アカメが斬る! 創   作:虚無の魔術師

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一話 闇に潜む悪意

「………………」

 

「あれ?反応が薄いな。もうちょっと、感心して貰えると思ったんだが………」

 

 

あまりにも堂々とし過ぎてどう反応すれば分からないだけなのだが、警備隊隊長と名乗ったクロトは露骨に困惑していた。部屋の傍らでザビマルは呆れ果てたように嘆息するしなかった。

 

 

「………隊長。そうやって格好付けるのはいいが、方向性が違うじゃねぇすか?」

 

「でもなぁ、ザビマル。最近、俺の威厳が無いように見えるんだよ。少しカリスマ性を露にして行こう、なんて」

 

「日頃の態度が原因でしょ。部下に馴れ馴れし過ぎだし、あとセクハラ」

 

「────セクハラだけは違うだろ!?アイツを止めるための手段なんですぅー! そこまで言うならお前がアイツを止めてみろよー!」

 

「隊長以外に誰が止められるんすか、あのイノシシ正義バカ娘」

 

 

困ったように顔をしかめるザビマルと感情的に取り乱すクロトの論争に、タツミは割り込むことも出来ない。えー、と困っていたタツミだったが、ふと彼の存在を思い出したクロトが反応を示す。

 

 

「あー。君、そう言えば隊長になりたいんだって?」

 

「っ!はい、そうです!」

 

「んー、まぁ実力者は大歓迎だけど………すぐに隊長は無理だな。第一君、部隊を率いた経験とか無いだろ?」

 

 

入隊する前に書かせた申請書を見通しながら、クロトは諭すように指摘する。己の知識不足に悔しそうにするタツミ。しかしクロトはその調子のまま、タツミの評価を始めた。

 

 

「だが、申請書に書いていた内容には興味がある。一級の危険種を一人で倒せるって話なら、確かに一兵卒にゃあ勿体無い─────そういうわけで、俺が試験をしてやる」

 

 

申請書を机の上に叩きつけ、クロトはそう宣言する。期待に染まった様子で見てくるタツミに、警備隊長のクロトは椅子に身体を預けながら、意気揚々と話し始めた。

 

 

「今から俺が下す試験に合格すれば、お前を一兵卒より上────警備隊分隊長候補して雇用してやる。経験を積んで認められたら、お前はすぐにでも分隊長になれる」

 

「ほっ、本当ですか!?」

 

「────ただし、それなりの立場を求めるのなら、相応のリスクを背負って貰う。この試験に不合格なら一兵卒しか許さない─────もし、見込みなしと判断されれば、お前には軍属になることすら許さん。田舎とやらに帰って貰う」

 

 

喜びのあまりはしゃぎそうになったのも一瞬、冷や汗を滲ませて息を飲むタツミ。凍り付くように硬直するタツミを挑発するように、クロトは笑みを浮かべながら告げる。

 

 

「合格すれば、隊長候補。不合格なら一兵卒、見込みなしならこの話は無し。………そんくらいの覚悟がなきゃ、試験の参加は無理─────どうする?お前にはその覚悟があるかな?」

 

「やりますっ! いや、やってやる!!」

 

 

クロトの挑発に応えるように、タツミはやる気と共に勢いよく宣言した。そんな彼の覚悟を聞き届けたクロトはパン!と両手を重ね、拍手をして見せた。

 

 

「良い覚悟だ。ますます気に入った。それじゃあ早速、試験を始めるとしようか!」

 

 

そうして、タツミの所属に関わる重要な試験が今始まった。

 

 

◇◆◇

 

 

「…………ここが帝国か。話に聞いてた通り、良い国じゃ無さそうだ」

 

 

長槍を片手に歩いていた青年は、街並みを見通してそう感想を漏らした。街自体に賑わいはあって普通の日常に見える。だが、彼は気付いていた。日常を過ごす人々の顔には不安や恐怖が見え隠れてしている。

 

何より、周囲の街とは違い所々に貴族らしき豪邸が幾つか建っている。それだけなら良かったが、青年は自分を連れてきてくれた男性の言葉を思い出す。

 

 

『────今の帝国は良くない噂が多くてな。中でも貴族達の殆どが好き勝手して帝国内でも不満が出てるって話だ』

 

「汚職や悪行の三昧、か。良くないなぁ」

 

 

溜め息を漏らした青年の呟きは周囲の声にかき消える。帝国を救う為に来た訳だが、彼としても今は放浪することしか出来ない。食事か休む所の宛を探そうかと考えていた、その時だった。

 

 

「………?」

 

 

路地裏の方から気配を感じる。中へと入っていき、気配のする方を覗き込んだ直後─────走り出していた人の姿が、目の前に飛び込んできた。

 

 

「うわっ!?」

 

「────わっ」

 

 

慌てたように構えた女性だが、勢い余って青年と衝突する。横転しかけた青年であったが、その女性が咄嗟に手を伸ばして掴んでくれたこともあり、助かった。

 

 

「ありがと、助かったよ」

 

「別に。それより気を付けてくれよ? ホントに危なかったよ、今のは」

 

「すみません。気を付けます」

 

 

それにしても露出が目立つなぁ、と明らかに薄着の女性の姿に首を傾ける青年。その女性が急いでいた理由を聞こうとした時、少し離れた方から怒声が聞こえた。

 

 

「────待てゴラァ!!このアマァ!!」

 

「ヤベッ!早く逃げないと!」

 

 

慌てたように逃げようとする女性。青年は槍を片手に壁を見た後に、女性に声をかけた。

 

 

「お姉さん追われてるの?」

 

「悪いけどそうだよ! じゃあな、しょうね────」

 

「────お姉さん、こっち」

 

 

走り出そうとした女性の手を掴んだ青年が壁を指差す。困ったように振り向いた女性はその視線の先を見て、驚きを隠せずにいた。

 

………それから少しした後、路地裏の角から複数人の黒スーツの大人達が息を荒立てながら現れる。槍を肩に乗せた青年を見つけた彼等は、凄まじい剣幕を以て詰め寄ってきた。

 

 

「おう、ガキ!さっき女を見なかったか!」

 

「ん、もしかして金髪の薄着の女の人ですかね?」

 

「そうだ。ソイツが何処に逃げたか、話してくれるよな?」

 

「さっきその路地を出て走って逃げましたよ。確か、右の方に曲がったはずだと」

 

「そうか!助かったぜぇ、ガキ!」

 

 

言われるがままに、路地裏の外へと走っていく黒スーツの者達。彼等の気配が消えた数秒後、青年は長槍の先で壁を叩く。

 

 

「───いなくなったよ」

 

「は、はぁ………何とか撒けたかぁ」

 

 

突如壁に黒い穴が浮かび上がると、そこから先程の女性が姿を現した。上半身だけ乗り出していた女性が黒い穴から出ると共に、黒い穴は一瞬で消え去った。

 

 

「いやー、助かったよ。やっぱり捨てたもんじゃないねぇ、帝国も」

 

「お姉さん、何か勘違いしてるかもしれないけど………俺、帝国の人間じゃないよ。ついさっき来たばかりの旅人だし」

 

「へー、旅人。こんな時期に来るなんて、物好きだね。一体何しに来たんだ?」

 

「人探しをしてるんだ。俺より前に帝国に来たヤツが、恐らくここにいるはずだから」

 

 

ふぅんと話を聞いていた女性は、そこまで互いの名も知らず、名乗ってなかったことを思い出し、自然に名乗ることにした。

 

 

「そうそう、助けてくれてありがと。私はレオーネ、腕の立つマッサージ師さ」

 

「────俺はヒカル。…………ところでお姉さん、足怪我してない?」

 

 

名乗った最中に気付いたらしい青年 ヒカルの指摘を受け、レオーネは自身の足首に切り傷があることを認識した。逃げている最中に何処かで切ったらしい。

 

大丈夫さ、と軽く笑ったレオーネだが、心配そうなヒカルが長槍を手に膝を着いた。

 

 

「レオーネさん、少しじっとしてて」

 

「ん、いや………大丈夫だよ!別にただの掠り傷だから!」

 

「────いいから」

 

 

傷のある足首に槍先を向けるヒカル。槍の矛先がガチャガチャと組み変わったかと思うと、変形した槍先から赤い液体が一滴だけ溢れ落ちる。

 

その雫が傷口に触れたと思えば、一瞬にして傷口は綺麗に塞がった。再生や治癒、そういうレベルの現象だった。

 

 

「なッ!?今のって────まさか帝具か!?」

 

「………? 帝具? なんですか、それ?」

 

「ま、待て………それって、『帝具』じゃないのか?」

 

「帝具って────これ『神器』ですけども」

 

 

………神器? と困惑したレオーネだったが、それ以上は深入りしなかった。帝国外の人間である以上、無闇に追求するのは良くないと考えたのだろう。

 

 

「助けて貰ったお礼に手伝ってあげようか? 人、探してるんだろ? 私の仲間も見つけたら教えてくれると思うよ?」

 

「………良いんですか!?」

 

 

善意でそう提案したレオーネに、戸惑いながら反応するヒカル。重苦しいと言わんばかりに閉ざしていた口を開き、意を決したように語り始める。

 

 

「あの、大きな棺を背負った同年代の…………ヤミって奴を探してるんです。

 

 

 

 

ソイツ、早く見つけないと────帝国でとんでもない事をするかも」

 

 

◇◆◇

 

 

それから数時間後。夕方が過ぎ、辺りが暗くなった頃、ヤミは客室で一人静かに眠っていた。ベッドの上で寝かされた彼の隣には大きな棺が立て掛けられている。

 

貴族のアリアに誘われ、豪邸に泊めて貰ったヤミはイエヤスとサヨと共に食事を共にしていた。だが食事を追えた途端に、彼等は突然の眠気によって倒れたのだ。他二人は何処かに運ばれ、ヤミだけは一人別室に寝かされることになっていた。

 

 

ふと、客室の扉が開いた。複数人の衛兵が、暗闇に紛れるように踏み行ってくる。

 

 

「…………まだ寝てるな」

 

「早くコイツも小屋に入れるぞ。睡眠薬ですぐには起き無いだろう」

 

「あーあ、お嬢様方もずるいなぁ。あんな可愛い娘で遊ぶなんて、どうせなら俺達も遊びたかったぜ」

 

 

口々に私情を漏らしながら、ヤミを運び出そうとする衛兵達。彼等が動いている間─────ガタッ、と何かが揺れる音がした。

 

すぐ近くにいた衛兵が機敏に気付き、反応する。

 

 

「………?今、あの棺動かなかったか?」

 

「気のせいだろ。さっさとコイツを────」

 

 

次の瞬間、ガタガタッ! と棺が揺れた。

今度こそ気のせいではない。全員が棺が動いたのを確認した。軽口すら途絶えた衛兵達に、薄ら寒い感覚が伝わっていく。

 

 

「あれ、何か入っているのか………?」

 

 

不安そうに口出した一人に、誰かが答えることはない。震えることもなくなった棺に静かに近付き、衛兵の一人が棺の蓋に手を掛けた。

 

その瞬間──────棺の影が意思を持ったように動いた。衛兵の手から腕へと伸びた黒い影が、衛兵を口を塞ぐように掴む。

 

 

「────ッ!!?」

 

全員が慌てて身構えた時には、棺の周囲の影が蠢き始める。剣や槍を構える兵士達に狙いを定めるように、黒い影が一斉に動き出し────襲い掛かった。

 

 

数秒後、喧騒が響き渡った一帯が静寂に染まる。黒い影に口を塞がれていた衛兵は、一瞬で血の海と化した周囲の光景に青ざめる。黒い影の手の力が緩んだ隙をついて、拘束から逃れた衛兵は、言葉にもならない声を漏らしながら、這う形で逃げ出そうとする。

 

 

「ひ、ひぎッ、たすけ────」

 

 

しかし、黒い影は衛兵を逃がすことはなかった。扉の隙間から這い出そうとした衛兵を、無数の黒い手が捕らえ、部屋の中へと連れ戻す。涙ぐんだ絶叫も暗闇の一室へと溶けて消えていく。

 

殺戮を繰り返した黒い影が、周囲に飛び散った残骸や血を一瞬で吸い上げ、棺の中へと消えていく。蓋の隙間から影を取り込んだ棺は音沙汰もなく静かになり──────その棺を、さっきまで寝ていたはずのヤミが肩に背負う。

 

 

「────あの二人は、何処だ?」

 

 

まぁ、他の奴等に聞けば良いか と考え直したヤミが歩く。血を啜った大棺と、それに呼応するように揺らぐ黒い影を従えながら。

 

 

◇◆◇

 

 

「アリア、楽しんだか?」

 

「ええ、お父様。久し振りにスッキリしましたわ」

 

「そうかそうか。では今度は私が楽しんでくるとしよう」

 

 

豪華な居間でアリアとその父は楽しそうに談義をしていた。風呂上がりらしく濡れた髪を乾かし終えた彼女は、つい先程まで─────拷問をしていたのだ。捕らえた帝国外の人間で。

 

 

これが彼女の、この一家の本性だった。何も知らない外部の人間を言葉巧みに泊めるフリをして、拷問して殺す。悪趣味で下劣な趣向を嗜む貴族。彼等はそうやって、罪の無い者達をなぶり殺してきた。

 

 

「そう言えば、お母様は遅いですわね」

 

「そうだな。趣味にしては少し時間が─────」

 

 

そして、今までの行いの裁きが下る時が来た。その事実に気付くことなく、突然開いた扉から現れた人物に愕然することになる。

 

 

「やぁ、貴族サマ。ご機嫌どうだ?」

 

「や、ヤミさん!? どうしてっ!?」

 

「どうして?────それは睡眠薬を盛ったのに、何故意識があるのかって言いたいのか?」

 

 

廊下から現れたヤミの姿に驚いたアリアと父親の顔が一気に引きつる。既に気付かれている。そう感じ取った二人の反応に肩を竦めたヤミは、口の中で含んだ唾をその場に吐き捨てる。

 

 

「無知な奴等を騙して、拷問することに悦楽を覚える貴族どもか。ホント、救いようがない。とんでもないクズどもだな」

 

「────衛兵!この男を黙らせろ!」

 

 

異様な雰囲気を漂わせるヤミの存在感に気負されたアリアの父親が大声で周囲に叫ぶ。それだけで衛兵達がすぐに集まる、はずであった。

 

 

「何をしている!? 早く来いと言っているんだ! 役立たずども!!」

 

「………衛兵なんて、呼ぶだけ無駄だぜ?」

 

「何を、何を言っている!?」

 

「もう全員殺したしな」

 

 

あっけらかんとした様子で告げたヤミに、二人は凍り付いたように絶句する。

 

 

「俺を見るなら武器を向けてきたり、衛兵をけしかけて来る奴等────ここの連中はどいつもこいつも救いようのない悪党ばかりで安心した。お陰で躊躇なく殺せたからな」

 

 

アリアの母親らしきヤツも、同じように殺した。日記を読見ながら歩いていた彼女を一撃で殺した後、彼はその日記の内容に露骨に顔を歪めた。血に濡れた手帳を彼等の前に投げ捨てると、二人は家族が殺されたことを理解し一気に青ざめる。

 

 

「イエヤスもサヨも、お前らにやられたわけか。アイツらはああ見えてもお前らのことを信用してたんだが。それを裏切って、挙げ句の果てには拷問するなんて────とんだゴミクズどもだな」

 

「それの…………何が悪いって言うの!? 説教でもする気!?」

 

 

ワナワナと震えていたアリアが、感情剥き出しに怒鳴り始めた。本性をさらけ出す少女の姿に出会った時に感じた気品さはなく、ただ醜悪さしかなかった。

 

 

「偉そうなこと言って! 何の役にも立たない田舎者を、家畜をいたぶっただけで責められること!? あんな価値のない奴等、私達が使ってやったんだからそれで良いでしょ! むしろ感謝すらして欲しいくらいよ!!」

 

「────御高説ありがとう。素晴らしい程吐き気のする内容だった」

 

 

拍手のような喝采を、ヤミは送る。冷たく無機質に、心の底から侮蔑した彼の視線に気付かぬアリアに、ヤミは最大級の報いを与えることにした。

 

 

「そんなお前達みたいな、性根から腐ったゴミクズにはただ殺すのは勿体ない──────喜べ。お前達は特別だ。生きたまま、『神』に捧げてやる」

 

「か、神だと!?」

 

 

不安そうに聞き返す父親の前で、ヤミは棺を床に下ろす。棺を塞ぐように巻き付けられた鎖を手にしたヤミは、小馬鹿にするような笑みを浮かべながら話し始めた。

 

 

「神様は偏食でね、人間は好きだが好物ってものがある。好物以外は好まないタイプだから、俺も最初は生け贄ってヤツに苦労してたんだ。…………だから、帝国に来て安心したよ。お前達みたいな外道の悪人が、一番に大好物だからな」

 

そう言いながら、棺の蓋を少しだけ開けるヤミ。すると真っ暗な棺の中からどす黒い闇が溢れだす。泥のような黒い液体に一つの眼光が浮かび上がる。不気味なほどに開いたその瞳はアリアとその父親をジッと凝視していた。

 

 

「あ、そうそう。言い忘れていた」

 

 

棺の蓋に手を掛けたまま、思い出したようにヤミは口を開く。口元に嘲笑を刻み、蒼白になった二人に告げた。

 

 

「神様は悪人と同じくらいに、悲鳴と恐怖、絶望が大好物でね。だから神様は生け贄となるヤツを生きたまま八つ裂きにして、死ぬまで苦しめるんだよ」

 

「────ひ」

 

 

カチカチと震えた声だけが木霊する。彼女達のような悪党でも、目の前の存在への恐怖を感じるらしい。敵対してはいけない。立ち向かって良い存在ではない、と。根本から理解していた。

 

先程まであれだけ罵声を浴びせていたアリアも恐怖に身を震わせながら、口を開く。

 

 

「た、たすけ───」

 

「困った、聞こえないなぁ」

 

 

バンッ! とヤミは棺を豪快に開け放った。その瞬間、どす黒い闇の塊が身を乗り出し、二人の貴族へと無数の手を殺到させた。

 

 

 

 

 

「────ははは、ははははは」

 

 

ホールにて、ヤミは嗤う。降り注ぐ赤い雨に身を浴びながら、彼はただ目の前の景色に笑いを溢す以外なかった。上空で、生きたまま身体を引き裂かれ、激痛と絶望の悲鳴と断末魔を響かせる二人を無視して、ヤミは血飛沫の雨を浴び続ける。

 

 

「ははは────はぁ」

 

 

長く嗤っていたことに満足したのか、面倒そうに溜め息を盛らすヤミ。血肉を啜り、棺の中に消えていく黒い影を確認した後棺に蓋をした彼は、おもむろに背を向けた。

 

 

「…………確か、イエヤスとサヨはまだ小屋の中だよな」

 

 

思い出したように、彼は歩き出す。屋敷に近付く複数の気配に気付きながらも、暗闇の中を闊歩していくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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