逃げた先の第二アリーナで白い機体を纏って剣を振っている一夏を見つけた。
「へえ、夏休み中にも特訓なんて殊勝なことだな」
「え・・・・あっ!?四季じゃねえか!身体はもう大丈夫なのか!?」
少し汗を滲ませながら一夏が驚いた様子で俺に近づいてきた。
「心配御無用、このとおり全快したよ」
右肩を勢い良く回しながら答えた。
「それよりも1人で特訓ってのが珍しいな。皆はどうした?」
アリーナの何処を見ても誰も居ない、まあ夏休み中だし当然か?
「な、夏休み中だし皆に迷惑かけるのも悪いと思ってさ、夏休み中はずっと1人でやってたんだ」
「なるほど、悪い事言わねえから皆に__特に箒とセシリアさんには絶対に夏休み中の特訓の事は言うなよ。分かったな?」
「お、おう。そんな恩着せがましい事は言わないけど何でだ?」
「あ~、皆とは友達なんだろ?」
「あ、ああ。だからこそ迷惑かけるのは悪いと思って___あ・・・・」
困惑していた一夏の顔が理解したのか口を開けた状態で固まった。
「お前、俺が迷惑を掛けたくないからって何も言わなかったら嫌じゃないか?」
「そう・・・・だよな、分かった。この事は絶対に誰にも言わない様にするよ。・・・・それで何で四季は此処に居るんだ?」
その事に話を持ってこない様にしてたのにアッサリと話題を。
「ま、まあ。色々あってな、ほとぼりが冷めるまで雲隠れしててな、灯台もと暗しってやつだ」
「そうか、四季も大変だな・・・・それじゃ俺は特訓を再開するから」
そう言って俺から背を向けた一夏に右手の部分展開と同時にバスターソードも展開して一夏の首に添えた。
「なっ、何をっ!?」
突然の事に驚いて顔を横にして片目で俺を見ている一夏の姿に思わずため息を吐いた。
「お前は今まで話していた事を全部忘れたのか?鶏の頭だって覚えてんじゃねえのか」
「えっな、何を!?」
「__特訓に付き合ってくれないか__の、一言くらい言えねえのかバカモノ」
「あ」
「あ、じゃねえよ。それで何か言う事はないのか?」
再び口を開けたまま固まってしまった一夏に呆れながら言った。
「うっ・・・・と、特訓に付き合って下さい。お願いします」
一夏は自分が恥ずかしくなった所為か肩を落として呟いた。
「了解。どうせ、特訓すれども強くなってないと思って焦ってんだろ?だから思考が鈍って何を話していたか忘れるんだ」
「ううっ・・・・は、はい。その通りだと思います・・・・」
「それに一夏が1人でやっても自分を正確に計れないから焦る、焦れば効率が悪くなって更に強くなりずらい。まさに悪循環だな理解したか?」
「わ、分かったから・・・・これ以上は・・・・」
更に肩を落として落ち込んでいく一夏。
「それにしても、何で夏休み中に特訓をしてるんだ?お前なら夏休みくらいって言いそうなのに」
「え、まあ、覚悟決めたって言ったし・・・・もっと強くならないと何も出来ないし・・・・」
「誰に言ったんだよ?少なくとも俺は何も知らないし聞いてないけど」
頭の何処かでアリーに言ったんじゃなかろうかと考えていたが聞いてない事は事実だ。
「いや、誰かは分からないんだ。ただ、その誰かに凄え色々言われて俺は現実を教えられたんだ。でも逃げたくなかった、捨てたくないモノがあったから俺は___ま、まあ何でもいいじゃん!早く特訓を始めようぜ!」
急に恥ずかしくなったのか、一夏は無理やり話しを切ってアリーナの中央へと進んだ。
「こりゃ確定だな、確かアリーも現実を教えるとか言ってたし・・・・」
「おーい!何やってるんだよ?早く始めようぜ!」
考えに耽っていた俺に一夏は待ちきれないのか此方に手を振りながら声を上げている。
「分かってるから大きな声を出すな、勘ずかれたら厄介なんだよ」
そう言いながらアリーナの中央まで歩いて行き一夏と相対してアルケーを纏った。
「どうしたモノ珍しそうな目をして?アルケーを見るのは初めてじゃないだろ」
アルケーを纏った俺を一夏が見つめてくる。
「いや、落ち着いた状況で見るのは初めてだからさ。改めて見ると異形な機体だよなって思って」
「あっそ、それじゃ模擬戦でもするか?」
バスターソードを握った右手を横に振って脱力しながら構えた。
「分かった。それじゃ行くぞ!!」
一夏は一直線に進み、雪片二型を袈裟がけに振ったのをバスターソードで受けると一瞬力を込めて刀を弾いて抜き胴を放った。
刀を弾かれた時に体勢を崩さなかった俺は冷静に抜き胴を受け流すと一夏は受け流された勢いを止めずに俺との距離を開けた。
俺も受け流した勢いを溜めに使って一夏を追いかけてバスターソードを振るった。
一夏は距離を取ったので俺と同じように受け流すか避けるかと思っていたら若干動きが機械的なモノになり対応が遅れて真正面から受けた。
「くっぉ・・・・!?」
見ため通り重量も力もバスターソードの方が上なので一夏は体勢を崩されてしまい膝を着けたが上手く受けた。
本来なら蹴りなどを使って連撃をする所なのだが特訓なのでワザと鍔迫り合いを続けた。
「っ!おおっ!!」
一夏は下を向いて鍔迫り合いを耐えながら左手の『雪羅』の荷電粒子砲を俺の方へ向けようとした瞬間、体重をバスターソードに掛けながら一回転しながら一夏の頭上へと跳んだ。
「なっ・・・・!?ぐうあっ!」
俺が目の前に居ると思っていた一夏は頭上に跳んだ俺に驚いて動きが止まり一回転しながら撃った踵の一撃を喰らった。
「あっ・・・・ぐぅっ!ぐあっ!!」
着地してから振りかぶり一夏に追撃を掛けるが、さっきと同じように一夏の動きが機械的な部分が入り対応が遅れて受け流す事も受け切る事も出来ず吹き飛ばされた。
「っく・・・・!」
吹き飛ばされながらも空を飛んで俺との距離を空けた。息を整える暇を与えない為に同じように空を飛んで追撃を掛ける。
何度か一夏の雪片と俺のバスターソードがぶつかり合うが必ず一夏の体勢が崩されてしまう。その度に機械的な動きでPICを制御して動きが遅れる為、自然と一夏が防戦一方になってしまう。
「はあ!はあ!はあ・・・・!!」
ワザと距離を取ると一夏は潜水した後の様に酸素を求めて呼吸を荒げている。
「なるほど、もう分かったから終わらせるぞ」
「な、何をっ!?」
一夏の言葉が終わる直前に『瞬時加速』で距離を詰めて右に大きく振りかぶったバスターソードを叩きつけた。同じように体勢を崩した一夏に瞬時に返した刃を叩きつけて無防備な状態にした。
「がはっ!」
「まだまだぁっ!」
返したバスターソードをバスターソードを両手で構えて二回斬りつけて三回目で地面へと叩きつけた。
「まっ、こんなモンだろ。思った以上に成長してたな」
叩きつけられた一夏は絶対防御が発動してシールドエネルギーがゼロになった。