昼休み、俺は皆と昼食を食べて次の合同訓練の為に各々別れたがセシリアさんが準備の必要が無い俺の所に来た。
「すみません四季さん、少しよろしいでしょうか?」
「はい?どうかしたのセシリアさん?」
あまりセシリアさんの事を知らないと言っても見ただけで普段の気品や自信がないのが分かる。
「次の訓練の時にわたくしと模擬戦をしてくださいませんか?もちろん織斑先生にはわたくしがお願い致しますので・・・・」
声にはセシリアさんに似つかわしくない焦りの色が見えた。
「いつもなら受ける所だけど・・・・今のセシリアさんとは戦いたくない。初めて戦った時よりも一方的な試合展開になりそうだし」
セシリアさんは俺の言葉と顔を見て焦りを隠す事も出来ずに俺に掴みかかって来た。
「そ、そんな事ありませんわっ!一夏さん程じゃありませんがわたくしも成長していま・・・・」
揺らぎもしない瞳を直視した所為かセシリアさんが止まった。
「・・・・流石です四季さん。確かにわたくし、セシリア・オルコットは貴方と戦った時から成長していません・・・・それどころか退化してますわ、貴方との戦いで最後に見せた動きすら出来ていませんから」
「だから再び俺と戦って成長もしくは強くなれるかも__って思ったんだね」
セシリアさんは俯きながらも静かに頷いた。
「そうですわね・・・・こんな状態で訓練機ならまだしも、専用機を纏った四季さんと戦うなんておこがましいにも程がありますわね・・・・忘れて下さい」
「焦れた本国からの催促でもあった?IS学園に入って間もない時にアレだけ成長したのに時間が経っても何も変わらないのは何故だ?みたいに」
「・・・・情けない事に、その通りですわ」
そう言ってセシリアさんは掴みかかった手を力無く放して離れて行こうとした。
「教えて欲しい?ISの稼働効率の上げ方を・・・・?」
「そ、そんな方法があるんですか!?」
バッと振り返り、驚きながら俺の顔を見た。
「ぜ、是非っ!是非っ教えて下さい!お願いしますわっ!!」
必死になる理由は分かるが、あまりにも必死過ぎて少し憐れに思い溜め息を吐いた。
「今のセシリアさんじゃ何をしてもダメだ。まずは何故、どうしてかを考える所から始めようか」
「すぐに直します!ですから教えて下さ__!?」
捲し立てるセシリアさんの口に人差し指を当てて黙らせた。
「噂とかで聞いた事無い?俺は一夏みたく優しくないんだ。だから教えてあげない、それくらい自分で考えて」
口から指を離すと同時にセシリアさんを置いて歩き出した。
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翌日、全校集会が行われた。
内容は今月半ばにある学園祭についてだろう普段から騒がしい生徒達が人数も増えていつもの3倍は五月蠅い。
「それでは、生徒会長から説明をさせていただきます」
一夏と一緒にウンザリしていると誰かの声が聞こえると騒がしいのが波の様に消えていった。
「やあみんな、おはよう」
壇上で挨拶している更識会長を見て一夏が声を上げる事無く驚いている。
「あの人に絡まれて授業に遅れたのか?」
「あ、ああ、その通りだ。まさか生徒会長だとは思わなかった・・・・」
あらためて一夏と2人で壇上へと目を向けると更識会長は俺達へと笑みを浮かべた。
「!?」
隣の一夏が顔を赤くして動揺していたが周りに悟られまいとしていた。
「おーおー、やっぱり年上好きだろ?明らかに更識会長の微笑みに照れたな」
「う、うるせえ!べつにそんなんじゃないって!」
小声だけど一夏は必死になって反論していると壇上のディスプレイに何かが映し出された。
「名付けて!『各部対抗織斑一夏争奪戦』!」
更識会長が言った言葉がディスプレイにデカデカと映し出された瞬間。
「え・・・・」
「「「「「えええええええええええええええええええええええええええ 」」」」」
一夏の呆けた声が掻き消されて集会中に驚きの声が溢れて一拍すると全生徒の視線が一夏に集まった。
「学園祭では毎年各部で出す催し物を投票を行って上位には部費の特別助成金が出ていましたが今年は1位を取った部活には織斑一夏を強制入部させます!」
視線が再び壇上へと移った後、次は歓声が埋め尽くした。
「うおおおおおおおお!!」
「素晴らしい!素晴らしいわ会長!!」
「こうなったら、やってやる・・・・やぁァあああってやるわぁっ!!」
・・・・すでに歓声と言うより戦前の雄叫びだった。
「___っちょっと待って!詩乃崎くんは!?会長!詩乃崎四季くんはどうなりますか!?」
何処かでそんな声が上がると此方も段々と不満や疑問の声が大きくなっていく。
一夏はさっきまで隣に居た俺を探してキョロキョロしている。
「あ~、ごめんね。織斑一夏くんはともかく詩乃崎くんは私からじゃ手出しできないのよね・・・・それでも!交渉したおかげで!」
更識会長が壇上から舞台袖に手を振ったのでゆっくりと壇上を歩き会長の横に立った。
「私の恋人になって副会長に就任しましたぁ~!!」
会場の空気が凍りついた瞬間、俺は会長からマイクを奪った。
「はい、嘘つかないで下さ~い。皆さん会長のジョークってやつですよ本気にしないでくださいね~」
静かになった会場では大きな声を出さずとも俺の声が響き渡って溜め息が聞こえた。
「べつに私はソレでもいいんだけどなぁ~」
会長は手品みたく出て来たマイクを握って妖艶な声を出しながら媚びてくる。
「はいはい、ふざけるのは此処まで。本題に入りますから皆さん聞いて下さい」
言うと俺の言葉を聞くために再び会場が張り詰めた糸の様に沈黙した。
「これから学祭終了時まで隣に居る更識会長と同じ立場です。権力とか権限というモノではありませんが更識会長と同じ立場になりました。部全体でも個人でも好きにして下さい。・・・・これで分かる人には分かりますよね?」
そう言って笑みを浮かべると一拍してから主に2年と3年の先輩方から歓声__いや、雄叫びが起きた。