ぐだ男とコーポ・カルデア   作:クォーターシェル

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第2話 診察、釣り

「まあ、身体の不調なら取り敢えず彼の所かな?」

 

ダ・ヴィンチちゃんに相談した結果、俺はコーポ・カルデア1階で医院を開いているアスクレピオスさんの所に行く事になった。

 

「アスクレピオスさん、失礼します」

 

と扉を開けると、何やら難しい顔をしているアスクレピオスさんがいた。カルテか何かに書き込んでいるようだ。俺が来たことに気づくと、

 

「ああ、藤丸かどうした」

 

と言いながら椅子に座るように促してきた。俺が座ると、アスクレピオスさんは

 

「それで何の用事だ、風邪とかなら正直他の医者でも変わりないと思うが」

 

と仏頂面で言ってくる。この人は腕は確からしいのだが、無愛想で不機嫌に見えるためか、他の患者はあまり来ないらしい。

 

「いえ、実は……」

 

と俺はガネーシャさん部屋で見た幻覚?の事を説明した。するとアスクレピオスさんは呆れたような顔をして

 

「くだらん」

 

とだけ答えた。そして続ける。

 

「結論から言うと僕には分からないな」

 

ガネーシャさんと同じ回答だった。俺は思わず聞き返す。

 

「え?アスクレピオスさんでも分からないんですか?」

 

アスクレピオスさんは少しムッとした顔をして答える。

 

「お前はまさか非合法の薬物を服用してはいないだろう?」

 

非合法?そんな怪しいものは飲んだりしない。俺が首を横に振ると、

 

「そうだろうな。なら僕からそれに関して言うことはない。1つ付け加えるなら、織田信長をデフォルメしたような生物など存在するはずがない。だろう?」

 

とアスクレピオスさん。まあ、それはそうだ。あの変な生き物はガネーシャさんも存在を否定している。

 

「この話はこれで終わりだ。どうしてもと言うなら頓服薬を処方しておくが、飲むなら食後2時間以上空けてからにしろ。分かったな?」

 

アスクレピオスさんは不機嫌そうに言った。俺はお礼を言って医院を後にしようとすると、

 

「ちょっと待て、他に避妊薬を処方しておく後で泣きつかれても面倒だからな」

 

と言われた。えっ

 

「ひ、避妊薬ぅ!?」

 

素っ頓狂な声を上げる俺に対してアスクレピオスさんは、

 

「そうだ」

 

言った。いきなり避妊薬と言われても

 

「あの、恥ずかしながら俺、それを使用する相手がいないんですけど……」

 

と言う俺にアスクレピオスさんはため息をつきながら、

 

「転ばぬ先の杖と言うだろう。この先お前がこの薬の世話になる確率は極めて高い」

 

と言う。でも、俺は彼女なんていないしこの先できるかも分からない。そんな俺が……避妊薬を必要とするようなことになるのだろうか?

 

「お前が分かっていないだけだ。まあ、使うか使わないかは自由だがな」

 

アスクレピオスさんはそう言うと、俺に頓服薬と避妊薬を手渡してきた。俺は薬をポケットに入れると医院を後にした。

 

「あれ?立香さんじゃーん」

 

帰る途中、住人の1人である徐福さんが声を掛けてきた。

 

彼女は……、平時はアンニュイな雰囲気の女性なのだが、同じ住人の1人である虞美人さんにその……、凄く懐いておりその虞美人さんからは鬱陶しがられている面がある(虞美人さんも本気で嫌っているわけではないようだが)。

 

「お散歩ですか?奇遇ですねえ。私も今ちょっと散歩をしていた所なんですよ。あ、そうだ良かったら一緒に歩きません?」

 

俺は特に断る理由もなかったので、徐福さんと一緒に歩くことになった。暫く歩いていると、徐福さんが不意にこんな事を言ってきた。

 

「ところで立香さん?何か悩み事とかありません?」

 

悩み事?特に思い当たる事はないが……、まあ折角なので相談してみようと思う。俺がそう伝えると徐福さんは喜んだように頷きながら、

 

「本当ですかあ?良かったあ」

 

と言った。俺が最近見た幻覚?の話をかいつまんで話すと、徐福さんはちょっと引いたような顔をして、

 

「立香さんはもしかしてヤバい薬でもやっていらっしゃる?」

 

と言ってきた。俺は

 

「そんな訳ないでしょう。酒や煙草にも手をつけてませんよ」

 

と答える。徐福さんは、

 

「でーすーよーねー。まあノッブとか鳴く生き物とかいる訳ないし、ストレスでも溜まっているのでは?」

 

と言いつつ、辺りをキョロキョロと見回した。俺は徐福さんが何をしたいのか分からず、

 

「どうしたんですか?」

 

と徐福さんに尋ねると徐福さんは

 

「いえいえー別に何でもないんですよー」

 

と言って笑った。その後俺は徐福さんと一緒に帰った。

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

翌日、大学から帰ると住人の1人であるクーフーリンさんから電話がかかって来た。

 

ちなみにこのコーポ・カルデアにはクーフーリンと呼ばれる人は複数人いて、区別の為にそれぞれがランサー、オルタ、セタンタ等とつけて呼ばれることがある。実際に会えばそれぞれ区別はつくのだが、確かに字面にすると中々面倒だ。今回電話をかけて来たのはランサーのクーフーリンさんだ。

 

「おう、ちょっと頼みたいことがあるんだが今大丈夫か?」

 

とクーフーリンさんは尋ねてくる。俺は部屋を見回し、特に用事もない事を確認すると大丈夫だと答える。すると、クーフーリンさんは

 

「そうか、なら良かった。実は明日釣り好きの奴らで釣りに行こうって話になってよ。ボウズはどうだ?」

 

と言う。俺は少し考えてから、

 

「そうですね……。とりあえず俺も行きます」

 

と答えた。するとクーフーリンさんは嬉しそうに、

 

「よし決まりだな!それじゃ明日現地集合で頼むわ」

 

と言うと電話を切った。俺は携帯を置くとベッドに寝転がる。……釣りかあ。行ったことないから楽しみだなあ。そんな事を考えている内に眠くなり寝てしまった。

翌日、現地で待ち合わせた俺たちは船に乗って沖に出て釣りをしていたのだが……。

 

「釣れねえな……」

 

「そうですね……」

 

「あっ、釣れました!」

 

中々釣れない俺やクーフーリン's。それを尻目に太公望さんが小物だが釣り上げるのだった。

 

「流石は太公望の旦那!いい釣りっぷりじゃねえか!」

 

「こちらも負けてられねえな!」

 

「ええ、まあ釣り人として当然の事です」

 

と太公望さんを褒めるクーフーリン's 。俺はそんな光景を見ながら釣りをしていると、俺の竿に当たりが来た!俺は思いっきり竿を引くが中々手強い相手だ……。しばらくするとエサが無くなった釣り針が上がってきた。どうやら逃げられてしまったらしい。俺は仕方なく竿を上げる。

 

「ちっ、逃げられたか」

 

と呟く俺にランサーのクーフーリンさんは

 

「まあボウズよりかマシだろ!大物狙いで行こうぜ!」

 

と声を掛ける。その後しばらくして皆、釣果を報告し始めた。どうやらほぼ全員ボウズらしい。そんな中太公望さんは小魚を釣り上げていた。流石です……。俺も何か釣りたいなあ……。オルタのクーフーリンさんは俺に

 

「……まあ、こんな時もある」

 

と多分励ましてくれた。その横で、

 

「いいんですよ~。どうせ私は釣りに向いていない女なんですよー」

 

とぼやくカーマさん。彼女は所謂“同じような顔がいる”タイプの住人で、その中でも俺に絡んでくる数が多い気がする人だ。はて、彼女は釣り好きだと言っていただろうか?取り敢えず俺は励ましつつ、

 

「そんな事はないですよ」

 

と返すがカーマさんは不満げに竿を振った後、ゆっくりと立ち上がり

 

「……帰りましょうか?」

 

と言うのだった。そんなこんなで俺達は帰ることになった。

 

「今日は皆さんありがとうございました!」

 

「いいって事よ!」

 

「また釣りに行こうぜ!」

 

「次は大物を釣ってみせますぞー」

 

とクーフーリン'sや参加した住人達は口々に言ってくれる。俺は1人去って行くカーマさんを見つつ、帰り道についた。その夜、俺は夕飯を食べながらテレビを見ていた。無論コーポ・カルデアの食堂でだ。そこに、

 

「ハアイ、立香」

 

「こっ、こんばんは!」

 

と話しかける人達がいた。イシュタルさんとエレシュキガルさんだ。彼女たちは姉妹でゴルゴーン姉妹の双子には及ばないが髪の色を除けばかなりそっくりである。しかし、中身は大分違い、自由奔放といった性格のイシュタルさんと真面目気質なエレシュキガルさんといった構成だ。

 

「こんばんは。イシュタルさん、エレシュキガルさん。あなた達もこれから晩飯ですか?」

 

と俺は挨拶を返す。彼女達もどうやら、これから晩飯らしい。俺はそのままイシュタルさんとエレシュキガルさんと一緒に食事を取り始めた。

 

「そう言えば、今日は釣りに行ったみたいだけど釣果はどうだった?その顔を見るとダメだったみたいだけど」

 

と言うイシュタルさんに、

 

「こらイシュタル!そんなこと言わないの!立香、気を落とさなくてもよいのだわ」

 

と言うエレシュキガルさん。俺は苦笑しながら、

 

「いえ、いいんですよ。むしろイシュタルさんの言う通りですから」

 

と答える。すると今度はエレシュキガルさんが顔を曇らせながら、

 

「やっぱり釣りは難しいのかしら?」

 

と言うので俺は慌てて否定する。

 

「あっ!いえそんな事はないですよ!太公望さんなんてバンバン魚を釣ってましたし!」

 

俺の言葉に安心したのかエレシュキガルさんは胸を撫で下ろしながら、良かったと言った。そんな俺達のやり取りを見てイシュタルさんはニヤニヤ笑いながら

 

「あら、エレシュキガルも随分立香に気があるみたいねー。妹に先を越されてお姉ちゃんとしてはどう思う?」

 

と茶化す。エレシュキガルさんは顔を真っ赤にしながら反論した。

 

「なっ!ななな、何を言ってるのかしら!?私は別に……」

 

そんなやり取りをしつつ俺達は食事を終えた。するとイシュタルさんが

 

「そうそう、なんかあんたが変な生き物の幻覚を見たって噂になってるけど、なんか信長からUFOが生えた見た目だったっけ?」

 

と言い、エレシュキガルさんは

 

「私は、湯呑に浸かった信長って聞いたわ。大丈夫なの立香?」

 

と言ってくる。いつの間にか俺が変なものを見た事が噂になっているようだ……。しかも尾ひれがついてる……。俺が何と言おうか考えていると、

 

「精神的なことなら、1回私の元へ来るのはどうでしょうか?」

 

と、後ろから声がした。振り向くと、尼僧の格好をした女性が立っていた。

 

「貴女は……」

 

「こんばんは、立香さん。同じマンションに住むものとして、相談に乗りますよ?」

 

彼女の名前は殺生院キアラ、住人の1人で尼さんのような格好をしているが、職業はセラピストなのだと言う。そうだな、アスクレピオスさんの所では釈然としない診断だったし、精神的なことならキアラさんを頼るというのも……

其処まで考えを巡らした時、イシュタルさんとエレシュキガルさんが俺とキアラさんの間に割って入る。

 

「立香が貴女の所を利用することは永遠に無いわよ」

 

「そ、そうよ!立香は其処まで弱くは無いわ!」

 

と2人。キアラさんは

 

「あらあら、怖いお顔」

 

と言いながら笑うと、

 

「では、私はこれで。またお会いしましょうね」

 

と言って去っていった。俺はそんな彼女の後姿を見ながら呟くのだった。

 

「キアラさんかあ……。相談するのもいいかもしれないなあ……」

 

それを聞いたイシュタルさんとエレシュキガルさんは

 

「止めときなさい立香。女神の勘が告げてるのよ」

 

「そうなのだわ。悪い事は言わないわ」

 

と言ってくる。俺は

 

「別に悪い人じゃないですよ」

 

と言うとイシュタルさんとエレシュキガルさんは顔を見合わせ、ため息を着いた。そして、

 

「そうかもしれないわね……。じゃあ私は用事があるから」

 

と言って2人とも食堂から出て行ったのだった。その後俺も自室に戻った。大物とは言わないけど何か魚釣りたかったなぁ……。俺はベッドでそんな事を考えながら眠りについたのだった……。

 




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