元過労暗殺者、平和だが平和じゃない世界へとやってきた 作:シャオロウェをすこれ
あ、今回シグレちゃん視点なのに『元過労暗殺者....』でない理由は、純粋にそっちの方が雰囲気が壊れないからかなと思ったからです。
ま、そういう事は気にせず.....お楽しみください!
さて......どう戦うべきなんだ?。ホシノさんとセリカさんを守りながらはいいんだが.....
あれ相手にどうやって有効打を与えられるかが分からない。斬りに行くというのも.....中々難儀なものだろう。接近する方法がない。しても斬れるのか?あれ。
こういう時、ユジン部長ならどうしたかな.....部長がこの場に居てくれれば、何か出来るかもしれないのに.....やっぱり私には.....ダメだダメだ!
ネガティブな思考になるなシグレ......ユジン部長はいないから、私と先生、それからノノミさんにシロコさんだけでどうにかする手段を考えないと。
「シロコさん、ドローンは使えますか?」
「駄目、なんでか動かない。アヤネのドローンもさっきから動かないし、そういうのがここでは無効化されるのかも。」
あれの首辺りにドローンを飛ばして爆撃してもらうというのを考えたが......それはダメか。
また一つ、手段が潰れたな.......
「先生、先生の見立てではどう思いますか?」
「待ってて......少し考える時間が必要かも。」
「なら.......その分の時間稼ぎはしましょう。」
そうはいったものの、なんだかさっきから不穏な予感がする。頭も痛いし、ちょっと不味い.....所ではないかもしれない。
とりあえずは向かってくる弾丸をステップでいなして避けていく。心なしかさっきよりも弾速が上がっている気がするな......
それに、その他にもなぜか色が灰色になっている鞭やどこからともなく飛んでくるナイフが接近する難易度をより向上させている。
とはいっても近づけないほどじゃない.....なんとか掻い潜れる。ここらへんか.......!?
何とか近づいた先で刀を振り被るも、それは黒いもやをただ切り裂くだけで肉体を斬る感覚がまるでなかった。無を斬り裂くようだ......なんだこれ。
そしてこの靄に近づけば近づくほど頭痛もひどくなってきている。精神に干渉してきているのか......?
マントはもはや赤熱して触れないほどの熱さになっている。みんなの方を見回してみても、距離があるにもかかわらず苦しそうな顔をしている。
......そして、ホシノさんはいまだ混乱状態のまま。立ててすらいない。ただひたすら、ぶつぶつと念仏のように言葉を発しているだけだ。
しかし敵は容赦してくれない。そんな混乱しているホシノさんの方にも次々と攻撃の手は飛んでくる。
駄目だ、ここに居てもできることは少ない......あっちの援護に行った方がいいな。
ホシノさんの方へ飛んでくる鞭やナイフを次々と弾いていく。実体のないものを斬っているような奇妙な感覚にだ。
......!不味いな、あの槌はこっちに直撃コースだ.....避けないと。
「ホシノさん、少し失礼しま.....」「待って。」
「あとちょっとで一つ......一つ思い出せそうなの。大切なものを.....大切な......」
「.......分かりました。」
目の前に迫ってきた大槌を、無理やりだが体を使って弾き飛ばす。全身に鈍い痛みが走る.......あ~......これは骨の何本か持ってかれたかもしれない。
この一撃は防げたが、次も防ぐとなるとそれこそ全身がミンチになるかもしれない。次は無理だな.....できて一回だったか.....
でもさっきの言動と今の攻撃で分かった。多分このねじれを解決する唯一の方法は......多分ホシノさんだ。ホシノさんが唯一の希望だ。
ホシノさんが失ったという全ての記憶を思い出して......なんとか糸口が見える。そういう仕掛けじゃないか?過去のねじれにも......そんなものがあった気がする。
ノノミさんもシロコさんもさっきから射撃を続けているが、あのねじれには効いている気配がない。そして思い出そうとしている瞬間から、急にホシノさんに対しての攻撃が激化し始めた。
この事実から鑑みるに、ほぼ100%ホシノさんの記憶とやらがキーワードだろう。ホシノさんが戦線復帰できるまで守らないと......
「ノノミ!シロコ!ホシノを守るように動いて!」
「分かった!」
「分かりました!」
私が言う前に、先生ももうホシノさんがカギだということに気づいたらしい。
こうなったらひたすら防戦一方だな。とにかく避けて守って避けて守ってを意識しないと.......
というか、さっきからこの壁に流れるモノクロの映像......モザイクが酷すぎて何も見えないな。なんでだろうか......
あの恐ろしい叫び、それにホシノさんの言動のときにも記憶うんぬんかんぬん言っていたし、おそらくこのねじれには記憶に関する何らかの原因があるのだろう。
やっぱり、ホシノさんの記憶が頼りだな......
そうこう守り続けていると、不意に一枚の映像が切り替わる。先ほどの何も輪郭すら分からない映像とは違い、ちゃんと見える映像だ。
中には.......ショートのピンク髪の女性と青髪ロングの女性が映っている。片方は.....ホシノさんだろうか?顔がどちらも塗りつぶされていて分からないが.....随分雰囲気が違うな。
『1年生のホシノちゃんだね!これからよろしく!』
『よろしくお願いします、ユメさん。』
『さんなんて堅苦しいなぁ~、私のことはユメ先輩って呼んでよ!』
『.....分かりました、ユメ先輩。』
最後の言葉を皮切りに、バリンと音を立てて画面が崩壊する。再びモザイクだけの読み取れない映像になるが、どこかあのねじれは苦しそうにしている。
ホシノさんの記憶が呼び起こされたからだろうか?
「ホシノさん、思い出せたんですか?」
「......まだ、まだ全部思い出せてない。だけど、これも大切なもの......」
......じゃあ、その全部を終わらせるまで、戦いは終わらなさそうだな?
あのねじれの方向を向いていると、あの恐ろしい杖はいつの間にかあの体の一部のようになっている。同化したという表現が正しいか。
それが今、こちらに向けて.......は?
......嘘だろ!?冗談じゃない、おそらくだがあれが当たったら致命傷で再起不能、多分だが良くても精神持ってかれるぞ.....それくらいの攻撃だ....!
シロコさんもノノミさんも止められるようなものはない、私が代わりに受けるしかないか.....?弾ける......のか?分からない.....いけるか?
ええい!やらなければ始まるものも始まらん!やって見せろよ私.....!でなければ結末も分からない!
「シグレ!?くっ、カードを.....」
「それは使うな!」
......私、今なんて言った?.....まぁいい、とりあえず今は防御に集中だ.....!
構えに入った次の瞬間に、相手の杖から今までとは比べ物にならないくらい大きいレベルの鞭が放たれる。
それも、継続的に。チッ、マジでキツイ......!ひどい頭痛だし.....全身も痛いし.....あっ!?
「しまった!?」
一瞬。ほんの一瞬だった。少しだけ、力が抜けてしまったというか。ともかく取り返しのつかないミスというべきか。
私の刀をすり抜けていった鞭は、まるで私を今から仕留めようとする蛇のように、そのまま私の首へと再び巻き付いてきた。
「!あああっっ!?!?」
痛い。苦しい。脳が割れる。全身が裂けてしまいそうだ。早く、はやくこの痛みから逃げないと、はやく、はやく、はやく、はやく......
どうにかしてこのいたみからのがれたい、いやだ、もういたいのはいやだ、いやだ、いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ.........
そうだ、しんでしまえばいたみをかんじることもない、らくになれる、ならしんでしまおう.....しなないと.....しねばらくになれる、かいほうされる.....らくに.....
「これで.....らくに.....」
「シグレッ!何やってるの!!」
「っあ!?」
意識が覚醒する。私は......何をやっていたんだろうか?手についたものを見れば、首から血が流れてきているのが分かる。
......またしくじったか。鞭に捕まったんだな。だけどまぁ私一人が身代わりになってあれを庇えたのならまだいいか......
まだ頭はズキズキとする。さっきの攻撃の影響か、力もとても抜けているが.....まだ舞える。私はまだ生きられる......!
地面に落ちてしまった刀を手に取る。私が混乱している間に、また一つ記憶を思い出せたようだ。壁にまた映像が浮かんでいる。
今度はホシノさんと誰か.....多分ユメ先輩とやらだな。それがまた映っている。表情は見えないが、手には何かポスターのようなものが掴まれている。
『じゃーん!ホシノちゃん見て見てー!アビドス砂祭りの昔のポスター!やっと手に入れたよ~!』
『この時はまだ、オアシスが湖みたいに広がってたんだよね~。あ、このポスターは記念にあげる!』
......幸せそうな声色だな。
『えへへ、すっごく素敵でしょー?もし何か奇跡が起きたら、またこの頃みたいに人がたっくさん集まって____』
『奇跡なんて、起きっこないですよ、ユメ先輩。』
『そんなもの、あるわけないじゃないですか。それよりも現実を見てください!』
『こんな砂漠のど真ん中に、もう大勢の人なんて来るはずがないでしょう!?夢物語もいい加減にしてください!』
『そうやってふわふわと、奇跡だの幸せだのなんだの.....』
『もっとしっかりしてください!あなたはアビドスの生徒会長なんですよ!?もう少し、その肩に乗った責任を自覚したらどうですか!?』
その言葉を皮切りに、映像の中のホシノさんは貰ったポスターをびりびりに破り捨ててしまった。
そしてまた映像が割れた。これで2つ目の記憶だろうか.......いや、割れていてもまだ再生が続いている?
かなり割れていて見づらいが、今度は夜の光が窓から差している。
どこか見覚えのある部屋だ。ここは.......今の対策委員会が置かれている教室か。なるほど、道理で見覚えがある訳だ。
『ねぇ、ホシノちゃん。』
『私ね、ホシノちゃんと初めて出会ったとき、これは夢なんじゃないかなって思って、何度も頬をつねったの。』
『ホシノちゃんみたいな、可愛くて強くて、頼れる後輩が傍にいてくれるなんていう夢みたいなことが、本当に嬉しくて.....』
『うまく説明できてないかもしれないけれど、ただ、こうしてホシノちゃんと一緒に居られるなんてことが、私にとって奇跡みたいなものなの。』
そうユメ先輩とやらは語る。心なしか、さっきよりも顔に塗られている黒潰しが薄くなって見えるようになってきている気がする。
『.......毎日毎日、こうして一緒に居るじゃないですか。』
『昨日も今日も、明日もそうです。こんなことで、何を大袈裟なことを。』
......それは違う。過去の事だろうから、何を言っても意味がないのは理解しているが......
昨日まで仲良くしていた隣人が、大好きな人が、尊敬する人が次の日には死んでいることだってあるんだぞ.......
『“奇跡”というのはもっとすごくて、珍しい事ですよ。』
『......ううん、ホシノちゃん。私は、そうは思わないよ。』
『ねぇ、ホシノちゃん。いつかホシノちゃんにも可愛い後輩が出来たら、その時には_______』
ここで映像は途切れた。あのねじれはもう戦意を失って.....いるのかは分からないが、少なくとも先ほどからひっきりなしに飛んで来ていた攻撃の嵐は止んでいた。
.....心なしか、この空間が不安定になってきている気がする。揺れ動いているような、なんというか。
そう考えていると、今度は天井から古いブラウン管テレビのようなものが出てきた。映像自体は砂嵐がかかっていてまだ見えない。
さっきから映像を映し出していたのは突然壁からめり込むように出てきたというのに、今は随分しっかりしているな?
あ、砂嵐が晴れてきたな.....どんな映像だろうか。
『どけ!早くユメ先輩の元へ行かなくてはならないんだ!』
『通せません。ここは現在、カイザーPMCによって作戦行動が行われています。』
『.....なら!』
再び砂嵐が走る。合間合間に聞こえる衝撃音はおそらく銃声だろうが......これだけじゃ何が起こったのが分からないな。
しばらくすると、砂嵐がまた晴れてくる。かなり強い砂嵐が起こっているようで、画面がほとんど砂に覆われているが.....でも見えなくはない。
映っているのは肩で息をしているホシノさんか。あの後は邪魔をどけて無理やり来たってことだろうな。
でも今までとは違って先輩がいないようだが.....この後出てくるのだろうか。
『はぁ.....はぁ.......ユメ先輩.....!』
『!あれは.....ユメ先輩の盾....?ということは、あの砂丘を超えた先に.....』
『はぁ、よかった....ユメ先輩。帰りが遅いから探しましたよ、全く......』
そういってこちら側に映っている盾へ近づいてくるホシノさん。まだ画面の中の本人は気づいていないようだが......ユメ先輩はどこにもいないぞ.....?
『ほら、早くかえりま......先輩?』
ホシノさんが盾を手に取る。そしてとった瞬間から、顔が青ざめていくのが砂嵐越しでも分かる。
『ユメ.......先輩?』
.......当然だろう。そこに映っていたのは........
盾にこびりついた、先輩の焼け焦げた手であろうものだったからだ。その反応は至極当然だろう.......
画面が消える。やかましかった砂嵐の音一つせず、辺りには静寂が走る。
ホシノさんの方を向くと......泣いていた。顔を泣きはらしながら、ゆっくりと立ち上がろうとしていた。
「ユメ先輩........あなたは......ユメ先輩ですよね......?」
ねじれがその言葉を聞いて顔を上げる。顔を覆っていた黒い靄は晴れ、視界を阻害するものは何もなくなっていた。
『違う.......私は......ユメ?いや、私はユメじゃなくて......第四群のトナカイの.......誰も知らない......』
『そうだ、あいつは私たちの事なんて覚えてすらいない!!』
『いや、違う、ホシノちゃんは私の大切な後輩で......』
『違うといっているだろ!あいつは私たちを見捨ててのうのうと暮らしている屑だ!都市の惨状も知らず、一人悠々と幸せに暮らしている憎むべき女だ!誰も私たちを覚えていないんだよ!』
『違うよ!あなたこそ黙っててよ!ホシノちゃんは.......ホシノちゃんは......』
ねじれはそこで頭を抱えてうずくまってしまった。あのねじれが言っていることがまったくかみ合っていない.......
まるで二重人格のようだ。片方は憎しみを、片方悲しみを吐き出しているかのような感覚を覚えるが......だけどそれよりも気になることがある。
......どうして、泣いているんだ.....?
「先輩......もうやめましょう、こんなこと。全部思い出しました。」
「私は先輩のことを覚えています。先輩のかっこいいところ、だけどちょっと抜けている所......」
「そこを含めて、全部好きでした。だから.....だから......」
ホシノさんはそこで言葉を詰まらせてしまう。気づけばお互い、地面に手を付けて涙を流している。
今気づいたが、あのねじれの見た目.....当初は本当に化け物のような見た目だったが、今は人間に近い姿に戻っているな。.....待て、不味い!
『うるさい!黙れ!誰も私たちを覚えていないんだよ!その証拠を今から見せてやる!』
「!ホシノさん避けて!」
最後の馬鹿力というべきか、目にも追えない速度でねじれが杖を手に取る。
あれが放たれたら、ホシノさんの今の状態じゃ間違いなく.......!割って入らないと......!
.......だけど、その行動は阻害された。他にもよらない、ホシノさんの手によって。
「......!今度こそは、絶対に失わない!」
杖から恐ろしい鞭が放たれる前に、ホシノさんは盾を持ってねじれへと体当たりを決め込んだ。
ねじれの手から、杖が転がり落ちる。そしてそのまま、ホシノさんはねじれの身体を抑え込んだ。腕から足まで、がっちりと。逃げられないように。
「ユメ先輩.....!目を覚まして下さい!私の知っている先輩は、そんな先輩じゃなかった!」
『.......あぁぁぁぁぁ!小癪な真似を......!もういない.....もう消えたはずなのに、なんで今更出てくるんだよ!』
『.....もう休んで。もういいから。ありがとう、
『......なんで!なんでだよ!?なんでまた気力を取り戻せるんだよ!?都市を見て、もう二度と見ていたくないって言ったはずだ!あの暖かい声だって、ここには苦痛があるって言ってただろ!』
ねじれが押し黙る。またしても沈黙が場を支配する。私はこんな状況になって、何も行動すら起こせない。いや、何をどう起こせばいいのか。私には分からない.....
『......それでも、生きる意味を見つけたから。』
『......なんだよ。』
「......だって、こんなに私のことを大切に想ってくれる可愛い後輩がいるんだもの!どんなに苦しくても前を向いて見せる!」
その言葉で、今まで閉じ込められていたモノクロの空間が崩壊する。
端から端まで、跡形もなかったように。もう二度と見ることのできないかもなと思っていた暖かな太陽が、再び目を覚ました。
ねじれは、もう完全に人の姿へと戻っていた。トナカイのスーツはそのままだが、その顔には再び人としての暖かさのようなものを取り戻していた。
『......あぁ、そうかよ。なら好き勝手、精々頑張ってみろよ。私は見ているからな。』
「うん!今までありがとう.....またね。」
「.......ユメ先輩。今までごめんなさい。あの時助けれなくてごめんなさい。」
「ホシノちゃん........」
「でも、これだけは、これだけは言わせてください。」
「.......おかえりなさい、ユメ先輩。」
「......ただいま!」
熾烈な戦いは、最後は二人の感動の再開によって幕を閉じた。......よかったな.......
ユメ先輩のステとかは次書きます。あ、それと明日から多分よくても週2、3投稿になります。冬休み終わっちゃった.....
大丈夫、私はこういう展開は好きだが最終的に幸せになってほしいと願う人だ,,,,
何か見たい話はありますか?
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剣楔アリス
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W社ウタハ
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ディエーチ協会ウイ
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