IS もう1人の俺は戦争屋   作:悠連

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難産です、事後処理が此処まで難しいとは・・・・



その頬笑みは

 

「行ってきます」

 

四季がその言葉と共に飛び出して行き、その場には赤い粒子しか残っていなかった。

 

__亡国企業__その言葉を聞いて不安が胸に溢れた。

 

しかし、私自身は直接対峙した事が無いが一夏のクローンを用意できるくらいだ。組織の大きさと闇の深さは考えもつかないモノだろう。

 

少なくとも私よりも四季の方が確実に亡国企業の恐ろしさを理解している筈だ。

 

少なくとも私よりも四季の方がリミッターの外れたISの恐ろしさを理解している筈だ。

 

少なくとも私よりも四季の方が命のやり取りをする戦いの恐ろしさを理解している筈だ。

 

それなのに__行ってきます__と言った四季は微笑んでいた。

 

私を安心させる為の頬笑みだった。

 

だからこそ、私はその微笑みで四季自身に不安を覚えた。

 

小さな体で幼い顔立ちで同じ頬笑みを浮かべ傷付きながらも私を守ってくれた過去を思い出すから。

 

四季は自分の限界を知っている。だが、他人とは限界の意味が違う。

 

二度と動かせなくなるまで、たとえ死んでしまっても何処かが動く限り限界ではないから。

 

だから不安になる、そんなボロボロになった姿を想像してしまうから。

 

しかし不安とは裏腹に、銀の福音を四季も含めて専用機持ち全員で倒した。

 

最後は全員無事で朝日を見ながら勝利を喜んでいる通信が入っていた。

 

だが、誰かの悲鳴が聞こえると全員が取り乱した。唯一ボーデヴィッヒだけが砂浜に救護班の用意をお願いしますとだけ言った。

 

その瞬間、私は不安が現実になった事を理解した。

 

涙を浮かべた凰が抱えていた四季の姿は地面に叩きつけられて壊れてしまったマリオネットの様だった。

 

私は想像していたお陰で極めて冷静に事を進め、正気を見失いかけている者達を一喝して旅館に留まらさせて私1人で緊急搬送された病院へ向かった。

 

私は緊急手術していると思っていたが身体を固定させてベットの上で寝ている四季が居た。

 

私は訳が分からず医師に話を聞くと愕然とした。

 

とてもじゃないが、手をつけれる状態ではない。身体で無事な骨が何1つ無い状態で内臓が無事な事が奇跡で今生きている事自体が奇跡だと。

 

少なくとも今すぐ手術すれば患者の体力が持たずに死に至るので今は何もする事が出来ないと。

 

私は頭が真っ白になり何をしていたか覚えていない。

 

気が付くと辺りは暗くなっていて海に戻っていた。ふと視界を上げると岬の柵に腰を掛けて足をブラブラさせている不思議の国のアリスの恰好をしている幼馴染の姿を見つけた。

 

自然と足が向いて話が出来る距離になっていた。

 

「やあ、ちーちゃん」

 

「何をしているんだ?」

 

私は挨拶を返す事すら忘れて何処か責めている風な声に聞こえた。

 

「えへへ、シっくんを待ってるんだ~」

 

何処か嬉しそうに言った言葉に今度こそタカが外れてしまった。

 

「本当に来るとでも思っているのか!?」

 

「うん、必ずシっくんは来るよ」

 

いくら怒鳴り声で返しても束の声色は変わらない。嘘をついてないし、言った通りになると確信している。

 

「今まさに生死の境を彷徨っているのにか!?」

 

「死なないよ、そういう身体にしたもん」

 

変わらない声に私は理解が一瞬遅れて、そして意味が分からず沈黙を選んでしまった。

 

「大丈夫だよ、殺されない限りシっくんは死なない。そして元の身体に治すのは私がする事。これも計画の一部だから心配いらないよ」

 

恐ろしい事を言っている筈なのに変わらない声色に私は恐怖を感じた。

 

「・・・・なんなんだ・・・・何なんだ!?ソコまでして成し遂げようとしている計画とは何だ!?ソレは四季が死に掛けても成し遂げねばならないモノなのか!?」

 

「ええ、悪魔に魂を売ってでも成し遂げたいモノです」

 

生命溢れる緑色に光る粒子と血と同じ赤色に光る粒子が頭上から舞い落ちている事に気が付いた。

 

声を聞いた時点で分かっていた筈なのに私は信じられず上へと視界を上げると赤い機体を身に纏った四季が居た。

 

「束さん、お待たせしました。送っていきますよ」

 

「うん!早く戻らないとね!」

 

四季はゆっくりと束の前へと舞い降りて手を差し出した。

 

「し、四季。ISの生体再生を・・・・」

 

「受けてないですよ、アルケーのISコアは出来立てホヤホヤです。生体再生は出来ません、でもパイロット保護で束さんを送る事は出来ます」

 

差し出した手を取った束を抱きかかえる四季の姿を見て堪らなくなった。

 

「今の自分の状態を分かっているのか?何故その状態で束を送ろうとしている?」

 

「だからこそだよ、ちーちゃん。言ったでしょ?元の身体に治すのは私がするから心配いらないよ、一カ月もしない内に完治させるからね」

 

訳が分からない私は何故か悔しくて俯いたまま言葉を重ねた。

 

「何故っ・・・・私に何も教えないんだ・・・・」

 

その言葉に誰も何も言わず、場に沈黙してしまったが四季が口を開いた。

 

「俺と束さん、2人とも貴女を本当に大切に想っているからです」

 

「それと、話は変わりますけど・・・・皆への上手い言い訳をお願いしますね」

 

そう言って笑った四季は束を抱えたまま空へと飛び出した。

 

しばらく呆けていた私だが実にくだらない事を思い出していた。

 

「・・・・そういえば「行ってきます」って言った癖に、まだ「ただいま」って言ってないな・・・・」

 

そんな事を考えながら私は旅館へと戻っていった。頼まれた通り皆へどう説明するかを考えながら。

 

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