昼間にオラリオで脱走したモンスターを全て駆逐し、ガネーシャ・ファミリアやギルドが事後処理に追われた。
人的被害は軽微だが、被害規模が広かったので、その対応に中には深夜残業する者まで現れた。
「食人花だけじゃなく、あの悪魔憑きもやられたのですか」
真夜中のダイダロス通りのとある区画。その薄暗いかび臭い地下通路に一人の祭祀服を着た男の声が反響する。
その他に大勢の集団がつっ立っている。
ヒューマン、ドワーフ、獣人、エルフなど種族は多種多様だが、共通しているのは全員白目を剥き、口に噛まされた拘束具から涎や吐息など垂れさせ、まるで薬物漬けにされたような精神状態でいることだ。
リーダー格らしき男一人除けば
アパテー・ファミリア所属のバスラム。
闇派閥において過激派の武闘派派閥でアレクト・ファミリアと並び恐れられていた。
七年前の大抗争時も主戦力としてオラリオの街を民を蹂躙したが、オラリオを守るべく立ち上がった複数のファミリアによって阻止・鎮圧された。
特にフレイヤ・ファミリアが最も貢献していて、アパテー・ファミリアは小人族四人の冒険者
大多数の戦力を失いながらも当時のバスラムはなんとか逃れることができ、他の闇派閥の主力メンバーも同様に死を偽装して、戦線離脱ができた。
今現在ここにいる集団は数少ない生き残りと新規に補充した団員である。
大抗争は主力メンバーが逃げたことで瓦解し、実質闇派閥の敗北となった。
今に至るまで闇派閥はもう一度オラリオを恐怖に染めるべく、水面下で力を蓄えた。
二つ収穫があった。
一つ目はエニュオと名乗る神と思しき者からの支援。
今もオラリオを襲っている花のモンスターのの存在は闇派閥の戦力増大に寄与した。
第一級冒険者でも苦戦する戦闘スペックに魔力に反応して、襲い掛かる習性から魔導士殺しの敵ともいえる。
プラント設備で量産も可能だ。
他にも強力なモンスターも数々戦力として保有している。
ここまでの力を手に入れたのはエニュオからの支援があってこそだ。
二つ目はディアボロス教団と名乗る組織からの支援。
噂で聞いた事がある。昔から闇派閥には巨大な組織が隠れ蓑にしていて、微細ながら援助していると。
その組織は闇の中に潜んでいて、表の人間には知ることができない。
それはゼウスやヘラでさえだ。
知ることができるのはごく一部の邪神とその邪神から伝わって、存在を知ることができた闇派閥幹部格の人間くらいだ。
教団は闇派閥が大抗争で敗北を喫した際、密に立て直しを支持し、早い段階で闇派閥を復活させることができた。
ギルド内部にはディアボロス教団の手の者が入り込んでおり、巧妙な情報操作によって、教団、闇派閥の有利な状況を作りだせた。
闇派閥が存続しているのも教団の力があってこそだ。
対価として教団は闇派閥を下部組織として一方的に指令を出す立場を得た。
闇派閥側も生殺与奪権を握られたも同然だと理解し、嫌々ながらも従う。
例えば教団から実験として、数々のサンプルが送られて、闇派閥はそれによって、自らの目的を果たす。そして、そのデータを教団に提供する。
エニュオも確かに闇派閥を支援しているが、貢献度の大きさでいえばディアボロス教団に傾いているので、どうしてもそっちの意向を優先的にくみ取ってしまう。
勿論エニュオにも配慮はしている。
エニュオとディアボロス教団の間の関係については関知せずだが。
今回の怪物祭の襲撃はその実験の一端で、担当がアパテー・ファミリアのバスラムだった。
食人花と教団から送られた悪魔憑きの成れの果ての異形の怪物が戦闘においてどれだけ役に立つのかの検証をするためだ。
それだけじゃなく、アパテー・ファミリアには大抗争時、派閥独自の教理もとい研究成果として、所属している戦闘員に精霊を注入した。
精霊の力は絶大で、身体能力の超強化や魔力の上昇、自然治癒といった能力の向上させていった。
ここにいる団員全員は精霊を注入されており、精霊兵と呼ばれている。
中にはかつてゼウスとヘラと抗争した経歴のあるオシリス・ファミリアの第二級冒険者が混ざっており、注入された精霊の力も合わさって、第一級冒険者に匹敵する戦力になった。
前の大抗争で精霊兵を大量に失ったのは大きな痛手だったが、それから研究と素材集めに専念し、ディアボロス教団の援助もあって、大抗争の時以上の強力な戦力を獲得することができた。
そして、積み上げてきた研究成果をもとにさらなる戦力増大実験のために教団から送られた異形の怪物に精霊の注入を試みた。
精霊を注入された異形の怪物がの体が膨張していき、巨人のサイズまで、ゴライアス級のサイズまで巨大化した。異物が馴染まず、全身を駆け巡る痛みから苦しみ出し、バスラムの制御下を離れて、アジトを破り、外へ暴れ出したのだ。
オラリオの建物を破壊しながら、進み、最終的にはロキ・ファミリアと交戦した。
だが、ロキ・ファミリアを倒すに至らず、力尽きてしまったようだ。
バスラム個人としては教団の研究設備は充実しているので、自身の独自研究を進めるのに必要だと悟り、喜々として受け入れた。
恩を売って、中枢に近づいて、教団の研究成果を奪い取れればと野心を秘めている。
花のモンスターと実験サンプルの異形の怪物は失われたが、それ以上に有意義なデータが取れた。
今後、花のモンスターと精霊兵、さらに精霊を注入した悪魔憑きを同時投入すればロキ・ファミリアといえど甚大な被害を被るのは間違いない。
教団が納得できる範囲の成果だろう。
今回の戦闘実験である程度のデータは得たので一旦引き上げようとしたとき、足音が聞こえる。
「何者ですか!?」
バスラムが背後を向いた視線の先にいたのは全身が黒い外套に覆われた男である。顔はフードで隠されて見えない。
「我が名はシャドウ。陰に潜み,陰を狩る者。」
だが、その装いには心当たりがある。
「シャドウ?…いや!?…まさか!?」
バスラムは最近教団の支部、関連組織が謎の黒い装いをした集団に壊滅される知らせを思い出した。
その集団の一人か。
まさかオラリオに花のモンスターと暴走した悪魔憑きを解き放ったのを突き止めて、私を始末しに来たのか。
もしや悪魔憑きに精霊を注入する実験を潰しにきたのか
だが好都合だ。
教団に歯向かう者の首を一人討ち取れるのは、恩を売るにはちょうどいい。
「貴方の首をラウンズへの手土産にしてもらいましょう。やりなさい。」
バスラムは正気を失った暴徒に指示をだし、凶刃がシャドウの首元を狙う。
首が飛ぶ。
胴体から血が噴き出し、転がった首は侵入者のものではなく、精霊兵のものだった。
その結果を知ったバスラムは余裕を失い、取り乱す。
シャドウは不適な笑みを見せる。
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シドはベータとデート中、複数のモンスターが脱走し、街中がパニックになっている中、途中でベル、アルファ、ヘスティアと合流し、ヘスティアがシドに非常事態としてロングソードを渡した。
シドはありがたく受け取り、また、単独で行動した。
シドはまず強そうな花のモンスターとの接戦を避けて、上層にいる弱いモンスターと戦って、逃げ遅れた市民を身を挺して守るモブ冒険者に徹していた。
ガネーシャ・ファミリアからの援軍が来るまでの間時間稼ぎをしていた。
ガネーシャの憲兵からお礼の言葉を貰ったが、シドはモンスターの群れを一人で倒せなかったこともあって、謙遜な態度で返した。
ベル達が強力なモンスターに対応している中、シドはモンスターパニックで混乱する中のモブ冒険者ムーブに勤しんでいた。
そして、ようやくロキ・ファミリアらの尽力により事態は収束していた。
事の始まりはベルとアルファがロキ・ファミリアのアイズ・ヴァレンシュタインを足止めのために交戦したことを知る。
「(ずるいぞ!ベル!一人だけ陰の実力者ムーブをしているなんて。)」
都市最強の派閥のエースが突如謎の実力者に阻まれて、その実力差を思い知らされる展開はシドは想像し、いつかやってみたいと思ってた。だけどそれをベルに先取りされた。というか僕も誘って欲しかった。
あのとき急いで悪魔憑きを救うので、シドを呼ぶ時間に余裕が無かったこともある。
ベル本人は不可抗力で仕方なかったと弁明しているが、それでもシドの機嫌は治らなかった。
シドは不満を解消するべく陰の実力者として介入できそうなイベントを一人で探していた。
まず例の暴れ回った悪魔憑きだった巨人が進んだ方向に残った魔力の残滓を辿りながらダイダロス通り方面の地下水路に入り、複雑怪奇な迷路を歩きながら人の気配がする方へ向かった。
その奥には大勢の生気が感じられない男達とその中に一際目立つ祭祀服の男を目にした。
大方、冒険者崩れの集団がモンスター脱走で疲弊した夜のオラリオを攻めるつもりだろう。
それなら陰の実力者ムーブするのに丁度いいだろう。
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「馬鹿な!精霊兵をいとも簡単に倒すなんて!オシリス・ファミリアの構成員だぞ!そこらの冒険者が敵う相手では無い!」
バスラムはあり得ないとばかり狼狽える。
オシリス・ファミリアはゼウスとヘラに次いで三番手の実力を持つファミリア。
並みの実力では勝てはしない。
フレイヤ・ファミリアのあの忌々しい小人族四兄弟はともかくこのどこかの馬の骨か分からない男にやられるなんて信じられない。
「いや先ほどはまぐれだ。今度はそうかいかん。」
冷静に気を取り直したバスラムは三人の精霊兵を動かし、シャドウのもとへ突撃させた。
シャドウは目に見えぬ神速で自分の主神から贈られたロングソードで三人の精霊兵の反撃をものとめせず、胴を切り裂き、迎撃する。
「まるで児戯だ」
「そんな馬鹿な…」
只の戦士の体に精霊を注入し、性能を底上げしただけで、単調な動きしかできない思考も理性も捨てたバーサーカー。シャドウは薬物か何かでドーピングしてスペックでゴリ押しするだけの技術の洗練さもないものに落胆する。
「失敗作だったな」
「なんだと!?」
シャドウの何気ない嘲笑にバスラムは己の教理を信じて積み上げたものを侮辱されたことに憤る。
「わけの分からないドーピングでこの様か。普通に戦わせた方がまだマシだったな」
「おのれぇぇえ!調子に乗り上がってぇぇえ!若造がぁぁあ!!全員袋叩きにしろ!!」
バスラムは無礼な侵入者に自分の研究成果を貶したことに普段の丁寧な口調が崩れるほど激怒し、惨たらしい死を与える。
精霊兵がシャドウの周りを包囲する。
ヒューマンが剣を振るう。
ドワーフが斧を振り上げる。
獣人が槍を突く。
エルフが魔法を詠唱する。
圧倒的なステイタスによる数の暴力がシャドウを攻めたてる。地下水道という閉鎖された空間では逃げ場は無い。
「こんなものか」
周囲を囲む暴漢の攻撃の一手一手を剣で捌き、そして一人一人確実に急所を捉え、一撃を与える。
控えにいた軍勢も鞭状のスライムソードによって薙ぎ払われた。
さらにバスラムもそのスライムソードの攻撃に巻き込まれ、全身を切り刻まれ、ダメージを負う。
血だらけで着ている祭祀服もボロボロになっていく。
動員できる精霊兵もいない。これは絶対絶命だと悟る。
「こ…こうなれば最後の手段だ」
バスラムは懐から紅い錠剤の入った瓶を取り出し、それを開け、一気に飲み込んだ。
するとバスラムの体が膨らみ、参謀じみた細い身体が強固な筋肉で覆われ、超人ともいえる肉体を獲得した。
バスラムが腕を振っただけで衝撃波が発生し、床や壁を破壊する。
その圧倒的な力にバスラムは酔いしれる。
「今の私は精霊兵より遥かに強い。先ほどと同じだと思わないことだ。」
「醜いな」
「黙れぇぇぇ!!」
再度激昂したバスラムは膨大な魔力を蓄え、次の一撃に込める。
バスラムは立っているだけで構えているシャドウに向けて全力全霊の力の入った拳を振り上げる。
その一撃の余波だけでも地下水道が揺れ、ヒビが入り、崩壊寸前まで破壊されつくす。
恩恵を持っている冒険者でも耐えられない力場が入り乱れている。
その中でもシャドウはバスラムの拳を掴み平然と立っている。
その事実にバスラムは絶望し、シャドウからの容赦ない拳のラッシュがお見舞いされ、吹き飛ぶ。
「ぐっ…はぁぁ」
「遊びは終わりだ。」
決着を着けようとシャドウから膨大な魔力があふれ出し、その高まった魔力は青紫の線となって姿を現した。
細い、細い、幾筋もの線。それが稲妻のように、血管のように、シャドウを取り巻き、美しき光の紋様を描いていた。
やがてそれはシャドウとバスラムを閉じ込める結界のドームとして形成されていく。
「な…なんだこれは!?」
「かつて……核に挑んだ男がいた。 男は肉体を鍛え、精神を鍛え、技を鍛えた。 だがそれでも届かぬ遥か高みはあった。 しかし諦め切れぬ男は、修行を重ねた末、ある答えに辿り着く。 核で蒸発しない為には、自身が核になればいい。」
「核?…き…貴様は一体何を言っているんだ…?」
唐突に話が見えなくなって困惑するバスラム。
シャドウは高まって、今にも爆発しそうな魔力をに合わせて剣を振り上げる。
「真の最強をその身に刻め。これぞ我が最強」
そして、シャドウはその奥義の名を言う。
「アイ・アム・アトミック」
瞬間景色が光に包まれ、音が消えた。
極限までに練りに練った魔力の熱量にバスラムも精霊兵の死体も石壁も飲み込まれ、地下水路の空間をも飲み込み蒸発し、爆ぜた。
やがてその規模は外にまで延ばし、寂れたダイダロス通りの区画をもその熱量で蒸発させた。
幸いにも人が住んでいない区画だったので人的被害はバスラム達を除けばゼロである。
爆発が消えたあと残ったのは地上に隕石が落ちたような大きく空いた穴だった。
ベル「ここでアトミックするのはまずい。やめよう。」
シド「よーし興が乗った。アトミックするぞ~。」
アポロン・ファミリアと戦争遊戯することになったら助っ人は誰にするか
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ジミナ・セーネン
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ジョン・スミス
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スタイリッシュ・盗賊・スレイヤー
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アルフィア
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リュー・リオン
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七陰の誰か一人