IS もう1人の俺は戦争屋   作:悠連

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贅沢な使い方

 

「・・・・そっか、自分の為か___なら、しょうがないわね!」

 

言いながら精一杯のカラ元気を出す鈴の姿を見て笑いそうになった。

 

「ああ、ホントにしょうがない奴・・・・・・・・学年別トーナメントの約束を覚えてるよな?」

 

「あー・・・・ごめん、あんなこと言っといて出る事すら出来なくて」

 

指で頬を掻きながら鈴はバツの悪そうな顔をした。

 

「気にするな。どうせ俺に負けただろうからな」

 

「くぅ~っ!その言い方ムカつく!笑いながら言うんじゃないわよ!!」

 

鈴は猫が怒った時のように髪を逆立てながら掴みかかろうとする。なんとかいつもの調子に戻せたか。

 

「で、結果は俺の勝ち。だから俺の言う事も1つ聞くよな」

 

「えっ!?そ、そんなこと言って「付き合ってくれ」___え?」

 

鈴の言葉を遮って言うと鈴は固まった。

 

「・・・・っく、言葉が足りなかったな。俺の買い物に付き合ってくれ」

 

思わず笑いが出そうになったのを必死に抑えて言葉を足すと鈴がプルプルと震えている。

 

「・・・・そうか、そうか。アンタ分かってて言ったわね?」

 

「さて、なんのことやら?それよりも近々、臨海学校があるだろ。俺さ着る水着を持ってないんだよ」

 

「まさか奢れって言うつもりじゃないでしょうね」

 

「いや、流石に言わねぇよ。水着なんて全然分かんねぇから俺に似合う水着を選んでくれないかって言うつもりだ」

 

鈴の震えが止まり何かを考え終えると顔が赤くなり戸惑い始める。

 

「そ、それってデートのお誘いって事?」

 

「う~ん、たぶん他の子も来ると思うからデートって言うより遊びに行くだと思うけど」

 

「それって一夏とかデュノアっていう子とか?」

 

「まあ、そんな所だな。それでもいいなら付き合ってくれ」

 

一夏は関係が修復すれば来るかな、どうやって戻そうか。と考えていると鈴が笑顔で胸を張っていた。

 

「しょ、しょうがないわね!今回は私から言い出した事だし、それが勝者の頼みだから聞いてあげるわよ!」

 

「あ、今の言い方に態度、一夏にクラス代表を譲ってくれって頼んだ時のセシリアさんの対応に似てる。胸は少し寂しいけど」

 

________________

 

 

何とか振り切り自室のドアを開けると同時に少し後悔していた。

 

しまった忘れてた。殺気全開で追っかけてきた鬼は胸の事を凄く気にしてるんだった。っていうか女性の身体の特徴を口に出す事自体が失礼だったな。

 

「これからは気をつけよう」

 

「何に気をつけるんですか?」

 

横を見ると曲がり角から顔だけ出した山田先生が居た。

 

「えっと山田先生、どうして距離を置くんですか?」

 

「いえ、詩乃崎君はあれだけ強いんですから専用機を持っていて当然なのに考えもしなかった自分に嫌気と言いますか、先生として情けないと言いますか・・・・」

 

う、うわぁ。暗いよ暗過ぎるよ何でそこまで落ち込むんですか。と、とりあえずフォローを・・・・

 

「しょ、しょうがないですよ!機密事項でしたから織斑先生だって知らなかったと思いますし分からなくて当たり前ですって気にしないで下さい!!」

 

「ううっ、そうでしょうか?」

 

「その通りです!それより何か用事があったのでは?」

 

「そうです、朗報ですよ詩乃崎君。ついに男子の大浴場が解禁になりました!」

 

別に朗報と言う程のモノでもない、俺はシャワーで十分だけど此処は__

 

「ホントですか!?もっと先だと思ってたんですが!」

 

俺の喜ぶ姿を見て山田先生は持ち直したのかガッツポーズを取った。

 

「今日はボイラーの点検があって生徒が使えないんですけど、点検自体は終わったので男子に使って貰おうと思いまして」

 

「おおっ!!ありがとうございます!さすが山田先生、先生は伊達じゃありませんね」

 

「そうです!私は先生ですから!それじゃ私は行きます、早めに入って下さいね詩乃崎君」

 

山田先生が行ってから部屋に入り、大きな溜め息を吐いた。

 

「何で俺があそこまで気を使わなきゃならん・・・・女の人相手だからかなぁ?まあ、久しぶりに湯船に浸かってゆっくりするのも良いかもしれん」

 

疲れた身体を引きずりながら大浴場に向かった。

 

___________________

 

 

「ふぅ~、湯船に浸かるなんてホントに久しぶりだな。こんな贅沢な水の使い方を出来る所は少ないし」

 

手でお湯を掬いながら貧しい国に居た時の事を思い出していると脱衣所に人が入る気配がした。

 

「風呂好きの一夏かな、少し早いけど話すのも悪くない」

 

いや、おかしい。いくら浅くても腹を斬られた一夏が風呂に入るか?入るわけねぇだろ!!

 

「お、お邪魔します・・・・」

 

そう言いながら湯船に入って来たのはデュノアさんだった。

 

「えっ?なっ?そうか。まだ周りには男って認識だったね、山田先生が声を掛けるのも当たり前か」

 

「う、うん・・・・そうだけど、詩乃崎くんは凄く落ち着いてるね。僕は凄くドキドキしてるのに・・・・」

 

デュノアさんに背を向けながら受け答えする俺を責めている。

 

「失敬な、俺だってドキドキしてるよ。触って確認してみる?」

 

「し、しないよ!ていうか、そんな事を言ってる人はドキドキしてない!!」

 

「クハハ、バレたか。その様子じゃハニートラップに来たんじゃなさそうだね。それでどうしたの?脱衣所に俺の服があった筈だから中に俺が居る事は気が付いていたよね」

 

「うん、少し話がしたいんだけど・・・・いいかな?」

 

静かになった浴場に水が滴る音が響いた。

 

「いいよ、俺がのぼせない内になら」

 

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