遅れました。というか前に投稿した、ちょっと・・・・疲れた・・・・の後で
発熱・病院・肺炎・入院・の四『死』のコンボを喰らいました。
辛かったなぁ、スミマセン言い訳ですが許して下さいm(._.)m
頬を撫でる風がやけに冷たく感じる。
まだ八月、昨今の日本は温暖化が進み身体に纏わりつくような湿度も温度も高い筈なのに風が冷たく感じるのは明らかにおかしい。
いや、異常な量の冷や汗が風に冷させれて身体が冷えているのだろう。
それに、長い距離を走っている筈なのに足に疲労を感じない。
いや、恐怖が疲労を感じる間もなく足を動かさせているのだろう。
「よし!よし!一回、一回でイイですから落ち着きましょうか!ね!ね!」
後を追いかけている恐怖の塊に向けて言葉のキャッチボールを試みる。
「なら止まらんか!せめてコッチに顔を向けて言わんかバカモノ!!」
「それは無理です!俺もテンパっているから足を止められそうにありません!!」
キャッチボールどころか自分から暴投して逃走してました。
「まずはお前が落ち着かんかあああああ!!」
何故こうなった。落ち着くためにも思い返してみよう。
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夏休みも終盤に入ったが計画の準備に奔走していた所為で学園に寄り付く事もなかった。
新学期が始まる前に千冬さんに話したい事があるので自宅に戻った時に訊ねようと思っていた。
なので束さんに千冬さんが自宅に戻ったら連絡をくれるように頼んでいたので俺は久しぶりに組織の隠れBARに向かった。
「いらっしゃい、お久し振りです」
「敬語は止めてくれよマスター、今日は時間を潰しに来た只の一般客なんだから」
店内に入るとカウンターには白髪をオールバックにしたダンディーな初老のマスターが丁寧なお辞儀をした。
「だからこそ、この店の店主としてお客様をもてなさないと・・・・」
そう言うと何も言ってないのに座ろうと思っていた席にグラスが置かれた。
「了解、それじゃいつも飲んでるのを」
「かしこまりました」
待っている間、ふと思った事を口にした。
「珍しいな、客が居ないなんて。ここは穴場だから行きつけにしてる客だって居るだろうに」
フランス製の調度品で統一した店内はとても落ち着いた雰囲気で柔らかく光る明りは酷く心に安らぎを与えてくれる。
お世辞抜きでマスターのセンスが光っている良い店だと思う。
「月兎様という方からの御連絡が入ったんですよ。今日は店に貴方様が来られると」
分かりやすい。マスターは知らないだろうけど月兎は束さんだな。
「ったく、そんな気を使わなくてもいいのに。月兎もマスターも」
「それだけじゃないですよ。もうお1人いらっしゃる予定です」
誰か来るか聞く前にマスターがグラスに注いだのは濃い赤色をしたモノだった。
「あれ?いつものじゃない・・・・いや、アリーが飲んでるモノか」
名前はロブ・ロイだったっけ。元々アルコールが強いモノだがコレは更にアルコールが高くなっている筈だ。
「悪いなマスター、もう1つの方を頼んだつもりだったんだけどな」
いつも俺が飲んでいるのはアルコールが入ってない未成年でも飲める特別製のカクテルだ。
「ソレも此方に用意してますよ。これは月兎様からです、来たら出して欲しいと」
?珍しい?束さんがアリーの分も出すなんて・・・・いや、ありえない!
「あ、ラッキーです。珍しいく空いてますよ、織斑先生。」
「そうか、それは喜ばしい事だな」
ハッとして入口を見るとIS学園の教師であらせられる2人が入って来た。
次の瞬間には顔を逸らして見られない様にしていた。
「マスター、いつものを頼む。山田先生もいつものでいいですか?」
「はい、私もいつものでお願いしますマスター」
2人が少し離れた位置に座ってくれたのは不幸中の幸いだった。今の俺の恰好は黒のスーツを着ているのでパッと見では気付く事はない。
いくら千冬さんに話があると言ってもこの状況はマズイ。未成年の学生がBARに居て近くに担任と副担任が居る状況は流石にマズイ。
俺はそう思って、いつものノンアルコールのカクテルを一気飲みしてから席を立ちレジへと進んだ。
教師組のお二人は静かにグラスを合わせている所でコッチを見ていない。
「マスター、悪いが勘定を頼む」
出来るだけ低い声を意識して何気なくマスターを呼ぶと俺が座っていたテーブルを見てマスターが言った。
「女性からの贈り物を蔑ろにするのは男として恥ずべき行為ですよ。コレを飲んでからでもいいでしょ」
テーブルに残っているのはいつもアリーが飲んでいるロブ・ロイ、バリバリお酒でアルコールもかなりきついモノだ。
・・・・スーツ姿で来ているから分かんなかったのかな?俺はまだ未成年ですよ。
「そ、そうだな・・・・マスターの言うとおりだ・・・・」
覚悟を決めて一気に飲み込むとアルコールが強過ぎた所為か喉がカッと暑くなって咳き込んでしまった。
「っぁ~・・・・アルコール強過ぎ、コレはゆっくり飲まないと味が分からないモノだな」
言いながらグラスを置いて改めてレジへと向かい二杯分の代金を置くとジト目で俺を見ている四つの目と視線が合った。
「「「・・・・・・・・・・・・・・・・」」」
既に2人は立ち上がりテーブルに置かれたままのグラスを手に取っていた。
「コッチは匂わないな。山田先生そちらはどうですか?」
「凄まじいの一言ですね。火が点きそうな位のアルコール臭がしますよ。とてもじゃないですけど慣れてない人が一気で飲んで平然としてられないですよ・・・・」
全ての言い訳も言い逃れも出来ない程に調べて考察していらっしゃるお2人を背にして外へと飛び出した。
「山田先生!ここは任せました!私はあのバカモノを追いますので!!」
___こうして追い掛けられていたのか___
ようやく冷静になった頭で黄昏ていると若干予定が狂ったが話そうと思っていた場所が近くなっている事に気がついた。
山の中へと入り木々をすり抜けて行く、大抵の人が俺の姿を見失うだろうけど千冬さんにそんな心配は必要ない。
しっかりと後ろを付いて来ているのを感じながら少し開けた崖で足を止めた。
「はあはあ、よ、ようやく落ち着きました・・・・」
本当は少し前には落ち着いていたが、いつも通り嘘を吐いて本当の目的を隠す。
「はあはあ、そうか、それで色々話したい事が・・・・」
俺と千冬さんは止まると疲労が込み上げ荒い息を整えながらも合った目は逸らさない。
「ちょうど俺も千冬さんに話しておきたい事がありまして・・・・」
「ほう、ホントにちょうどいいな。先に聞いてやるから話せ」
2人とも荒かった息を既に整えており互いに笑いあった。
「では遠慮なく、二学期から生徒会長に一夏のコーチ役を頼みました。もちろん俺も手伝いますがその所為で騒がしくなりそうなので先にお断りを」
「分かった、不出来な弟で悪いがよろしく頼む。・・・・それと他に言うべき事は無いか?」
千冬さんは何かを覚悟したような、期待するような、怯えた様な顔で俺に問いかけた。
「・・・・そうですね・・・・」
言いながら視線を外して崖から見える夜の海へと視線を移した。
千冬さんもつられて同じ方向に視線を向けると特大の火の花が視界一杯に咲き乱れた。
「えっ・・・・?」
千冬さんが驚きで呆けたまま新たに咲いては散っていく火の花に目を奪われた。
「忙しい日々を送っている千冬さんにサプライズプレゼントです」
静かに距離を詰めた俺は耳元で囁くと千冬さんは顔を赤くしていたが俺は気付かない振りをした。
「そうだな、素直に嬉しく思っている」
目を合わさず花火を見つめる千冬さんの隣で俺も同じように花火を見つめる。
「それと千冬さん・・・・ただいま・・・・です」
「・・・・おかえり・・・・だな」
2人の影が花火で揺らぎ重なりあったり離れたりしている中、2人の距離は変わらない。
「ところで何故お前は酒を飲んでいた?贈り物をしてくれた女性は誰だ?教えてくれるよな・・・・」
「いえ、あの、その・・・・い、色々ありまして・・・・」
花火が終わり、月明かりに照らされ再び逃走劇が始まった2人の影の距離は変わらなかった。
次回から原作五巻に突入です!
・・・・おそらく・・・・