IS もう1人の俺は戦争屋   作:悠連

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ヒーローが

 

目の前に鎮座しているIS、私の専用機の『打鉄弐式』。

 

倉持技研が最初に考えた機体にはなった。使おうと思えば使えるモノにはなった。

 

何度もテストの為に展開して空も飛んだし、一度だけお姉ちゃんとも模擬戦闘をした。

 

だけど、まだ完成していない。どうしても必要なモノで足りないモノがあるから。

 

四季くん、私の友人であり、恩人であり、大切な人だ。

 

その人は今は近くに居ない、出会った当初はとても近くに居た存在だったのに。

 

少しずつ離れた筈なのに私は気付かなかった。お姉ちゃんとの長年のわだかまりが解けたからだ。

 

お姉ちゃんが言ってた__

 

「彼の言葉のお陰で私は逃げずに簪ちゃんと向き合うことが出来たの、今になって感謝するっていうのも変かしら?」

 

あの人は全部分かっていたのかもしれな__いや、それはないか。お姉ちゃんの名前すら知らなかった訳だし。

 

何にせよ、全て彼のお陰だと思う。切り捨てられた私の専用機を形にしたのも、孤独だった私を救ってくれたのも、お姉ちゃんと一緒に居るのすらも。

 

だから私は彼の存在に甘えていた。悪と戦うヒーローではないが、近くに居て私を救ってくれる私のヒーロー。

 

彼が重傷を負って帰って来れなくなった時は凄く心配したが少し経って気が付いた。

 

彼が居なくても孤独を感じない事に、彼が居なくても私の日常は何も変っていない事に。

 

近くに慰めてくれる姉が居て、機体を組むのも既に設計図があるのでパーツを組み立てるだけ。

 

友人なのに恩人なのに大切な筈なのに、私にとって彼は必要な存在じゃなくなっている事に気が付いた。

 

ヒーローは必要じゃなくなったらどうなるのだろう。考えるまでも無い、居なくなるのだ。

 

そこまで考えて私は怖くなった。彼が居なくなるのも、その事を受け入れそうな自分にも。だからこそ、自分にとって必要ない筈の彼を縛り付けてでも傍に居させようとする自分勝手な想いにも。そして、彼はこのまま帰って来ないかもしれないことにも。

 

だから、私は完成してるが完成していない『打鉄弐式』の所に居る。完成してない事だけが彼を必要とする理由だから。

 

整備室のドアが開く音がする。此処に来るのは2人だけ、今は1人だけだけど。

 

「・・・・簪ちゃん、そんなに心配しなくても必ず四季君は帰って来るわよ。だから__」

 

お姉ちゃんが佇んでる私を見て心配して慰めてくれる。

 

「また、模擬戦でもしよっか!今よりも強くなって帰って来た四季君を驚かそう!」

 

でも、お姉ちゃんは私が心配している訳を思い違いしている。その所為で嬉しいのに何処か複雑な気持ちになってしまう。

 

私は心配してくれる姉に申し訳ない気持ちと素直な感謝を込めながらも断ろうと思った。

 

「うん、ありが___」

 

「それは良いですね。もう少しで調整が終わると思いますのでテストも兼ねて模擬戦をして下さい」

 

私の声を遮る様に何処かから声がした。

 

私とお姉ちゃんは2人して身構えて辺りを見回した。

 

この第三整備室はお姉ちゃんが気を使ってくれるお陰で誰も入らない様にしているので中に一般生徒が入る事はない。

 

つまり、もう1人の男性操縦者が開発を手伝っているISのデータを盗みに来た何か。と考えて2人して身構えて警戒しているが頭の何処かで聞き覚えのある声だと思っていた。

 

「なんで身構えるんですか?それに俺は此処に居ますよ~」

 

先にお姉ちゃんが誰か分かったのか警戒を解いて驚愕と書かれた扇子を広げて口の前に持っていった。

 

「一体、何時の間に帰ってきてたの?駅の監視カメラに映ったら連絡が入る様にしていた筈なんだけど」

 

私も分かっていた筈なのに信じられないのか構えたまま固まってしまい顔だけお姉ちゃんと同じ方に向けた。

 

「簡単です、上空10万メートルからのパラシュートなしのスカイダイビングをして着地時に一瞬だけISを展開しただけです」

 

『打鉄弐式』の背後からピョコピョコと手を振っているのが見える。視線を下に落とすと右手を振りながら左手を空中投影のディスプレイに走らせている四季君が居た。

 

「様々な気流が乱れているのを全て読み切って?」

 

「ええ、難しい事じゃないですよ。ISの処理能力に任せれば確実に成功しますし」

 

「でも、実際にやろうと思う人は居ないでしょうね、気流だけじゃない、気圧や気温、様々な障害があるし」

 

「案外イケますよ・・・・たぶん・・・・」

 

「そんな自信なさげに言われたら、やる人は居ないと思うわよ」

 

「でしょうね、言い直します。お勧めしません」

 

そう言って笑い合う2人を眺めながら私は端っこで膝を抱えて蹲っていた。

 

「どうせ私なんて胸もちっちゃくて可愛げもないしカッコ良くも無いし根暗だし・・・・」

 

「うわっ!簪さんがイジケテ鬱っぽくなってる!?」

 

「わーわー!大丈夫だよ!簪ちゃんは可愛いし落ち着いているから人を安心にさせるし!」

 

2人の焦った様子が面白くてしばらくの間、いじけた振りを続けた。

 

___________________

 

 

「機体の感覚はどう?何か違和感はある?」

 

空けてあったスペースに擬似太陽炉を嵌めて遂に完成した『打鉄弐式』を纏って飛んでいる簪さんに通信で問いかけた。

 

「大丈夫、むしろ重心が安定して操りやすくなっているくらい」

 

簪さんからは考えられない程に楽しそうな声色で答えてくれた。どうやら問題ないようだ。

 

「なら、そろそろ更識会長にもお願いを・・・・」

 

「あ~!今日はこれで終わり終わり!!それよりも君は私たち姉妹を心配させた罪があります!」

 

ビシィッと指を突き付けられた俺と巻き込まれた簪さんは一緒に連れて行かれた。

 

「あの、一体どこに行く気なんですか?」

 

「ふふふ、1つ2500円の期間限定パフェを売っている、@クルーズよ!!」

 

2500円!?と驚きながらも俺は握られた手を振り解く事が出来なかった。

 





視点がコロコロと変わってしまい、申し訳ありません。
最後に主人公視点に帰りました。
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