元過労暗殺者、平和だが平和じゃない世界へとやってきた   作:シャオロウェをすこれ

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 多分次で幕間は終わり、本編に戻ります。
 それと、いつも評価と感想をくれる皆さん、本当にありがとうございます!皆様の一票が私の執筆意欲の元となっております!これからもどうかよろしくお願いします!

 もし評価してない人いれば評価してくれると嬉しいな~......なんて。


幕間 過労暗殺者は休暇を過ごす(3)

 あれからちょっとお説教を食らって、また少しの時が経った。日は夕暮れ時となり、辺りには学校帰りの人出が多くなってきている。

 

「いや~シグレ、色々あったけど楽しかったね!」

 

「そうですね。途中先生と私の奢り合いみたいになったのも面白かったですし......」

 

 歩く足取りは、かなり長い道のりを歩いたにもかかわらず軽い。手には様々に荷物を抱えているが、どれもこれもが幸せの第一歩としてその成分を供給しているような感じがする。生まれてこの方、こんなにも一日を平和に穏やかに過ごすことはなかったから、本当に幸せだ。

後は帰るだけ......いや、ちょっと待てよ。

 

「そうだ先生、最後に何か一個食べていきましょう。あそこの店なんてどうでしょうか。」

 

「おっ、いいね!行こう!」

 

 なんだかんだ今日は先生について言ってばかりで、私から誘そうってことはなかったからな。最後くらい何かしないと。金も......まぁちょっと怒られたが少ない支出でとてつもない量増えた。ちょっとくらいは問題ないだろう。小腹も満たしたいしな。

 

「い・お。何名だ?」

 

「いらっしゃいませ、お客様。何名だ......と言っています。」

 

「2名で。」

 

 入ってきた私たちを迎えてくれたのは、なぜか背中に『無我夢中 阿鼻叫喚 支離滅裂』と書かれた刀を背負っている店員と、それをどこかおどおどした様子で補佐している金髪の店員だった。大方通訳だろう......世の中そういって略語を使う人もいる。

 

「えっと、席はあちらの方をお使いください。ご注文をお決めになられたら、傍のボタンを押せばやってきますので。」

 

 メニューを手渡されたのち、席へと座る。店内は昼に行ったあの店と比べて、あまり人がいない......というより、私たち以外誰もいない。おそらくもう繁忙期を過ぎたのだろう。まぁ、下手に相席とかそういうのに配慮する必要がないから楽だな。あ、噂をすれば誰か入ってきた。

 

「ここが新しく出来たパイ専門店......どんな味なのか、見せてもらいましょうか。」

 

「前食べようとしたら吹っ飛されて食べれなかった三種のアップルパイ......今日こそ食べて見せる!」

 

 ......知っている。あれは確かゲヘナ随一の厄介な集団で、提供された飯に何らかの問題があるとその店を吹き飛ばして責任をとらせるという、美食研究会だ。そんな奴らがここに......参ったな、万が一の時に備えて吹き飛んでもいいよう構えておこうか。先生もいるししないと思うが......

 

「あっ!ハルナ~!それにみんなも!」

 

「あら、先生こんにちは。先生も究極の美食を求めやってきたのですか?」

 

「ここのアップルパイは美味しいって聞いたからね!先生がいるのも納得!」

 

「あはは、そんな感じかな?」

 

 ふむ、テロリストの集団と聞いていたが......先生と仲がよさそうだな。私と居るよりも美食研究会の人達と一緒に居た方が楽しいだろうし、私は端の方にどいたほうがいいな。

 

「シグレ、どこに行くのかな?ダメ、シグレの場所は私の隣だよ。」

 

 が、腕を掴まれてそのまま引き戻されてしまった。う~ん、先生も美食研究会と居た方が面白いだろうに......まぁいいや、それがお望みなら隣にいよう。さて、メニューでも見ようかな。......あ~でも、そういえばさっき三種のアップルパイが美味いだとかどうだか言ってたっけ。

どれだどれだ......あった、これか。『サ・フ・パ』。略語で書いてあるから分かりづらいが、よくよく見れば上の方に小さくルビが振られていて解読できた。なかったら分からないけど、あるからまぁいいか。

 

「先生、注文はお決まりですか?」

 

「私は~、シグレと同じものでいいかな?」

 

「では頼みましょうか。」

 

 ボタンを押して店員を呼ぶ。隣の席の美食研究会の面々は何を頼むか、どうしたらより食事を昇華させることができるかなどの議論をしているがそれは関係ないだろう。まぁ聞いている感じあちらも私と同じものを頼むようだ。評判がいいのかな?それとも看板メニューといったところか?

 

「お待たせしました、ご注文をお伺いします。」

 

「サ・フ・パを2つお願いします。」

 

「はい......あ、そういえば調理のほどご覧になりますか?」

 

「調理?」

 

「あ、サ・フ・パ......三種リンゴのフランベパイには厨房長が調理する工程を見れるオプションがついていて......代金はとりませんし、どうでしょうか?きっとお気に召しますよ。」

 

「先生、どうします?」

 

「見て見よう!面白そうだし......」

 

「ではこちらの席へどうぞ。」

 

 ......先生も乗り気だし、店員も受けてほしそうだから受けてみたが......冷静に考えたらアップルパイで調理工程を見せるって、どういうことだ?U社の港にある料理店で、魚を解体しながら調理するというサービスは見たことあるが......アップルパイで?

 

「アップルパイの調理工程って、どんな感じだろうね?」

 

「さぁ......」

 

 先生もちょっと疑問を持っているようだ。あ、厨房長が来た。

 

『いつここの前に立っても、最高の美食......芸術品を作る瞬間は心が躍る。』

 

『さぁ、まずはこいつをはん・われにするか。』

 

 厨房長は食材を板の上に置き次々と斬っていく。なるほど、これの魅力が分かったかもしれない。所々ただ調理するだけでは絶対に使わないようなナイフ捌きをして、そう、本当に芸術を『魅せる』かのようなつくり方だ。面白い......一手一手先が気になってきたぞ。

空中でリンゴを投げては、それに切っ先を合わせて裁断して......薄く薄く斬っていく。この人調理師というより、戦闘員に向いてそうだな。シ協会にいたらいいセンスを持って戦えそうだ......それほど素晴らしい刃捌きだな。

 

『チッ、少し質が落ちてる......シンクレア、も・そ(もっといいものを揃えろ)といっただろ。』

 

『あっ、す、すみません......』

 

わ・か・こ(わざわざ買ってやっているのはこっち)なんだから、それこそ相手のあ・わる(頭をかち割る)勢いで交渉しろ。』

 

『相手に|くわへぶ《首をへし折らないと分からないのか、豚野郎共が》と言ってもいい。』

 

『ご、ごめんなさい......僕は長期休暇をとらせてもらっているとはいえゲヘナ風紀委員なのに......

 

 ......いろいろ苦労しているな?厨房長は大分強圧的な人らしい。まぁ、面白そうな人ではあるが......う~ん、でもなんだか肝心な場面で厄介ごとを引き起こしそうだな。おっと、考えている間に調理が最終工程に入ってる。

 

『まぁいい。それじゃ本番だな。』

 

総・燃・美・為(総てを燃やし尽くせども、美しさの為)。』

 

 

「......ワーオ......これは、すごいですね......」

 

 壇上に置かれていたパイが、酒を投入されて激しく燃え上がる。しかし焦がさないよう、慎重に調整されている。やがて火が収まり、パイが完全な姿を現すころにはまさに黄金色の美しい芸術品といった様相になっていた。一目でわかる、絶対に美味い......過程の満足感もすごいし、いいな。

 

「綺麗......」

 

 隣にいる先生も感動している。う~む、料理の見た目でこれほど感動するとは......素晴らしいな。

 

「お・ご。」

 

 また新たな略語と共に差し出されたアップルパイは、さしずめ何十年も綺麗に隠されてきた宝物化のような美しさを保っていた。これを崩し食べてしまうのがもったいないと思ってしまうほどといえば、その凄さが分かるだろうか。

だが料理人の前で作ってくれたものを食べるのを躊躇するというほど侮辱に近いものはない。さぁ、この宝石のような美しさに感謝を込めて......いただきます。

 

「......うっま!?」

 

 口に入れた瞬間、流れ込んでくるは濃厚な甘みと爽やかさの濁流。かけられたはちみつが、パイ特有の甘さにマッチしてくどくなっている......と思わせといて、実のところはリンゴのシャキッとした味と食感がそれを打ち消している。このパイの色のように黄金比を保っているそれは、少なくとも私の脳に衝撃をもたらすには十分すぎる旨さをしていた。

 

「......飛んだ。」

 

 先生は......多分衝撃的な旨さのあまりに白目をむいて意識が飛んでいるな。やばい、満足感が半端じゃない。

 

「わ~っ!これおいっしい!」

 

「確かに美味しいですが......何故だかリンゴが二種しかないような気がするのですが。」

 

 む、美食研究会の部長が何か疑念を持ったな?無いとは思うがもし満足していなかったらここが吹っ飛ぶ恐れもあるし......一応警戒しておくか。

 

「あ、それについては......」

 

「簡単だ。黄金林檎を育てていた野郎がまやかしみたいに林檎を入れ替えてやがったからな......ちょっとこうべをカチ割ってやった。」

 

「う・くだろう?約束の大切さを叩き込むのもついででな。だから今は二種しかない。」

 

「うるさい豚共は首を開けるのがぴったりだ......だそうです。」

 

 ......もしかして、ここの店主って想像以上にやばいか?本当にシ協会に向いているかもしれん。いや、私も行く手を阻む敵の脳天を鞘でカチ割ったり心臓部を殴り壊したりしているから、何とも言えないといえば言えないが......うん。まぁでも、芸術的な殺しはしたことないが。

 

「な、なるほど。それなら納得......でしょうか。」

 

 どうにか納得してくれたみたいだ。よかったよかった、これで一件落着だ「シンクレア!やっと見つけたよシンクレア!!」

 

 ......は、なんだ?

 

「はぁはぁ......シンクレア!私と一緒に帰ろう!釘と金槌を握って......二人で一緒に働いて互いを握り合おうじゃないか.......! クフッ、フフフ......ヒヒッ!?」

 

「おわっ!?クローマー......どうしてここに......」

 

「シンクレア、そのような変質者を信じてはなりません。ファウストはすべてを知っています。ですからシンクレアが共にファウストと来ればお互いにとって最善の道であることも知っていますし、シンクレアがいつも何をしているか、何が好きなのかもすべて把握しています。ファウストと共にきて一緒に紅茶を淹れましょう。」

 

「お~、モテモテだね~シンクレア。ところで私と一緒に夜のデートでも行かない?」

 

「シンクレア殿!今宵は当人と一緒に悪人の成敗に行きませぬか!?決して退屈はさせないで候!そ、その後は......二人で一緒にハ、ハレンチなところにでも......//////」

 

「シンクレア、随分女を誑かしているじゃないか。客もいる中でこれとは、社・臨・終(社会的に臨終)だな。安心しろ、誰も味方になってくれなくても俺は面倒見てやる。」

 

 

 

『すみませ~ん!魚屋銛穿ちのイシュメールです、届け物を......あれ?』

 

『ああっ!?おっせえな、ったく、あの金髪はどうしたんだ?』

 

 

「......これが、修羅場ってやつですかね。」

 

「止めに入った方がいいかな......?」

 

 落ち着いていた店内は、気づけばシンクレアというあの金髪の店員を奪い合う戦いで一矢即発の激戦区となっていた。それぞれが牽制し合っていて、色々大変なことになっている。

う~ん、これは厄介ごとになる前に......逃げた方がいいかな。

 

「先生、机に代金だけ置いて帰りましょう。このままだと私たちも巻きまれそうなので。」

 

「そ、そうだね......?」

 

 バチバチに争っているのを横目に、そそくさと外に出る。争っている声がとてもとても、それはもうよく聞こえるが無視だ無視。痴話喧嘩に巻きまれるなんて勘弁だ......締めが悪いが、帰ろう。

 

「じゃあ、まぁこんな形で終わってしまいましたが......楽しかったです。ありがとうございました。」

 

「うん!私も楽しかった。また行こう!」

 

 先生と私の家の方向は反対だ。次に会うのはまた明日、今日は休んでしまったから仕事をしないとな......頑張ろう。

 

「それではまた明日。」

 

「またね!」

 

 

 

 

 

 

 

「なぜあなたがここにいるのですか、財務室長。」

 

「それはこちらが言うべきセリフでしょう、リン行政官。」

 

 帰ったら私の家の前で連邦生徒会の重役二人が争っていました。どうして?

 

 




 モ テ モ テ シ ン ク レ ア

 このシンクレアは握らんとするものでセブン協会でバラのスパナ工房所属で正義のフィクサーでりょ・ミ・パ所属です。多分。

何か見たい話はありますか?

  • 剣楔アリス
  • W社ウタハ
  • ディエーチ協会ウイ
  • リクエスト......?
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