ゆっくりと光が霧散していくのをデュナメスは見ていられなくなったのか視線を逸らした。
擬似太陽炉は圧縮すると毒性が強くなる。その状態で完璧な不意打ちで狙撃したのだ、たとえ生きていても傷は治せずやがて死に至る事まで考えたのだろう。
「・・・・ッィィィィィィィ・・・・」
小さく、本当に小さく、その響きに俺は聞き惚れてしまった。
段々と違和感が大きくなっていく。いくらエネルギーを溜めていたとしても余りにも光の霧散が遅過ぎる。絶対防御で操縦者を守ったとしても____
そして、気付いてしまった。絶対防御が発動したのならビームは貫通しない事に、操縦者の身体に届く前に止めるかISを強制解除させてでも無理やり回避させる筈なのに何も起きずに貫通した。
余りにも手並みが鮮やか過ぎて命中したと思っていた。が、今にして思えば綺麗に事が運び過ぎだ。少なくとも撃たれた後でも視線を此方に向けるくらいは出来る筈だ・・・・
「・・・・ヤバい、伏せろぉっ!!」
「っ___!?」
俺の言葉にデュナメスが反射的に従うと霧散した筈の光の粒から輝きが消えていない事に気が付いた。そして、銀の福音が踊る様に大きく翼を振るうと全ての光の粒がエネルギー弾になり全方向に放たれた。
俺も出来るだけ身体を小さくして爆破の衝撃に耐えた。俺は運良く直撃は無くて周りを見ると空で立っているのは銀の福音だけだった。
「っ___直撃コースだった筈だろ・・・・」
デュナメスも運良く直撃は無かったらしく爆破の衝撃に目を回しながらも信じられないと頭を振った。
「熱でビームを屈折させ歪め曲げて貫通したように見せかけた。エネルギーを溜めて光を強くしていたのは熱を溜めるのと同時に直撃を避けた事を誤魔化す為だ。おそらくお前の位置を割り出す為だけに・・・・」
「な、なんだと・・・・?そんなバカな、機械がそんな・・・・」
驚愕に染まったデュナメスに向けて銀の福音が頭の上にエネルギーを溜めて大きな弾を作っている。
「言ったよな、アンタ等は1人の人間をバケモノにしたって。パイロットの事だと思ってた?そっちじゃない、俺はIS自身が1人の人間と比喩してたんだよ」
まだ俺の言葉が理解できないのか呆然としているデュナメスに向かって今度こそ必殺のエネルギー弾__いや、エネルギー波が撃たれた。
このままでは近くにいる俺も巻き添えを喰らうので自壊覚悟で奥の手を使おうとした。
「__トランザ__」
『その必要はねぇ、下手に動くんじゃねえぞ』
頭に響き渡る声、聞き慣れた一番安心する声が聞こえた瞬間、強張っていた心と体が安堵で安らいだ。
動かない2人とエネルギー波の間に真っ白な機体を纏った一夏が入り込み左手を掲げると光の膜が広がりエネルギー波を掻き消した。
「初めて助ける事が出来たな・・・・これで胸張って四季の友達だって言えるか」
「はっ、アレくらい俺1人なら避けていたさ・・・・ただし、ソコに居る奴は見殺しにしていただろうけどな」
俺の視線の先にはデュナメスが一夏に信じられないような疑うような目をして見ていた。
「そいつは今回の事件の原因になった1人だぜ。それでも助けるのか?」
「ああ、助ける。それが俺の覚悟だ。その為に俺は力を求めた。だから俺は自己満足だとしても自分の想いを貫き通す。自分の手の届く範囲で誰かを守ってみせる!」
歳を重ねるに連れて揺らいでいた一夏の眼が幼かった頃と同じ光を取り戻して輝いていた。
「そうか・・・・やっぱ一夏は凄えな・・・・」
「ん?何て言った?」
「何でもない、いいから前見ろ。敵さんが近付いて来てる、俺も手伝うから・・・・いや、俺も一緒に倒すから先に行っててくれ一夏。すぐ追いつくから」
「っ~~~!おう!俺が倒す前に来いよ四季!!」
一夏は喜びを噛みしめながら銀の福音に向かって飛び出した。
「はぁ、ようやく機嫌直してくれた?ったく、大変だったんだよアリーが居ないとファングを十全に使えないし、使わない時に限って敵も多いし、お陰で全身ボロボロだよ」
機体から噛み殺し切れてないアリーの笑い声が聞こえてくる。
「悪いな、いい加減あのバカに現実ってモンを教えていたんだよ。そしたらあのバカ、ただのバカじゃなくてなぁ、大バカだったんだよ!傑作だったぜぇ、コアに力を求めた時のアイツはぁ!」
「ふ~ん、そっか。それよりもアリーに殺されたなんちゃらマイスターって人が目の前に居るんだけど覚えてる?」
アリーの声を聞いてから微かに震え続けているデュナメスは口を開いた。
「ガンダム・マイスターだ。二回目だ、しっかり覚えろ。俺が分かるか?KPSAのテロで家族を殺され、お前を殺した男だよ」
「ああ?そういや居たな、そんな奴。で?もう一度俺に殺されに来たってかぁ?テメエも懲りない奴だなぁ」
「黙れ!」
2人のやり取りを端から聞きながら俺は疑問に思った事を口に出さずに別の事を言った。
「それよりも俺はそろそろ行くけど、今度こそアンタは邪魔だからサッサと逃げてね。裏にボートを隠してるんだろ?」
「おいおい、殺しといた方が良いンじゃねぇのか?また邪魔になるぜ」
「ん~、大丈夫だと思うよ。だって、この人捨て駒にされて組織を信用できなくなってるし。それに、アレだけボロクソに言われたら考えも変わるでしょ?」
俺の見逃す発言にアリーが反論を返すが更に俺が続けた言葉を聞き、デュナメスは静かに口を開いた。
「・・・・アリー・アル・サーシェス、その身体の持ち主を壊す、もしくは殺してみろ。今度も俺が必ず殺してやる・・・・そう思って行動しろ。分かったな・・・・?」
俺はアリーが返事を返す前に飛び上がり先程の疑問を投げかけた。
「アリーってアレに殺されたんじゃなかったよね?確かアレの弟に殺されたんじゃ・・・・?」
「ああ、そン通りだ。どうも自分が殺したと思っているみてえだな」
「・・・・まあ、別にどうでもいいか」
「ククク、確かになぁ。好きだぜぇ、そういうアッサリとした考え方は」
ありがと、そう言いながら俺とアリーは銀の福音との戦闘を始める為に右手にバスターソードを握った。
不思議とシールドエネルギーがない不安や身体にある痛みを忘れて湧き出てくる興奮に身を委ねて俺は笑っていた。