打鉄弐式魔改造中
放課後、第三整備室、元々専用機持ちが少ない筈なのに五つある整備室の1つ。部屋には様々なコードに繋がれた機体の前で腕を組んだ2人が頭を悩ませていた。
「う~ん、どうしようかね?」
「・・・・怒っていい?」
そう言う大概の人は既に怒っているんですよ簪さん。
途中で放棄された簪さんの専用機を2人で完成させようとしている、これまでは予想以上に順調だったが今、大きく現実的で最悪な問題に直面していた。
「まさか、予算まで打ち止めになるとは・・・・予想外です!いひゃ!いひゃい!ふひがひゃける!」
「くだらなくて古い事ばっかり言う口なんて裂ければいい」
簪さんが無表情で俺の口に両手人指し指を入れて左右に引っ張っている。
「元々、降りていた予算で完成なら出来ていた、形は七割は出来ていたから・・・・でも、コレは一体何?」
目の前の機体は様々なコードが繋がれていた。お世辞にも形は出来ていると言える状態ではない、こんな状態で空を飛んだら途中で機体がバラバラになる。
「質問があるんだけど聞いていい?」
「どうぞ、聞くだけなら」
簪さんは口から手を離しコードに繋がれた機体に近づいた。
「まず、打鉄の防御主体のスカートアーマーが弐式の機動力主体の独立ウィングアーマーに換えてあるのに何で腰部分にマウントするバイパスを射出する機能が付いてるの?」
「それは独立ウィングスカートの設計図に無い新しい機能を付けたからだよ」
「・・・・なら、肩のシールドから換えた大型のウィングスラスターにも何で同じように腰部分に射出するバイパスが付いてるの?」
「それも当初の設計図に無い新しい機能を付けたからだよ」
「・・・・・・・・これだけのバイパスを付けるんだから腰部分の所為で装甲のバランスが崩れるのは当たり前だとしても、腰の後ろに空けてあるスペースは何?」
「あるモノをソコに嵌めるんだ。あるモノを嵌めないと新しい機能は全部使えない」
簪さんは無表情のまま、俺はニコニコしたまま、2人で見つめ合っていた。
「それくらい見れば分かる!!でも一体何なのかが分からないから聞いたの!何で教えてくれないの!?2人で完成させようと__いや、これじゃ開発だよ!予算が足りなくて当たり前だよ!!」
遂に簪さんが爆発した、一体どこの日常なんだろう。
本格的にどうするか。束さんに頼ろうかな、この程度のパーツなら一晩で用意してくれそうな気がするけど、束さんに頼るのは最後だけにしときたいんだよな。
「私も一枚噛ませてくれないかしら?詩乃崎くんと簪ちゃん」
整備室のドアを開けて入って来たのは二年の簪さんのお姉さん。開かれた扇子には"乾坤一擲"と書かれている。
「お、お姉ち__姉さんが・・・・どうして此処に・・・・」
一瞬で簪さんがブルーにまで落ちて先輩を遠回しに拒絶している。
おそらく過去の先輩なら誤魔化して離れようとしていただろう。
だが、今回は違った。
「簪ちゃんの専用機の完成を手伝う為に来たの!此処に!姉が妹の助けをして何が悪いの!?」
「ね、姉さんが居れば私は必要ない・・・・それが嫌なの!!私はっ!姉さんの影じゃない!!」
近づいた簪さんと先輩は互いに心からの咆哮を出し合っている。
「必要ない訳ないでしょ!誰がそんな事を言ったの!?」
「言われなくても分かる!誰もが優秀な姉さんが居れば無能な私は必要ないって思ってる!!」
「それは違う、少なくとも此処にいる三人は簪さんを必要としている」
第三者からの言葉に2人は沈黙してコッチを見ている。
「俺は簪さんの事を必要としてるし、お姉さんは昔からずっと簪さんを必要としていた・・・・だけど、簪さん自身が自分を必要としていない。言ったよね?もう少し自分に自信を持つといいって」
初めて会った時を思い出したのか俺から顔をそむけた。
「簪さんも本心では自分を必要として欲しいって自分でも思っている、だからお姉さんの影になるのが嫌だって言ってるんでしょ?」
黙ったままの簪さんを先輩はゆっくりと抱きしめた。
「ごめんね、もっと早くからこうすれば良かった・・・・貴女は貴女、私の影じゃない。他の誰が思ってようともお姉ちゃんは簪ちゃんが必要なの。私の・・たった1人の妹なんだから」
「っ!?___うん、うん・・・・ごめんなさい、今までごめんなさい!わ、私ダメな妹だからっ__」
自分が勝手なイメージで、勝手に壁を作って、ずっと避けていた事に情けなさを感じたのか簪さんから涙と謝罪が溢れている。
「ううん、私こそ簪ちゃんを傷つけたくなくて避けていたけど、ホントは自分が傷付くのが怖くて自分に嘘を吐いて今まで何もしてこなかった。やろうと思えばいつでも出来た事なのにっ__」
誰かが必要ない、そんな時だってある。少なくとも、今、この時、この空間に、俺は必要ない。
そう思って誰にも気付かれずに部屋の外に出た。
これなら束さんに頼るのは最後だけでよさそうだな。
そう思いながら暗くなった夜道を1人で歩いていた。