【二巻発売決定】異世界転生したのでマゾ奴隷になる   作:成間饅頭(旧なりまんじゅう)

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今作のコミカライズが開始されました。是非ご覧ください。

ニコニコ
https://manga.nicovideo.jp/comic/72624
カドコミ
https://comic-walker.com/detail/KC_006591_S?episodeType=first


IFルート 商国(前)

 

 

 

 

「―――止まれ。両手を上げて、膝を地面につけろ」

「え」

「現在、貴殿は我が国の領土へ不当に侵入している。ここは我が国の正当な領土、我が国の根幹を成す【国立研究所(ターミナル)】だ。不法な侵入は断じて容認できない。俺は商国の【英雄】として、直ちにすべての不法行為を中止し、領土から完全に撤退することを強く求める」

「あ、あの」

「これは警告だ。 無視するようであれば、俺は自国を守る権利に基づき、相応の対応を取ることになる。これは国際倫理に則った正当な行為であり、武力行使に伴う被害の責任は被害者自身にある。貴殿の返答を求める! …………………………それは?」

「……り、履歴書です……」

「……………………」

「……………………」

「あー…………もしかして、今日面接予定の方?」

「はい……『国籍、過去一切不問』という懐の広さに惹かれて応募しました。無職、職歴なし、住所不定のクライヒハルトです。この面接に懸けてます」

「あ~~~~~~~。へー。うーん……なるほど……ちなみに、他の応募者は?」

「俺が来たら全員顔真っ青にして帰りました」

「はは」

「えへへ」

「―――――採用」

 

 

 

 

 

『商国、国立研究所研究員募集の広告』

 ・求む研究者。至難の旅。

  僅かな報酬。研究。暗黒の長い日々。絶えざる危険。

  ただ欲望のみを求む。成功の暁には名誉と賞賛を得る。

 ・過去不問。国籍不問。職歴、能力、異能、その他すべて一切不問。

 

 

 

 

 

ウ゛ーーーーーーーーーー!!!

「またクライヒハルト卿が暴れているぞ!!」

「あの研究者(カス)どもまたやらかしたのか!!」

「外に出られるとマズい、非常ドア閉めろ!」

「人集めろ、スクラムで押し返すぞ!!警備員呼んで来い! 何のために高い金払ってると思ってんだ、エリザ所長が来るまで時間稼がせろ!!」

「1日で退職届出して居なくなってますよもう!」

『敵』! 『敵』! 『敵』! おまえら全員『敵』ゆんか!?

「あああ豆腐のように壁がブチ抜かれる!!」

「スクラム組めっつってんだろ!!! 壁は自然に直らんが俺たちは治る! 」

「行け行け、しがみつけ! せいぜい骨折で済むんだ、一番コスパいい壁だろうが!」

お前も『敵』ゆんか!?

「ギエーーーーーーーッ!! やっぱ無理ありますってこれ!! 全員引きずられてますけど!?」

「ふふ、なんかハリネズミみたいになってる」

「床に擦れて背中痛い」「スズメバチ相手にしてるミツバチってこんな気持ちかも」

「言ってる場合か!?」

「エリザ様ーーーーーーーッ!!! 助けてエリザ様ーーーーーーーーー!!」

 

 

 

 

 

『国立研究所警備員募集の広告』

 ・暴れる【英雄】を止める仕事。

 ・今すぐ人生がめちゃくちゃになってもいい人募集。

 

 

 

 

「……クライヒハルト卿~~~~?」

「…………」

「あ~~~……。この度はウチのカス共が大変ご迷惑お掛けして、非常に申し訳なかったというか……。反省文と詫びの品があるんで、入っていいか……? は、入るぞー……?」

「ガルルルルル……!」

「うおっ、野生化してる」「人間を信じられなくなってしまったんだ」「可哀想……」

「すっこんでろアホ共!! お前らに許可された言葉は『ごめんなさい』だけだ、勝手に発した1文字ごとに減給してやるからな!!」

「グルル……!」

「ああクライヒハルト卿、ベッドの脚を噛まないでくれ! よしよし、もうあのカス共はさんざんに叱りつけたからな……ほら、何してる! さっさと例の物を持ってこい!!!」

「うっす!」「急げ急げ」「クライヒハルト卿すみませんでした! これ、お詫びの〝ハンバーガー〟です!」

「よし! さあクライヒハルト卿、あーんだ。分かるか? 毒じゃない、食べ物だ。貴公の話から、あいつらが発明してみたんだ。貴公が好きな文明の味だぞ〜〜〜」

「グルル……ニンゲン、オレタチノモリ、モヤス……!」

「なぜ土着の怪物に……? ほらクライヒハルト卿、あーん」

「グルルルル……んぐ。もぐ、むしゃむしゃ……ごくん」

「どうだ……?」「いけるか……?」「絶対いける、超美味くできたもん」「新時代の味だった」

「呑気にしてんじゃねえ!! 黙ってろつったぞ!!」

「…………ガル」

「た、食べ終わったか、クライヒハルト卿。味はどうだった? 満足行く味だったか………?」

「――――うまい」

「クライヒハルト卿!」

「臭みの無い芳醇なパティに、たっぷり使った香辛料、そして試行錯誤の跡が見えるソース……。これはまさに、俺が話していた通りのバーガーです。いや、それ以上だ……」

「良かった! クライヒハルト卿、言語を取り戻したか! まだおかわりはある、どんどん食べてくれ! 以前クライヒハルト卿が『ハンバーガーに合う』と言っていたフライドポテトもあるぞ!」

「うおお……! このジャンクな味、追い求めてた味……! 前に俺が自作した時は油でべっちょべちょだったのに、このポテトは塩気が効いて美味い! 脳髄に油が染みる……うめ、うめ……」

「それで……食べながらでいいから聞いてほしいんだが、改めて謝罪させてくれ……ウチの研究員が無礼なふるまいをして申し訳なかった」

「グルッ!? ケンキュウイン……! アイツラ、テキ……!」

「文明度が上下しているのか……? いや、とにかく……クライヒハルト卿が言っていたその料理は、あのカス共が作ったんだ。あのカス共の才能は本物だ。人間性はどうしようもないカスだが、知識と発想力は一級品なんだ。本当に人間性はカスだけど……」

「ガルルルルル……」

「膨大な試行錯誤を喜んで行う精神力と、それをショートカットするための柔軟な発想。クライヒハルト卿の『()()』による智慧、それを最も活用するには、やはりあのカス共が必要なんだ……。勿論、深く深く反省させる。次からは俺か、せめてもう少しマトモな奴を立ち会わせる。だから、その……で、出来れば許してもらって……まだ商国に居てくれると、うれしいんだが……」

「……………グルル」

「ごくり」「ごめんなさい、クライヒハルト卿」「申し訳なかったです」「よってたかって知識のおねだりしてすみませんでした」「熱殺蜂球*1みたいになってすみませんでした」「トイレまで押しかけたし」「反省しています」「俺もどさくさに紛れてクライヒハルト卿の汗舐めてすみませんでした」「うわそれは引くわ」「違うんだ、【英雄】の体液組成に興味があって……」

「黙ってろ!!!!!!!!!!!! お前らが一言喋るたびに墓穴を掘ってる!!!!!!!」

「グルルルル――――グルル……………………ニンゲン、トモダチ」

「クライヒハルト卿! 良かった、本当にありがとう……!! 」

「悔しい……けど、これが美味すぎて許しちゃうぜ……。まだ遠いけど、ほんの微かにビッ〇マックの姿が見える……。ウマ……。マジで求めてたまんまの味だ……うまい、ほんとにうまい……。これに比べると山岡はんの鮎はカスや」

「また言ってる」「誰なんだヤマオカ卿」

 

 

 

 

 

『雇用契約書 (クライヒハルト用超簡略版)』

 ・クライヒハルトは、自らの異能【天啓知識(オラクルペディア)】によって得た知識を商国に提供する(任意)

 ・勤務時間は任意。休暇は適宜申請不要で使用してよい

 ・基本給として月に金貨10枚を支払う。経費は随時、商国が負担する(領収書不要)

 ・契約は双方の合意、またはクライヒハルトの任意離任によって終了する

 ・【天啓】から開発した"再現技術(レプリカギア)"はクライヒハルトが第一に確認する権利を持つ

 

 追記:こんなガバガバの契約あるか? と思うが、本人が難解な言い回しを理解できないんだから仕方ない。ま、あそこまで強けりゃ誰も騙そうなんて考えねえか (エリザ所長)

 

 

 

 

 

「さて。定期面談の時間だ」

「うっす。お願いしまっす」

「……いつの間にか(けい)も随分気安くなったな。俺もだが。最初はあわや殺し合いまで行きかけたが、案外馴染んだものだ。研究員と揉める事も少なくなったしな」

「彼らが一番頭おかしいと思うよ俺。力加減ミスったら死ぬのに平気でまとわりついてくるし」

「人格の全てを研究に捧げるとああいう化物が生まれる。まあ、とにかく。そのバカ共を含め、何か卿に不満は無いか?」

「ん~~~。うーん……特に無いかなぁ。飯が最近美味くなってきたのが嬉しい。食文化の発展を感じる」

「新たに料理部とかいう嘘みたいな部署が出来たからな……。他には?」

「他には? あー……いや、本当にないかな……」

「……形式上、俺はクライヒハルト卿の雇用主であり。お前の目上にあたるわけだが。それについては?」

「え……やっぱ、敬語とか使ったほうが良かったですか……?」

「そうじゃない……自分の上に人が立つ事に、何か不満を覚えないかという話だ。見ればわかる、クライヒハルト卿が本気になれば俺など瞬殺できるだろう。そんな()()が曲がりなりにも自分の上司だという事に、本当に何も感じないのか?」

「いやいやいやいや……戦闘民族じゃ無いんだから、本当に何も思わないですって。不満とか無いです。頭オデ系として、賢い人の事は基本尊敬して生きてるので……。何? どういうこと?」

「……基本的に、【英雄】同士って死ぬほど仲が悪い。全員我が強いし、何より数少ない『()()()()()()()()』だ。同族嫌悪、主義主張の違い……なにより、互いの【異能】が()()()()本能的な危機感。互いが互いを潜在的な敵として認識し合う。【英雄】を二人抱えた国は短期的には目覚ましい成長を遂げるが、最期には惨たらしく破滅する。そういうのがお決まりだ」

「へー……って、じゃあ今大丈夫なの? 内心嫌われてるとかだったらかなり落ち込むんだけど」

「だからこっちが聞いてるんだ……。本当に、何も思うところは無いのか? 俺の()には分かるんだ、卿が比類なき【英雄】だと。帝国の皇帝、聖国の聖女、そして俺。誰一人、卿を殺せる【英雄】は居ない。機嫌を損ねた卿が俺を殺すことがあっても、その逆は決して無い……」

「あ~~~~……いや、本当に何も無いですって。森から出て来て即商国(ここ)に来たから、あんまり人付き合いの機微が分かってないのは俺の落ち度ですけど……」

「……なら。卿が望むのは何だ?」

「え?」

「卿の欲は何だ? 何が欲しくて、何を喜びとして生きている。いくら金を渡しても、卿は何にも使わない。卿の核が見えないんだ」

「いや、それは別に……国立研究所(ターミナル)の人達の発明が十分対価になってるというか……」

「……ふうん。そうは見えねえがな……」

「いやほんと、勘弁してください……。頭の良い人枠として、エリザさんの事は結構本気で人として尊敬してるというか……あんまそういう枠じゃないというか……」

「……本当に、不満は無いんだな? 俺を殺して国立研究所(ターミナル)の長に成り代わろうという気は?」

「ないないない!! 全然無いです!!! 」

「……そうか。良い、今はそれを信じよう。……思うに、俺たちはまだ互いを知らないからな。ゆっくりと、仲を深めていこうじゃないか」

 

 

 

 

 

『職員面談簿(クルエル・マッドネス)』

 ・クライヒハルト卿について

  別に怖くは無いですねェ。私どもを退かす時も手つきが優しいですし、根本的に温厚な方なのかもしれません。そうじゃないのかもしれません。【英雄】について分かった気になるなんて一番愚かですねェ。いつ彼がいなくなるのか分からないんですから、居る時に纏わりついて出来るだけ知識を頂戴するのが合理的ですよ。死んだらその時ですねぇ。

 

 

 

 

 

『ええい、出ていけ! お前の【異能】は役立たずだ!! このパーティから、お前を追放する!』

『そんな……! 僕の "昼と夜、屋外と屋内の地面と空中で、人・獣・魔物のどんな武器でも死なない"【異能】が役立たずだって……!?』

「ナラシンハ? というか、よくそんな異能持ったやつ追放したな」

「……後々主人公の活躍を書く事に意識が行き過ぎて、他のところでガタが来てるな」

『ククク……俺は獣と人間のハーフ! お前を昼でも夜でもない夕方に、屋外でも屋内でもない玄関で、地面でも空中でもない膝の上に載せて、武器を使わず絞め殺してやるわ!!』

『クソッ……! なんて強敵なんだ!!』

「さっそくメタられてる」

「必然的に敵の両親がとんでもない変態になってないか?」

『うおおピンチで【異能】が覚醒! 玄関から出て攻撃を無効化!』

『なにっ』

『そしてここで俺の悲しい過去を聞け……実はお前は俺の父親なんだ!』

「息子の側から言い出すの珍しっ」

「必然的に主人公が獣のクオーターになったのは大丈夫そうか?」

 

 

 

「グスッ、ヒグッ……」

「おもしろ。ウダウダ言ってた割にはめちゃくちゃ泣いてるじゃないか、クライヒハルト卿」

「何だかんだラストの盛り上がりとオーケストラの演奏が刺さって……キャストも熱演だったし」

「ああ、確かに最後の怒涛の伏線回収は良かったな……脚本も演出もまだ粗削りだろうが、これが面白いんだと信じている"熱"があった。いい舞台、いい役者、いい劇団だ」

「ですね……あとそもそも、俺が普通に観劇できてるのも感動です。【英雄】2人が来てるのに全くバレてないし」

「俺の【俗物的奇跡(インスタントプレイ)】のお陰だな。正直クライヒハルト卿の威圧感をごまかし続けるのはとんでもない出費だが、卿のお陰で利益が出てるからな。福利厚生と考えれば、まあ、そうだな……月に1~2回くらいなら、また連れて行ってやるよ」

「わーい」

「……正直アホみたいに消耗したんだ、是非有難がってくれ。これからも商国を御贔屓にな」

 

 

 

 

 

『エリザ・ロン・ノットデッドの手記』

 ・美食←×。無駄に舌が肥えている。なぜ? 分からせるため最高の肉と炭を準備中。

 ・遠出←△。森に拒否感を示す。自らを都会派と名乗り錯乱。

 ・狩り←×。これを考えた奴は馬鹿じゃないのか? 全ての獣が逃げて話にならなかった。

 ・観劇←〇。中々面白かった。

 

 

 

 

 

「わーっはっはっはっはっは!! わはははははははは!!!」

「おー。めっちゃ嬉しそうっすね、エリザパイセン」

「そりゃな!! クライヒハルトも見ろ、この会計報告書を!! 黒字も黒字、大儲けだ!! 今期の売上は商国の歴史に残るぞ!!」

「どれどれ……おお、凄い。金という物が良くわからなくなってくるレベルの大金。国立研究所(ターミナル)の発明品がとにかくバカ売れしたからなあ」

「クライヒハルトのお陰だ!! おお、なんと有難き【天啓知識(オラクルペディア)】!! 貴殿の【異能】による知識は素晴らしい!! 千年の研鑽を跳び越えたような洗練された叡智、その一端を売り捌くだけで湯水のように金が湧き出てくる!!」

「(我ながらめっちゃ嘘ついてて草) いやいや、エリザと国立研究所(ターミナル)の人たちあってこそっすよ。俺は時々天啓が来るだけで、それ以外はさっぱりだから」

「ああ……ほれぼれするほど美しい貸借対照表……見ているだけで飯が食える……。額縁に入れて飾ろうかな……」

「そんなに?」

「ああ~~~~~。あ~~~……いや………やっぱ燃やすか。【俗物的奇跡(インスタントプレイ)】」

「アッツッッツ!!! マジで燃やしやがったコイツ!! なんだお前、情緒どうなってんの!? 急に真顔になりやがって!!」

「こんなもん過去だ!! もう終わったことだ、こんなもので満足してしまったら人間としてのレベルが下がる!! さあクライヒハルト、国立研究所(ターミナル)へ行くぞ!!また次の、そして次の次の偉大なる発明が俺を待っている!!」

「やば~~~~。でも頭のおかしな女に引っ張られるの気持ちよくて良いな……」

 

 

 

 

 

『貸借対照表』

 消し炭。

 

 

 

 

 

「先代の婆がもう一回戻ってこねぇかなあ」

「お、エリザが愚痴言うのは珍しいな。どうした?」

「あー? いや、お前の知識のお陰で、やりたいことが多すぎてな……。婆が戻ってくりゃ単純労働が全部無くなるから、地獄からもっかい戻ってきてくれねえかなと思って……」

「あ、故人なのか……その、商国の先代英雄? って、どんな人だったんだ?」

「……一言でいえば、金の亡者だ。俺とはまた方向性が違ってな。投資と成長を尊ぶ俺とは違い、あの婆は金を溜める事が最上の歓びだった。金貨で満杯になった宝物庫の中で、うっとりして酒飲んでるような強欲婆。全く持って馬は合わねえが、それでも【異能】は有用だった」

「【異能】?」

「ああ。異能、【恒動転禍(パーペチュアル・プロセ)】。一度動かした物が永遠に動き続ける【異能】だ。ボールを投げりゃ地面と平行に動くし、歯車を回せば永遠に回る。これで水車やら荷車やら動かして随分荒稼ぎしてたんだが、俺が【英雄】になってすぐにポックリ逝っちまってな」

「……暗殺、か……」

「老衰だアホ。使い道次第じゃリラトゥに対抗でき得た【異能】なんだ、そんな勿体ねえ事するわけ……いや……どうかな……。少なくとも性格は全く反りが合わなかったしな……。お互い忌み嫌ってたし、老衰で逝かなきゃ婆の方から殺しに来てたかもな」

「やば」

「そのリスクを抱えてでも地獄から蘇って欲しいがな~。兎にも角にも人手(マンパワー)が足りない。もっともっとやりたい実験がたくさんあるんだが……」

「まあまあ。めっちゃ儲かってるじゃん、焦る事ないって」

「嫌だ~~~~。もっと儲けたい~~~。この世の金を全部思うがままにしたい~~~」

「【英雄】が駄々を捏ねている……見れたもんじゃ無いな。ターミナル行ってこよっと」

「あのカス共に100時間働くよう伝えてきてくれ~~~」

「やだよ。言ったらマジでやりそうだから余計嫌」

 

 

 

 

 

『密書』

 帝国の動きが活発化。【英雄】が政権を奪取する稀有な出来事。

 リリカ・リリラト・リラトゥが初代皇帝に即位。

 王国へ侵攻か?

 

 

 

 

 

「焼けたぞ、食え。これはタレじゃなく塩で行け」

「うす」

「それはまだひっくり返すな、裏返すのは一回だけだ。……次の肉焼いたら網変えるか」

「うす……まさか、エリザがバリバリの焼肉奉行とはね。あんまり意外じゃないけど」

「驚いたのはこっちだ。火加減さえ間違えなければ肉は必ず旨くなる。お前がウチの肉を『獣臭い』『パサパサ』だの言ってるのには呆れたね。炭と火を真に支配出来ていないからそうなる」

「……長く付き合うと、マジで愉快な奴だよな。エリザって」

「お前もな、未だに劇見ると大泣きするクライヒハルト卿」

 

 

 

 

 

『密書』

 王国から【英雄】が逃亡。 

 リラトゥによる侵攻を察知?

 

 

 

 

 

「ん」

「ん?」

「ん」

「……エリザ様、クライヒハルト様。今何を話したのです?」

「え。俺がクライヒハルトにお茶欲しいって言って」

「俺が紅茶で良い? って聞いて、良いって返されました」

「……なるほど。これは、聞いていた話とかなり違いますね」

「へーえ? そりゃ面白い。()()()()()()殿は、一体何を聞いてたんだ? そろそろ仲違いで破滅しそうな国の話とかか?」

「……いえ、失礼いたしました。流石は、世界に冠たる商国ですね……。【英雄】二人を抱え込んで、なお破綻せず収める懐の広さ。我らが皇帝も、その威容には感心を示しておられます」

「ああ、そりゃどうも。ま、あんまり無駄話はするなよ。めでたくも即位なされたお前のとこの皇帝の顔を立てて、わざわざ【英雄】が二人、()()()()()()の為に時間を割いてやってんだ。こっちも研究で忙しい、早く本題に入ってくれ」

「……ええ、もちろんです。ええ、ええ。今回、私たち帝国の方から、国立研究所(ターミナル)に出資させて頂けないかという話でして……詳しい出資条件は既に纏めてあります。こちらを」

「いいね、仕事が早い。どれどれ……ほう? ずいぶんこっちに有利な条件だな?」

「はい。……代わりに、次の戦争、()()()()()()()()()()()()()()()

「…………へえ。もうちょっと、詳しく聞かせてくれよ」

 

 

 

 

*1
スズメバチをミツバチが群れで包み込み、体温を上げて蒸し殺すこと

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