだとよ」

「それは聞いてる。聞きたいのはそれにどう宗教団体を利用するかだ」

「聞いてんのかよ。あんなクソみてぇな夢想を聞かされたなら、その時に殺しておけよ。・・・まあ、テメェも人の子って事だな。宗教の利用方法なんて二つしかねぇだろ。集金と増員だよ。ああ、夏油の場合には呪霊の収集も入るのか。直ぐに事を起こすつもりはねぇみてぇだぞ。おそらく数年。かかか、つまりアイツは、力を蓄えている段階って事だ。夏油を止めるなら、今がチャンスだと思うぜ。五条」

 

青江は笑う。

 

「テメェ、ちょっと行って夏油を殺して来いよ。今のテメェなら楽勝だろ。“最強”」

「あー、そー。“縛り”を結んでから僕の心を抉ってくる感じ?相変わらずアンタは“最悪”だな。パイセン」

「かかか!今じゃ、“最悪の呪詛師”の称号は夏油のモンさ。俺様としちゃ、歯がゆい限りだぜ。“最悪の呪詛師”の二つ名は、俺様にこそ相応しいってな‼かかかかかー!」

「んなモン欲しがるのパイセンだけっしょ。ほんとクソだな。アンタ」

 

笑いながら、青江は席から立ち上がる。これ以上、五条に何を聞かれたとしても答えられるものが青江には無い。夏油の居場所は、青江も知らない。以前、夏油のアジトに連れさられた事は有るが行きは気を失っていたし、帰りも再び気絶させられて気が付けば公園のベンチに放置されていた。

 

「これ以上の情報はねぇ。抜かったな、五条。あのクソが俺様を其処まで信用する筈がねぇだろ」

「へー、そう。なら、いいや。最初から其処まで期待していた訳じゃ無いしね。でもさ、次に傑に会う時は伝えて置いてよ。傑の計画は、僕が絶対に阻止してやるってね」

「かかか、後輩の頼みだ。それくらいなら聞いてやるよ。・・・にしても、五条。テメェ、いつから一人称、“俺”から“僕”に変えたんだ?クソ似合ってねぇぞ」

「青江パイセンが卒業してから、色々あったんだよ。ホント、色々とね。・・・そういうパイセンこそ、何で“俺”から“俺様”に退化してるわけ?」

「かかっ、何故って?決まってんだろ。格好いいからさ」

 

格好を付けて店を出て行く青江の背をみながら、五条は思わず呟いた。

 

「相変わらず格好悪ぃ」

 

その顔には笑みが浮かんでいた。

 





五条悟。

原作主人公、乙骨憂太の師匠ポジの強キャラ(クソ主人公談)。
クソ主人公は強さ順を乙骨憂太»夏油傑=五条悟だと思っているので、ヤバい。

主人公のことをクソだとは思っているが、性格的には嫌いじゃ無い。



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