陰の実力者に出会うのは間違っているだろうか   作:加佐麻央

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第14話 ミツゴシ商会

 

「次の列の方々は90分までお待ち下さい。」

 

ヘスティアとベルとシドは長蛇の行列の最後尾に並んでいる。プラカードを掲げた女性が列を誘導・整理している。

 

数年前、オラリオに開店した総合商業施設【ミツゴシ商会】。

服飾、嗜好品、食品、生活物資など数々の品を扱っており、中には珍しい品も並んでいる。

流行に敏感な神様達は勿論、冒険者やオラリオ市民や噂を聞きつけ、外部から来た貴族など数々の身分の人間が訪れている。

 

ヘスティアも流行に敏感な神の一人であり、ダンジョン探索帰りのベルとシドを誘ってみた。

だけどあまりに来客数が多かったためか、いつ入れるか分からないくらいの行列を並ばされた。

 

ダンジョン探索で疲れているであろう二人をこのまま並ばされるのは可哀想だと思い、今日は諦めて帰ろうとした。

 

 

「お客様方。失礼ですがお時間よろしいでしょうか。よろしければアンケートのご協力を」

 

プラカードを持った女性スタッフが僕らに声をかけた。

 

「へっ?僕ら?」

 

ヘスティアとシドは自分達がどうして呼ばれたか分からないでいた。

ベルだけはどういう意図かは気付いている。

 

「取りあえず行ってみよう。」

 

 

一行はアンケートの協力という名目で店内に入った。

 

内装は現代日本にある百貨店そのものでオラリオの文化水準では王侯貴族が通うような豪華な建築物に相当するであろう。

 

中央の階段には二人の男性と七人の女性の豪華なモニュメントが飾っている。

 

露天商とは違った趣きがあって、貴族のように優雅にショッピングを楽しめるのが女性客、上流階級にとっては嬉しいことだ。

 

女性スタッフに案内され、客の目に注意しながら従業員用の階段を登り、屋上には教会と同じくらいの大きさの建物が立っているのだった。

 

さらに中に入ると床にはレッドカーペットが敷いて、その横にミツゴシの従業員であろうエルフの女性が並んでおり、さらにその奥に玉座が立っている。

この空間一体が王城の謁見の間のようだった。

 

「これは一体どういうことなんだい!?」

 

ヘスティアは自分達は数分前まで百貨店の行列に並んでいて、偶然声を掛けられたアンケートの協力で運良く店内に入れたと思えば、こんな盛大な歓待を受けることになって、戸惑う。

 

玉座の横に妖艶な黒いドレスを着た気品を感じさせる黒髪のエルフがで立っており、まるでここの主であろう王を迎えるように礼儀をする。

 

「お待ちしておりました。主様。アルバス様。ヘスティア様。」

「私はミツゴシ商会のオーナーを務めさせているルーナ。またはシャドウガーデンの七陰の三席ガンマと申します。」

 

「七陰ってもしかして、アルファ君とベータ君と同じなのか?」

 

「うん。こいつ絶対頭いい奴だって一目で分かる彼女こそ、シャドウガーデンの頭脳ガンマなのである。」

 

「本日は…ふぎゃぁ!」

 

ガンマが優雅に小さな階段を降りようとしたとき、足を捻り、体幹が崩れ、倒れる。床に着きそうなところ、間一髪ベルが駆けて、落ちてくるガンマを受け止めた。

 

「えぇぇ!!ちょっと今の明らかに滑って転んだよね!!」

 

「ちなみにシャドウガーデン幹部の中でかなりの運動音痴で、戦闘力は最弱である。」

 

ヘスティアの突っ込みにシドは淡々と返す。

 

「怪我は無い?ガンマ?」

 

「はっはい!ももも…申し訳ございません!!」

 

 

ベルに優しく受け止められたガンマは頬を赤く染めている。ベルは抱えたガンマを床に下ろす。

 

 

「お見苦しいところを見せました。どうぞこちらへ」

 

 

シャドウガーデンの主のシドが玉座に座り、No.2のベルが横に立ち、主神のヘスティアはその横に立つ。

 

「あの〜?僕がこんな所に立っていいのかな…?」

 

ヘスティアはシャドウガーデンの存在をついこの間まで知ったばかりで、無関係だったのに、ここまで手厚いおもてなしをされるとどうも座りが悪い。

 

「いえいえ。主様達の隠された実力を一目で見抜き、お選びになさった慧眼を持つヘスティア様には一同尽くさせて頂きます。」

 

「(なんか壮大に勘違いしてる〜!!)」

 

ヘスティアは何も考えず適当に眷属集めをして、偶あの二人をを選んだだけで遭って、ヘスティア自身そんな目利きは無い。

 

否定しようにもガンマ君だけではなく、他のシャドウガーデンの構成員であろう子達からの尊敬の眼差しが強すぎたので否定しづらい。

 

「(ベル君〜。シド君〜。君たちからも何か言ってくれ〜!)」

 

ヘスティアは必死になってに目眩ませで訴えかける。

 

 

ベルは察したのかここは堪えてくれとジェスチャーをし、シドはヘスティアが豪華なセットに大はしゃぎしているんだろうと思い込んでいる。

 

 

 

 

 

 

「褒美だ受け取れ」

 

シドは掌に収縮した紫色に光る魔力を天井へ打ち上げ、シャワーのように降り注ぎ、ミツゴシの店員達、シャドウガーデンのメンバーに浴びせる。

 

この魔力は治癒、肉体活性の効能を持っており、シドの緻密な魔力操作で生み出されたそれはどんな魔法よりも心地よさをもたらす。

 

浴びた女性たちは歓喜のあまり涙を流す。

 

 

 

 

「ちなみに結構稼いでいる感じ?」

 

シドは低俗な質問をガンマにかける。

 

「はい。ミツゴシ商会はオラリオだけではなく、各国各地に支店を構えております。最近では僻地へ通信販売も行っております。活動資金は10億ヴァリスならすぐに運用可能でございます。」

 

大量の金貨が積んだ山が運ばれて、その輝きと数に目を奪われる

 

「(じゅっ…10億ぅぅぅ〜!!)」

 

シドは動揺を隠せないが、ヘスティアは目の前のあり得ない光景がもはや夢を見ているのだと錯覚しているんだと思い込み、強く頬をつねる。

頬の痛みを感じても金貨が積んである光景が消えないのでこれが現実であると再認識する。

 

「(10億があれば武器の借金なんてすぐに返済…いや駄目だ駄目だ!!借金は自分で稼いで返すって決めたんだ。)」

 

借金返済から逃れる誘惑に負けずまいと心を律する。

 

 

「凄いな。10億稼ぐなんて、都市最大派閥でも出来ないよ。」

 

「主様たちの陰の叡智のおかげです。それが無ければここまで稼ぐことはできませんでした。」

 

「いやいや。例えばチョコレートなんて、苦い豆に砂糖をぶっこめばできるって教えただけで再現できちゃうんだし、ガンマはやっぱり凄いよ。」

 

「アルバス様に比べたらまだまだ精進が足りません。七陰の中で落ちこぼれで足手纏いであった私に手を差し伸べてくれた貴方様のおかげでここまで立っていられました。アルフィアお義母様に認められるまで研鑽を怠りません。」

 

ベルの称賛にガンマは嬉しく思い、恋する乙女のような熱の籠った感情に変わる。

 

 

 

 

「(つまりミツゴシ商会はシャドウガーデンのフロント企業だとすればシド君とベル君は実質的トップということ?)」

 

 

ミツゴシ商会は数年前にオープンしたとはいえ、今ではオラリオ屈指の大企業と言っていい。

 

売上も上級冒険者が数十人集まる中堅派閥の稼ぎよりも断然高い。

下手をすればロキ、フレイヤよりも莫大な資産を持っていることになる。

 

零細派閥に所属している二人が改めてとんでも無い存在であると感じた。

 

 

 

「盗聴されていないか確認を」

 

ガンマが指示を出すとスタッフたちは一斉に動いて、辺りを隈なく確認作業を行った。

 

「話を切り替えます。昨日ギルド本部にてギルド長のロイマン氏と商談を行い、ミツゴシ商会がダイダロス通りの再開発計画と立杭計画に関わる取引をしました。」

 

ガンマの話によるとこうだ。

 

まずシドが怪物祭事件の主犯のアパテー・ファミリアのバスラムを討つため放った大爆発でダイダロス通りが大きな被害が出てしまった。崩壊して荒れ果てた区画をどうするかギルドが検討したところ、ミツゴシ商会の手を借りて再開発の資金繰りに協力してほしいと打診した。

ミツゴシ商会は開店して数年たったにも関わらず、莫大な売り上げを叩き出して、客数を伸ばし、オラリオ経済を潤した。それ故ギルドからのロイマンからの信頼が厚い。

 

というより守銭奴のロイマン個人がオラリオに富をもたらすミツゴシ商会の価値を見出して、優遇しているような節がある。

 

ミツゴシ商会はそれに応じ、引き受ける見返りとして再開発したダイダロス通りに物流の拠点となる倉庫を建設したいと条件を出した。

 

ガンマはシドから陰の叡智で学んだロジスティクスの概念に着目し、オラリオにおいて物流関係は伸びる業界だと確信している。

 

オラリオの物流を抑えて、ディアボロス教団を追い込むことを念頭に置いている。

 

 

もう一つ立杭計画についてだが、これは簡単にいえばダンジョンに巨大エレベーターを建設する工事だ。

 

ギルドでは以前から検討されていた計画だったが、現実的な問題として建設するための予算が足りないことと、ダンジョン内のモンスターに攻撃されても壊れない素材の選出と、信頼できる人手の確保といった問題が山澄みだった。

 

計画は白紙に戻そうとしたところギルドはミツゴシの存在に目を付けた。

 

投資費用はミツゴシが捻出してもらい、建設するための資材と人手についてはガンマことルーナ会長の伝手で希代の建築家イータ・ロイド・ライトを招くことで解決ができるという。

 

 

シャドウガーデンは今後大規模な作戦でダンジョン探索に挑む場合に備えて、独自の侵入経路を確保する必要があるので、このプロジェクトは渡りに船だ。

 

 

「以上が打倒ディアボロス教団に向けてミツゴシ商会における概要ですが...」

 

 

ガンマは長々と説明を続けている。

 

 

 

「(流石だガンマ。)」

 

「(設定としてよく考え込んでるな~。)」

 

「(シャドウガーデン。なんかヤバくね。)」

 

あまりにも壮大な考えに三者とも反応はそれぞれだった。

 

 

 

アポロン・ファミリアと戦争遊戯することになったら助っ人は誰にするか

  • ジミナ・セーネン
  • ジョン・スミス
  • スタイリッシュ・盗賊・スレイヤー
  • アルフィア
  • リュー・リオン
  • 七陰の誰か一人
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