マブラヴ  ネオ・オルタードフェイブル   作:等速運動する点P

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火種(Re)

『かんぱーい!!』

 

球技大会片付けのあと、B組ヴァルキリーズとD組チームの一部、それからまりもちゃんや夕呼先生を御剣御殿によんで球技大会の打ち上げパーティーを行った。ちなみに剛田は「自分磨きだぁ~!」といって片付けが終わって一目散に校門を飛び出した。

 

「それにしても今日の最後の白銀君はアツかったねぇ~?」

 

「そこはあんまりいじらないでくれよハルー……」

 

俺だって冷戦になってすんごく恥ずかしかったんだからな?

 

「タケルちゃんったら急に説教始めるんだもん」

 

「しかし言っていた内容はとても心に響く内容であったな」

 

あのあと『熱血クン』という称号は瞬く間に広がってしまい、ラダビノット学園長からは閉会式で「模範的な白陵柊生である」と賛辞を贈られ、後輩からも『熱血先輩』と呼ばれる羽目になったのだ。

 

「でもあの時の白銀君すごく格好良かったわよ? まるで先生みたいだったわ」

 

まりもちゃんまで……

 

「まあでも、ああいうところが『恋愛原子核』たる所以なのかもしれないわね」

 

あんたは好きに言っててください……

 

「でもよかった~これで剛田もひとまず去ったし」

 

茜が大きく息を吐いて安堵する様子にそんなに嫌だったのかとあらためて思った。

 

「剛田君もさすがにあきらめたかな?」

 

「……あれは間違いなく次もある」

 

「ちょっと慧!」

 

「あ、茜ちゃんはあの男には渡さないっぺ!」

 

あれだけ見るからに嫌われていてアタックを続けられる剛田もなかなかの根性だよな。

──そういえば築地よ。そう言いながら何故君は剛田チームにいたんだい?

 

「わぁすごいよ! 鮭児だよ!」

 

「お目が高いですね鎧衣様。そちらは……」

 

美琴はあいかわらず自分の世界に入っていた。おそらく月詠さんの説明も耳に入っていないだろう。

 

「それにしても、武様の今日の動きは一段と光っていましたわね」

 

「そうだよタケル! 前一緒に遊んだ時より何倍も強くなってたよ! まるでどこかで2年間くらい修行してたみたいだよ」

 

「な、なわけあるかよ……」

 

こういう時々グサグサと真に迫ってくることを言う美琴は怖い。

 

「まぁ、日々成長を重ねる俺もとうとう次のステージに進んだってことだな。さしずめニュータイp「タケルちゃん調子乗らない」……すんません」

 

「早速尻に敷かれてるわねぇ白銀。

───それで? 誰が本命? やっぱり鑑かしら?」

 

「別に純夏は……」

 

ただの幼馴染ですよと言いたかったがすぐに言葉が出てこなかった。みんなと結ばれた記憶はあるが主観的にみて好き合った女性は純夏なのだ。

 

だがそれを見て面白くないのは他の女性陣。

 

「……私は遊びだった?」

 

「は? いや別にそういうんじゃ……」

 

「……なら白銀は浮気者?」

 

「なんでそうなるんだよ! 大事な”友達”ってだけだろうが!」

 

『……はぁ……』

 

「なんだよ……」

 

「いや、なんでも……」

 

「いや、なんでもないだろ? 揃いもそろってため息つきやがって」

 

「まあ分かってないアホ助は放っておいて次に行きましょう」

 

「おいッ!」

 

人のことアホ呼ばわりしやがって……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後夕呼先生の一声によってそれぞれが出し物をすることになった。

 

はじめは冥夜と悠陽の演武。静と動の動きに皆見入ってしまった。その次は純夏と霞があやとりを披露。「踊る蝶々」を完成させ霞が胴上げされて目を回していた。次に彩峰と委員長の漫才。彩峰がボケで委員長がツッコミ。たまはどこからか呼んできた野良猫たちによる猫サーカスを披露。美琴とハルーは二人羽織。美琴のマイペースすぎる手の動きにハルーは終始翻弄されていた。

 

そして最後はこの俺。あやとりという第一候補は取られたため、向こうの世界の休憩時間に鍛えたけん玉とお手玉を披露。向こうじゃはじめは下手糞だと笑われたが、今じゃ結構できるんだぜ?

 

「さて、それじゃあ最後はこの私。つい先日完成した『恋愛原子核論』の集大成のお披露目よ!」

 

『なんだってー!?』

 

驚愕する一同。ちなみに雰囲気に合わせて俺も叫んだ。

 

「白銀が自然と女子を引き付ける力。わたしはついにその力の一部を物理的に解明することに成功したのよ!」

 

『おお!』

 

「そしてこれこそがその集大成!」

 

そういって夕呼が取り出したのは女性もののシュシュだった。

 

「これには私謹製の『恋愛原子核発生装置』が取りつけられているわ」

 

どう見てもそんなものがついている感じは見当たらないのだが……突っ込むのはあとにしよう。

 

「そしてこれはあくまでも特定の個人が身につけなければ効果を発揮しないわ。そして今持っているのは……まりも! あんたのものよ!」

 

「は?」

 

「今日行ったじゃない。"ご褒美"をあげるって。これがその懸賞品よ」

 

「そんなぁ……」

 

結局は夕呼の実験材料にされてしまったまりもちゃんであった。南無~……

 

「さ! さっそくつけてみなさい」

 

「わ、分かったわよ……」

 

夕呼先生に言われてしぶしぶシュシュをつけるまりもちゃん。

 

「……つけたわよ」

 

まりもちゃんは髪を後ろでまとめ上げていた。たしか野外訓練の時は向こうのまりもちゃんも後ろでくくってたよな。さすがに普通のヘアゴムではあったけど。

 

「さあ、どう? 白銀?」

 

「なんでそこで俺に?……まあ似合ってるんじゃないですか? まりもちゃんもともと見た目は美人ですし。運動するときとかは良さそうなんじゃないですか?」

 

「……あんたの朴念仁っぷりに改めて腹が立つけど……まあいいわ。でもやっぱり恋愛原子核本人には効かないのかしら?……」

 

最後のほうでぶつぶつと夕呼は自分の世界に入り始めた。

 

その後パーティーは滞りなく続き……いつの間にか3バカが持ってきた酒瓶が開けられ、いにしえの狂犬伝説がよみがえりかけたものの月詠さんの3バカに対するヤンキー口調の怒鳴り声で酔いがさめ、パーティーはお開きとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あんたも男なんだから送っていきなさい!」

 

という夕呼の命令によってまりもちゃんと夕呼先生の二人を送らされることになった。

 

「夕呼先生送るくらいならほかのみんな送ったほうがいいと思うんですけどね? 夕呼先生なら不審者に遭遇してもなんか撃退できそうだし」

 

「私だってか弱い女なのよ? 暴漢に襲われでもしたら抵抗なんてできないわよ。……それとも何? アンタそういいう趣味?」

 

「教師が生徒に聞く内容じゃないでしょうが……なんちゅうこと聞いてんですかあんたは」

 

「夕呼もそれくらいにしときなさい」

 

「ふんッ」

 

駄々っ子のようにすねる夕呼先生。もしかして酔ってるのかな? 酒には強かったはずだけど……

 

「まったく……でも夕呼が酒に酔うなんて珍しいわねぇ。ほんとは負けたの悔しかったんじゃないの?」

 

「うっさい!」

 

どうやらああは言ってたが悔しかったらしい。まあ先生の性格上、不利な手札で勝って威張るタイプだもんな……

 

──ん?

 

何だ?……

 

今一瞬向こうの世界でも感じた不穏な気配を感じたのだが……この世界でそんなことが起きるわけないよな……

 

「どうしたの? 白銀君?」

 

「え? あーいやなんか一瞬"誰かに見られてる感じ"がしたんですけど……気のせいだったみたいです」

 

「……そう」

 

一瞬まりもちゃんの顔が暗くなったが……

 

ん? 誰かに見られてる感覚とまりもちゃんってなんかつながるような……なんだったか……忘れちゃいけないはずなのに……

 

 

 

 

 

今武たちが通った道の曲がり角。その陰には一人の男が潜んでいた。

 

──なんだあの男は!?

 

その男はストーカーであった。追っていた相手の名は神宮寺まりも。きっかけはたまたま町で落とし物を拾ってもらったことだった。その包容力ある振る舞いに一目で落ちた。後をつけて自宅、職場、交際相手の有無。あらゆる情報を集めた。その際の調べでは交際相手などいなかったはず。

 

だというのに……

 

──どうしてそんなうれしそうな顔をその男に向けるんダイ?

 

その顔を自分以外の男に向けるなんて許せない。それにこの男、横に別の女性を侍らせているではないか。ああそうだ、この男は遊びで付き合ってるんだ。そんな男にまりもさんを渡すわけには……

 

──マッテテネ、イマソッチニイクカラネ?

 

男はナイフを取り出すと陰から飛び出した。

 

 

 

 

 

「ッ!?」

 

今の強烈な気配は!? 気のせいじゃない! そしてその気配の元は……

 

振り返るとそこにはナイフを構えて走ってくる男が……

 

「まりもちゃん! 夕呼先生!」

 

「「!?」」

 

突然大声を出した武に状況がつかめない二人。そのまま二人を押し倒してかばうように立つ。

 

「マリモサァァ~~ン!?」

 

「ッ!?」

 

しかし反応が少し遅れた。さっきの違和感を感じたときに周囲を警戒しておけば……きっと平和な世界だからと安心しきってたんだな。人の害意はこの世界にもあるっていうのに……

 

「うッ……」

 

「白銀ッ!?」

 

腹部に走る痛み。視線を落とすと腹にナイフが刺さっていた。それにこの男の顔、思い出した。

 

──忘れるわけない

 

ニュースで見た。コイツはあの世界でまりもちゃんを殺したストーカーだ。名前は確か「川本実」。

 

もし今ここに俺がいなかったらどうなってたか。そしたらまりもちゃんは……

 

──やりやがったなこの野郎

 

あの世界で幾度と大切な仲間を失ってきた武は一種のトラウマを刺激されていた。

 

──でもここで我を失ったらダメだ

 

感情に振り回されるのは二流三流のすることだ。何よりこの場にはまりもちゃんと夕呼先生もいるのだ。二人に危害を及ぼされるわけにはいかない。

 

現実時間にして1秒にも満たないこの一瞬の逡巡の後、武は感情を制御し気持ちを戦士のものへと切り替えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──なんだこのガキは

 

突き出したナイフ。まりもさんに向けた刃先はこの男に感づかれたことで防がれてしまったが、代わりにこの男の腹へと突き刺さった。

 

怯えた表情。きっと軟弱なガキなんだろう。目の前の自分に対して恐怖で動けもしない。

 

──この男は後だ。次こそはまりもさんに……

 

その直後だった、先ほどまで軟弱そうだった青年から突如として異常な気配を感じ取ったのは。

 

 

 

 

 

そうと決めてからの動きは速かった。

 

自分を刺して満足気な笑みを浮かべた男の目線が、今度はまりもちゃんに向いていること察した武は腕をつかみ取り、瞬く間に関節を外した。

 

「グオッ!」

 

「……」

 

いまは憂さ晴らしの時ではない。必要最小限で無力化するだけだ。

 

関節が外れた痛みでのた打ち回る男の首を締め上げる。もちろん殺すわけではない。頸動脈を圧迫して一時的に意識を刈り取るだけだ。暴れるせいで腹の傷から血があふれるが、今は気にしていられない。

 

「……」

 

やがて男が沈黙すると武は男のカバンの中に入っていたロープを使った近くの電柱に括り付けた。

このロープで何をしようとしていたのかは考えたくもないが……

 

「……二人とも大丈夫ですか」

 

「え、ええ……」

 

「それよりもアンタ、その傷……」

 

まりもちゃんはもちろんのこと、さすがの夕呼先生もしばらくショック状態に陥っていた。

 

「……ナイフは抜くと血があふれるんで今は刺さったままにしてます。……それと救急車警察を呼んで、月詠さんにも連絡入れといてもらえますか?」

 

「わ、分かったわ」

 

まりもちゃんはすぐさま連絡をする。

 

「……白銀」

 

「……これくらいの傷じゃ死にはしませんって。……ただ結構出血したみたいで今も結構意識が朦朧としてます」

 

夕呼先生が本気で心配する目をしてなんだかほっとする。

 

 

 

 

 

数分後、救急車とパトカーがやってきたことを確認した武はひとまず安心だと意識を手放した。

 

 




ファインプレーなタケルちゃんでした。
ここから内容が本家AFから大きくシフトチェンジしていくと思います。
今回あんまり書くことがないのでこれで終わります。
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