シャイニーメモリアルミックス 〜Dig Delight Dramatic Dreamers〜   作:テンカイザー

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Light up the illumination Dreamer's Remix
まだ知らない、自分の色


 ––––––花咲川女子学園

 少し前に始業式を終え、新入生たちは皆高校生活の幕開けに期待と不安を抱きながらも青春を謳歌し始めていた。

 

「おはよう櫻木さん」

「おはよう!」

 

「……うん、おはよう」

 

 彼女––––––櫻木真乃もた、その1人であった。

 高校の勉学にはなんとかついていき、クラスメイトとも気軽に挨拶をし合うほどの仲を築けていた。

 

 だが、そんな彼女も未だ不安を抱えていた。

 彼女は自他共に認めるほど内気で引っ込み思案な性格。

 その性格が災いし、未だクラスメイトとの間に深く踏み込むことが出来ず、周りからどこか距離を感じてしまっていた。

 当初からそんな自分を変えたいとは思っているものの、未だ勇気を持てずにいる彼女はきっかけを掴めずにいた。

 

「そう言えば、最近また新しいバンド出来たの知ってる?

 Molfonicaって言うんだけど……」

 

「今度ポピパが主催ライブやるんだって!

 本当今からめっちゃ楽しみ!」

 

「この前のRoseliaのライブも凄かったよねー!

 やっぱボーカルの友希那さんがさぁ……」

 

 ふと周りを見れば、クラスメイトたちはある共通の話題で盛り上がっていた。

 ガールズバンドだ。

 今や世界では『大ガールズバンド時代』などと謳われるほどにガールズバンド文化が盛んになっている。

 この花咲川でも、今話題となっているバンドのメンバーが数多く在学しているほどに。

 

 真乃も流行りに疎いわけではない。

 彼女自身も昔から音楽は嗜む方であり、今話題になってるバンドの名前くらいはいくつか知っている。

 だが、結局はその程度であり、現在のクラスメイトたちのような血気盛んになれるほど熱中は出来ていない。

 故に今回もクラスメイトの和に上手く入り込めずにいた。

 

(バンドかぁ、私もみんなの前で唄ったりしたら、変われるのかな?

 ……なんてね、私がそんなこと出来るはずないか)

 

 ふと自分が変われる可能性を想像してみるが、彼女はすぐさまそれを有り得ないと否定する。

 今もなお、クラスメイトと楽しく話せるほどの勇気も持てていないのだ。

 そんな自分が大勢の人の前で唄うなど、出来るはずがない。

 

 ––––––♪

 

 自分の中でネガティブな結論に行き着いた所で、丁度授業開始前のチャイムが鳴り響く。

 和気藹々と話していたクラスメイトたちも一旦話を終え、各々の席へ着き始める。

 真乃もまた気持ちを切り替え、本日の授業に取り組む準備を始める。

 

 この時の彼女はまだ知らない、()()()()を。

 そしてその自分の色で羽ばたける翼を持っていることを。

 

 彼女の運命は、すでに動き始めている。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

 ––––––羽丘女子学園

 午前の授業を終え、それぞれが昼食を摂ろうとしていた。

 ある者は持参したお弁当を取り出し、ある者は学食へと向かう。

 そんな中に、1人凛とした様子でお弁当箱を取り出す1人の少女がいる。

 

「やっほー、灯織、いるー?」

 

「……っ、今井先輩?」

 

 そんな彼女––––––風野灯織に声をかける者が1人。

 

 ––––––今井リサ

 灯織より二つ上の先輩であり、何かと世話焼きなことで知られている。灯織の他にも仲の良い後輩が沢山いるほどに。

 そして何より、彼女は現在大注目を浴びている実力派ガールズバンド『Roselia』のベーシストとしても有名になっている。

 

 そんな学年的にも知名度的にも自分より高い所にいる彼女に突然声をかけられたことに、灯織は思わずびくついてしまう。

 

「おっ、いたいた。これから一緒にお昼食べない?」

 

「……えっ?その、私なんかがよろしいんでしょうか?」

 

 リサとはそこそこに長い付き合いのある灯織だが、上記に挙げた通り未だにリサのことを自分には恐れ多い存在だと思ってる灯織はどこか遠慮がちに答えてしまう。

 

「もー、何堅いことといってんの?アタシたちもうそれなりの付き合いなんだからさ?

 それに友希那もいるし、灯織も一緒の方が良いでしょ?」

 

「え、えぇっ!?み、湊先輩も!?

 そ、そんな、私なんかがお二人と一緒にお食事だなんて……」

 

 リサからの思わぬ言葉に、灯織は余計に謙遜してしまう。

 

 ––––––湊友希那

 リサの幼馴染でもあり、圧倒的なカリスマ性と美声を兼ね備えたRoseliaのボーカル。

 そのカリスマ性に惹かれたファンは数多く、この学園の殆どが彼女の歌声に引き込まれている。

 かくいう灯織にとっても、友希那は憧れの存在である。

 そんな正しく自分にとって高嶺の花とも言えるような人物との食事に誘われ、灯織は余計に恐れ多く感じてしまっていた。

 

「もう、そんなびくびくすることないって!

 灯織だって友希那とは話してみたかったんでしょ、そんなんじゃいつまで経っても進展しないよ?」

 

「それは、その……」

 

 リサからの言葉に、灯織は口篭ってしまう。

 確かに灯織にとって友希那は憧れの存在であり、叶うのならばお近づきにもなりたいとも思っている。

 だが、風野灯織と言う人間は極度なほどに自己肯定感が低い。

 そのため、いつも肝心な時に「私なんかが」とネガティブ思考を拗らせてしまい、一歩を踏み出すことが出来ない。

 

 だが、今回は違った。

 それはきっと、相手が大の世話焼きであるリサだったからであろう。

 

「大丈夫、友希那は灯織が思ってるほど怖くないって。ちょっと人付き合いが苦手な部分もあるけど、そこはあたしがばっちりフォローしてあげるからさ。

 ほら、行こう?」

 

「……じゃあ、よろしくお願いします」

 

「うん、行こっか!」

 

 未だに不安を拭えずにはいたが、リサからの自分への厚い好意を無下には出来ず灯織はしぶしぶリサに着いていくことにした。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

 ––––––陽葉学園

 芸術活動の育成に力を入れた女子校。

 特に音楽活動、中でもDJに入れる力は中々のものであり、DJ専用のライブステージや練習室までもが備えられている。

 

 そんなDJたちの学舎とも言える場所で、今日も陽気に練習室へと足を運ぶ姿があった。

 

「りんくせんぱーい!」

 

「おっ、めぐるちゃんだ!いらっしゃーい!」

 

 若手DJユニット『Happy Around!(通称、ハピアラ)』のいる練習室へと飛び込んで来た彼女––––––八宮めぐるは入ってくるや否や、挨拶代わりと言わんばかりに目の前にいたハピアラのメンバー、愛本りんくとハグを交わすのであった。

 

「あははっ、今日も一緒に踊りたくて来ちゃった!」

 

「うんうん、私もめぐるちゃんと踊りたかったんだー!」

 

 抱き合いながら和気藹々と語り合う2人を見ながら、その場にいる他のメンバーたちは呆れを浮かべていた。

 

「あはは……。

 相変わらずりんくによく似てるね、めぐるは」

 

「ちょっと、アンタたちいつまで抱き合ってるのよ!

 これからハピアラの練習の時間でしょーが!」

 

「ですが、今日もめぐるさんと踊れるのはとても嬉しいです。

 めぐるさんのダンスからは色々と学べますから」

 

 明石真秀、大鳴戸むに、渡月麗、3人はそれぞれ思ったことを口にする。

 特にむにに関してはりんくにどこかやきもちを焼いているようで、顔が真っ赤になっていた。

 

 今年から陽葉に入学しためぐるは、陽気な性格が似ている故かすぐさまりんくと意気投合。

 それ以来こうしてハピアラの練習に顔を出しているのだ。

 

「よし、じゃあ早速一緒に踊ろっかめぐるちゃん!」

 

「うん!今日はどんなダンスか凄く楽しみ!

 それに私、ハピアラの曲も大好きだからそれも楽しみだよ!」

 

「本当に?嬉しいなぁ、じゃあ今日は私たちのとっておきの曲で踊ろう!」

 

「いやちょっと!今日はこの間話した課題曲の練習でしょー!?」

 

 りんくの思いつきに振り回されながらも、なんとかハピアラとめぐるは練習を始めるのであった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

 放課後、真乃は1人歩いていた。

 今日はこの後はもう帰るだけなのであるが、彼女が今歩いている道は家の帰路からはズレていた。

 未だ慣れない学生生活にほんのばかし疲れたためか、彼女は癒しを求めて寄り道をすることにしたのだ。

 

 やがて辿り着いたのは、彼女のお気に入りの公園であった。

 辺りには、春の訪れを祝福するかの如く桜の木が満開に咲いている。

 ほんわかな桜の香りが鼻をただよう中公園に足を踏み入れると、ほんのり爽やか風が真乃の横を通り過ぎて行く。

 まるで自分をそっと癒してくれかのようだと、ロマンチックな思いにふけながら、真乃はベンチに腰をかける。

 

「ほわぁ……」

 

 今日一日の溜まった気疲れが抜け落ちていくような感覚に、真乃はそっと声を漏らす。

 

 そんな彼女に近づく一つの小さな影があった。

 

「……ほわっ、鳩さん?」

 

 真乃の元にやって来たのら、一羽の鳩であった。

 鳩が人に寄ってくるなど然程珍しいことでは無いが、真乃の場合昔から人並み以上に鳥に懐かれるのだ。

 そのこともあってか、真乃自身も鳥が大好きになっていた。家でもギンバトを飼うほどに。

 

「ふふっ、たくさん飛んで疲れて来ちゃったのかな?私と同じだね」

 

 勝手な想像であるのは理解しつつも、真乃は鳩に親近感を感じていた。

 

「……ふふっ」

 

 大好きなハトに出会えて気持ちが高揚した真乃は、そっと微笑みながらベンチから立ち上がる。

 こうして気持ちが高まった時、彼女はいつも自分の好きな()()()()でその気持ちを外に出すのだ。

 

 一度深呼吸をし、迷惑にならないよう周りに人がいないことを確かめる。

 公園に自分しかいないことを確かめると、彼女は今の気持ちを込めてそっと()()()()()

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「うーん、どうしよう……」

 

 少女、倉田ましろは悩んでいた。

 彼女はつい最近、同じ学校の友達と共にガールズバンド『Molfonica』を結成した。

 

 そんな彼女は今、新曲の歌詞を考えていた。

 だが、現在は良いアイデアが思い浮かばず進捗は著しくなかった。

 気分転換にと学校帰りに散歩に出たものの、未だに何も進展はない。

 

(どうしよう、このままじゃみんなに迷惑かけちゃう。

 何か、アイデアになるものはないかな……?)

 

 ふと辺りを見渡してみるも、インスピレーションが湧きそうなものは見当たらない。

 悩みながらも、彼女はアイデアを求めてがむしゃらに足を動かすことしか出来なかった。

 

 ––––––♪

 

「…………?」

 

 そんな時、ましろの耳に何かが聴こえてきた。

 ふと周りを見てみると、そこは公園の近くであった。

 

(綺麗な歌……、誰が唄ってるんだろう?)

 

 公園から聞こえて来たのは、誰かの歌声であった。

 その歌声の主が気になったましろは、その者を探すべく公園へと足を踏み入れた。

 

「––––––♪」

 

「わぁ……」

 

 そこにいたのは、沢山の鳩に囲まれながら綺麗な歌声を奏でる自身と同年代くらいの少女であった。

 花女の制服を着ていることから、自身と同じ学校帰りにこの公園に立ち寄ったと推測出来る。

 

(凄く綺麗……、なんだかとても優しい感じがする)

 

 ましろの目に写る彼女の姿は、とても幻想的であった。

 見ているだけでとても癒されるような独特の雰囲気を放つ少女に、とても優しい雰囲気のこもった綺麗な歌声。

 そんな彼女の歌に聴き惚れるかの如く群がる沢山の鳩。

 全てがまるで、ましろの好きな絵本に出てくる妖精のような幻想的な光景であった。

 その姿に、ましろは歌詞作りに悩んでいたことなど忘れ、彼女の歌声の虜になっていた。

 

(なんだか絵本の世界に入りこんじゃった見たいだなぁ、

 ……ん?)

 

 歌声の主の少女に気づかれない距離から、その歌声に浸っていたましろであったが、ふと別の場所から新たな影が見えることに気づいた。

 それは、黒いスーツを着こなした顔立ちの良い男性であった。

 

(誰だろう、あの子の知り合いの人かな?

 …………もしかして不審者!?)

 

 目の前にいる男性について最悪な可能性を思い浮かべると、ましろは思わず近くにあった木の影に隠れてしまう。

 

(どうしよう……、このままじゃあの子が危ないかも。

 でも、私に出来ることなんて……)

 

 もし男が不審者だった場合を想定し歌声の少女を心配するも、自分のようなひ弱な女子高生に出来ることなど何もない。最悪の場合、少女も自分も危ない目に遭うかもしれない。

 そう考えたましろは、黙って隠れることしか出来なかった。

 

(……っ!?

 男の人が近づいて来た!あ、危ない!?)

 

 ましろが隠れている間に、男は少女に近づいて行く。

 新たな来訪者に驚いたのか、少女に群がっていた鳩たちはみんなどこかへ飛んでいってしまった。

 すると少女の方も男に気づいたようで、振り向いて男と対面する。

 

(どうしよう……どうしよう!?)

 

 少女のことを心配しようにも、ましろには助けに行く勇気などない。

 どうしようかとあたふたしてると、ましろの耳に男の声が聞こえて来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

「––––––突然だけど、アイドルに興味はないかな?」




なんか灯織をやたらとネガティブにしてしまった()
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