「手を出す・・・・それに、ハニートラップって・・・・」
一夏の呟きに俺とデュノアさんは沈黙するしかなかった。
「・・・・一体どういう事なんだ?」
一夏の呟きに俺とデュノアさんは沈黙するしかなかった。
「なあ、四季。教えてくれよ、ハニートラップって何だ?」
・・・・忘れてた、一夏の性への関心の無さを・・・・絶対に千冬さんの所為だな!
思わず頭を抱えそうになったのを押さえて、片手でこめかみを押さえるだけにした。
一夏との付き合いが浅いデュノアさんにいたっては珍獣を見る目で一夏を見ている。
「あ~、一夏と話しているとつくづく自分が汚いと思い知らされるよ」
「何だろう・・・・この、自分に向けられた嫌悪感は・・・・」
2人とも更にぐったりして項垂れてしまう。
「い、一体どうしたんだよ2人とも?俺そんな変な事言ったか?」
溜め息を吐く2人を前に一夏が戸惑い始める。
「いや、ただの自己嫌悪だ。一夏は気にしなくていい、それよりもハニートラップが何なのか知りたいんだよな?」
「お、おう?そんなに当たり前な事なのか?」
「う~ん、まあいいや。一夏が理解出来るように言うと、お前が女の人に新たな命を宿したとする。その女の人が国に帰らないといけない、お前はどうする?」
「そんなの決まってる、俺も一緒に行って一生を掛けても責任を取る」
「一夏ならそう言うと思った、ソレを故意的に起こす事をハニートラップって言うんだ。まあ他にも色々あるんだけど一夏には必要ないだろ」
「ん?愛し合った末の結果だろ?進むべき道が茨の道だって事か?」
まだ一夏は意味をキッチリ理解してないのか首をかしげている。
「ホントに一夏を相手にしてるとSAN値がガリガリと削られていく・・・・」
「分からない言葉があるけど言いたい事は分かる・・・・」
あまりにも眩しい一夏の傍にいる2人は一体何なんだろうね。
「で、何でシャルルはそんな事をしているんだよ?」
「おおかた実家のデュノア社の命令だろう、それにフランス政府が一枚噛んでるってとこだな」
「そう。デュノア社の社長で僕の父からの直接の命令、詩乃崎くんの言うとおり男性操縦者のデータ欲しさに政府も関係してるだろうね」
デュノアさんが空虚な笑顔を浮かべながら肯定した。
「命令って親だろう?何でそんな__」
「一夏、僕はね__愛人の子なんだよ」
「っ___________」
一夏はデュノアさんの発言に絶句してしまった。それでもデュノアさんは言葉を続ける。
「二年前、お母さんが亡くなった時に父の部下がやってきて引き取られたんだ。その時の検査でIS適性が高いことが分かって非公式ではあったけれどデュノア社のテストパイロットをやる事になってね」
正直そんな事どうでもいい、今のデュノアさんを見ていれば分かる事もある。
「父に会ったのは二回と会話は数回かな、一度だけ本邸に呼ばれた時は本妻の人に殴られたよ。『泥棒猫の娘が!』ってね。母さんもちょっとくらい教えてくれたら、あんなに戸惑わなかったのにね」
あはは、とデュノアさんは空虚な笑顔のままで笑う。一夏が怒りに震えて拳を握りしめている。
「そして、デュノア社が経営危機に陥った。それが男装して潜入、ハニートラップを期待されている原因なんだよ」
「ど、どういうことだよ?経営危機に陥った理由はいいとしても、それが原因で俺にハニートラップをする意味が分からねえよ!?」
この反応も一夏らしい、自分の価値を正しく理解出来てない。
「だからぁ、お前はISを使う事が出来る数少ない男だ。ISを使えない男達はもしかすれば自分達もISを使える事が出来るかもしれない。だが、あまりにも情報やデータが少なすぎる、だからハニートラップで男性操縦者の子供や遺伝子情報が欲しい、欲を言えば本人も解剖してまでデータを得て自分達がISを使えるようになりたい・・・・これがお前にハニートラップを仕掛ける理由だ」
「うん、つまり僕は父に子供としてじゃなく道具として送り出されたんだよ」
全てを理解しているデュノアさんが悲しそうな笑顔で一夏に微笑んだ。
「とまあ、四季に手を出されてないし、2人にはバレちゃったし、なによりも僕も知らずにハニートラップを狙ってたなんて聞いたらやる気を失くしちゃうよ。このまま本国に帰ったら良くて牢屋行きか僕が嘘を吐いてる可能性を考慮して解剖されるかもね」
でも、それでもいいや。口には出してないが思ってる事は諦観したデュノアさんを見れば分かる。
「なんだよそれ・・・・ふざけるな!!いくら親だからってそんな事が許されるとでも!許される訳ねえだろ子供の未来を道具にするなんて!!」
激情した一夏を見てデュノアさんは戸惑いと怯えが混ざった表情をしている。
「詩乃崎くん、一夏は急にどうしたの?」
「ああ、一夏と姉の千冬さんは両親に捨てられたんだよ」
「あ・・・・」
渡された資料の中に両親不在の文字があったのを思い出したのか口を閉ざした。まだ一夏は激情に身を任せている。
「さすがに五月蠅ぇぞ一夏!」
「なんだよ四季!こんな事が許されるとでも言う気か!?」
一夏の言葉に一瞬だけ幼い頃の記憶が浮かび頭に血が上った。
「ンな事言う訳ねぇだろうが!?今ここでテメェが騒いで何か変わるのかぁ!?えぇっ!答えろよ!?」
今にも暴れ出しそうな一夏の胸倉を掴んで引き寄せて怒鳴った。
「それよりも今はデュノアさんの今後について話し合おう、それが自分達の為にもなる・・・・違うか?」
一夏の胸倉から手を離してデュノアさんの方を見るように促す。視線の先には今にも泣きそうな女の子が居て一夏も冷静になった。