IS もう1人の俺は戦争屋   作:悠連

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心を抉る言葉は・・・・

 

___簪視点___

 

「っ~!?あ、あなたに関係ないっ!!」

 

思わず彼の頬を叩いて怒鳴った、このままじゃ長い間悩んでいた事が、長い間やってきた事が、全て否定される様な気がしたから。

 

気が付くと彼を叩いた右手が彼の左手に掴まれていた。

 

改めて彼の顔を見ると怖いくらい澄んだ眼をしていた。

 

その眼の中には今にも泣きそうな顔をした私の姿があった。

 

「あ・・あ、ああああああああ!!」

 

 

苦しい!苦しいの!何でこんなにも苦しいの!?

 

 

何故!?何故!?何度も自問自答して分かっていたはずなのに!!

 

 

何で彼に言われると!何で彼の顔を見ると!何で彼の眼を見ると!こんなに泣き叫びたいほど苦しいの!?

 

 

私は気付かない内に掴まれていた筈の彼の手を取り、うずくまって泣いていた。

 

 

________________

 

 

 

どれくらい時間がたったのだろうか、10年以上溜めこんだ涙を全部流した様な気がした。

 

彼は私が泣き止むまで傍に居てくれた、何も言わずに。

 

涙がこれ以上出なくなったからか、私はポツリポツリと今まで思っていた事を言葉にして出していた。

 

どこか自傷するかの様に言葉を紡いでいた。

 

彼は呆れもせず、飽きもせず、何も言わずに黙って聞いてくれた。

 

私は何も言わない事がこんなにも優しいモノだと初めて分かった。

 

全てを言い終わった後、彼は口を開く為に息を吸った。

 

「頑張ったんだね、大丈夫だよ無駄な事なんて何1つなかった。今の君があるのは今までの君の努力があったからだ、気に病む事なんて何1つないよ」

 

普通に聞けば月並みのセリフだっただろう、でも長い間、私はそんな言葉を欲していた。

 

「だから何よりもまず、君が君を認めてあげなきゃ、今の君も過去の君も報われない」

 

その言葉を聞き意味を理解すると長い間 私の心に重くのしかかっていた枷が外れた気がした。

 

そうだ私は姉さんに追い付きたいと思うと同じくらい誰かに認めて欲しかったのだと。

 

報われない努力ほど悲しいモノはない、とても簡単だけど気付く事は難しいモノで。

 

長い間 気付かないで頑張っていると心が壊れていく。

 

そんな錆びの様な毒が私を犯していたのだろう。

 

枯れたはずの涙が私の頬を伝う。

 

でもこの涙は先の悲しみじゃない、安堵や安心、初めて嬉しくて出た涙だった。

 

彼は微笑みながら私が握ってる手を握り返してくれた。

 

_____________

 

 

ようやく私が泣き止むと空は途中の過程が抜けたかの様に白くなり夜が明けようとしていた。

 

彼は笑いながら立ち上がった、その過程で手と手が離れる事は当然だけど少し寂しさを感じた。

 

「俺も秘密を1つ教えてあげる、俺は二重人格者だけど二重人格者じゃないんだ」

 

私は彼が言っている意味が理解出来ず首をかしげると彼の纏う雰囲気が変わった。

 

「ったく教える必要あんのか?つまりぃ、こういう事だ。もう分かってんだろ?アリー・アル・サーシェスだ」

 

私は眼を白黒させて驚いていただろう。

 

「優しい時の俺が詩乃崎 四季で優しくない時の俺がアリー・アル・サーシェスってわけだ、理解したか?ま、理解出来なくてもいいがな」

 

「つまり2つの人格それぞれに1個の意思があるって事?」

 

「あ~、もうそれでいいからサッサとシャワー浴びて寝ろや、こっちも睡眠を取らねぇと身体がヤベェんだよ」

 

言われた通り鏡を見ずとも私の今の姿は酷いモノだろう。

 

いまさら気付き私は急に恥ずかしくなって急いでシャワー室に飛び込んだ。

 

シャワーから上がるとテーブルに温められたミルクが置いてあった。

 

彼は既に窓側のベットで眠っていた。

 

私は二重で温かいモノを嬉しい気持ちのまま飲みほしベットに入った。

 

 

___アリー視点___

 

 

ったく、あそこまでしてやる必要があんのか俺には分かんねぇ。

 

昔、四季が自分の中に俺が居る事を自覚し、俺の記憶がアイツに流れ込んだ時の事が頭に浮かんだ。

 

普通なら拒絶して人格が崩壊するだろう、それも俺の記憶だ、お世辞にも良いと言えるモンじゃねぇだろう。

 

だがアイツは受け入れやがった、そして俺に「ありがとう、僕の傍に居てくれて」なんて言いやがった、俺の記憶を見てもだ。

 

イカれてる、アイツは何処かズレてやがる、そして面白ぇっと思った。

 

アイツを俺が育ててどうなるのか見てぇ、戦う事だけが面白いと思ってた俺が初めて戦い以外に面白ぇと感じるモンに出会えた。

 

時が経つに連れてアイツは自分だけでなく俺にも幸せになって欲しいと思ってやがる。

 

口にぁ出してないが分かる、分かりやす過ぎるくれぇだ。

 

「まったく、つくづく面白ぇ奴だ何処かズレてやがる」

 

ベットに入ってから2時間くらいだろう、そろそろ朝起きる時間だ。

 

まだ四季は中で寝てやがる・・・・しょうがねぇな、席に着くまでなら俺がやってやるか。

 

先にシャワー浴びねぇとな、ふと隣で寝ているガキが視界に入った、隣で寝ているガキは昼まで起きねぇだろう。

 

空になったコップがある、あの中は無味無臭の睡眠薬入りのホットミルクだからだ。

 

「ったく、俺も丸くなっちまったなぁ」

 

自笑しながら俺はベットから抜け出て動き始めた、誰かの為に。

 

 





戦争屋がひろしっぽくなってしまった
戦争屋ファンの皆様、申し訳ありません
ですがギャップ萌みたいな感じになりませんか?戦争屋に優しくされると嬉しくなりませんか?
なりませんか、すみませんm(._.)m
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