私は力を欲する。
私の生まれた理由でもあり存在意義だったから。
でも今の私は違う。
あの人のようになりたい。
強さに、凛々しさに、自らを信じる姿に、その全てに憧れたから。
同じ存在になれば隣にいられるから。
私はあの人と同じ存在になりたい。
だから私は力を欲した。
あの人と同じ最強の力を。
だから私は許せなかった。
あの人の枷となる存在が。
あの人よりも強い存在が。
その存在があの人を笑顔にする事が。
その存在があの人に影を落とす事が。
どうしても許せなかった。
だから私は無二の存在になりたい。
あの人の枷にならずに、あの人を笑顔にする存在に。
あの人の為の無二の存在になりたい。
「あの人の為じゃねえだろ、このバカが」
闇に1人佇んでいるバカの顔に拳を叩き込んで殴り飛ばした。
「思考がダダ漏れなんだよ、不快感しか出てこない」
殴り飛ばされたバカは信じられない顔をしたがすぐに怒りに染まった。
「な、何故貴様が・・・・何故貴様のような存在がぁああ!!」
体勢を立て直したバカが右手を突き出して襲いかかるのを右手を掴み勢いを殺さずに投げ飛ばした。
「ああそうさ!俺は俺としてあの人の傍に居る!」
「ぅううっ、ぁぁぁあああああああああ!!」
投げられて痛みに呻くがすぐに獣の様な姿勢から跳び出し左足を取り、体勢を崩そうと足を抱えたまま立ち上がるが跳び右回し蹴りを顔面に見舞い手を離させる。
「じゃあ、お前はなんだ?」
「かっ・・!わた・・私は、あの人と・・・・」
コッチに向けられる両手の掌を取って顔を向き合わせた。
「同じ存在になっても傍にいられない、あの人は自分と同じ存在なんて求めてないから」
「私は・・・・あの人の為の無二の存在に・・・・」
「だぁかぁらぁ、それはあの人の為じゃねえだろうが!」
「っ__何故あの人の枷になる存在が!?何故あの人に影を落とす存在が!?」
「無二の存在っていうのは"なる"モノじゃなく"なっている"モノなんだよ」
「それなら私はどうすればいいんだ!?何もない空っぽの存在の私に___うぐっ!?」
泣きながら叫ぶバカにまた頭突きをして頭を突き合わせた。
「空っぽの存在?ふざけるな!お前になれなくて捨てられた子が存在するのに自分に何もないだと!?」
俺が何を言ってるのか理解できず呆然としているバカを怒鳴りつける。
「俺みたいに遺伝子を様々な人間とまじ合わされ、他の人間が出した結果を求められる訳でもなく!自分を自分だと信じる事が出来るくせに何もないだと!?」
強い思いに脳量子波が反応して俺の幼い頃の記憶が相手に流れ込む。
「お前に何もないだと!?ふざけるな!お前はラウラ・ボーデヴィッヒだ!ラウラ・ボーデヴィッヒという無二の存在だろうが!!」
「あ、あ・・・・あああ・・・・」
「どうしてラウラ・ボーデヴィッヒとして千冬さんの傍に居ようとしなかった!俺よりよっぽど上等な人間のくせにっ___自分の後ろを見てみろ!何故そんなものに力を求めた!?」
ボーデヴィッヒの背中には黒い泥が纏わりついている。そして様々な呻き声を上げる無数の顔が浮かび上がり、その中には見た事がある顔がいくつもあった。
「ひっ・・・・」
「それが千冬さんの傍に居る為の力か?それが千冬さんの為の無二の存在になる為の力か?それがラウラ・ボーデヴィッヒの望んだ力か!?」
ボーデヴィッヒの手を離して後ろを見させる様に促すと背中に纏わりつくソレを見て怯えた。
「ち、違うっ!!私は、私はぁああああ!?」
「なら、お前が___ラウラ・ボーデヴィッヒが求めたのは何だ!?何の為に望んだ!?」
「あの人の___織斑教官を!私が憧れた教官を!私を救ってくれた教官を!私はっ___私の為に教官にとって無二の存在になりたかった!一度だけ見た笑顔を何度も見れる居場所を自分自身の為に望んだんだ!!」
自分を飲み込もうとする黒い泥にボーデヴィッヒは泣きながら抵抗する。
「今までのラウラ・ボーデヴィッヒじゃなく、これからのラウラ・ボーデヴィッヒはどうしたい!?」
「私は教官の無二の存在になりたい!教官の傍に居る時と同じ居場所が欲しい!!」
助けて!声にしてはいないが泣きながら黒い泥に抗う姿を見れば誰でも分かるから___俺は手を伸ばす。
「コッチに来い!その泥は妄執だ!今までの自分の想いを捨てて俺の手を取ってみろ!ラウラ・ボーデヴィッヒ!!」
「っ!?______助けてっ!」
ボーデヴィッヒは俺の伸ばした左手を怖々としながらもしっかりと握った。
「ああ、助けるさ。だから泣くな服が汚れるだろ」
左腕でボーデヴィッヒを黒い泥から一気に引き抜き胸に抱きとめて半身になりナイフを持った右腕を前に出した。
「喜べ出来損ない、斬刑に処す」
ボーデヴィッヒに縋ろうとした黒い泥に書かれた線をナイフでなぞり一瞬で十七個の塊になる。
2人を覆う空間までも白く光る線がいくつも入り、ガラスが割れる様な音と共に空間が崩れた。
「その六銭、無用と思え」
アリーナの真ん中でラウラ・ボーデヴィッヒを胸に抱えた状態で2人を覆っていた黒い泥が十七分割されて散った。
書いてから後悔した
なんで七夜のセリフってこんなにも恥ずかしいんだ