元過労暗殺者、平和だが平和じゃない世界へとやってきた 作:シャオロウェをすこれ
ちなみに先生のイメージは皆さんどんな感じですかね?私は歩く媚薬の例のよわよわ先生のイメージです。
建物の影を伝っていき、闇銀行の裏手に回る。
腹だしいことにかなりの賑わいを見せているようで、大量の車たちが置かれていた。だけど、陽動する上では好都合だ。
適当な車のボンネットを開けて、バッテリーらしき場所を探し当てる。よし、あった。
じゃあこれに、火のついた手袋を思いっきりぶち当てて、最後に燃料タンクに火を放ったら......
「よし、多分これで大丈夫。」
黒い車は大炎上し始めて、間もなく周囲に漏れたガソリンに引火し始める。これで少しは注意が引けるから、次は......電源を落としに行くか。
さっき裏口らしき場所を見つけたから、そこから入ろう。こういうタイプの建物は、大体2階辺りに主電源がある。
既に爆発音は鳴って突入の合図は完了しているから、事後処理という形になるかもしれないな。
『ほら!そこ!伏せてってば!下手に行くとあの世行きだよ!』
ほら、下ではもう始まってる。警備機構に連絡されると面倒だし、とっとと破壊しないと。
.....正面から足音。走ってる......このままだとバレるし、締め落とすか。
こっちに合流するタイミングを見計らって、足を引っかける。どうやらロボットだったようで、下手に音を出される前に顔面を破壊して無力化する。
随分と知能的なロボットがこの世界では主流のようだが、それでも機械は機械だ。人ではないし、壊しても問題はないだろう。
.....ログを読まれても困るし、火を流して修復不可能にしておこう。パチパチとショートする音がするが、まぁあわよくば引火して建物ごと燃えてくれ。
そんなことがあったこと以外は特に何もなく、無事に主電源室にたどり着くことが出来た。
赤い機械がゴウンゴウンと動いているが、お構いなしに蹴り飛ばして破壊する。異音を立ててエラーを吐くが、それこそ木っ端みじんになるまで破壊を尽くす。
とどめに分電盤を破壊すれば、非常電源があるにしても再起に時間が掛かるだろう。
よし、後は離脱するだけだ。もう既にみんなは離脱しているようだから、早いところ私も抜け出そう。
幸いなことにここら辺は裏路地が多くて抜け道を探しやすい。迷わないようにして、とっとと行こう。
窓から飛び降りて地面に着地する。銀行襲撃の衝撃があまりにも大きすぎたのか、駐車場の消火活動はまだ行われていないようだ。
それどころか壁を伝って銀行に火が迫り始めてきた。やべ、ちょっとやりすぎ.....いいや、どうせこんなところで金を貪ってる奴なんか燃えちまえばいいか。
さらば闇銀行。汚い金と一緒に地獄で寝ていてくれ。
当初予定されていた合流地点にたどり着くと、そこには今日の分の疲弊と銀行襲撃の疲弊が重なって大変疲れていそうなみんなが迎えてくれた。
普段から気だるげそうなホシノさんはともかく、あまり疲れそうな気配を見せないセリカさんまで疲れていたのがかなり意外だった。
「ふへ~、あんだけ派手なこと起こしたのに追手一つないのはありがたいね~。」
「それでもできるだけ離れないと......伝わっていれば、間もなく道路が封鎖されるはず.....」
銃声が聞こえなかったのはそもそも敵がいなかったからか。これは案外、私の妨害工作が刺さったのかもな。
適当に蹴り壊していたが、その時に非常電源の回路も破壊したか?出なければ確かに今頃連絡が行ってるはずだしな。
しかしそうだな、脱出地点の宛ては.....ありそうだな?
「こっち、急いで。」
シロコさんがこちらへ呼びかけてくる。あれ、覆面脱がないのか?これ以上付けておくと目撃情報とかもあるだろうしあまりよろしくないと思うが。それに暑いだろ.....
「脱がないんですか?それ。」
「天職を感じちゃってていうか、もう魂の一部みたいになってて、脱ぎたくないんじゃな~い?」
ホシノさんが代わりに応えたが、それだとしたら何か.....大分アウトローな性格してるんだな?シロコさん。
人の前で自分の顔を晒すのが嫌だからと、黒いスカーフを一年中ずっとつけているやつもいたが、それとはまた違う感じだろう。不思議なものだ。
.......いや、セリカさんに突っ込まれて覆面を今とったみたいだ。いつまでも付けていると面倒だろうし、正解だろう。
などと考えると、不意に肩に何かが降ってきたような感覚を覚えた。手ではない、かなり軽い....紙のようなものだ。なんだ?
「金?」
自身の肩に挟まっていたのは、それは一枚の紙幣だった。気になって上を見上げてみれば、何故か紙幣が上空にばら撒かれていた。
.....まさかだとは思うが、闇銀行が爆発してその紙幣が降ってきたとか?いやいや、そんな非現実的なことありえるか?
「なんで空からお金が降ってきて.....?」
「ん、ちょっとくらい盗ってもバレない。何枚か拾い集めるべき。」
そう言ってシロコさんは地面に落ちた札を何枚か拾っていた。いやいや、こんな状況地元市民が見逃さないわけないだろう。
必然的に人が集まってくるわけなんだから、そんなことしている場合じゃなく早く逃げないと。見つかる可能性が激増してしまったな......あ~、煙幕でもあればいいんだが。
「人が来ます。早く逃げた方がいいでしょう。」
『シグレさんの言う通りです!次々と人がそちらに集まっています!離脱してください!』
やはり次々と人が集まってきているか。アヤネさんの言う通り、早急に離脱しないとな。
さて、先生は一人で歩けるかな。行く前でもあんなに疲れていたし、もし背負う必要があるなら一番身重じゃない私が......
「一枚だけなら......これでカイテンジャーのグッズが買えるぞ.....」
あっおい先生、さらっと抜き取るなよ。見えてるぞ。
まぁ......先生は大人だし、そこら辺の判断は自己責任にしてもらおう。私は捨てておこう。あっても汚い金は使いたくない。
『本当にブラックマーケットの闇銀行を襲っちゃうなんて......ふぅ......』
「シロコちゃん、集金記録の書類はちゃんと持ってるよね?」
「う....うん。バッグの中に。」
シロコさんが肩に下げられた鞄を降ろす。にしても、集金記録の書類だけにしては随分厚みがあるが.....って、これは......
「現金が満タンじゃないですか。集金記録の書類だけのはずでは?」
「へ....なんじゃこりゃ!?鞄の中に札束が!?」
ホシノさんも驚いているようだ。私も驚いている。あんだけの札束が空中に舞ったのに、まだあったのか?
一応集金記録の書類はちゃんとあるようだが、もはや札束のインパクトが大きすぎて頭に入ってこない。ミチミチとはち切れそうになっている鞄を見ると、そんなことは吹っ飛んでしまった。
オイオイオイ、これどうするんだ.....?処分に困るぞ......
「どれ.....うへ、軽く1億はあるね。本当に5分で1億かせいじゃったよ~。」
え~と、アビドスの借金が9億くらいだったから......大体1割がたか。おぉ、すごいな。
.....でもこれ使っていい奴か?都市でもそうだが、こういう汚い金を使った行為は大抵碌なことにならんぞ.....大方紙幣を追跡されるのがオチだ。
でもここと都市では大分価値観が違うし.....まずは意見を聞いてみるか。
「1億....やったぁ!何ボーっとしてるの、運ぶわよ!」
『ちょ、ちょっと待ってください!そのお金、使うつもりですか!?』
あ~、こっちでも意見割れてるのか。
「アヤネちゃん、なんで?借金を返さなきゃ!」
『そんなことしたら....本当に犯罪だよ!セリカちゃん!』
その通りだ。正直これを使ったら私たちも立派な犯罪者、忌み嫌っているアイツらと同じになる。
ただ違いがあるとすれば、私たちにこれを使わないほどの余裕があるのか、ないのか。それだけだ。だがその立場の違いというのは重い。
先生は......自分も一枚抜き取ったからか目をきょろきょろさせながら冷や汗かいてるな。まぁ.....人間なら当然の反応か。
セリカさんはこれを使うという意見で、確かに彼女の言うことはもっともだ。元々は彼女達の稼いだ金だし、それがあの闇銀行に流れていたとなれば.....使うというのも当たり前の意見だろう。
だけど、その道を歩んではいけない。ここは一度、カッコつけるわけではないが意見を出させてもらおう。年長者として。
「セリカさん、あなたの言うことは正しいです。確かに、あのまま様々な悪事に使われるよりはよほどいいでしょう。」
「!やっぱそうだよね!?ほら、シグレさんもそう言ってる!」
「ですが。」
「それを使うということは、私たちも犯罪者の仲間入りをするという事です。元はと言えば、その金は私たち以外にも、様々な犯罪に使われて生み出されたもの。」
「それをまた悪事に再利用するのか、借金を返すのか。どのみち金を使うということは変わりません。それに返済先も、あの闇銀行と同じ程度に腐っているであろうカイザーコーポレーション。」
「どのみち一度回り道をした後に、あるべきところに帰るだけです。それどころか、もしかしたら紙幣を追跡されて、私たちが強盗したことが露呈するかも。そうなればアビドスに犯罪者の汚名を着せることになります。」
「一人ならそれでも結構でしょう。けど貴女には仲間がいる。あなたは、大事な仲間を犯罪者にして、責任をとれますか?それで死や大けがの恐れがあったとしても、責任を持てるんですか?」
セリカさんの顔が歪む。そうだ、さっき思った通り、汚い金は碌なことを起こさない。
目先の事だけを追い続けてちゃダメだ。その選択が、将来どのような未来をもたらすかまで、ちゃんと考えてから行かないと。
「シグレさんの言う通り。今回は悪人の犯罪資金だからいいとして、次は?その次は?」
「そしたら、この先私たちがまたピンチになったとき.....『仕方ないよね』って言いながら、またやっちゃいけないことに手を染めることになると思うよ。」
ホシノさんの言葉で、この場にいる全員の意見がまとまったようだ。先生も、少し気まずくなりながらも後ろ手でクシャクシャの札を捨てた。
それならこいつの処分方法を考えないとな。こうなるとただただ邪魔なだけの爆弾だ。セリカさんはまだ少し納得してない様子だが、人としての道を踏み外してはならない。納得して欲しいところだ。
......待った、誰か来てる....?
「......人が来てませんか?」
『.....!!待ってください!そちらに何者かが接近しています!』
「追手のマーケットガード......!?」
その言葉に反応してすぐに武器を構える。クソ、少し話過ぎたか?
......いや、違うな。この気配は覚えがあるぞ。そうだな、これは.....便利屋の社長か?そういえばあそこの闇銀行にいたような.....
曲がり角から人が飛び出てくる。全員が覆面を被り武器を構え、私はいつでも飛び掛かれるよう抜刀していたが......やはり社長が飛び出てきていた。
うん、なんで追ってきた?
「はぁ....ふぅ.....ちょっと待って、私は敵じゃないから.....」
「何故追ってきたんです?」
私がそう聞くと、社長はなんだか少し恥ずかしい....いや、これはなんだ。憧れの人に会ったみたいな表情で口を開いた。
「あなたたちの襲撃.....見せてもらったわ......ブラックマーケットの銀行をものの5分で襲撃して撤収、こんなアウトローっぷりは見たことが無かったわ。」
「何が言いたい?」
「え、えっと.....正直、すごく衝撃的だったというか。このご時世に、あんな大胆なことが出来るなんて.....感動的というか。」
「私もそうなりたいの!法や規律に縛られない、本当の意味での自由の魂!そんなアウトローになりたいから!」
......え~と、なんだろうか。それを伝えにここまで、わざわざ銀行から全力疾走してきたと?
うん、これで分かった。多分、あなたはあなたが憧れているようなアウトローにはなれませんよ。だって普通伝えに来ないし、こんな根っからの善人オーラが溢れだしている人が言うのは無理がある。
まぁ、そのままでいて欲しいものだが。その子供のような気持ちを持ったまま、穏やかに.....過ごせるか分からないが、そうしてほしいものだ。
さて、なんか緊張した雰囲気はほぐれて、すっかり普段のような空気感に戻ってしまったな。
先生は走り過ぎて燃え尽きているし、しょうがないな.....なにか休ませるもの.....そうだ、セシルがロウェルさんに冗談でやろうとして奴でも時間があればやってあげようかな?
「先生、少し失礼しますね。」
「ふぇ.....なぁに.....シグレ......」
先生の身体を持って、自身の大腿部へと持っていく。膝枕といったか?まぁ.....私は戦いのし過ぎで決して柔らかくはないと思うが.....先生はどうだろう?
「......ふぇぇぇぇ......イケメン過ぎだよ.....シグレぇ.......」
.......蕩けてるな。まぁ、話し合いが終わるまでこうしてるか......
ロボットにバックアップの一つや二つあるでしょ、多分、
何か見たい話はありますか?
-
剣楔アリス
-
W社ウタハ
-
ディエーチ協会ウイ
-
リクエスト......?