千冬さんが手を叩いた音で部屋の沈黙が破られて全員動きだした。
「ええと、俺は何をしたら・・・・?」
「まずは白式のセットアップとエネルギーの確認。あとは・・・・セシリアさーん!」
「はっはい!?どうかなさいましたか?」
今日は色々ついてなくて落ち込んでいるセシリアさんに声を掛ける。セシリアさんはイキナリだったので驚いたのか、運んでいた小型のモニターを落としそうになったのを空中でキャッチした。
「危ないっ!ふう、コレは俺が運んでおくから一夏に高速戦のレクチャーをお願いしたいんだけど・・・・」
「わ、分かりましたわ!わたくしに任せて下さいっ!!」
落ち込んでいたセシリアさんの顔が華やかなモノに変わっていく。フォローはこれで大丈夫だろう。
「という訳だ一夏。しっかりセシリアさんに教えて貰ってくれ」
「お、おう。よろしく頼むな、セシリア」
「はい!まずは高速戦闘のアドバイスをします。一夏さんは___」
セシリアさんのレクチャーが始まったのを見てから、キャッチした小型モニターを所定の位置まで持って行き配線を繋いで画面の設定をしてから外に出た。
焼けつきそうな日光に手をかざして影を作りながら浜辺で紅椿の調整をしている束さんと箒を注視した。
「・・・・束さんが箒の気を引き締める薬になればいいけど・・・・どうなるか」
たしかに紅椿の性能は圧倒的だ。だが、操縦者は箒だ。いつも朝に鍛錬してる時の箒なら安心出来るが千冬さんに呼ばれた時の箒の声は弾んでいた。
その様子はまるで新しい玩具を買って貰った小さな子供の様だった。あの様子だと何かあればアッサリと揺らいでしまうから怖い。
だから束さんと二人っきりの状況を作り出して今の内に冷静にさせようとしているが、果たしてどのくらいの効果が期待できるか・・・・
「・・・・しょうがない、保険を掛けとくか・・・・」
「どう保険を掛けるつもりなのよ?」
深く考え過ぎていた所為か、背後に鈴が近付いている事に気付かずに声にしたのを聞かれた。振り返ると不機嫌そうな顔をした鈴が居た。
「・・・・いや、これから一夏に戦闘に関する心構えとか教えようと思ってな。ソレだけでも意外と役に立つモノだろ?」
「・・・・また半分嘘を吐くか・・・・」
俺の言葉を聞いた鈴が俯き小さく溢した言葉。一夏なら聞き逃したかもしれないが俺はハッキリと捕えた。
「・・・・悪いな、でも今回のはすぐに分かるから心配しなくていい」
「そう。それとアンタが前に吐いた嘘の半分がアレね・・・・」
ラウラを助けた時の専用機の話だろう。確かにあの時のアルケーはISじゃなかったから半分嘘を吐いた。いや・・・・
「隠していた・・・・アンタの嘘は何かを隠す為に吐いているって感じね」
「その通り、これで分かったろ。俺は俺の為に嘘を吐いてるって」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
黙ってしまった鈴の横を通り過ぎると袖を掴まれて止められた。
「・・・・でも、アンタの嘘で__」
「暇ならさ一夏にアドバイスを頼んでいいか?アドバイスする人が多ければ多いほど一夏の決意が固くなるし成功率も上がるだろうし」
何かを言おうとした鈴の言葉を遮って俺は誤魔化した。何を言おうとしたかが何となく分かったから。
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ならシャルロットとラウラにも頼むか、山田先生なんか食い付きそうだな」
「・・・・・・・・バカ・・・・」
その小さな言葉も聞こえていたが何も言わずに笑顔を作って鈴と一緒に一夏達が居る部屋に向かって行った。
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時刻は11時半になろうかとしている。岬の近くの森で涼んでいる束さんに近づいた。
「お疲れ様です。箒の様子はどんな感じでしたか?」
言葉にしないが計画に関する事柄が含まれているのを束さんは当たり前のように理解している筈だ。
「うーん・・・・少し会わないだけで・・・・おっぱいが凄く大きくなってた!」
・・・・分かっている筈・・・・だよな。
「そ、そうですか。すくすくと成長してて良かったですね」
「うんうん!やっぱり実際に会うのは良いね・・・・そして、少し哀しいね」
「・・・・ごめんなさい、謝る意味が無い事は理解しています。・・・・それでも、謝ります。本当にすみません・・・・」
束さんの笑顔に哀しみが混ざってるのを見て俺は胸が張り裂けそうになり、俯いたまま意味の無い謝罪を口にした。
ふわりと優しい香りがしたと思ったら束さんが俺を抱きしめた。
「大丈夫だよ、私は大丈夫。それにシっくんが居てくれてホントに助かっているんだよ。何もわからないまま世界がそんな事になったら私は耐えきれずに死を選んだと思うから・・・・だから、自分を責めなくていいよ」
束さんの言葉を噛みしめてゆっくり深呼吸した。
「もう一度聞きます。箒の様子はどんな感じでしたか?」
「かなり危うい状態だよ、もしかしたら失敗するかもしれない。それにコアのリミッターを解除した事も気がかりだから・・・・」
「分かってます、万が一の場合に備えて俺も行きます。同じ速度は出せないでしょうが助けるくらいは出来るかと・・・・」
束さんから一歩離れて考えを口にすると束さんの笑顔が元に戻った。
「いつもゴメンね。でもお願い、いっくんと箒ちゃんを守ってあげて」
「もちろん、その為に俺は力を求めているんですから・・・・」
アルケーを纏い、紅と白が重なって空を翔けて行くのを見て、同じ場所に向かう様に飛び出した。