スミマセン、間に合わなかった・・・・
そして難産・・・・どうしようもない・・・・
「全員眠ったみたいですね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
天井の一部を外して部屋に降りて足元に転がっている超小型の催眠ガス噴出機を手に取った。部屋で起きているのは俺とディスプレイ前で立っている千冬さんだけだった。
「さすが千冬さんですね。この催眠ガスは猛獣だって気付かずに寝てしまうシロモノですよ」
「ふん、だれが猛獣___いや、猛獣と変わらないか・・・・」
いつもと同じように腕を組んで立っているが、その姿は覇気が薄くて親しい人が見れば見ていられない程である。
「まあ、落ち込んでると思ってましたよ。作戦が失敗したのも一夏が怪我したのも全部自分の所為だ__とか考えてたんでしょ」
「フフフ、嗤ってくれ。まだその方が気が楽だ___な、何を・・・・!?」
黙ったまま背を向けて立ったままの千冬さんと背中合わせにくっ付いた。こんなにアッサリ近づけること自体が珍しいし慌てて言葉が詰まる事も珍しい。
「ップ・・・・ククク、そんな珍しいくらい可愛い反応しないで下さいよ。面白くて笑ってしまうじゃないですか」
不意に後頭部で後頭部を殴られた。
「大人をからかうな。少し予想外だっただけで普段ならこの程度で慌てるかバカモノ」
「そりゃ珍しいモノが見れて儲けものでした」
少しの間だけ心地よい空気に包まれたが千冬さんはソレを良しとしなかった。
「・・・・すまんな、お前の気持ちに気付かなくて・・・・」
「・・・・ハイ?一体何を言ってるんですか?」
千冬さんが溢した言葉に俺は意味が分からずに声が裏返ってしまった。
「ック・・・・フフフ、珍しい反応をするな。思わず笑ってしまったじゃないか」
「いやだって、意味不明な事を言いだすから自分の責め過ぎで頭が~~ッ痛~!」
また首を振って後頭部で後頭部を殴られ舌を噛んでしまった。
「誰も頭がおかしくなってない、いいから黙って聞けバカモノ」
「ひゃ、ひゃい」
ひりひりする舌の所為で返事が変になったが千冬さんは一息吐いた。
「気付いたのではなく、教えられたのだがな。お前の初恋が私だったんだな。こんなに長い間、気付かなかったとは・・・・一夏の事を笑えんな」
「だ、誰に教えられ__いや、教えたのは一夏しか居ない・・・・あの鈍感シスコン野郎・・・・」
怒りと恥ずかしさで声が震えている。
「落ち着け、私に教えたのは一夏じゃないボーデヴィッヒだ」
千冬さんの言葉に冷静になった。そもそも一夏のシスコンさを考えたらワザと黙ってる筈だ。
「へ?そんな事を教えた覚えはな___あの時か・・・・」
「ああ、助けられた時に記憶が流れ込んで来たと言っていたぞ」
そうだ、脳量子波を全開にして頭突きをした時に記憶が流れ込んだ気がしていたんだ。
「お前には色々と謝らなければならない事がある。さっき言った通り・・・・気付かなかった事、あの時・・・・助けてくれたお前を殺しかけた事、そして・・・・勝手にお前の思いを決めつけていた事を__」
言葉を遮る様に少し背中を丸めた千冬さんにもたれかかる様に体重を掛けた。
「謝る必要なんてないですよ。あの反応は人として当然の反応です、気にしてませんから気にしないで下さい」
「嘘だな。あの後、私への接し方も変わった。それにVTシステムの時のお前は哀しそうな目をしていた」
その言葉を聞いて何故かむず痒くて笑ってしまった。
「フフッ、そうですか見られてましたか・・・・」
「なにが可笑しいんだ?」
「いえ、なんて言うか俺を見て分かってくれる人が居るって聞いて・・・・そうか、嬉しいんですね。そういう人が増えるって事は」
「____________」
千冬さんが黙ったまま静かに震えた。
「本当に分かってくれる人ってアリーくらいでしたから・・・・慣れていなくて」
「なにが分かっているだ・・・・お前の気持ちに気付かず、誰かに助けられた事も気付かず、自分が強くなった気になって、自分が変わった気になっていた愚かな人間。お前に見限られて当たり前の人間だ」
「ああ~、忘れてた。そういえば、そんなアホな事を考えていたって聞きましたね。一夏に」
千冬さんの震えが止まり静かに笑い始めた。
「そうか、一夏から聞いたか。アイツには優しい言葉を掛けて誤魔化したのか?」
「いえ、正直に言って誤解を解いただけですよ。説明したんですよ、俺の初恋の人が千冬さんだって。接し方が変わった理由はソレだって」
「意味の分からん事を言うな。どうせ幻滅したんだろう?」
「そうです、自分に幻滅したんです、千冬さんと一緒ですよ。あの時の俺は自分で勝手に千冬さんの気持ちを決めつけ、その思いを自分の甘い幻想に押し付けていた自分に幻滅したんです」
俺が言った言葉の意味が分かる様に少し間を置いてからもう一度口を開いた。
「だから、そんな独りよがりが嫌で接し方を変えたんです。本当の千冬さんを知ろうと思ったから変えたんです、頼らない様に貴女と対等な立場になる為に」
「・・・・そうか、こんな私でも今ならお前の気持ちが分かった気がする・・・・」
「誤解が解けて何よりです。それと今回の事は千冬さんの所為じゃないですよ。俺と束さんで千冬さんに思考誘導を掛けましたし、それに亡国企業が一枚噛んでます」
「どう言う事だ?」
「簡単な事です、銀の福音は白騎士と同じ軍用型です。コアネットワークからの情報ですから間違いないかと」
「最低でもセカンドシフトしなければリミッターは外せない筈だ!もしくはリミッターの外し方は束しか知らない筈・・・・」
「まったく違うやり方で無理やり外したんですよ。その所為で自らコアネットワークを切断して孤立しました。最後に伝えた思いは操縦者を守りたいでした」
普通の人なら機械が人間みたいな事を言う訳が無いと笑うかもしれないが千冬さんは違う。少なくともISの意思を感じた事がある人だから。
「だから、俺は行きますね。分かりやすく言えば尻拭い、分かりづらく言えば意思を発露したISとその操縦者を助けるためです」
一瞬だけ更に体重を掛けてバネの様に跳んでふすまを開けて部屋の外に出た。
「四季!」
「行ってきます」
横目で千冬さんを見ながらふすまを閉めて空に飛び上がった。
次回から福音戦!?
どうしよう・・・・難しい・・・・