迷宮都市オラリオ。世界の中心と称され、多くのファミリア、神々が住む都市。
辺りを城壁で囲まれていて、その中心に高い塔が立っているのが遠目で見えた。
行商の馬車に乗車し、二人は他愛のない世間話をしながらも目的地に到着する。
オラリオの正門前は多種多様な人種が長蛇の列を作っている。大量の積み荷を運ぶ商人や遠いところから来た観光客、果てには貴族と思しき者までおり、本当に種々様々だ。
そしてそれらと同等かそれ以上に多いのが、見るからに冒険者志望と分かる身なりの者達だった。
二人の入国手続きが終わると、門の入り口に入る。
そこは活気に溢れ、賑わいのある街並みだった。
エルフとドワーフが種族を引き合いにした喧嘩をしているところや、神様たちがくだらない悪戯をしたり、冒険者の装いの女の子たちがパーティを組んで話し合ったり、像の被り物をした憲兵が街を巡回していたり、荒くれ者の一団が酒場で昼間から酒を飲んで愚痴を言い合ったり、とにかく賑やかだった。
「流石世界の中心。僕らがいた村とは違うね」
「ふーん。東京やニューヨークみたいなものか。」
「とーきょー? にゅーよーく?」
「いやこっちの話だから気にしなくていいよ。」
また僕の知らない言葉が。シドが七陰に授けた【陰の叡智】の一部というやつだろうか。
「そうだベル」
シドがふと思いつく
「陰の実力者がせっかくオラリオに来てやることといえばあれだ!一見強そうに見えない奴が有名な派閥に入団希望したら『弱い奴はいらねぇ』『お前のような者はうちのファミリアにふさわしくない』『身の程を知れ』『金持ってきたら考えてやってもいいぜ。ハハハ!』と馬鹿にされて、複数門前払いされ、途方に暮れるイベントを!弱そうな駆け出しモブ冒険者にしかできない特権を今やらなくていつやるって言うんだ!」
「師匠(マスター)っていつも面白いこと考えるの好きだね」
シドが興奮気味に語り始めると、ベルはため息をつく
「そういわずに僕一人だけでチャレンジするよ。あと僕のことは師匠(マスター)と呼ぶんじゃなくて名前で呼んでね。」
「はいはい、わかったよ。シド。」
オラリオで活動する際、陰の実力者になるにあたってシドがベルの師匠という経歴はなるべく隠したい。
同年代の幼馴染の友人が夢見て都市入りして冒険者を目指すというありきたりな設定で演じている。
「それじゃ僕は色々ファミリア周って門前払いされに行ってくるよ。」
「変なところに入らないでね。」
シドが一人で行くとなんかやらかしそうで不安なのでベルも同行する。
でもオラリオの有名な派閥が一端の新人をどう目利きするのは気になる。ちゃんと実力を見抜けるのかも気になる。
陰の実力者としての予行練習と思えば悪くない。
まずオラリオに着いてやることはファミリア、もとい神探しである。
冒険者志望がファミリアを選ぶ上でまず、実績のある名の知れた派閥を選ぶのが一般的だ。
先ほどシドが言った通り弱い人間をわざわざ歓迎してくる懐が深い派閥はあるわけない。
恩恵貰う前から新人は何かアピールポイントが必要なのだ。
神は眷属の働きで飯を食っているようなものだから、ちゃんとした眷属が欲しいと思うのは当然だ。
普通の派閥が陰の実力者になりたいとか意味の分からないことを言い出す人間を受け入れるか疑問だ。
となると候補は
「新興派閥か零細派閥当たりか」
零細派閥ならどんな人材でも受け入れてもらえるのが強みだが、まず実績も信頼もない。
名声を欲しい冒険者が将来性のない派閥に入るのは皆無である。
だがベルとシドはオラリオで冒険者として名声を得ることは求めていない。
陰の実力者になる者はその実力を晒さず活動できる点にメリットがある。
既に構成員がいる派閥だと僕らの実力がバレたときが一番厄介だ。
実力がバレたら僕たちは主戦力として動かなくちゃいけなくなるから名声が広まるだろう。
それはなんとしてでも避けなくてはならない。
逆に構成員が一人もいないファミリアならなんとかバレることはない。
誰も将来性のない派閥に入りたがる者はいない。
陰の実力者が隠れて住むなら最高の環境でもある。
ただその神が僕らの事情を理解して貰えるかは賭けにはなるが
「まぁそんな都合よく現れるわけはないか」
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「今日も眷属一人も勧誘できなかったよ~。」
白い衣を纏った黒髪ツインテール巨乳ロリ女神が今日何の成果が出なかったのを嘆く。
下界に降りてから三ヶ月。ロキに馬鹿にされて、その後神友のヘファイストスの元に厄介になっていたが、自堕落ニート生活をする姿を見てブチギレて追い出されてしまい、ぐーたらな生活に戻るため、眷属勧誘を積極的に行った。
だが、資金も人材も無く、ファミリアとしての将来のビジョンもはっきりしてなく、肝心の主神も何も考えていない。手当たり次第に子供たちに声をかけるも全て断られるか無視される。
新興派閥の欠点という以前に彼女の自業自得な面が大きい。
冒険者を目指す人間は新興のファミリアより多くの実績を残し信頼性のあるファミリアに所属し、一定の収入を得て、安定した生活を送る方が一般的である。
新興派閥に入ろうとするのは何かしら事情ありな者か、夢見がちな愚者なのかである。
「(どこか入団できずに困っている子がいれば...)」
そんなことを考えていた瞬間、
「お前らのようなガキどもはうちにはいらねぇんだよ。帰れ!」
強面の男に他派閥の拠点の門から二人の少年が摘まみだされ、門は強く閉じる。
少年二人は何事もなかったように歩き出す。
普通の入団希望者だろうか。入団希望なのに一方的に断れたら誰もがショックは受けるだろう。
もしかしたらこれはチャンスかもしれない。
女神は二人の少年に声を掛けようと近づくと
「これで30件目だ。さすがオラリオ。弱くて何も持たざるモブを拒んでいく。思った通りだ。」
「僕たちって見た目だけで弱いって判断されているならオラリオの人たちは結構見る目あるんじゃない?」
「流石にロキ・ファミリアは見抜いて欲しかったなぁ~。入団希望者は必ず面接して貰えるって聞いてたけど、どういうこと?最大派閥とあろう者がその辺理解できていないとかありえないよ。」
「入団テストをすると言いつつ、適当な理由付けて、結局断るのって、あれ完全に僕らのこと最初から弱いと決めつけているって。」
「色々回ったけど。オラリオ内のほとんどの派閥が弱そうに見えるモブ二人を受け入れないことが分かったね」
「明日はフレイヤ・ファミリア行ってみる?無理だとおもうけど」
「いいね。女神至上主義で最強のファミリアなら僕たちが来たら冷やかしになるよね。」
「ははそれは無理だね。あそこ僕たちみたいな人間が行ってみたら門番の人絶対怒るでしょ。ロキのところと同じく「貴様らのような低俗な輩にフレイヤ様の寵愛を受ける資格は無い。とっとと失せろ」と言われるのがオチだと思うよ。」
「それはそれでモブがやる行動における展開として面白いでしょ」
「シドはモブに求めるレベルが高くない?」
少年二人の会話に先ほどのことなど悲しむ様子は無く、楽しい表情になっている。
それどころか現役冒険者たちを舐め腐った発言が聞こえるのではないか。
「さっきから何を言っているんだ!! 君たち!!」
突然黒髪ツインテールが咄嗟に叫び出す
「僕が眷属勧誘に必死になっているのに、君たちはなんで入団拒否されて何をそんなにへらへらしているんだ。酷くないか!!」
黒髪ツインテールを上下にピョンピョン揺らしながら、二人を叱る。
「えっと誰ですか。なんかすいません」
困惑するようにシドが尋ねた。
「僕はヘスティア。庇護と炉の女神さ。」
「そんなことするくらいなら君たち僕のファミリアに来ないか?」
ヘスティアは念願の眷属を手に入れた。しかも二人。
先ほどふざけたことしてようが眷属は欲しいのである。
寂れた区画に点在する古い教会。外装も内装もボロボロだが、雨風を凌げるくらいは住みやすい建物である。
中に二人の少年と一柱の女神がいる。
「えっとつまり君たちはファミリアに入団希望をしたら、門番が弱そうな見た目で入団拒否をするかどうか反応を楽しんでいたってこと?」
「まぁそうなります。」
「僕たちも悪ふざけが過ぎました。」
目の前の善神に対して、ベルとシドは自分たちの行いを反省する。
「明日は我が身だというのに気楽過ぎないか?」
「そんなことはないですよ。僕たちは陰の実力者になる修行の一環としてやっていたんですよ。」
「陰の実力者?」
ヘスティアが首を傾ける。
「普段は実力を隠しているが、事件が起きたら、主人公でもなく悪役でもなく、陰の立場からに介入して、圧倒的な力を見せつける。結果的に事件を解決する。それが陰の実力者。」
「陰の実力者をする上でまず普段の僕たちは真の実力を世間に明かさず、ただのモブとして影に埋もれることからスタートします。それで・・・・」
二人は陰の実力者の定義を会ったばかりの女神に熱心に早口に長く話続ける。
「最近の子たちは何を考えているか分からないなぁ。」
この子たちは中二病なのか。しかもかなりの重症。
ヘスティアが変わった子供を見るような目でため息つくと決断を下す。
確かに変な子たちだけど悪い子たちじゃないんだよねぇ
どっちにしろ今のヘスティアは眷属を選り好みできる立場ではないのだ。
今日この子たちを逃せば、次入ってくれそうな子が見つかるとは限らない。
「ヘスティア様。どうか僕たちをあなたのファミリアに入れてもらえないでしょうか。」
「僕たちの夢を叶えてくれるファミリアはあなたのところしかありません。どうかお願いします。」
少年二人は真剣に頭を下げる。
この子たちは本気だ。
陰の実力者という夢を本気で追いかけている。
そんな子たちの夢を応援しないで、何が神だ。何が善神だ。
「分かった。君たちのファミリア入りを認めるよ。君たちの夢、僕が出来る限り力になるよ!!」
「「ありがとうございます。」」
ベル・クラネルとシド・カゲノー。
二人のヘスティア・ファミリア入りが決まったのである。
「それじゃ二人とも恩恵を刻むよ」
べルとシドは半裸になって、背中をヘスティアに向け、儀式を始めた。
二人のステイタス情報を写した二枚の羊皮紙を見た。
ベル・クラネル
Lv:1?
力:G 0
耐久:G 0
器用:G 0
敏捷:G 0
魔力:G 0
魔法
【】
スキル
【】
シド・カゲノー
Lv:1?
力: 0
耐久:0
器用:0
敏捷:0
魔力:0
魔法
【】
スキル
【】
ステイタスが駆け出しの冒険者モブらしい特別なスキルや魔法が書かれていないことに喜ぶ二人。
ヘスティアは今後のファミリア運営に不安を感じるのであった。
アルファ「シャドウとアルバスは入るファミリアを見つけたようね。主神が女神なのは気になるけど。」
ベータ「シャドウ様とアルバス様のそばにふさわしいのはぐーたら女神よりも銀髪青目で泣き黒子の可愛いエルフの美少女です。」
イプシロン「天然には負けない!!」
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