マブラヴ  ネオ・オルタードフェイブル   作:等速運動する点P

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Chapter1
プロローグ(Re)


「あんたは……あんた達は間違いなく『この世界』を救ったのよ」

 

「……先生」

 

この世界に染まりきってしまった俺は、本当は残って英霊となったみんなを誇って戦いたかった。

 

 

 

「ありがとう白銀……あんたは『この世界』の救世主よ……」

 

「……ッ…」

 

救世主か……おれもようやく夕呼先生に認められた…のかな?

 

 

 

「……さようなら、ガキ臭い救世主さん……」

 

「……」

 

「霞……先生を助けてあげてくれ…」

 

「……はい…」

 

「……よし…」

 

「私……あなたがどこの世界にいても……ずっと見ています」

 

「……」

 

「私は・・・あなたを絶対に忘れません……」

 

…霞…おまえ……?

 

「…これが…純夏さんの気持ちなのか…自分の気持ちなのか…分かりません……」

 

「……」

 

「……でも私は……あなたが好きでした……」

 

「──え……っ……」

 

「……」

 

「……そうか……」

 

「……」

 

「……ありがとう……霞…」

 

霞もこんな俺を好きになってくれたんだな……

でももうその思いには応えられそうにないや……

 

──そろそろだな……

 

「……また…ね……」

 

「……ああ…またな……」

 

俺の世界は白い光に包まれた。

 

 

 

 

 


 

「ん…ここは……」

 

ここは俺の部屋か? たしか桜の木の前で夕呼先生と霞と一緒にいて……

 

部屋のカーテンを開けると、そこには撃震の残骸ではなく家が存在していた。

 

「そうか、戻ってきたんだな……」

 

今は朝の5時か……いつこっちに戻ってきたのかは知らないけど、軍人生活のせいでこの時間に目が覚めちまった。

 

「……んん…」

 

「ん?」

 

ふと声が聞こえたので側を見ると、そこには一人の少女が眠っていた。

 

「……冥夜」

 

───御剣冥夜

武にとって彼女とは切っても切り離せない存在。どの世界においてもいつも隣で、時に友人であり、時に戦友であり、そして時に愛する者であった。

 

懐かしいな。冥夜が現れたこの日から俺の人生は大きく変わったんだよな……

というかこんな時間から既に潜り込んでたんだな。

 

「はやく目が覚めちまったことだし、外出てジョギングでもするか」

 

軍人としての早朝トレーニングの習慣が身についてしまった武にとって何もしないというのはなにかもどかしさを感じてしまうものである。

 

冥夜を起こさないようにそっと着替えて一階へと降りると、そこにはキッチンに一つの人影が見えた。

 

「あれはもしかして……」

 

「──えっ!? た、武様!?」

 

「……あーどうも。おはようございます」

 

そこにいたのは月詠さんだった。

 

やっぱこっちの月詠さんは雰囲気が柔らかいよな。"武様"なんて向こうの月詠さんは絶対言わないし。

 

「今朝は随分とお早いお目覚めで……あっ、申し遅れました私、月詠真那と申します。その、冥夜様は……」

 

「冥夜ならまだ寝てますよ。……というか赤の他人が当たり前のようにこの家にいることについて何か言って欲しかったですけどね……」

 

一度経験しているから問題ないが、知らない人間が当たり前のように家に居座っていれば普通は腰を抜かすと思う。

 

「それは───ッ!? そ、それよりも武様! 冥夜様のことを覚えていらっしゃるのですか!?」

 

話を逸らされた気がしたが、まぁ月詠さんのことは一方的に知っちゃってるわけだからここは良しとした。

 

「忘れてたらこんな冷静じゃないですよ……昔結婚の約束をした御剣冥夜でしょ?」

 

まぁ前の時は忘れてたんだけどな。

 

すると月詠さんは次第に涙を流し始めた。

 

「つ、月詠さん!?」

 

「あぁいえ……冥夜様の苦労が報われたのかと思うと大変嬉しゅうございまして……」

 

ほんと、月詠さんの冥夜に対する思いは変わらないよなぁ……

 

「まぁなんというか……あっ、ちょっと俺外出てちょっと走ってくるんで。冥夜が起きたらよろしく言っといてください」

 

「……武様は普段そのようなことを? あ、いえその……失礼ながらここへ来る前に武様の身辺調査をした際そのような様子が見られなかったので……」

 

当たり前のように監視していたと暴露する月詠。まぁ仮にも一財閥の跡継娘の婿候補ではあるから身元の調査とかをするのは仕方ないのかもしれないが。

 

向こうの世界では死人だと目を付けられオルタネイティブ5との泥臭い諜報合戦の経験をした武からすると、監視されるというはあまり気分の良いものではない。

 

「えっとまぁ……そこは俺だって寝坊することはあるってことで……」

 

「左様でございますか。ではまた後ほど」

 

俺は適当にごまかして、月詠さんと別れて外に出た。

 

 

 

 

 

 

「廃墟じゃない。街だ……帰って来れたんだな……」

 

玄関を開けた先にあったのは廃墟の町ではなく住宅街。それは俺がループから解放されたことを物語っていた。

 

そして武が家を出て真っ先に確認したのは隣の家。表札には『鑑』と書かれている。

 

「純夏……」

 

今頃あいつはまだ寝てるんだろうか。

 

───鏡純夏

気づけば常に隣にいた幼馴染。いつしか傍にいるのが当たり前だと思っていた存在は、初めてあの世界に飛ばされて失って初めてその大切さに気付いたものだった。

 

そしてあの世界では───

 

「──いや、感傷に浸ってる場合じゃねぇ。今ここにいるのもあいつがくれた最後のプレゼントだ」

 

時にして数日、いや数時間だけの恋人であった彼女が最後にくれた贈り物がこの『楽園』である。ここから先でいちいち向こうの世界を思い出して感傷に浸るのは、きっとあいつは望んでいないだろう。

 

「よし。とりあえず、あの公園まで行って往復するか」

 

今日から始める朝のジョギングコースの折り返し地点は、約束の公園に決まった。

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……」

 

公園まで行って帰ってきた俺は家に戻ってきた。一応の声をかけたが、そこに月詠さんの姿はなかった。

 

別の場所に行ったのかな?

 

冥夜がおりてくる気配もなかったので、俺はシャワーを浴びることにした。

 

「ふぅ〜……朝からシャワー浴びるのは気持ちいいな」

 

向こうで訓練兵になってから気づいたことだが、朝から運動をした後に浴びるシャワーは体の膿が抜けるようで実に心地よい。これならもっと早くからやっておけばよかったと後悔したほどだ。

 

「そういえば……」

 

走っているときはいつもの調子ですっかり忘れていたが、こうして風呂場の鏡で自分の体を見返すとその体は向こうで鍛えたままの体をしていた。

 

というか記憶があるのもおかしくないか? 夕呼先生の言葉でいうと"向こうの世界との因果が絶たれていない"とかそういう状況じゃないのか。

 

「これは夕呼先生に話したほうがいいかもな……」

 

一連の物語はなるべく封印しておきたいが、やはりあの人には頼らなければならないらしい。 

 

───ところで今何時だっけ?

 

ガチャガチャガチャガチャ

 

「ッ!?」

 

鍵を開ける音───

まずいまずいッ!? このまま純夏が俺の部屋に突入したら俺のベッドにいる冥夜と鉢合わせになる。チェーンロックを突破される前に戻らなければッ!

 

武はまだミスに気づいていなかった……

ジョギングから帰ってきたときにこの男はチェーンロックをかけ忘れていた。

───来訪者が玄関扉を開けるのに手こずることはなかった……

 

ガチャン

 

「おっはよー!!」

 

「!?」

 

なにぃい!? チェーンロックは!?……いやそうか! さっき帰ってきた時かけ忘れてたんだったぁああ!!!

 

ここでようやく失態に気付いた武。しかし時すでに遅し。

 

足音はそのまま二階へと直行した。

 

「タケルちゃん朝だ……よぉ……」

 

……これはもうアウトだな。

 

開き直った俺はゆったりと着替えを済ませ、意を決して自分の部屋へと足を踏み入れた。

 

「やあ、おはよう純夏クン!」

 

「……」

 

"修羅"はベッドのほうを見てこちらに目を向けてはいないが、その背中から漂う気配は言わずもがな……

 

「……んん…おはよう、タケル」

 

そんななかでようやく目を覚ました冥夜。何の警戒もなくのほほんとした様子でお目覚めの様子。

 

バッドタイミングだぜ、冥夜……

 

「タケルチャン? コノコダアレ?」

 

ようやくこちらを向いてにっこり顔で問いかけてくる"修羅"だったが、その目は全く笑っておらず右の拳はワナワナと震えている。

 

「こ、この子?……純夏クン、キミには何が見えてるダイ?」

 

こうなったらとぼけるしかないと踏んだ俺は、目の前の女は幽霊なのだと言い訳を乗り切ることに……

 

「タ〜ケ〜ル〜ちゅわ〜ん?」

 

「ハイスンマセン」

 

──無理だった

 

ピロリン♪

 

そのとき机の上に置いてあった見覚えのない機械から音が鳴り響いた。俺はそれを手に取った。

 

見たことない機械だ。片面が液晶画面でできていて、ボタンらしきものが側面に2個ほどと裏面に小さなカメラのレンズのようなものがついているだけの不思議な機械だ。

 

「(どうやって操作するんだ? んーなになに…ッ!? なんだこれ!? 画面に直接触って操作するのか!? しかもめちゃくちゃ解像度がたけぇ!? ゲームガイなんて目じゃねぇ!? どういう仕組みなんだこりゃ……[突撃隊長]からメッセージが届きました?

──《おはよう武。今日は誰が一番だった? 私?》

誰だこれ? ん? まただ。[家庭教師]から?……家庭教師ッ!?

──《目は醒めたか? 規則正しい生活を心がけるように》

訳が分からん。)」

 

突撃隊長ってなんだ? 変なあだ名だな。それに家庭教師だと? 

 

そのあとも何度か別の宛先からメッセージが届く。どうやらメールらしき機能らしいが、そのどれもが『目が覚めたか?』とか『私が一番か?』とかばかり……その上宛名が全部あだ名な為誰が誰なのか全く分からない。

 

「ねぇタケルちゃん? 人が話してるときにスマホ見てる場合なのかなぁ?」

 

……スマホ? この機械はスマホっていうのか? 元の世界にも向こうの世界にもこんな機械はなかった筈……どういうことだ?

 

いや、今はそれどころではないッ!

 

「い、いやぁ……俺にもなにがなんだか……」

 

「タケル。私よりも先に起きてはいけないではないか。夫を起こすのが妻たる私の役目でもあるというのに」

 

ビキィ

 

「ヒッ!?」

 

冥夜ァーッ! なぜこうもタイミング悪く爆弾をぶち込むッ!

 

「タ〜ケ〜ル〜ちゃんのぉ〜」

 

「あっ、お、おい、やめ……いやッ!」

 

そうだッ! 今の俺には鍛え上げた肉体があるッ! もはや純夏のパンチなど効かn

 

「ばかぁぁぁぁあああああ!!」

 

「ガガーーリンッ!!」

 

主観時間では何年振りだろうか……

 

朝から俺は星になった。

 

 




 この作品を読んでくださりありがとうございます。
 オルタのシリアスな話もいいけど、エクストラ・オルタードフェイブルのガヤガヤ感が好きなので今回書くことに。
 実は以前オルタ世界線系のSSを書いてみたんですが、戦闘シーンを書くのが大変だったり、メカブックや設定資料集などを全然持っていないが故に行き詰まり、削除してしまいました。今回は書きやすいのでしっかり完結まで持っていきたいと思います。
 マブラヴの世界は2000年台始まりが舞台ですが、訳あってこの世界にはすでにスマートフォンが普及しています。(メタ的な発言をするとスマホで連絡を取れるほうが物語を描きやすいため)
 今回の話だけでも察した方はいるかと思いますがヴァルキリーズにいた『君いた』『君のぞ』組も今作はヒロインになってます。「正樹や孝之はどうするんだ!」という方もいるかとは思いますが、正樹は他の姉妹がいますし、孝之にも例の悪m・・・・・・
この世界の彼女たちの武との関係にもぜひ注目してください。
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