なんとか間に合った・・・・
知らない急成長
「はああああああっ!」
「でやあああああっ!」
気合いの声と共に長刀と青龍刀がぶつかり合う音と空気を裂く音が混じり合っている。
九月三日、二学期初の実戦授業は二組との合同。
前半の授業の最後に一組の一夏と二組の鈴が模擬戦をしている。
始めは一夏が優勢だった。セカンドシフトした白式の性能を押し付ける形で鈴に肉薄して『雪片弐型』のエネルギー刃を振るい、離れれば『雪羅』の荷電粒子砲で牽制をしながら再び距離を詰める。
大半の生徒が乗り始めて間もない一夏が代表候補生と互角以上に渡り合っている様に見えたかもしれない。
が、見る人が見れば一夏が鈴の掌で踊らされている事が分かる。
中盤になると苛烈な攻めをしていた一夏の勢いが弱まり逆に鈴に押され始めた。
白式のエネルギーが枯渇し始めた所為で一夏は同じ攻めが出来なくなった。
鈴は『甲龍』と『白式』の機体特性を考え始めからエネルギー切れを狙って防戦に回っていた。
事実、鈴は一夏が振るう『雪片弐型』のエネルギー刃は掠らせもさせてなかった。
鈴は連結状態にした『双天牙月』を振るい一夏の体勢を崩すと足を持って地面へと投げつけて両肩の『龍砲』を構えた。
「これで終わりっ!」
後は一夏が地面に激突したと同時に衝撃砲を連射して終わりだったが此処からが見物だった。
「まだ、まだだぁっ!」
地面へと急速落下していく一夏は独立ウィングアーマーだけを細やかに操作して機体を制御すると地面すれすれで横へとスライドするように移動した。
狙いが外れた衝撃砲は地面を穿ち一夏を巻き込む程の砂煙を起こした。
「なっ・・・・!?」
「うおおおおおおお!」
鈴はとっさに視覚から得られる情報からハイパーセンスから得られる情報に切り替えられず『龍砲』を外してしまい一夏の接近を許してしまう。
「っち・・・・!」
だが、鈴は焦ることなく『双天牙月』でエネルギー刃を展開できなくなった『雪片弐型』を受け止めた。
「っ・・・・はあっ!」
鈴は一瞬だけ力を込めて『雪片弐型』を弾いて連結した『双天牙月』をバトンの様に回して重量と遠心力から得られる痛烈な一撃を一夏に叩きつけた。
「これでぇっ!」
直撃は避けたが体勢が勢いに流されて崩れた一夏に鈴は更にクルクルと『双天牙月』を回して追撃を掛けて終わらせようとした。
今までの一夏ならオート制御の所為で体勢を立て直していて鈴の攻撃を喰らっていただろうが今回は違った。
「っくおおっ・・・・!」
またウィングアーマーを細やかに操作して若干体勢は崩れたままだが崩された勢いを殺さずに『雪片弐型』を振るって鈴の攻撃に合わせた。
鈴は驚きながらも攻撃の手は緩めず何度も『双天牙月』を叩きつけて何度も体勢を崩すが一夏は逃げずに鈴にへばり付く様に動いている。
「・・・・・・っ!しつこい・・・・」
「逃がすかァッ!」
鈴はソレを嫌って距離を取ろうとして『双天牙月』を回しながら後ろへと下がるが一夏は逃さないと距離を詰めて『雪片弐型』を袈裟がけに振るった。
「掛かった!!」
鈴は腰だめから『双天牙月』を振るい『雪片弐型』を弾いた。
「いや!何度でも同じ事をっぐあっ!?」
一夏は同じように体勢を整えずに攻撃に移るか回避するために操作に注意を向けた瞬間、鈴の左逆手に握られた『双天牙月』の片割れが一夏の腹を捉えた。
「はああああああっ!!」
鈴は右手の刃を上から叩きつけて一夏を下に落として『龍砲』の連撃を喰らわせて試合終了のブザーが鳴った。
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「思ったよりも苦戦したように見えたんだが?」
「う、うっさいわね。少し油断しただけよ」
休憩時間になり一夏は更衣室に飲みモノを飲みに行き俺は何かを考えている鈴を茶化しに行くと鈴は少し恥ずかしいのか顔を逸らした。
「実際のところ夏休み前と夏休み後で一夏のIS操縦技術も強さも明らかに上がってるよね。僕も一夏のコーチをしていたけど試合をしているのは別の人かと思っちゃった」
一緒に付いてきたシャルロットが試合を見て驚いている。
「確かに夏休み前にコーチをしていたが操縦技術だけ言えば目覚ましいほどの成長を遂げているな。・・・・織斑教官の弟は伊達ではないという事か・・・・」
ラウラもシャルロットと同じく驚いているが一夏の成長の納得の仕方に俺が納得しなかった。
「千冬さんとまったく関係ない、とは言わないけ強くなったのは一夏自身の頑張りがあったからこそだ。少しは一夏自身にも目を向けてくれ・・・・アイツ自身に才能あるから」
横目でだが少し責める様な目でラウラを見ると自分の失言を理解したのか小動物の様な顔をした。
「わ、悪い・・・・分かってはいるのだが、夏休み前にアレだけ教えたにも関わらず教えていない夏休み中に強くなっていたから少し・・・・何と言うか・・・・」
自分の醜い感情と向き合った所為か少し涙目になっているラウラを見てゆっくりと頭を撫でた。
「正直でよろしい。気持ちは分かるよ、教えてない時の方が強くなったら今まで自分達が教えていた事が無駄みたいに感じるしな」
此処に居る俺を除いた3人は一夏の特訓のコーチをしていたので自分達が知らない内に一夏が強くなっていたので何故か素直に喜べないのだろう。
「ま、しょうがねえよ。アイツの覚悟が決まったのが夏休み直前だし、夏休み中は俺が特訓に付き合ったし、強くなってるのは当たり前だって事で納得してくれ」
ケケケと笑って3人を茶化すと頬と腹と太腿に平手打ちを喰らった。
次の授業時間、一夏が遅れた。
見知らぬ女生徒に絡まれた所為で遅れたと正直に言って千冬さんを怒らせて出席簿で頭を殴られて気絶していた・・・・なぁ~むぅ~。
そして授業に遅れても何も言われない人には心当たりがある。
おそらく、どこぞの生徒会長だろうなぁと思いながら気絶した一夏に手を合わせていた。