元過労暗殺者、平和だが平和じゃない世界へとやってきた   作:シャオロウェをすこれ

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 さぁさぁ、Cチェックのお時間です。


元過労暗殺者、回復する

 .......眩しい。

暖かい光の中に、私が立って.....いや、浮いているのか?足場がないし......

謎の空間だ......でも、全然恐怖だとか、そういうものは感じない。むしろ暖かくて、どこか包まれているような......そんな感じがする。

 

 ああ、心地がいい。ずっとここにいたい。ここにいれば、全てを忘れられて、苦痛も何も感じる必要はないだろう。

......なんだか、奥に人が見える。白衣を着た女性だ。彼女も私と同じように、ここにいることを望む人なのだろうか。

 

『気が付いた?』

 

 ......暖かくて優しい声だ。この声をずっと聞いていたい。

 

『今まで辛かったでしょ?』

 

『大丈夫。ここには君を害するものは誰もいないよ。もう何も、苦しまなくていい。』

 

 肩に手を置かれる。柔らかい。ただ置かれているだけなのに、まるで抱きしめられているかのような温もりを感じる。

なんでだろう.......でもそんなことどうでもいいや。ただただこの幸せを享受し続けていたい。

 

『さて、君が光を通してやってきたこの場所には......君が体験してきた苦痛と、同等以上の苦しみが眠っている。』

 

『だから、私と一緒に、その凝り固まったわだかまりを解消しよう。そうすれば、君も、君の周りにいる大切な人も、もう二度と苦しむ必要はなくなるからさ。』

 

『そうなればもう二度と、自分を押し殺して生きていく必要はないんだよ?』

 

 手が差し出される。

この手を取れば、私もみんなも楽になれるのかな。暖かな温もりに包まれて、そのまま......

なら、手を取らない理由はないか_______『待て。』

 

 ......今、誰か後ろから私に声を掛けたのかな?

黒いもやのようなものが、私の後ろに立っていた。でも、なんだか見たことがあるような雰囲気だ。

それに、あの声は確か......

 

「......ユジン部長?」

 

『鎮まれ。そして苦痛に耐えろ。そのような甘言に簡単に惑わされるな。』

 

 ......間違いない。目の前にいる『これ』は、ユジン部長だ。だけど、なんで姿がないんだろう?

どうして、黒いもやだけが、私の前に立っているのだろう。

それに、どうしてユジンさんは、私の選択を止めるようなことを言うんだろう?彼女は正しいことを言っているはずなのに。

 

「あの人の手を取れば、みんな幸せになれるはずなのでは.....?」

 

『馬鹿なことを言うな。そんな簡単に全員が幸福になるものなどあるはずがない。』

 

「でも.....」

 

『でもじゃない。いいか、私はもうすぐ消える。次にここに現れるときがいつなのかも分からない。』

 

『だからシグレ、今この場でただ一つだけ、お前に伝えることがある。』

 

 

『何があっても、自分を見失うな。自分の信じるものを貫き通せ。言われた信念に盲目的になるな。お前の歩む道が、お前にとって最善の行動になることを祈っている。』

 

 そう言い残して、ユジン部長は消えた。この暖かな光の中に、霧となって。本当にあの場にいたのかと思えるほど、跡形もなく。

私が今、ユジン部長と交わした会話は、あまりにも短かった。それに一方的で、私の返事などを一切受け付けなかった。

 

 ......でも、なんだか頭がすっきりした気がする。

そうか.....自分にとって最善な道.......信じるもの......

 

『何を悩んでるの?さぁ、私の手を取って。』

 

「......いや、大丈夫です。」

 

「私にはまだ、やるべきことが残ってますので。」

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 .......定期的に鳴る機械音。嗅ぎ慣れた消毒液の匂い。自身の周りを囲う落ち着いた色の覆い、白い天井。

ここは.....多分病院かな?私は撃たれた後ここに運ばれたのか......生きててよかったな。

負傷した箇所を触ってみれば、おそらく包帯であろう巻かれた布地があった。誰がやってくれたのだろうか?

 

 ......ところで、さっきから私に羽織られている黒い外套はなんなのだろうか。

病院服の上からこんなものを羽織るなんて、聞いたことがない。当然、出撃する前の私もこんなものは着ていないし.....どういう事だ?

 

 とりあえずは現状把握に努めるか。手袋......はない。刀は......あった。よし、それじゃ立ち上がって......

.......結構痛いな?まぁ、無理しなければ何とかなる範囲だし大丈夫か。よっこいせ.....

 

「313のシグレさんはまだ......えっ!?ちょっ、なんで起きてるんですか!?」

 

「なんでって、目を覚ましたからですが......ここの方なら、ひとまず情報を......」

 

「情報じゃないですって!寝ててくださいよって力つよ!?」

 

 運のいいことに早速看護師のような人を見つけたので話しかけようとしたのだが、私が立っていることに相当驚かれてしまった。

そしてそのまま部屋に連れ戻されそうになったが、聞きこまないことには始まらないし.....戻るのはもう少し後でもいいか。

 

「いや、私としてはただ色々知りたいだけで......それを知ったらすぐにベッドに戻りますので。」

 

「知ったら戻るんですよね!?じゃあ答えますから!早くベッドに戻って!」

 

 .......この場で私がするべき質問......できるだけ短く済ませるべきだよな。ならまずはあれだな。

 

「ここはどこです?」

 

「ここはゲヘナ救急医学部で管理してる病院で、あなたは撃たれて死にかけの所を治療して運んできたんです!」

 

「戦いはどうなりましたか?」

 

「.......あの後は風紀委員長が場を収めたと聞きました。詳しいことは知りません。」

 

 .....すぐさま聞くべき質問はこんなところか。

命はあるが、あの不思議な空間に私の羽織っている外套、聞きたいことは様々ある。

それに先生の事も気になる。まさかないとは思うが、あの場に来ているかもしれないし.....そうだな。

ここは一つ、ちょっと迷惑をかけることになるが許してもらおうかな。もう少し、詳しく知りたいし。

 

「分かりました。それでは。」

 

「えっ!?戻ってくれるんじゃ......ちょ、ちょっと待ってぇ~!?」

 

 病室に取り付けられている窓から飛び降りて、外へと飛び出す。

目指すはアビドス対策委員会室だ。あそこにいけば、戦闘のより詳しい結果、それと先生がどうなったかも聞けるだろう。

私の服は病院服のままだが......まいっか。次に来る機会があったら返そう。

 

 .......あ、少し待てよ......あそこの花壇に座っている人、もしかして先生じゃないか?

ちょうどいい、手間が省けた。先生に聞けば、分かるはずだ。ついでに私の手袋と服の行方も聞かせてもらおう。

.....なんか少し驚かせてみたくなったな?正面から行くんじゃなくて、後ろから、少しドッキリ.......とやらをやってみようか。

 

 でもなぁ、セシルはこれやってシャオさんの逆鱗に触れてたし.....まいっか、便利屋の人々に触れて、私も少しその気が出てきたのかもしれないな.......

 

 気配を消して、先生の後ろに近づく。先生の後ろには茂みと気があるので、音を立てないよう慎重に歩いて.....

 

「先生、こんにちは。」

 

「.....??えっ!?シ......シグレ!?なんでここに.....いや、それよりも無事でよかった......でも....う、ぁ、ぁ.....」

 

 先生は私の顔を見るなり、少しは嬉しそうな顔をしたものの、次の瞬間には顔をゆがめて泣き出してしまった。

あ、流石に無神経だったか.....?ちょっと不味いな、人目もあるし.....

 

「あ、大丈夫ですか?えっと、とりあえずどこか人目のないところに.....」

 

「あぁ......!シグレ.....!ごめんなさい.....!また、また戦わせて.....ごめんなさい!わた、わたしは.....せんせいしっか.....」

 

 先生がそれ以上何かを言おうとする前に、指で口を抑えて喋ろうとするのを防ぐ。

多分、それを言ってしまったら先生は先生でなくなってしまうだろう。私から武器を奪うのと同じようにだ。

 

「先生、話はアビドスで聞きます。私は大丈夫ですから、今はここを離れましょう。」

 

「......うん。ごめんね、シグレ......」

 

 

 

 

 

 

 

 先生を連れてやってきたアビドス.....のホテル。

あの時は自分と先生を落ち着けるのに夢中で外の景色をまったく気にしていられなかったが、落ち着いてみればもう日が沈みかけていた。

流石にこの時間からお邪魔するのもあれだし、でも夜は危険だしで、とりあえず背負って元いたホテルまで行くことにした。

 

 先生は背負われてる時、涙で咽びながら私を力強く抱きしめていた。

正直腹部の傷に当たって大分痛いというのはあったが、先生がそうしたいならそれでいいかということで何も言わなかった。

 

 そして今は、いつしかの状況をリピートするかのように、ベッドにお互い座っている。

先生は涙でぐしゃぐしゃになった顔を抑え、私の右肩にもたれかかっている。かなり力強いが。

 

「っ......し、シグレ....?」

「どうしましたか?」

 

「その......本当にごめん。私はシグレから大切なものを奪おうとした挙句、こんな怪我までさせて......」

 

 .......まだそれを気にしていたのか、先生は。

確かにユジン部長の刀を奪おうとしたのは正直かなり怒りを抱いたが.......でも、もういい。あれは私も配慮がなかったことだし。

それに、先生には私じゃない助けるべき人達がたくさんいる。こんなところで泣きじゃくっている場合じゃないだろう。

 

「いいですよ。もう気にしてませんから。」

 

「で......でも.....」

 

「先生は、『先生』として、自分のすべきことをして下さい。」

 

「先生には助けるべき人がいるはずです。今私たちがいるアビドス対策委員会のみんなだって、先生の力を必要としています。」

 

「.......」

 

「だから、また頑張っていきましょう。私は、そのための矛ともなり盾ともなりますから。」

 

「......うん。」

 

 先生の声は低い。だけど、表情を見れば少しだけ明るくなっている。どうやら少しだけ元気を取り戻してくれたようだ。

 

「よし、それじゃこの話は終わりです!また明日から頑張っていきましょう!」

 

 

 

 

 

 

 


 

揺らぎ/不完全な自我の殻 毎幕毎に手元とデッキにある全てのページを消去し、使用するページを手元に追加。全てのページのコストが0になる。

毎幕毎に保護1、クイック1を獲得する。HPが25%以下になると.....?

 

『パニック』が解除されました。

 

 




 まだCは弱いので、シグレちゃん以外に干渉することが出来ません。しかし時期がこれば、やがて全員に手を出していくことになるでしょう。その時期がいつになるかは....近いかもしれないし、遠いかもしれません。

何か見たい話はありますか?

  • 剣楔アリス
  • W社ウタハ
  • ディエーチ協会ウイ
  • リクエスト......?
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