一級呪詛師の青江さん   作:白白明け

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これにて完結です!

皆様の暇つぶしになったのなら、幸いです。
\(^o^)/



クソになった男

 

 

―――来る12月24日。日没と同時に、我々は百鬼夜行を行う。

―――地獄絵図を描きたくなければ、死力を尽くして止めに来い。

―――思う存分、呪い合おうじゃないか。

 

 

 

冥冥は呪術高専に夏油が宣戦布告に来た時の事を思い出しながら、目の前の光景を見ていた。

 

「・・・呪い合い、か。なるほどね。確かに君ほど、その言葉に相応しい人間はいないだろう」

 

一級呪詛師、青江貞次との戦いは決着した。一級呪術師三名の尽力により、青江は虫を払う様に祓われた。良いところなど何一つ無く、居ても居なくても何も変わらない人間(キャラクター)として、路傍の(クソ)のように死んだ。

その筈だった。切り飛ばした首が嗤い、首ナシの青江の身体が立ち上がるまでは―――

 

「「か、かか、かかかかかかー!」」

 

首が嗤う。身体は気管から直接、声を出していた。

 

「・・・幻覚か?」

「違います」

 

東堂は呟く。七海が即座に否定した。

 

「東堂くん。術師にとって最も簡単に能力を底上げする方法は知っていますね」

「勿論。命を賭けた縛りだ。これが・・・そうなのか?」

「いいえ、違います。これはおそらく、()()()()()()()()()()()

 

「「領域展開『呵々大唱』」」

 

首ナシの死体が手印を結ぶ。

次は止める間もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人間はクソをする為に生きているクソみてぇな生き物だ。人間である俺様が言うんだから、間違いはねぇ。人は自分が笑う為に生きている。その為なら、他のクソ共なんてどうでも良い。そう信じてきた。けれど、中には他人の為に笑えるクソが居るらしい。

信じられなかった。それを否定したかった。

 

そんなモノは所詮、妄想の産物(漫画のキャラクター)でしか無いのだと思っていた。

 

だが、違った。世の中には俺様とは別種の人間が確かにいた。

他人の為に笑える人間。“善人”が、いた。

 

そんな夏油()が世界を呪った。

ならば、俺様も呪ってやろう。

 

「「か、かか、かかかかかかー!」」

 

命をかけた“縛り”。絶命を対価に呪力の制限解除が出来るのなら、更にその先に踏み込めばどれだけのチカラを享受できるかなど、稚児(クソ)にも分かる。

 

死後の魂の抑留。

己を呪霊と化す邪法。

 

 

俺様(クソ)呪霊(クソ)になる。

 

 

 

「「・・・後は、俺様を上手く使えよ。夏油」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏油傑の描いた理想(ゆめ)は終わった。青江の知っていた原作通り、夏油は東京の呪術高専にて乙骨憂太に敗北し、右腕を失い、命からがら逃げ延びる様に呪術高専からの脱出を図っていた。

その最中、現れた嘗ての親友である五条悟を見て、夏油は自らの敗北を受け入れた。

 

「遅かったじゃないか、悟」

「・・・」

「君で詰むとはな。私の家族達は無事かい?」

「東京にいた連中は揃いも揃って逃げ果せたよ。京都の方は・・・一人、死んだ」

「ハハ、やっぱりね。死んだのは青江先輩だろ」

「アレも、お前の指示だったのか?」

「いいや、先輩の意志だよ。君と違って私は優しいんだ。私のために死ねだなんて、そんなことは言えなかった」

 

京都の地にて青江貞次は死んだ。

一級呪術師三名に囲まれ、首を斬られ、己の生と他人の死を呪いながらに嗤いながらに死んだ。

 

「悟。先輩と初めて会った日に、あの人が言っていたことを覚えているかい」

「あー、なんだけっけかな。すげぇくだらない事だったのは覚えているんだけど」

「『俺を殺すな。殺しやがったら、呪ってやる』だよ」

「あー、そうだった。そうだった。パイセンの方から絡んできた癖に命乞いすんだもん。笑ったよね」

「ほんと、たわけた人だった」

「うん。殺しても絶対に只では死なない人だ。で、パイセンは本当に死んだわけ?」

 

 

「死んだよ。只では、死ななかったけどね」

 

 

夏油は空を見上げて息を吐き、失った右腕に目を落す。

 

「本当なら死後、先輩は此所に来る筈だった。己の魂を抑留する“縛り”。先輩は自ら呪霊となる事でチカラを得ようとしていた」

「そんな邪法、失敗するでしょ。所詮、パイセンの浅はかな考えなんだし。・・・止めたんだろ」

「止めたさ。何度も言うが、私は優しいんだ。けれど、先輩は人の話を聞かないどうしようも無い人間だからね。止めても無駄だった。京都で死んだって事は、そういうことだよ」

「そっか。それでパイセンは、どこに行ったわけ?」

「本来なら、呪霊となった後は私の下に来る筈だった。私の右腕の印を頼りにね。でも、見ての通り、腕を失ってしまったからね。呪霊と化した先輩が、私の下に辿り着くことはないだろう」

「ふーん、つまり先輩は無駄死にしたわけだ」

「最後まで、どうしようもない人だよね」

 

簡単な足し算だった。夏油一人では乙骨や五条に勝てないなら、青江貞次(+α)が有れば良い。幸いにして夏油の術式は『呪霊繰術』。強力な呪霊が居ればいるほど、単純に強くなれる。

 

“俺様が呪霊になってテメエにチカラを貸せば、最強だってぶっ殺せるだろ”。

 

何も考えていないに等しい浅はかな考えをどうしようも無い脳味噌から絞り出した馬鹿な男は、無責任にも全てを夏油に託す“縛り”を結んだ。

 

その結末がコレだと言うなら、笑うしか無いお粗末さだ。

 

「悟。私の最期の頼みを聞いてくれるかい」

「うん」

「・・・少しは迷う素振りを見せろよ」

「迷いなんてないさ。親友の頼みだ」

 

五条は死にゆく夏油に目線を合わせて真剣な顔をしていた。

夏油はその行動に苦笑して、最後まで優しい言葉を吐く。

 

「先輩を祓ってくれ。私との“縛り”が果たされない以上、呪霊と化した先輩は最早、私たちの知る先輩じゃない。世界を呪う呪霊として、さ迷う筈だ」

「わかった。パイセンは雑魚だし、直ぐに傑と同じ場所に送ってやるさ」

「うん。任せたよ。・・・高専の連中まで、憎かったわけじゃない。それは先輩も同じだった筈だ」

「わかってる。パイセン如きに、誰も殺させやしないよ。それより、傑」

「なんだい」

「 」

「…はは。最後くらい、呪いの言葉を吐けよ」

 

そうして夏油は死んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・かか、か?」

「おお、目覚めたか」

 

目を覚ますと見慣れない単眼の呪霊が俺様の目の前に居た。

 

「・・・誰だ、テメエ?なんで頭に巻き(グソ)を乗っけてんだ?カッコイイと思ってんなら、クソだせぇから、止めた方が良いぞ」

「ああん⁉貴様ッ、今なんと・・・⁉・・・いや、いい、目覚めたばかりだ。ここは儂が大人になろう」

 

単眼の呪霊は俺様の的確なアドバイスに何故かキレた。頭に乗っていたのはクソでは無く火山だったようで、キレたのと同時に噴火したが直ぐに鎮火した。クソ面白ぇな、なんだコイツ。

 

「儂の名は漏瑚(じょうご)。目的の為に仲間を集めている」

「目的?なんだよ、それ」

「“世界を変える”。儂ら呪霊が人と成る!貴様も、興味は無いか?」

「・・・かか、かかか!いいねぇ、()()()()、そういう言葉に俺様は弱いんだ。クソ面白そうじゃねぇか!」

「よし、ならば儂と共に来い!貴様、名は何という?」

「・・・名か、俺様の名は、名は・・・あー。待て、今、思い出す。喉元(ここ)まで出ているんだ。ちょっと待て」

「よい、自我が芽生えたのも最近なのだろう。焦らずとも良い。取りあえず場所を移すぞ。他の仲間を紹介する。付いてこい。()()()呪霊」

「かかか、俺様に命令してんじゃねぇよ。漏瑚、テメェの目的はクソ面白えから協力はしてやるが、上下関係はハッキリさせておこうぜ。俺様が上で、テメェが下だ」

「ほう・・・呪い合うか?」

「かかか!当然だッ‼」

 

五分後、うつ伏せで倒れる俺様の背の上で、漏瑚はパイプを吹かしていた。

 

「・・・強えじゃねぇか。クソが」

「さては貴様、馬鹿だな?」

 

 

 

呪いは巡る。

 

 

 

 

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