マブラヴ  ネオ・オルタードフェイブル   作:等速運動する点P

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この世界の武はいかにしてヒロインたちと出会ったのか。
今回は君のぞ組の三人の過去編です。


過去編① 茜、遥、水月との出会い(Re)

~〔小学校時代〕~

 

『純夏、今日はプールに行くぞ。速やかに支度せよ!』

 

『え?』

 

『早くッ!』

 

『う、うん!』

 

武の気まぐれとはいつものことある。今朝も急にプールに行くということが決定されたのである。

 

「今日は結構人が来てるな」

 

「土日だからね~。ほら、あそこにもクラスの子たちがいるよ」

 

『マイルドクルー横幅』は最近できた屋内型温水プール施設だ。なぜ『横浜』ではなく『横幅』なのかは責任者曰く「世界の法則が乱れる……」とのことでよく分からない。

 

「やっぱここの醍醐味は波のプールだよな」

 

海の波を模した「波のプール」こそがこの施設最大のウリである。

 

「だがしかし! ここはあえて50mプールだ! 行くぞ純夏!」

 

「えぇ!? 普通のプールなら市民プールでいいじゃん! 何でここに来たのさ!」

 

「あそこは人が多すぎるんだって。50mプールなら誰もいなくて自由に泳げるぜ?」

 

「うぅ……でもしょうがない……」

 

純夏も武と二人きりになれるかもと淡い期待をして納得した。

 

 

 

 

 

「ん? 誰か普通に泳いでるな。ここの50mプールで馬鹿正直に泳いでる奴なんて初めて見た」

 

「うわ~、速いね~」

 

二人が目的地に着くとそこには先客がいた。泳ぐのには邪魔そうな青いポニーテールの少女と平均的な長さを持つ栗色の髪を持つ少女、プールサイドにはそれを見守るのほほんとした少女の3人。泳いでいる二人は年の割にはかなりの速度で泳いでいた。

 

「お前ら、こんなところまできて普通に泳ぐなんて変わった奴らだな?」

 

「──ん? 誰よアンタ?」

 

かなり強気な性格の奴だな。隣の子も若干睨み気味だ。

 

「いや、変わってるな~と思って声かけただけだ。あと名前は白銀武。こっちのアホ毛は鑑純夏だ」

 

「誰がアホ毛なのさ!」

 

「バーカ。鏡見ろってんだ。"かがみ"だけにな!」

 

「……どーでもいいギャグやってもらったところで悪いんだけど、今私たち水泳の練習してるのよ。邪魔するなら帰ってくんない?」

 

「……ほぉ?」

 

この場所はこの白銀武様専用の独占スポットだぞ? それを「はい、どうぞ」と明け渡せるもんかってんだ。

 

「悪いけどここは俺のお気に入りスポットなんだよ。退くわけにはいかん!」

 

「なら私と茜……あぁ、茜っていうのは隣のこの子ね。ちなみに私は水月。で、私たち二人と勝負してあんたたちのどちらかが勝てば譲ってあげるわ」

 

「よし、その勝負乗った!」

 

まあ純夏には期待してないから実質1対2か。

 

「私そんなに早く泳げないよ?」

 

「お前はあそこのもう一人と観戦でもしとけ。この二人は俺がまとめて倒す」

 

「へぇ? 君、水月さん相手にいい度胸じゃない? 負けても知らないよ?」

 

「俺はそんな名前は聞いたことはない!」

 

「水月さんは大会でも優勝するくらい強いんだから」

 

なるほど、言うだけはあるってことか。

 

「へぇ……でもそういうお前はどうなんだ? 水月さん水月さんってほめてても自分は速くなんねぇぞ?」

 

「茜だって、同学年じゃ大会の表彰台常連よ?」

 

二人は違う学年でそれぞれの学年で表彰台常連ってことか?

 

「そうか……だがそんなものは俺の前では気休めにもならんのだよ」

 

「そういいながらタケルちゃん、内心ではビビってるでしょ?」

 

「……」

 

……いらんことを言うな馬鹿垂れが。

 

 

 

 

 

ほどなくして、三人はそれぞれのレーンの位置に付いた。

 

「泳ぎ方は自由で距離は一往復。100mは初心者にはきついけど大丈夫?」

 

「体力はあるほうだ。心配しなくていいぜ?」

 

「三人とも用意良いかな?」

 

先ほどまでプールサイドにいたもう一人の少女が声をかける。

 

「よーい、ドン!」

 

三人は合図と同時に飛び込んだ。

 

「(自由型ならクロール一択だよな。)」

 

呼吸の際にちらりと横のレーンを見てみると真横に並んでいた。

──二人の実力を考えるとしれっとすごいことをやっている武なのだが、そんなことは武自身には分からない。

 

「(こっちは全力だってのに……言うだけはあるぜ……)」

 

それでも距離は100m。まだまだ勝負はわからないはず。

 

そのまま三人は横並びで50m地点到達を目前にする。そして最初に到達したのは僅差で武だった。

 

「(よし!)」

 

折り返しトップで迎えた武は一瞬ではあるが慢心してしまった。

 

「(なッ!?)」

 

武が折り返そうと律儀にタッチターンをしようとした瞬間、二人は壁手前で潜り込むとくるりと反転して壁を蹴った。所謂クイックターンだ。

 

「(こんなところで経験度の差がッ!)」

 

ターンで遅れた武と二人の距離は見てわかる程度に開いた。

 

「(だからって、こんなところで引き下がれっかァァッ!)」

 

武はペースを一気に上げた。その勢いはラストスパートのもの。

 

「「!?」」

 

二人ははじめ、遅れた武が焦ってペース配分を間違えたのだと勝利を確信していた。しかし武のペースは落ちなかった。あわてて二人もスパートをかける。

 

「(もう持たねぇッ! あと少しか?)」

 

そろそろ限界というタイミングで勝負は決着した──

 

「「「どっちが勝った(勝ったの)!」」」

 

「えーっと~……」

 

「「「……」」」

 

「茜が最後で、水月と白銀君は同着……?」

 

「「えぇ!?」」

 

最後の最後、スタミナが切れて茜は僅かに遅れ、武と水月の二人はともにスタミナ切れギリギリで同着フィニッシュという結果だった。

 

「私、負けちゃったの?……」

 

「私と同着……?」

 

「ふははは! 見よ! これが白銀武様の力だ!」

 

「うわぁ……完全に調子乗っちゃってるよ……」

 

勝利とは言わないもののこの二人相手に引き分けですませた武。

 

「白銀君は水泳習ってたりしたの?」

 

「いや、俺は運動系の習い事なんて一回もしたことないぞ?」

 

「うそ……」

 

「もう一回よ! もう一回!」

 

「女に二言はなしだぜ?」

 

「こんのぉぉ~……」

 

「まあまあ、水月も落ち着いて」

 

なんやかんやあって、結局この場は5人で使うということになった。

 

 

 

 

 

「あんた本当に水泳したことないの?」

 

「タケルちゃんが水泳どころか、スポーツすら習ってたことがないっていうのは本当だよ」

 

「どこでそんな体力がつくの?」

 

「体力は親父にいろいろ付き合わされて付いたんじゃねえか? 水泳は学校の授業で習ったくらいだ」

 

聞くところによると三人の名前は速瀬水月、涼宮遙、涼宮茜と言うそう。水月と遙は俺より3個上で、茜は俺と同い年だそう。しかも学校も同じだったみたいだ。

 

「そういえばクラスの奴が、涼宮ってやつが水泳強いって聞いたことがあった気もするな。でも実際に見たことなかったから顔が分からんかった」

 

「逆に白銀君はちょっと有名人だけどね?」

 

「マジ?……あぁ、あと俺のことは白銀でも武でも呼び捨てでいいぞ?」

 

「そう? じゃあ武って呼ぶけど……それで有名って話はいろいろあって、『車にひかれても痛いだけで済む』とか『教師に説教されてても言い負かす』とか……」 

 

「どんな噂だよそりゃ……」

 

「要するに問題児ってことだよね?」

 

「グハッ!」

 

このお姉さん、おっとりした見た目の反してさらっと辛辣なこと言いやがる!

 

「まぁ、武ちゃんが問題児ってのはほんとだよ。私だって何かあったらすぐ殴られるんだもん」

 

「誤解を招くこと言うな」

 

バシィ!

 

「あいたー! 言ったそばからだよ!」

 

そんな二人の夫婦漫才のようなやり取りを見て何となく面白くない三人。

 

「……二人はもしかして恋人だったりするの?」

 

「あ? いや、純夏はただの幼馴染だ」

 

「……うん。ただの幼馴染だよ」

 

武が答えた後にわずかに表情が暗くなる純夏。三人はそんな純夏を見て純夏の本心は違うのだろうと乙女心を察して肩に手を置いてうなずいた。

 

「? なんだよ揃いも揃ってウンウンうなずきやがって」

 

「なんでって……ねぇ?」

 

「へぇ」

 

「ふぅん」

 

白い目で見られる武は、この瞬間女性が団結した時の理不尽さというものを思い知った。

 

 

 

 

 

──後に彼女たちもこの武の鈍感さに苦労させられるのはそう遠くない話であった。

 

 

 

 

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