元過労暗殺者、平和だが平和じゃない世界へとやってきた 作:シャオロウェをすこれ
『ホシノ先輩の位置、確認できました!あそこです、あのバンカーの地下に!』
「行きましょうか。」
「行こう!」
ここに来るまででカイザーPMCは全ての戦力を使い切ったのか、あれ以来戦いという戦いは起こらず目的地へ無事にたどり着くことが出来た。あちこち砂漠化の影響で砂で埋もれているが、奇跡的にあのバンカーの入り口だけは綺麗な状態に保たれていた。
......チッ、鍵がかかってやがる......ぶっ壊すか。
「鍵を破壊します。......壊れろ!」
全力で手に力を込めて扉を殴打する。発火装置も全力稼働、まさにフルパワーという一撃を食らった扉は鍵どころか扉自体を音を立てて盛大に吹っ飛ばしてしまった。扉が反対の壁に当たり、ドーン!という音を立てて破壊される。
ちょっとやり過ぎたな......もしこれがホシノさんがいる扉の前で同じことをやっていたら、いくら身体が頑丈なホシノさんと言えどただでは済まないだろう。ちょっと反省だ。
中は長い通路が続いていて、左右どちらにも扉が存在していた。近い雰囲気の場所で言えば、病院の廊下とかがそれにあたるだろうか。監視カメラらしきものは......あった、壊すか。これを壊しつつ進んでいこう。下手にバレたら困るからな......今更感はあるが。
「ホシノさんはここのどこにいるんです?」
「まだまだ奥の方!早く行こうか!」
全員全力疾走で廊下を駆け抜ける。既にバンカー内には敵はいないようで、静かに私たちの足音だけが響いている。いくつかの曲がり角を経由し、鍵掛かっている扉をまた破壊し、行き止まりは無理やり壁を槌で壊してもらってどうにかこうにかホシノさんのいる場所へとたどり着けた。
「また鍵がかかってる......」
「壊す......ダメですね、硬すぎます。」
「どいて、私がやってみる。」
私では壊せそうになかったので、壁をも壊してきたユメさんに出番を譲る。ユメさんが巨大なサイの槌を構えて音が鳴るほど扉に槌を叩きつけるが、扉は僅かに揺れるだけでビクともしない。
クソッ、事態は一刻を争う時だというのに......こういう時に限って、タイプが電子キーじゃないから、先生お得意の電子ハッキングも無理だろうし......あともう少しで、手がかかるのに......!
......そうだ、もしかしてあれならいけないか?
「ユメさん、槌を貸してくれませんか?」
「分かった。」
槌を手に取り、力を込める。向かう先は、扉......でなくそれが建てつけられている周囲の天井と壁。扉が壊れないなら、それを支える土台毎ぶっ壊してしまえば......!
「開け!」
一撃。天井が揺れる。周囲から瓦礫がポロポロ落ち、僅かに建物が揺れる。二撃、堅牢な扉が段々と揺れ始め、扉に隙間ができる。ラスト三撃目、とうとう今まで私たちの道を邪魔してきた扉が倒れ、中の様子が露わとなる。
......が、そこにあったのは、私たちが期待していたような、輝かしい未来と再会じゃなかった。
「......ホシノ、先輩?」
「ホシノちゃん!」
ホシノさんが、頭を抱えてうずくまっていた。顔には生気がなく、それこそ今にも死んでしまいそうなほどの調子が見て取れる。しまった、間に合わなかったのか......?
「ホシノちゃん!しっかりして!ホシノちゃん!」
ユメさんが駆け寄ってホシノさんの肩を揺らす。よく見て見れば、後ろの方には何かの実験で使われたであろう器具が置かれている。......あの形には見覚えがある。あれは......ユメさんの頭にもある角だ。確か脳周波なんとか角だとか聞いていたが......あれでなにかを増幅していたのか?
「とりあえず外に出ましょう。助けを......ホシノさんを病院に運ばないと......」
『やっぱりあの時、ホシノ先輩を信じなければよかった。』
『ほんっと最低。アンタなんか死んじゃえばよかったのに。』
「ちがっ......私は......」
脳をグチャグチャにかき回すような声が、私の頭の中に響いてくる。私は、また騙された。騙されて騙されて、最終的に、一番愛して、大事にしていこうと思ったはずのアビドスでさえも失ってしまった。ユメ先輩の想いも踏みにじり、みんなを裏切ってまで、守らないとと誓ったのに。
私は愚かだ。どうしようもないほど、馬鹿で、愚図で、救えないほどの屑だ。結局、ただ破滅をもたらすだけの存在だった。
みんなはこんなこと言わない。こんな酷い事言わないであろうことは、愚鈍な私にも分かる。だけど黒服にあの謎の、悪魔のような装置を使われて以来、脳裏にずっとこんな声が鳴りやまない。
何度死にたいと思ったか、何度罪を償いたいと思ったか。でもそんなことは叶わない。他にもない私がその機会を潰してしまったからだ。みんなを信じて、もう少し考えられたなら、こんな事態は避けられたはずだったのに。私のせいで、私のせいで、私のせいで......また.......
『ホシノ先輩を信じた私が馬鹿でした。もう二度と見たくありません。』
「違うよ......アヤネちゃん......」
『ホシノ先輩が愚かな行動をしたから、私たちが一番守りたかったものも、なくなってしまいました。』
「ノノミちゃん......私は......」
『ホシノちゃん、私もみんなも、ホシノちゃんのせいでいっぱい苦しんだよ?』
「ユメ先輩......ちがっ、そんなつもりじゃなくて......」
『辛かったよね?』
「え......?」
な......何?この暖かくて優しい声は......さっきまで聞こえなかったのに。私を否定するような声しか聞こえなかったのに......
『大丈夫、落ち着いて。私だけは君を否定しないよ。』
『ゆっくり、ゆっくりでいいから、私の声に耳を傾けてほしいの。』
『君は仲間のためを思って動いて、結果的にいい結果を招いたとは言えなかったけど......それは君のせいじゃない。』
私の、せいじゃない?
『君を信じて引き留めようとしなかった、君の仲間が悪いんだ。その証拠に、彼女たちは君に酷い言葉を投げかけていたでしょ?』
......違う、みんなは悪くない、でもみんなは私に.......ダメ、その先は考えちゃダメだ......
「違う......あれは幻覚なはずで......」
『いや、あれは幻覚じゃないよ。じゃあ、見せてあげる。』
その言葉と同時に、周りの景色が暗転する。あれは......ノノミちゃんに、シロコちゃん?いや、他のみんなもいる......今まで声をかけてくることはあったけど、揃っているのはなかったはず。まさか......いや、嘘だ、そんなことは......
『ホシノ先輩。』
やめて。しゃべらないで。その先を聞きたくない。静かにして、お願い。
『私達は、ホシノ先輩のことを一生恨み続けます。』
違う、私はただただみんなのためを思って、みんなが一番幸せになれると思って動いて......そんなつもりじゃなくて......どうすれば、一番楽な選択を皆が取れるかと......
『せっかく、希望が見えてきたと思ったのに......』
『先輩が全部、踏みにじった......!』
『『『『全部、ホシノ先輩のせいで......』』』』
「ぁ.......?」
違う。違う。私が、私が壊したんだ、一番、先輩としてやってはいけないことをしてしまったんだ。でもみんなは私を否定する、こんな状況を招かざるを得なかったのはみんなのせいだ、いや違う、私の、いやみんなの......
「どうすればよかったの.......?」
『簡単だよ。』
「え......?」
『私と共に行こう。そうすれば、自ずとそれが分かるはず。さぁ、私の手を取って。』
手が差し出される。この手を取れば......いいのだろうか。でも、私が選べる選択肢はそれしかないから......手を取ってしまってもいいか......
『......ちゃん!起き......!お願い......』
「......なにか、聞こえる?」
『ホシノ先輩......起きてください!起きて!』
これは......先輩の声だ。それにアヤネちゃんの声もする。私に起きてと言っているけど......でも、みんなが私を望んでいないから......
『せっかく手が届いたのに、こんなところで終わりなんて嫌!』
『ん、どうにかしないと......』
みんながいる。みんなの目線の先には......倒れている私がいる。私、あんなひどい様子をしてるんだな。でも、みんなに私は必要ないはずなのに、私のせいですべての事態が悪化したのに、私がみんなの希望を踏みにじったのに、どうして今、みんな悲しんでいるように見えるんだろう?
『迷ってるの?』
「.......」
『私も手助けするよ。手取り足取り、色々と支えてあげるからさ。大丈夫、落ち着いて。』
もう一度、私の目の前に手が差し出される。差し出された手と、今私の後ろで繰り広げられている情景。どちらが本当で、私に必要な物なんだろう?
......いや、違う。こんなことがあるはずがない。もう私は騙されない......本当に必要なものは......
「気づいた......」
「駄目、心臓が動かない......!お願い、お願い......!」
「動け!クソッ、もっと早く......!」
何度も何度も、ホシノさんの胸部を圧迫し続ける。心臓マッサージを行っても、未だ蘇る気配がない。まだ止まってから時間は経ってない、間に合うはずなんだ、いや、間に合わないと不味いんだ......!
「もう二度と失いたくないのに!手の届くところで、一番大事な人を......」
ユメさんも必死の形相で処置を行っている。どうか頼む、動いてくれ......!
「......!待ってください、今.....!」
僅かに、押し続けていた胸が動く。ドクン、ドクンと、失われていた鼓動が戻ってくる。やがてしばらくの時間が経ち、顔に生気が戻り始めた頃......ホシノさんが、目を開けた。
「......みんな......」
「!ホシノちゃん!」
ユメさんがホシノさんを抱きしめる。それこそ二度と離してなるかのような、力強い抱擁の後、手を離した。ホシノさんは少し目の前の現実が飲み込めず、呆然としているようだが......こちらとしては、本当に良かった......目の前の命を、繋ぎとめることができた......
「......お、おかえりっ!先輩!」
「ああっ、セリカちゃんに先を越されてしまいました!一番最初に言おうと思ってたのに、ズルいです!」
「う、うるさいうるさいっ!順番なんてどうでもいいでしょ!また、こうして再開することが出来たんだから!」
「......再び会えてよかった......」
「ホシノ先輩、おかえりなさい!」
「おかえりなさい、です!」
「おかえり、ホシノ先輩。」
みんな涙を流しながら、再会を喜んでいる。ホシノさんも驚いているが、しばし立って認識できたのか、壊れた建物を手すりとして立ち上がった。
「......うへ、求められているのは、あのセリフかな......」
「全く、ここにいるのはみんなのお陰だし、仕方ないな.....」
「ただいま。」
対策委員会最後の戦いは、完全勝利で終わった。
Cはクソです!
よし、これでアビドス編が終わりました!というわけで、幕間を挟んでから、パヴァーヌ1章へシフトしていきます!......とはいっても、関われるところ、あるかなぁ....
ちなみにこの話の続きは要望があれば書きます。
何か見たい話はありますか?
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