今回で2年生開始編は終了です。
・発明王:『とまあ、こんな感じだ。わかったか?』
健太君が最後の文章を打ち込み、確認を入れた。それを僕ら他のメンバーが首肯する。
「ああ、大体わかった。ところで坂本……」
サインフレームから顔を上げた龍月君が雄二に話し掛ける。
「…………リュウ。コイツは雄二でいい」
ムッツリーニが龍月君の発言に訂正を入れる。
「……いいのか?」
雄二に確認を入れる龍月君。
「ああ、構わん。その代わりにと言うのもなんだが、俺もお前のことを龍月と呼んで良いか?」
対して雄二は返事のついでに質問を飛ばした。
「構わない。それでさっきのことについて俺と康太のなんだが…」
龍月君が軽く返事をして話を切り出した。
「実はDクラス戦の日に俺と康太はウチの会社の定例会議の日なんだ……。だから、俺達を戦力から外してくれねぇか?」
懇願とも言うべき龍月君の頼み。
龍月君はこの年齢で実家の財閥の子会社を経営しており、学業を加えて二足の草鞋状態であり、ムッツリーニはそんな龍月君を支える直属の秘書官なのだ。
まぁ、確かに龍月君の頼みは至極真っ当なものなのだ。だけど、彼等は今回の戦争において重要な戦力だ。雄二なら上手いこと言って参加させるはずだが……
「ああ、いいぞ」
コイツ、何のためらいもなく許可しやがった。
***
・武具師:『ちょ、ちょっと!雄二!?何ためらいも無く許可してんのさ!?2人共重要な戦力でしょ!?』
・ART:『そうだぜ!?ムッツリーニは保健体育最強。リュウなんか六大頂の1人だぜ!?そんなに簡単に手放すのは……』
・Yug: 『落ち着けお前ら。今回は目的があって許可しただけだ』
・武具師: 『も、目的?』
・Yug: 『そうだ。そうでなきゃ、主戦力を2人も出さねぇよ』
・道化師: 『それで?その目的ってのは?』
・Yug: 『ああ。さっきも言った通り今回のDクラス戦はここにいるメンバー以外のFクラスの連中に自信をつけさせるものだ。そんななかで最強クラスの2人を開始早々に前線に放り込んだらどうなると思う?』
・824:『……あっという間に戦争が終わっちゃう……?』
・Yug: 『その通りだ。それだと連中の自信にならん』
・みずき:『つまり、今回の戦争には私達みたいな高得点保有者は参加しないってことですか?』
・Yug:『いや、代表にトドメを刺すのはお前らみたいな高得点保有者にやってもらう。明久やアルトみたいなヤツは単教科は強いが複数の科目が展開する戦場で敵陣までの突破口を作って敵主力を打ち破って、代表を打ち取るだけの点数は持ってねぇだろ?』
・武具師:『まぁね……』
・ART:『否定はしねぇよ』
・373:『それで?アルや吉井、瑞希達高得点者以外のウチらはどの配置になるの?』
・Yug:『ああ、お前らの配置も考えてある。大体こんな感じだ』
対Dクラス戦Fクラス主力メンバー及び、他戦力の配置(総員65名)
・代表:坂本 雄二
・前線:明久、アルト、島田、巧、秀吉、他25名程
・追加戦力:姫路、明日香、他20名程
・後方支援兼代表護衛:木下妹、東谷妹
・伝令係:7名程度
・欠場:龍月、ムッツリーニ、健太
・Yug:『とまあ、こんな感じだ』
・373:『前線にえらく戦力が集中しているわね』
・TAC:『だな。これじゃ、代表の護衛すんのは初穂と楓の2人だけじゃねぇか』
・Yug:『そんなもん攻め込まれる前に片を付けりゃ良い。万が一に攻め込まれりゃ、俺達なら普通に迎撃可能だ』
・龍の月:『ハハッ、まさに攻撃は最大の防御だな』
・隠 密:『…………よく考える』
・824:『あ、あの、私なんかが護衛で良いの?』
・Yug:『んあ?ああ、お前ら2人の戦闘スタイルや魔法の能力を見ても問題ない』
・紅 葉:『まぁ、確かに私達は前線で戦うのは体力的にもキツいと思いますね』
・演劇男:『初穂なら大丈夫なのじゃ。自信を持つのじゃ』
・824:『う、うん……』
・発明王:『おい!雄二!なんで俺が欠場なんだ!?俺も参戦させろ!!』
・Yug:『あー、そのー、なんだ…』
・龍の月:『健太。雄二はお前の実力を認めている。だからこそお前を今回の闘いに出さないんだ』
・発明王:『そ、そうなのか?』
・龍の月:『ああ、そうだ。言うならばお前はFクラスのジョーカーだ』
・発明王:『フ、ハハハハ!ならば、今回は出ないでおいてやろう』
【プライベートフィルター起動します】
・Yug:『すまん、龍月。助かった』
・龍の月:『構わんよ。で、お前の本音は?』
・Yug:『あいつ、テンションで戦場突っ走りそうだったからなぁ…』
・龍の月:『雄二。お前の判断は間違っていない』
・隠 密:『…………苦労している』
【プライベートフィルター終了します】
***
「よし。じゃあ、今日はここまでだ。他のFクラス連中の鼓舞とDクラスへの宣戦布告は俺がやっておいてやろう」
サインフレームから顔を上げた雄二が獰猛な笑みを浮かべる。
「お前、宣戦布告のセオリー使ってストレス発散するつもりだろ」
FCSの予定表アプリに予定をタイプする龍月が吐息しながら呟く。
「ハハハハ。龍月、俺は代表としてお前らに危険な仕事をさせる訳にはいかないからこの仕事を引き受けると言っているんだ。それにストレス発散ではない。あくまで正当防衛なんだ」
そういう雄二は意地の悪そうな笑みを浮かべている。
「おい、雄二!憂さ晴らしなら俺も混ぜ……おっと!?」
アルトが雄二と共にDクラスに殴り込みもとい宣戦布告に行こうとしたアルトに横から美波が牽制のジャブを叩き込みそれをアルトが受け止める。
「アル。闘いたいならウチがいつでも相手になるって言っているでしょ」
膨れっ面の美波がアルトにジト目を送る。
「っと、そうだった。悪かったな、ミナ。俺にゃお前がいたわ」
半ば悪びれ半ば照れた表情を作ったアルトが美波に謝罪する。
「分かればよろしい。あと、今日も手合わせお願いね」
美波はそう言うとアルトに向けて右の拳を差し出す。
「おう、わかった」
アルトがその拳に自分の拳をぶつける。2人の友情の挨拶とも言うべき行為だ。
「時間取っちゃって悪かったわね、坂本。」
拳を離した美波が雄二に謝る。
「いや、構わない。それはそうと明久、アルト、明日香に巧。お前ら明日の午前中に補充試験受けとけよ。戦争が始まっていきなり補習室とか嫌だろ?」
雄二が弁当の残りをかき込みながら明久達に言う。
「はーい。りょーかいっと」
明久を始め呼ばれた面々は各々に返事を返す。
「確かに開始早々鉄人の面を拝むのはゴメンだな」
「同感だ」
横ではアルトと巧が苦笑交じりの表情で話している。
「じゃあ、明日は吉井君達のために私が特製のお弁当を作って来ますね!!」
突然瑞希が純粋な提案を出した。
「「「(ビクッ!?)」」」
その提案に対し露骨な反応を見せる明久、アルト、明日香。
「ひ、姫路さぁん!?あ、あんまり、む、ムチャは良くないよ…」
「な、なぁ、瑞希。おま、お前も補充やらにゃあかんにゃろ…」
「そ、そうだよ。ひ、姫路さんも補充試験の対策もた、大変で、でしょ?だから…」
3人が3人、各々に瑞希を心配しているように見えるが、明らかに動揺が浮き出ている。
・373:『ちょっと!ちょっと!アンタらどうして瑞希にお弁当を作らせようとしないのよ?』
美波が送信先から瑞希だけを外してチャットを開く。
・ART:「えー、あー、なんだ…」
・武具師:「えーっとだね…」
返すアルトと明久はしどろもどろこの上ない様子だ。
「あ、あの、明久君…なんなら、私も作ろうか…?」
初穂が上目遣いで尋ねるが
「ゴメン、初穂。今はそれどころじゃないんだ…!」
当の明久は取り付く島を与えない。
「初穂、お前の飯。俺の方から頼む」
落ち込んだ初穂を慰めるように巧が改めて依頼する。
「…!?…うん…♪」
依頼された初穂が嬉しそうに笑う。
初穂は大好きな巧に頼まれ、満面の笑顔を浮かべる。
「良いじゃないか。姫路が弁当作るぐら……」
「「「外野は黙ってろ!!」」」
雄二が瑞希の提案に乗ろうとするのを(瑞希以外の)幼なじみ3人組が黙らせる。その気迫はまるで一歩間違えれば死に直結するかしないかという凄絶なものだった。
・373:『ちょっと!ちょっと!さっきからアンタ達いったいどうしたってのよ!?』
美波がチャットを使って明久達に尋ねる。
・道化師:『あー、実は姫路さん。ちょっと訳ありでね…まともな料理が作れないんだ…』
明日香が言いよどみながらも説明する。
・演劇男:『つまり、どういうことなのじゃ?』
秀吉が再び意味を尋ねる。
「良いじゃないか。瑞希の飯はうま…ゴブルシャアァア!?」
「「「てめぇはもっと黙ってろ!!!!」」」
その間に健太が横から賛成の意を言おうとしたところでまたもや幼なじみ3人組が(物理的に)黙らせる。
・道化師:「つまり、一般人が姫路さんの飯を食ったら死ぬってこと。本人は知っているけど一応、本人には言わないでね」
・約全員:『『『早く言ってやれよ!!それは!!』』』
かなり重要なことをサラリとチャットで流す明日香。
そして、当然のごとく全員からのツッコミを受ける。
「でもでも、麻璃さんにもおいしいって言ってもらいましたよ!」
「あの人は危険だから!!いろんな意味で!!」
・TAC:『麻璃さんってのは誰だよ?』
巧がチャットを通じて尋ねる。
・ART:『うちのアパートの住人の1人だ。ちっとばかし味覚が変わっていてな…瑞希の料理を素で食えるある意味超人だ』
アルトの解説にて瑞希の料理が超人でなければ食べられない一品だと理解できなかった者はいないだろう。
「ミカさんもおいしいって言ってくれましたよ…?」
「それも危険に変わりねぇよ!!」
未だに続く幼なじみ同士の言い合い。
・紅葉:『ミカさんってのは誰なんですか?』
巧に続いて椛がチャットで尋ねる。
・道化師:『うちのアパートの大家さんで健太のお師匠さん。この人もさっきの麻璃さんと同じくいろんな意味で超人なんだ』
明日香の解説にて明日香達のアパートには超人が多いと思い始める。
・道化師:『ちなみに健太もお師匠さん譲りの味覚保持者なんだ…』
明日香の補足説明で先程殴り飛ばされ、今も虫のように震えている健太の災難の理由と明日香達のアパートは超人が多いと言う確証を得た。
「それに作る量も少しだし、明理紗ちゃんもおいしいって言ってくれました!」
「「「……っ!?」」」
その言葉を聞いた途端明久達3人が肩を震わせる。
そして、後ろでコソコソと会談を始める。
【プライベートフィルターを作動しました】
・ART:『おい、今の瑞希の話。嘘だと思うか?』
・道化師:『アリサは姫路さんの料理の恐怖を知っているし…嘘の可能性は低いと思う』
・武具師:『それに少なく作るって言っているからもし、嘘だとしても生き残れると思うよ』
・ART:『よし、多数決で決めるぞ…せーので“YES”か“NO”のボタンを押せ。……せーの』
・採決
YES:3 NO:0
・ART:『なんだ、みんな瑞希のこと信じているじゃねぇか』
・道化師:『まぁ、何だかんだ言って僕ら幼なじみだし』
・武具師:『姫路さんのことを信じたいしね』
・ART:『じゃあ、頼む方向で行くぞ…』
・武具師&道化師:『『う、うん……』』
【プライベートフィルターを終了します】
会談がまとまったところで3人が瑞希の方を向く。
「じゃあ、姫路さん。少量だけどお願いします」
明久が3人組を代表して頼む。
「はい!分かりました!頑張って作ります!!」
そう言った瑞希の笑顔はどこまでも輝いていて全員一瞬その笑顔に見入ってしまった。
「よ、よーし。今日はこの辺でお開きにするぞー」
「「「はーい」」」
正気に戻った雄二が纏めて全員を解散させた。
Fクラスの闘いが今、始まる。
次回からはDクラス戦に入ります!