ようこそごく普通の少年がいる教室へ   作:てつを

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運命の出会いは突然やってくる。その運命のためにも、できるだけ魅力的な自分であるべき。

ココ・シャネル (1883年8月19日-1971年1月10日)


運命の出会いは突然やってくる。その運命の為にも、常に魅力的な自分であるべき。

 

  櫛田と共に1-D教室に入ると、黒板には席順表であろう物が掲示されていた。

 

「私は結構前の席だね……伊藤君は?」

 

「俺は…あった、ここだ。」

 

「そっか。結構離れているね。残念。」

 

  私が掲示板にある自分の名を指差すと、櫛田は残念そうに肩を竦めた。あざとい、あざと可愛い。櫛田が席が隣なのが男だったらマジギレしそうな程だ。でも落ち込んでいる暇はない、俺の隣はどうだろうか…やった! 女子だ! 俺の席の隣であろう場所に座っている、黒髪ロングの女子生徒を見て内心ガッツポーズを決める。うん、美人だ、これは楽しみだぞ。

 

 席に鞄を置いて、早速読書中の隣の女子に話し掛けて見る。

 

「やぁ、初めまして、こんにちは。」

 

「‥‥‥」

 

 反応が無い。

 

「おーい、聞こえているかー。」

 

 手を振って此方の存在をアピールしても徹底無視、まるで俺の事をジャガイモ程度にしか見ていない様だ。でも流石に傷つくぞ。返事くらしても良いだろ。よし、かくなる上は……

 

「おい、おーい、おい!」

 

「‥‥何?」

 

 少し声を張って、本の前でしつこく手を振っていると、黒髪女子生徒は漸くこっちを向いてくれる。しかし不機嫌オーラ全開だ。軽い冗談のつもりだったけど、コレはやらない方が良かったかな。ちょっと申し訳ない。

 

「い、いやー。ゴメンゴメン、折角隣になったんだし挨拶をと思ってね。俺は伊藤義一。君は?」

 

「悪いけど、自己紹介なら拒否させて貰うわ。」

 

 なんじゃそりゃ、自己紹介を拒否なんて聞いた事ないぞ。

 

「これから色々お互いの事知らないと不便だろうし、名前くらい良いでしょ、ね?」

 

「はぁ……堀北鈴音よ。」

 

「そっか、よろしくね堀北。」

 

俺の反応にも無反応の堀北、流石に心閉ざしすぎだろ……でもまぁ人間誰しも少しづく心は開くモンだ。焦らずゆっくりと親睦を深めて口説いて行こう。しかし、この子も櫛田には及ばないかもしれないけど、スタイルいいな‥‥いい胸の膨らみだ。小さく見えるけど着やせするタイプだな、これはⅭ‥‥いや、Ⅾだな……

 

「ん?」

 

 すると俺の隣を誰かが通りすぎる、どうやら俺の後ろの席の生徒が来た様だ。でも後ろの席は男子か……ちょっと残念。チラリと後ろを見てどんな奴か確認してみる。ってアレ? この子ホワイトルーム生じゃない? 確か名前は綾小路清隆だっけ。

 

 ホワイトルーム…‥‥外部と隔離し、乳幼児の段階から徹底した英才教育を施す施設であり、世代ごとで子供を教育・競争させサンプルとすることで人口的な天才を作り出す事を目的とした、政府直属の人材育成機関の設立の為の極秘プロジェクト。俺も資料を見た程度なので詳しくは解らないが、学問学術のみならず武術や護身術、処世術など様々な科目が存在しているらしい。

 

 まぁでも天才を育成する施設と言えば聞こえは良いが、ドリフのコントと同等レベルで正直ツッコミどころ満載だ。

 

 まず生まれた瞬間から外の世界に隔離されており、娯楽も一切存在しない小さな世界で毎日のように厳しい訓練や試験を耐えるなぞ、完全に人権そのものを無視してるし、色々人道的に問題が有る。それに、満足の行く結果が出せなかったら、あとは施設から追い出されて自由になる事も無く、子供なのに『脱落』の烙印を押され、生涯データを取られる日々。去年までの俺なら理由さえあれば計画を完全に凍結させている所だ。

 

 子供は本来のびのびと行き、無邪気なのが普通。それが世間一般で当たり前なのだ。それを真正面から否定し、小難しい論文を読ませたり、くだらない事をさせるホワイトルーム計画は、俺からすれば正直下らなくて反吐が出る、それほどバカみたいな計画だ。まったく、こんな計画を受理するなんて、総理も何を考えているのだか。

 

 でもホワイトルームの奴が何でここに居るんだ? まぁプロジェクトは絶賛停止中の筈だし、コイツ脱走でもしたのか? まぁ別に政府に報告する気も無いし、連れ戻す気も無いけど。

 

「やあ」

 

「ん‥‥ああ。」

 

 この際だし振り明けって声を掛けて見る。でもホワイトルーム生とここで会ったのも、きっと何かの縁だ。ちょっと挨拶してやろう。でもコイツ俺の事二度見しなかったか? ‥‥いや、気のせいか。

 

「後ろの席だな。俺は伊藤一義、ご近所同士宜しく頼むよ。」

 

「ああ、オレは綾小路清隆。よろしくな。」

 

 『知ってるよ』と内心ほくそ笑む。けどこいつ、俺の名前聞いた時に顔がピクっと動いた気がするが、こいつ緊張しているのか? まぁずっと隔離された空間から解放されて、慣れない外界の人物と話すのだから無理ないか。

 

 そんな事を考えていたら、心なしか教室に居る生徒の数が増えて来た。どうやらそろそろ入学式も近いらしい。すると、黒いスーツを着た女性教師が入って来た。どうやらこのクラスの担任の様だ。

 

「えー新入生諸君。私はDクラスを担当することになった茶柱佐枝だ。普段は日本史を担当している。この学校には学年ごとのクラス替えは存在しない。卒業までの3年間、私が担任としてお前たち全員と学ぶことになると思う、よろしく。今から一時間後に入学式が体育館で行われるが、その前にこの学校のルールについて書かれた資料を配らせてもらう。以前入学案内と一緒に配布してあるがな。」

 

 茶柱佐枝。どうやらこの女子が私達のクラスの担任らしい。しかしこの先生もかなり良い乳しとる。かなりのボインだ。隣の堀北から妙に痛い視線を感じるが、きっと気のせいだろう。遠目からなら解らないだろうから全力でその特盛パイをガン見してやる。

 

「施設内では機械にこのカードを通すか、提示することで使用可能だ。使い方はシンプルだから迷うことはないだろう。それからポイントは毎月1日に自動的に振り込まれることになっている。お前たち全員に平等に10万ポイントが既に支給されているはずだ。なお、1ポイントにつき1円の価値がある。これ以上の説明は不要だろう。」

 

 端末に表示された10万という数値にクラスのほぼ全員が喜びの声を上げる。ほう、流石国立の学校と言った所か。随分リッチな学校と思ったがまさか10万とは。でもこれって国の税金から出た者だろ? 大人たちが苦労して支払った税金を子供たちの小遣いにするのは、少しいたたまれない気持ちになる。まぁ俺大人じゃ無いし、税金納めてないけど。

 

 「ポイントの支給額が多いことに驚いたか? この学校は実力で生徒を測る。入学を果たしたお前たちにはそれだけの価値と可能性があると言うことだ。だが無理矢理カツアゲするような真似だけはするなよ。学校はいじめ問題にだけは敏感だからな。こちらからは以上だ、質問があれば受け付けるが何かあるか?」

 

  最後の確認事項として、質問を受け付ける茶柱先生。まぁ教室に10個近くある妙に多い監視カメラの事とかは後で聞けばいいや。

 

「それでは君達のこれからの学園生活に期待する。」

 

 茶柱先生はそう説明を締めると速足に教室を去ってしまった。早く女の子と遊びたい、綺麗でナイスバディな美少女を彼女にしたい。そんな事を考えつつ、周りの女子達を見渡す。あの子も、このこも、皆可愛いな。どれも上玉揃いだ。こりゃ全員口説けば夢にまで見た酒池肉林モテモテ男の夢も現実になるんじゃ?

 

 そんな煩悩に塗れた事を考えていると、まるでそれを止める様に一人の男子生徒が立ち上がった。

 

「みんな色々思う所も有るだろうけど、折角同じクラスになったんだ。これから自己紹介をしないかい? 僕は平田洋介。基本的に運動が好きでサッカー部に入ろうと思ってるよ。これから宜しく」

 

 平田洋介、そう名乗った男子生徒はそう爽やかな笑顔を浮かべてそう言った。クソっ、この野郎顔が良いな。その証拠に周りの女子達の顔が緩い。名前覚えてやーらない。野郎だし覚えなくていいもんね。

 

 その後も活発そうな者は恙なく自己紹介を済ませ、あまり乗り気ではなさそうな奴も小さな声だが何とかやり遂げる様な姿が見られた。今思ったけどコレって同調圧力染みた何かを感じない? もしかしてコレ止めた方が良かったかな?

 

 バスで出逢った櫛田桔梗、少し気弱そうでこう言った場が苦手そうな井の頭心、地味目だけどグラドル並みに胸が大きい佐倉愛理、帰国子女な王美雨、サバサバ系だけど胸に特大ミサイルを常備している長谷部波瑠加、お嬢様系で清楚系美少女な松下千秋、イケイケギャル系な軽井沢恵、派手なイメージを感じる佐藤麻耶、気が強そうな篠原さつき等の可愛い子ちゃんが次々と自己紹介を進めていく。女子の名前は幾らでも覚えられる。途中赤髪の男子生徒が何か叫んで出て行ったけど、特に気にしなくていいや、野郎だし。

 

「それじゃあ次、お願いできるかな?」

 

 すると教室中の生徒達が皆俺に注目している事に気付く。おお、そっか、俺の番だったか。

 

「はい‥‥伊藤義一です。趣味は格闘技鑑賞です。皆さんと(特に女子と)仲良くなりたいので、どうぞ宜しくお願い致します。」

 

 久しぶりに人前で話したが、どうやら特に問題無かったようだ。無事に話し終える事ができた。すると何処からか女子の黄色い声が上がる。

 

「結構カッコよくない?」 

 

「うん、スタイルも良いしモデルさんみたい。」

 

 女子達が盛り上がっている光景を見ると、どうにもまんざらでもない。でも良い感じだ。これなら女子にモテモテで、彼女を片手に学園生活を満喫するのも夢ではないだろう。長い事抑圧されていたんだ、この3年間思いっきりはっちゃけてやる。

 

 「それじゃあ、次の人お願い出来るかい?」

 

 次は私の後ろの席の者の番らしい。後ろの席の男子生徒は気怠そうに立ち上がると、周りを見渡し、口を開き始めた。

 

「えー…えっと、綾小路清隆です。その、えー‥‥‥得意な事は特には有りませんが、皆と仲良くなれる様に頑張りますので…えー、よろしくお願いします。」

 

 瞬間空気が凍るほどの沈黙。成る程、色々処世術とか学ぶホワイトルームでも実践経験がないとこうなるのか。

 

 「よろしくね、綾小路君。仲良くしたいのは僕達も同じだ。一緒に頑張ろう。」 

 

 平田は状況を察したのか明るい笑顔でそう言った。彼に倣ってか、周りの生徒達も便乗する様にパラパラと拍手が起こる、おそらく彼の失敗を見抜いてのフォローだろう。

 

『まもなく入学式が始まります。新入生は―――』

 

 すると校内放送が教室に響いてくる。色々これからのクラスメイトと話したいけど、今はここまでの様だ。

 

 さて、これから入学式か…‥‥堅苦しい挨拶は聞き流して、隙あらばちょっと寝よ。

 

 そんな不真面目な事を考えながら、俺達は教室を出て、入学式の舞台である体育館へと向かうのだった。

 




数か月前に書いたシティーハンターの小説を参考にしているので、デジャブを感じでもご愛嬌。
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