一級呪詛師の青江さん   作:白白明け

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皆様の暇つぶしになれば幸いですm(_ _)m


クソのような

 

 

ヤベーことに物語は順調に進んでいる。夏油と五条から接触があり、冥冥に三度目の襲撃を受けた年の冬。俺様は身の危険を感じて関東圏を離れ、大阪まで来ていた。食い倒れの街を自称する癖にうどんの味が薄い上、道頓堀(ドブ)川をガンジス川か何かだと勘違いしているクソみてぇな街だが、背に腹は代えられない。

これでも一応、東京都並ぶ日本の経済圏の一つ。呪術の聖地である京都と近いこともあって、術師もそれなりに暮らしやすい。

大阪の街で暫くの間、貯めた金を使って静かに暮らすつもりだった。

 

「・・・・・・・・・だったのによぉ、クソが」

「カッチ~ン。美々子ぉ、今、コイツ、夏油様を見ながらクソとか言った」

「吊るす?菜々子」

「はは、二人とも、ダメだよ。青江先輩は子供相手でも直ぐにムキになるどうしようも無い人なんだ」

 

道頓堀でたこ焼きを買うために並んでいたら、どうしてだか夏油と鉢合わせした。

袈裟姿の夏油は、お揃いのダウンジャケットを着た小学校高学年ほどの女児を二人連れていた。夏油の姿と相まって、三人組の姿は犯罪臭がハンパない。

夏油ほどのイケメンでなければ直ぐに通報されて居た事だろう。いや、此所は俺様が通報してやろうかと携帯を取り出したところで夏油にガチめに止められた。

携帯を持つ手の手首を掴んでくる夏油の力が、ハンパない。

 

「離せよ。クソロリコン。市民の義務を果たさせやがれ」

「冗談は止してくださいよ」

「冗談じゃねぇよ」

「冗談で無ければ困ります。あまり私を困らせないでください。殺しますよ?」

「かか、良いのかよ。こんなガキ共の前で本性出しやがって。怖がられても知らねぇぞ・・・って、なんで目を輝かせてんだ?クソガキども」

「「()っちゃえ!夏油様‼」」

「やらないよ。美々子、菜々子。少し静かにしていておくれ」

「洗脳済みかよ。・・・キショ」

「聞こえていますよ。先輩?」

「かかか!聞こえる様に言ってんだ!キッショ‼」

「ほんと、先輩はクソですね」

 

夏油に物理的に黙らされた。

 

「クソが。口で勝てねぇからって直ぐに暴力に訴えかけやがって、こんな横暴が許されていいのか?良くねぇよなぁ!つーワケで、第二ラウンドだ!クソ夏油が‼」

「ハァ・・・『呪霊繰術』。獄ノ番『うずまき』」

「・・・おいおい、冗談は止めろよ」

「“冗談じゃねぇよ”。でしたっけ、青江先輩?」

「・・・・・・・・・クソが」

 

両手を挙げて降参のポーズ。夏油は掌の呪力を霧散させた。掌握していたのは『呪霊繰術』の獄ノ番(必殺技)、『うずまき』。所持する呪霊を圧縮し、高密度の呪力の塊(ビーム)を放つワケわからねぇ技。

俺様の知っている『うずまき』はもっと予備動作が必要な技だったはずだが、夏油はいつの間にか極小の『うずまき』を片手で扱える様に成っていた。

なんだよ、学生時代よりも強くなっているんじゃねぇよ。クソが。クソ、面白ぇ。

 

「かかか、順調に“最強”に返り咲いてんじゃねぇか?その調子で五条のクソをぶっ殺してくれよ。最悪の呪詛師様よぉ。そうすりゃ、俺ら呪詛師の時代だぜ」

「・・・ハァ、一日に三度は三下みたいな台詞を吐かなきゃ死ぬ“縛り”でも結んでいるんですか?話があります。たこ焼き片手に話す事でも無いので、着いてきてください」

 

夏油はこれ見よがしに溜息を吐いてから、背を向けて歩いて行く。その後ろを追いかけるクソガキ二人は、俺様を振り返ると舌を出してくる。

 

「「あっかんべえ」」

 

クソ可愛くねぇ後輩とクソ可愛くねぇ女児(ガキ)の後を俺様が素直に着いていってやる義理はねぇが、夏油からの接触はヤベーことに物語が順調に進んでいる証だ。

クソ可愛くねぇガキ二人にも見覚えがある。俺様が知る『呪術回戦(物語)』に夏油の仲間で女子高生が二人居た。あのクソガキ共が成長した姿がアレなんだろう。

だとするとあと三~四年で原作が開始すると見積もってもいい。

俺様が自由気ままに生きられる寿命は、あと三~四年ってこった。

詳しいリミットを知るために、夏油と関わるのは悪くない。

 

俺様は頭を掻きながら三人の後に続き、隙を見てガキ二人の背中を蹴り飛ばした。

手を繋いで歩いていたガキ二人は転んで泣き、笑う俺様は夏油にマジで殺されかけた。

クソが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

京都市京都タワー展望台。東京タワーには遠く及ばねぇちっぽけな展望台に上るのに、九百円も掛かった。

 

「クソが・・・」

 

吐き捨てる言葉には、我ながら覇気が無い。双子のクソガキは展望台に置かれた一つの双眼鏡を一緒に使う馬鹿な真似をしていて、俺の隣では夏油が腕組みをして立っている。

 

「私はね、大いなる力は大いなる目的のために使うべきだと考えています。青江先輩は、一般社会の秩序を守る為、呪術師が暗躍する今の世界に疑問はありませんか?」

「・・・ねぇ、って言えば嘘だろうな。俺様に他人のためにクソ掃除を進んでするボランティア精神はねぇよ。非術師()共なんざ、利用してやれば良い」

「うれしいな。やはり先輩は、私と同じ理想を持っている」

「いや、考え方が同じなだけだ。理想なんて高尚なモンを、俺様は持っちゃいねぇ」

 

頭を掻きながら、夏油を見る。

夏油はクソだが、俺様はそれ以上のクソだという自覚がある。夏油が言う理想とは、あのキャッキャうるせぇクソガキ共が笑って生きられる世界なのだろう。素晴らしいことだ。

社会に置いて重要なのは、未来あるガキだ。それを優先しようという夏油もまた素晴らしいのだろう。

 

「テメェは、素晴らしいクソだ」

「中々に斬新な罵倒ですね」

「テメェのクソみてぇな理想に、一枚噛むのは(やぶさ)かじゃねぇ。どのみち、このままじゃ俺様が五条のクソに殺される日も近ぇからな」

「悟か。・・・殺しますかね?悟は結構、青江先輩のことを気に入っていますよ」

「殺すさ。五条はそういうクソだ。・・・テメェのことも、五条は殺すぞ?」

「そうでしょうね」

「勝てるか?五条に」

「・・・さあ、どうでしょう」

「・・・・・・・・・クソが」

 

唾を吐き捨て、夏油の胸ぐらを掴む。

 

「夏油様になにするのよ!」

「は、はなせー」

 

クソガキ共に臑を蹴られるが、無視して夏油を睨み付ける。夏油は表情一つ変えずに冷めた目で俺様を見ていた。

 

「勝てたら良いなじゃ薄いんだ。勝つんだよ。そう言い切れる味を持て。このクソみてぇな世の中で、それでもテメェにはクソ素晴らしい理想があるんだろ?なら、俺様の同意なんて得ようとしてんじゃねぇよ。クソは使い潰せ。クズは吐き捨てろ。そうして出来た道の果てで、テメェが“呪いの王”になれ」

「先輩は、私を買いかぶり過ぎですよ」

 

俺様の言葉で夏油傑の顔に困ったような笑みが浮かぶ。

それを見て、俺は嗤う。

 

「俺の知る中で最強の呪詛師がテメェだ。テメェがくたばる日まで、俺様も俺様の幸福を諦めねぇ。精々、俺様の為にも励めよ」

 

手を離し、夏油に背を向ける。立ち去る俺様に夏油から声が掛かる。

 

「先輩!・・・私たちと一緒に来ませんか?」

 

立ち止まり振り返る。夏油は俺様の顔を真っ直ぐと見ていた。その足に縋り付くクソガキ共は心底に嫌そうな表情で俺様を見ていた。それを見て、思わず笑う。

 

「かか、夏油。誘う相手は選んだ方がいい。・・・テメェが事を起こす時、協力はしてやる。だが、テメェと一緒なんてゴメンだね。俺様は五条みたいな物好きじゃねぇんだよ」

 

それだけ言って、再び背を向けて、今度こそ、この場から立ち去った。

 

 

 

そして、その後に夏油と再会したのは8年後。2017年の事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

“殺したい相手を呪ってくれるYouTuberがいるらしい”。

そんな噂話が日本の各地でまことしやかに囁かれていた。

 

あなたの携帯にある日、突然届くメール。其処にのっているURLを開いた先にあるサイトの“仮面の画像”をクリックしよう。そうすればあなたの手元に呪物が届く。それがあれば、本物の“呪詛師”に会える。

 

百万円で、あなたの呪いを代行します。YouTuber、“呪面(じゅめん)”。

 

そんな噂。

現代の怪談。

その当人である青江貞次は、2017年10月31日。呪術の聖地、京都にいた。

来るべき日に向けて、今日この日、夏油は東京にある呪術高専に宣戦布告に赴いている。

日本にある呪術高専は二つ。東京校と京都校。東京にいる夏油に変わり、京都校へと名代(みょうだい)として遣わされたのが、青江だった。

 

呪術高専京都校正門前。駅前でタクシーをひろい此所までやって来た青江は校舎内に足を踏み入れようとした瞬間に()()()()()()()

ゴロゴロと地面を転がって行く青江を見て、夏油の仲間の一人である黒人の術師、ミゲルは溜息を吐いた。

 

「ダカラ、裏口カラ行コウト言ッタノニ!」

「クソが、宣戦布告だぞコラ。正面から行かなきゃ意味がねぇだろ!」

「一歩モ入レテ無イジャ、ナイカ!」

「これから行くんだよ!諦めねぇんだよ!大和魂舐めんなッ‼」

 

「あんた達、漫才をしに来たの?」

 

正門の内側から掛かる声に、尻餅をついたままの直江が視線を向ける。其処には巫女服を着た女性が複数人の術師と共に立っていた。

呪術高専京都校の教師。(いおり)歌姫(うたひめ)は言葉とは裏腹に強張った表情でかつての先輩を見下ろしていた。

 

「・・・歌姫か。相変わらず巫女服が似合ってるじゃねぇか」

「今のあんたに名前を呼び捨てされる謂れはないわよ。呪詛師、青江」

「あ?さん付けしろよ。俺様の方が先輩だぞ」

「学生時代を何時までも引き摺って、馬鹿じゃ無いの。私は五条とは違うわ。もうあんたの事を、先輩だなんて思ってない」

「・・・・・・・・・」

「・・・青江、ドウシタ?傷ツイテ居ルノカ?オ前ガ?」

「・・・クソが、んなワケねぇだろ。冗談言ってねぇでアレだせアレ!」

「・・・・・・・・・本当ニ使ウノカ?」

「当たり前だろ!何のために作ったんだよ!」

 

ミゲルは背負っていた鞄を降ろし、中から何かを取り出した。歌姫を含めた京都校の人間が警戒感をあらわにする中、出てきたのは三本ののぼり旗だった。

 

 

『愚者に死を』『弱者に罰を』『強者に愛を』

 

 

夏油が掲げたスローガン。それを書いた三本ののぼり旗の前で腕組みをして、ドヤ顔を浮かべる青江に対して歌姫は先ほどとは違った意味で固まった後、口元を引きつらせながらのぼり旗を指さす。

 

「ねえ、そのクソダサいものはなにかしら?」

「ああ‼クソカッコイイだろーが!クソみてぇな前髪の夏油から、こんなクソカッコイイ題目(スローガン)が出たのは奇跡だぞ‼愚者に死を!弱者に罰を!強者に愛を‼口に出して言いたい台詞、人生のベスト10には入るだろうーが‼」

「・・・あんた、本当に何をしに来たのよ」

 

呆れる歌姫に青江は頭を掻きながら言う。

 

「宣戦布告、ってのは建前だ。夏油の計画の前に、京都の術師を何人か()りに来た」

 

その瞬間、青江の纏う雰囲気が変わった。歌姫は思わず身構えて、周りの術師達も武器を構えた。それを見渡す青江は笑い、ミゲルは再び深い溜息を吐く。

 

「オイ、夏油ハ其処マデシロトハ、言ッテイナイゾ」

「この後に及んでまだ術師は出来るだけ殺したくないとか思ってやがる。クソが、そんなんで勝てる程に甘くねぇって。テメェもそう思うだろーが、ミゲル」

「・・・ダガ、ソレガ夏油ガ望ム世界ダ。俺ハ手ヲ貸サナイゾ」

「かかか、ああ、黙って見ていろ。んで、俺様が負けたら抱えて逃げろよ。俺様はまだ死にたくねぇからな」

「クソダナ」

 

両手を広げて呆れるミゲル。

青江は腰に差していた大脇差を抜いて、歌姫を含めた京都校の人々を見る。

 

「雑魚を殺しても意味がねぇ。一番強え奴、出てこい」

「それなら、俺だな」

 

直江の言葉で前に出たのはボンタンを履いた()()だった。

 

「なっ⁉東堂⁉どうして、此所に⁉さ、下がりなさい!」

 

歌姫の声を無視して青江の前に立ちはだかる男の名前は東堂(とうどう)(あおい)

京都校所属の二年生。筋骨隆々の大男。長身の青江とは視線の高さがほぼ同じだが、身体の厚みが違う。“一番強い奴”の言葉に偽りは無く、この場にいる歌姫を含めた教師陣と比べても東堂が一番強い。それを察した青江は笑う。

 

「かかか、生徒が教師より強いとか、本当に代わり映えしねぇなぁ。そんなだから何時まで経ってもクソなんだよ。学校ってやつは」

「ミスター青江。噂は聞いている。だが俺はそんな事は気にしない。・・・聞きたいことがある」

「・・・なんだよ」

「どんな女が、タイプだ?」

「あ?なんだよ、そのクソみてぇな質問」

「いいから、答えろ」

「・・・・・・・・・此所じゃあ、言えねぇなぁ」

「・・・つまらん男だ。死ね!」

 

駆けてくる東堂に青江は大きく大脇差を振り上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、その後はどうなったのよ!」

 

時間が進み、場所が変わり、関東圏某所。

夏油が率いる一派のアジトで菜々子と美々子がミゲルから俺様の武勇伝を聞いていた。

 

黒閃(こくせん)ヲ決メラレテ三分デ、ノックアウトダ。俺ガ抱エテ逃ゲテ来タ」

「やっぱり!青江ってば、チョーシに乗ると直ぐに負けるから!そんな事だと思ってた!あー、ダサー。」

「菜々子。あんまり笑うと失礼」

「えー、美々子だってそう思うでしょ!」

 

八年の歳月は長い。俺に蹴られて泣いていたクソガキ共は成長して女子高生に成っていた。

ギャル系の菜々子と大人しめの美々子。俺様の知る『呪術廻戦』(漫画)通りの美少女だ。

クソガキ時代からの成長を見比べて、まず浮かぶのは遂に物語が始まったという感慨だ。

『呪術廻戦』。夏油傑の物語がこれから始まり、原作通りに進むなら、夏油は乙骨憂太(主人公)に負けて物語は終わる。そうなれば呪詛師である俺様の未来も無くなる。

 

「クソが・・・、あんまり舐めてると昔みたいに尻を蹴り飛ばすぞ」

「ちょ、近寄るなし変態!夏油様に言いつけるよ!」

「・・・任せて、証拠は押さえる」

 

逃げる菜々子とスマホを構える美々子に舌打ちをして、椅子に座り足を組む。頬を摩れば、痛みが走る。東堂とかいうゴリラに殴られた傷は外見こそ取り繕っているが、完治は遠い。何なら頬骨が粉砕骨折していた。原作には登場していないからと嘗めてかかった結果が敗北(これ)だ。

クソのような事実だが、原作外にも強者はいる。此所が漫画ではなく世界だと、思い知らされた。

しかし、だからこそ、夏油にも勝ち目はあると俺様は踏んでいる。

 

“夏油傑の強化”。

 

俺様はそれをする。既に()は呪詛師としての活動の中で蒔いている。

後、必要なのは俺様の覚悟だけだ。覚悟だけだが、覚悟を決める事が何より難しい。

何しろ失敗したら待っているのは、無駄死にだ。

 

「・・・ねぇ、なに黙ってんのよ。あんなので怒ったわけ?」

「・・・怒ってねぇよ。クソガキになに言われた所で俺様が気にするワケがねぇだろうが」

「クソガキって、私たちはもう15なんだけど!」

「かかか、ガキじゃねぇか。選挙権もねぇガキが大人相手にイキってんじゃねぇよ。大人扱いは二十歳(はたち)越えてからだ。クソガキ」

「カッチ~ン。私、やっぱりアンタ、ゲロムカつく。夏油様に言われたから仲良くするつもりだったけど、やっぱ無理っぽい」

「夏油夏油、ホントにテメェはあの頃と何も変わってねぇな。そんなにあのクソが好きかね」

 

俺様の言葉に反応したのは、菜々子だけじゃなかった。美々子も俺様を睨み付ける。

 

「・・・おい、訂正しろ。夏油様はクソじゃねぇ」

「・・・言葉がすぎる。訂正して」

「アイツの一番クソな所を教えてやろうか?自分がクソだって気が付いてねぇ所だよ」

「「殺す」」

 

向かってくるクソガキ共をいなしながら、ミゲルに二人をどうにかしろと視線を送るが、ミゲルは肩をすくめるだけだった。クソが。

 

菜々子と美々子のじゃれ合いは、夏油がやってくるまで止まらなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

写真を撮った。原作で見たのと同じ夏油一派の写真。違う点は、端に俺様が写っているということだけだ。夏油が仲間たちと写真を撮るシーンは、ラスボスとして現れた夏油の人間臭さが印象的だったのでよく覚えて居る。写真を見ながら、考える。

 

 

俺様はいったい、何がしたいのだろう。

 

 

 

 

 

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