「すみません、私の為に・・・・」
海からとんぼ返りして研究所に戻った俺をくーちゃんが出迎えた。
「気にしなくていいよ。それよりも何を食べたい?なんでも買って来るよ」
「え、えーと・・・・料理を教えて下さい。後で束様にも食べさせてあげたいので・・・・」
くーちゃんの頭に手を置きながら訊ねると遠慮がちに答えた。
「・・・・了解。ったく、束さんが羨ましいなぁ。こんな可愛い子に想って貰えるなんて」
「い、いえ。そんな可愛いなんて・・・・」
くーちゃんの手を引きながら使われていないキッチンへと歩を進めた。
「そうだ、触ったら分かる様に目印を付けよう!そうすれば見なくても料理を作れる!」
「は、はい。そうですね・・・・私が料理を覚えるかは別としてですけど・・・・」
「大丈夫。俺だって簡単なのくらい出来るんだから、くーちゃんに出来ない訳が無い」
「そうですか、分かりました。よろしくお願いします」
その後、調理器具に目印を付けて、点字みたく調味料は点の数で分けてから一緒に料理を作りながら教えた。
「どう?思ってたより簡単だったでしょ?」
「は、はい。同じものなら作れるかと・・・・」
テーブルの上にはご飯、サバの塩焼き、かぼちゃの煮つけ、味噌汁、小松菜のおひたし、と簡単な和食で纏めた料理が並んでいた。
「それじゃ、いただきます!」
「い、いただきます」
何処に何を置くのかを決めていたので迷わずに味噌汁を手にとって一啜りした。
「どう?意外に美味しいでしょ?」
「はい!四季様に手伝って頂きましたけど、ホントに自分で作ったモノとは思えません!!」
そう言いながら2人とも全て綺麗に食べ終えて一緒に後片付けをした。
「よし!部屋を綺麗にする間にくーちゃんはお風呂に入ってきなさい」
「えっ?あの・・・・」
くーちゃんは身体をモジモジさせながら俺を見てくる。
「気にしなくていいよ。・・・・それとも一緒に入って欲しいのかなぁ?」
「そ、そんな事ありませんっ!分かりました!部屋のお掃除をお願いします!!」
くーちゃんは顔を赤くしてお風呂へと向かい、その間に部屋中に散らばった線やコードなどを掻き集めて雑巾がけをした。
「まったく、束さんに言っとかないと。散らかしたままだとくーちゃんが怪我するかもしれないって」
ふと、シャンプーの良い香りが鼻について振り返るとお風呂からくーちゃんが出てきた。
「まだ髪が乾いてないね。コッチおいで乾かしてあげるから」
くーちゃんを椅子に座らせて髪をドライヤーで乾かしながら手で髪を梳かした。
「気持ち良かった?」
「はい、とても気持ちいいです」
「フフフ、今じゃなくてお風呂はどうだった?って聞いたんだけどな」
「あ!う、うぅ・・・・お風呂も今も気持ち良かったです・・・・」
乾かし終わって2人で少し雑談してると夜も深くなっていた。
「そろそろ良い子は眠る時間。教えた通りお腹が減ったらご飯と焼き魚と煮つけと味噌汁を温め直して食べてね。明日の夜には束さんも帰って来るから少しの間だけど待ってて」
俺は立ち上がるとくーちゃんが服の袖を握った。
「ね、眠りに着くまで・・・・い、一緒に居てくれませんか・・・・」
振り絞りだしたお願いに俺はホッコリして思わず笑顔になった。
「もちろん、御一緒させて頂きます。お姫様」
またキザなセリフを吐き、顔を赤くしたくーちゃんの手を取り眠りつくまで傍に居た。
「・・・・さてと、俺も風呂に入るか」
風呂から上がり、奥の部屋に行くとアルケーより明るい紅色のISが部屋の中央に鎮座していた。
「紅椿か、箒に似合いそうな機体だな。そして一夏の白式と対になりながら同じ計画の要・・・・」
俺は溜め息を1つ吐いて再び紅椿を見上げた。
「ホントに大丈夫だろうか、今の箒には荷が重すぎる気が・・・・だけど、もう時間が無いのも確かか・・・・」
ゆっくり優しく紅椿に触れながら考えてしまう。
・
僕達の計画は少し考えれば愚かな行為だと分かるモノだ、言ってしまえば子供のわがままと同じだ。大勢の人が救われる世界を拒絶しようとしてるのだから。
「それでも、俺は・・俺達は俺達だ。だから必ず成し遂げてみせる」
守りたいモノを守る為に。声にしてはいないが揺るがない想いを確認して近くにあるボタンを押した。
天井が開くと明け方の空が見えるが開閉する時の音どころか風を切る音さえも聞こえない。
「アルケー起動。よし・・・・計画の続きをしよう」
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まるで僕のような危うい光を放つアルケーを纏い、持ち運べるように紅いダイヤに形を変えた赤椿を抱えた。
「またね、くーちゃん」
寝ているであろう部屋を向きながら呟いて空へと舞い上がった。そして皆が居る所へと向けて飛び出した。
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日もすっかり昇った頃にようやく皆が居る海に到着すると束さんから通信が届いた。
「流石だね~シっくん!時間通りだよ!それじゃド派手に突っ込んでねっ!!」
下を見ると四方を崖に囲まれたビーチにクラスの皆が居る中で分かりやすい恰好をした束さんが手を振っている。
「了解です!思いっきりド派手に突っ込みますね!!」
紅椿を抱えたまま《瞬時加速》をして周囲にGN粒子を撒き散らしながら着地した。衝撃と着地時の風圧で全員が呆けている。
「お待たせしました、これが束さんが一から作った現状最高のISである紅椿です」
紅いダイヤを地面に置くと中から赤椿が出てきた。
「そして、箒が望んだ箒だけの専用機だ」
言いながらアルケーを解除して地面を歩きながら箒に笑いかけた。
水着回をすっとばして2人っきりの甘々な夜になってしまった。
でも後悔はしてません、許して下さい