陰の実力者に出会うのは間違っているだろうか   作:加佐麻央

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第10話 怪物祭②

 

「えへへ ようやくナツメ・カフカ先生の新作とサインを貰えたよ〜。」

 

「それって今流行りの小説家の?」

 

「はい 彼女が執筆する本はどれも魅力的で、一度読むとその世界観に引き込まれていきます。世界で活躍する同胞の一人です。」

 

アマゾネスとエルフの少女二人が先ほど本屋で買った本と記されているサインを眺めながら、思い出す。

 

ロキ・ファミリアの有名な女性冒険者。

大切断(アマゾン)》》ティオナ・ヒリュテ

怒蛇(ヨルムガンド)》ティオネ・ヒリュテ

千の妖精(サウザンド・エルフ)》レフィーヤ・ウィリディス

 

彼女たちは今年も怪物祭を楽しんで回っているが、今年はあの人気小説家『ナツメ・カフカ』がオラリオにやってくると聞きつけ、サイン会に並んでいたのだった。

 

特に無類の英雄譚好きのティオナは彼女の書く本で冒険活劇物が好みで毎度新作を楽しみにしている。

レフィーヤはティオナに勧められ、彼女の本を目にしたとき、虜になり、そして彼女がスタイル抜群な銀髪エルフであることも相まって、熱烈なファンとなった。

ティオネは読書はあまりしないが、愛しの団長を振り向かせるために彼女の恋愛小説で学ぼうと買ってみようかと検討中だ。

他のロキ・ファミリアの女性団員たちもナツメ・カフカシリーズの愛読者が多く、女子会で彼女の執筆した本の感想について語り合うことがよくあるのである。

 

「はぁ~ナツメ先生、綺麗だったな~」

 

「ちょっとレフィーヤ、あんたアイズのことを慕ったのではないの?浮気じゃないの?」

 

「いいえ違います!アイズさんは冒険者として、ナツメ先生は小説家として慕ってます。断じて浮気ではありません!!」

 

レフィーヤの力説にティオネはたじろぐ。

 

「ナツメ先生は、どうやったらあんなにデカくなるんだろう?」

 

ティオナは自分の平らな胸を見て、真剣に考える。

 

 

 

 

「あっティオナ!」

 

後ろからアマゾネスの少女を呼ぶ声がする。

 

「アーディ!」

 

呼んだのは青髪の少女らしい快活な女性であった。

 

「そうだよ!ガネーシャ・ファミリア所属の品行方正で人懐こくてシャクティお姉ちゃんの妹でレベル5のアーディ・ヴァルマだよ!じゃじゃーん!」

 

「一体誰に説明しているのですかあなたは...」

 

簡潔な自己紹介をするアーディに呆れるレフィーヤ。

 

ティオナと手を合わせ、お互い周りながら踊っていく。

 

ガネーシャ・ファミリアのアーディ・ヴァルマ。

都市の治安を守る大派閥で、今開催している怪物祭の主催側である。

 

アーディも先ほど怪物祭の運営の仕事を行っていて、今は休憩中でちょうど大ファンであるナツメ・カフカのサイン会へ足を運んだところであった。

 

アーディとティオナは最初アルゴノゥト好きから始まり、数々の英雄譚を語り合うファミリアの垣根を超えたオタ友である。

 

「ティオナもナツメ先生のサイン会行った?私もさっき行ったばかりなんだー」

 

「うん行ったよー。」

 

「彼女の新作はもう見たー?」

 

「見た見た。前作からすごく楽しみにしてたんだー」

 

ティオナとアーディはナツメ先生作品を語り合う二人だけの世界に入った。

 

「そういえばサイン会が終わった後、ナツメ先生が男の人と歩いていくのを見かけたなぁ」

 

「!?」

 

「へぇ彼氏かな」

 

「そそそそれは本当ですか!?」

 

「黒髪の男の子と一緒に歩いていたところを見たけど、付き合っているのかな?」

 

「ナツメ先生に彼氏なんて有り得ない。ありえない。アリエナイ。」

 

レフィーヤは憧れが穢されたように感じ、精神が壊れた。

 

ティオナとアーディはあくまでナツメ先生の作品が好きで、彼女の交流関係についてどうこう言うつもりは無い。

だが、レフィーヤは一度憧れた相手の色恋沙汰には敏感で、男の気配が感じるだけでも許せないアイドル恋愛否定派である。

 

「そうだ今度皆一緒にミツゴシに行かない?アイズちゃんも誘ってさぁ」

 

「あそこってオラリオには無い珍しい品々があるって聞いたけど本当かな?」

 

「確かロキはあそこで買ったウイスキーボンボンというお菓子に夢中だっけ?」

 

「マグロナルドも有名だよ。新作メニューのジャガ丸くんバーガーが今ヒットしてるんだって。アイズも毎日通っているんだよ。」

 

三人はメンタルブレイク中のレフィーヤを落ち着かせるべく話題を変えた。

 

 

 

 

 

「大変だ。モンスターが逃げ出したぞ!」

 

市民が騒ぎ出した。

 

「どういうこと!?ガネーシャの調教師がミスをして、取り逃がしたって言うの?」

 

「分からない。でも私たちのせいならこうしちゃいられない!急いで襲われている人たちを助けなきゃ!」

 

「私も手伝うよ。アーディ。」

 

「困った時はお互い様です。」

 

ガネーシャ・ファミリアに貸し借りを作ることは考えずに一人の友達を助けるために動く少女たち。

 

 

すると地震が起きたように地面が揺れたのだ

 

同時に建物が吹き飛んで、何かが飛び出しきた。

______________________________________________

 

 

 

忘れた財布を届けに怪物祭に出かけたシルを探すため、シドと別行動をしたベルはヘスティア様と出会い、つい流れ的に怪物祭を一緒に回ることになった。

 

その最中、ガネーシャ・ファミリアが管理している檻からシルバーバックが脱走し、ベルたちをターゲットにし追い回されていた。

 

ベル達も最初は逃げの一択を取り、ダイダロス通りまで疾走した。

 

シルバーバックは11階層に出現する白毛の大猿でミノタウロスと同じく、駆け出しの冒険者が敵う相手では無い。

駆け出しが敵わないからこそ、倒すところを見られたら困る。

人気が少ないエリアまで逃げ、本気で戦える状況を作りたかったのだ。

 

「待ってくれ。ベル君。君に渡したいものがあるんだ。」

 

「神様?」

 

神様は背中に結んで背負っていた布の包みを解いて、一本の黒い短刀と黒いロングソードを差し出した。

 

「ファミリア結成祝いにベル君とシド君に武器をヘファイストスに作ってもらったんだ。本当は二人揃った場所で贈るつもりだったんだけど、こんな状況じゃ仕方ない。」

 

スライムボディスーツを所持している僕らにとって、どんな優れた武器だろうが無用の長物になってしまう気がするから武装は必要以上に購入はしない。

 

どうやら神様は数日前、ヘファイストス様に頼んだという。

ヘファイストス様は鍛冶系ファミリアの主神の中ではかなり有名な神様だ。

彼女直々に作ってもらえたなんて、そう安くはできないだろう。

僕たちのような最近冒険者なりたての駆け出しにそこまでしてくれるなんてありえない。

 

 

「僕は君たちがなんで陰の実力者にそこまでなりたいのかは分からない。」

 

 

「だけど、どんな夢だろうが、必死に頑張る男の子の背中を押したくなるのが親心だ。」

 

 

「僕が力になれるのはこれぐらいだ。」

 

 

「神様…」

 

ヘスティア様はよほどの対価を支払ったんだろう。

 

だけど、神様が僕たちのためにここまでしてくれたんだ。

その力を存分に振るおう。

 

 

「神様がくれたこの武器ありがたく使わせてもらいます。」

 

ベルは黒い短刀を取る。

 

ベルは駆けだす

そして、人気の無い大広場で立ち止まりベルは周囲を確認し、黒い短刀を構え、

シルバーバックの殴打による攻撃を紙一重で避け、懐を侵略する。

精神力を練り込み、胸元を一気に切り裂く。

 

致命傷を受けたシルバーバックは灰になる。

 

「すごいぜ、ベル君。」

 

ヘスティアはついこの間駆け出しだったベルが強そうなモンスターを一撃で倒すのを見て、称賛する。

 

「神様がくれたこのナイフのおかげです。」

 

普段ベルはスライムボディスーツとスライムソードという優れていた武器以外に駆け出しが使う精神力を魔力が流しにくい鉄のナイフを使っていてる。

 

無論冒険稼業で使う武器だから下手なものは使用しない。

 

それ故武器の性能にも目利きは多少ある。

 

でも、このナイフは他の武器とは違う何かがある。

勿論神様がくれたから贔屓目見ているわけじゃない。

 

まるで武器自体自分の血肉と一体化したような感覚だった。

 

「(やはりこの武器はスライムボディスーツと同じく精神力や魔力を流しやすい素材で作られている。)」

 

 

ヘスティアナイフは魔力が通しやすいミスリルとヘスティアの髪と血を材料に作られた特殊な武器だ。

 

魔力が流しやすいスライムボディスーツと同じ性質を持っているんだ。

 

まさか神様はこれを見越して、僕にプレゼントしたのか。

 

 

 

 

僕が考えている矢先、

 

地面から触手が飛び出て、その先端が神様に向けられる。

 

僕は咄嗟に神様を抱え、回避する。

 

「今度は何だい!?」

 

「分かりません。でもまだ安全じゃありません。」

 

触手の先端が開いて花のような形を見せる。花の中に生物の口が見える奇怪なモンスターだ。

 

その数一体から二体、三体、、数十体、数百体まで増えてくる。

 

 

「(まずいな。こっちは神様を抱えている。護りながら戦わなければいけない。)」

 

さっきのシルバーバックとは違って、動きのスピードから強いモンスターだと分かる。

 

ベル一人だけならこの程度モンスター群は造作も無いが、今は神様がそばにいる。

 

下手に離れないのだ。

 

無数の花の化け物の群れはベル達に向かって、一斉に襲い掛かった。

 

ベルはスライムボディスーツを瞬時に展開、壁を作り、攻撃を防いだ。

そして、黒いスライムを刃物の鞭に変え、花のモンスターを細切れにする。

数十体灰に変えた時、さらに花のモンスターが増えてきた。

 

スライムを球状に変形させ、魔力をこめ、モンスターの集団に放つ。

球体は爆発して、モンスターの集団は木っ端微塵になる。

またさらにモンスターが増えた来た。

 

「(これじゃキリが無いな。)」

 

ベルにはシドから教わったモンスターの群れの根本ごと一網打尽にできる必殺技かあるが、ダイダロス通りの区画ごと周囲の人達を巻き込んで破壊することになるので可能なら使いたくない。

 

どう切り抜けるか考えたときベルはある魔力を感知した。

 

その数,100以上。

 

ベル達と花のモンスターを囲む屋上の上に数百人規模の集団が立っている。

 

全員。外套で覆われていて、顔が判断しにくい。だが、背の低さからして、全員女性だ。

 

「アルバスを援護せよ!!」

 

彼女らはリーダーの号令の合図とともにモンスターを強襲する。

一人一人練度が高く、花のモンスターの猛攻を物ともせず、抑えつけている。

だが、それでもモンスターの物量差は覆れないので、せいぜいが時間稼ぎが関の山である。

 

「わわわっ今度は一体何なんだ!?」

 

「神様大丈夫です。味方です。」

 

するとリーダーらしき女性はベルの前に降りた。

 

フードを脱ぎ、見慣れた金髪長髪エルフ耳が露わになる。

 

「ベータからダイダロス通りで白髪の少年とツインテールの女神がモンスターに追い回されて逃げたという情報を聞きつけて来たけど正解みたいだったわね。」

 

「久しぶり。アルバス。」

 

「いや助かったよ アルファ。」

 

二人は再会して、気安い態度を取る。

アルファたちシャドウガーデンは僕たちが田舎を出る前にオラリオに一足先行し、いくつかの活動拠点を

設立した。こうして事件が起きたらすぐ組織を動かせるぐらいはできる。

 

「ベル君、この金髪エルフ君たちは一体何者なんだい?それにアルバスって何だい?」

 

「神様。彼女たちについては後で詳しく説明します。」

 

「ふふ。良い神様に出会えたみたいで何よりね。」

 

ヘスティアは突然の情報量に処理できず、ベルはどうしたものかと頭を抱え、そんな二人を見たアルファは微笑む。

 

「ここ数日、色々調査した結果、間違いないわ。」

 

 

「今回の事件はディアボロス教団が関与しているわ。」

 

 

_____________________________

 

 

「ティオナさん…ティオネさん…アーディさん…」

 

武器を持たず、苦戦しているアマゾネス姉妹と後方で逃げ遅れた子供をモンスターの群れから守っている憲兵の女性の姿か見える。

 

山吹髪のエルフが血まみれで倒れている。今も意識が薄れそうになる。

 

 

目の前にいるのは花の奇怪なモンスターの群れに()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

中層の階層主のゴライアスだろうか。でも怪物祭にゴライアスを出すなんて聞いた事ないし、あんな巨体を中層から地上までどうやって運ぶのか。

 

だけど私たちが今まで戦ってきたゴライアスとは明らかに強さが違った。

推定レベル4の戦闘力を持つはずなのにレベル5三人の冒険者が倒せない。

強化種だろうか?

 

当のゴライアスらしき巨人は人間を積極的に襲う気配が無く、何か苦しそうに見えた。

 

まるで人間のもがき苦しむ仕草に見えた。

 

 

 

 

 

 

アポロン・ファミリアと戦争遊戯することになったら助っ人は誰にするか

  • ジミナ・セーネン
  • ジョン・スミス
  • スタイリッシュ・盗賊・スレイヤー
  • アルフィア
  • リュー・リオン
  • 七陰の誰か一人
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