呪術廻戦の世界に転生したので(個人的に思う)悲劇を徹底回避しちゃおうと思います!死なないように。 作:ヨシザエモン
朝7時。セットしていたアラームがあたいを目覚めさせる。
うーんと伸びをし、カーテンを明ける。吸血鬼ばりに日光に眉根を寄せ、恐る恐るベットから降りる。前世の感覚で降りると顔面を
「ぃだいっ!」
あった。
「おぉ来た来た。はよ乗り」
後部座席からちょいちょいと手招きする金髪小僧に俺様は目をパチパチさせた。
「……なおや?」
「うわっ急に名前で呼んでくるとかなんなん逆にキモいわ」
「いやビックリしちゃって」
いやそりゃだってビックリするでしょうよ! まさか直々に迎えに来るとは思わんじゃないですか! 直ピ運転してないけど。
「じきとーしゅさまが来てくれるとはねー」
おどれぇた〜と笑ってみるも、何故か直ピッピは不機嫌なままだ。はよ乗れ、と自分の隣を指差し、あとはうんともすんとも言わない。なんだかやつれているようにも見える。話を聞こうかと思ったが、直ピッピは自分の弱さを人に見せられる
「来たか」
「おとーさん」
玄関ではナオヴィトンが腕組みをして待っていた。直ピが我氏の後ろに続いて降りるのを見届けると、「来い」とでも言うように背を向けて歩き始めた。
家の中に入ってからも直ピッピは無言のままだった。背が高いので表情はあまり見えないが、あたいが乗車した時と雰囲気は変わらない。一体何に不機嫌になっているんだか、とため息をつきたくなる。
「ここだ。ワシは真希と真依を連れてくるから先に入ってろ」
そう案内されたのは大広間だった。今までも政府のお偉いさんだとかにご馳走を振る舞う時に入ったことがあるが、とてつもなく広い。
「まったく、えんかいようのひろまもあろうに、なんでわざわざ」
「パパ曰く、この広間には特別な
「ふーん」
中に入ると、皆一同おそろいで待っていた。こちらを見ようともしない。前にもこんなことあったっけな、とさして気にせず座布団に座る。皆が何故我を異常に恐れるのか、その理由が今でははっきりしているし、それに関して誇りも持っているからだ。
「直毘人は」
「パパは真希ちゃんと真依ちゃんのとこ行った。多分数十分は戻ってこん」
「え?」
思わず直ピの方を向いて首をかしげるも、顔をそらされてしまう。数時間は戻ってこない、ってどういうこと? そんなにあの二人は心を開いてないの? いや、「行きたくない」と抵抗できるようになったと考えればちょっと良い方向に向かってるのかもしれないが……とぐるぐる考えていると、部屋中に大きな声が響いた。
「では、早速、緊急禪院会議を始める」
扇さんてこんなデカい声出るんだ、と耳を塞ぎながら思う。普段寡黙なくせに、当主様がいないからいい気になってんの?
「おとーさんまたないの?」
「戻ってくるまで暫くかかると今直哉が言っただろう。全く」
これみよがしにため息をつかれた。ちょっとムカッとするが、言い換えしたところでこちらに得はない。まあチート術式あるから損でもないんだけど。とにかくイザコザを起こすと面倒だ。オレっちはぐっと我慢する。
「まず、梨」
「はい」
なんだろう、我に関すること? チート術式持ってるとは言え立場はだいぶ弱いからな、ぼくちん。
「今まで隠していたんだが、実はお前は……特級なんだ」
「HA??」
意図せず素っ頓狂な声が漏れた。いやだって、つい昨日「禪院家は口止めしてる」なんて聞いて、その翌日に禪院家から伝えられるって……ドユコト!?
「次に、次期当主のことなんだが」
いや待て待てサラッと流すな意味が分からん。てかなんで急に次期当主の話?? 直ピッピが落ち着いてなかったのってそのせい? ちらりと義兄を覗き見て、口をぽかんと開けた。
直ピは気まずそうにうつむいていた。なんでだ。普通「俺や」って堂々と顔上げるだろ。……そこまで考えて、我はあることに気がついた。
昨日、我は自分が特級であることを知った。それは禪院家によって口止めされていた。しかし我がパパ・ナオヴィトンは真希ちゃんに甘かった(え、甘かったと思うの俺だけ?)ようにボクチンにも甘かった。真希真依を庇うことを咎めず、寧ろ協力もしてくれた。となると、術師共に口止めをして回っていた「禪院家」にナオヴィトンは含まれていない可能性がある。となると口止めをして回る他の禪院家を好ましく思わず、ちゃんと伝えるべきだと判断したのではないか。それで、今伝えたのではないか。
そして、次期当主の話。確か直ピの等級は特別一級。そして私は特級。まさか。いやでも。でも。
「梨を、次期当主とすることになった」
場が静まり返る。同意、意義、中立、思惑、無関心、様々な思考がその空気には含まれていた。何も知らない一般人がこの場を目の当たりにしたら、一体何の重要会議だと身構えるかも知れない。いや重要会議なのは間違いないけれども。
「え、あたいが? じき、とーしゅ?」
沈黙の中第一声を上げるのは勇気のいる行為だった。しかしどうしてもこの困惑を取り除きたくなり、挙手する。一体何故、おれっちょが?
「そうだ。お前は特級。それだけでなく異例の術式を持っていて、今や呪術界で知らぬものはない」
灰原くんが「有名人だ」と言っていことを思い出す。わてってそんなに凄いやつ認定されてんたんか。
「いずれ現当主が死に、お前が次期当主になれば、禪院家は呪術界でもトップに躍り出ることができる。誰もが畏怖する存在をリーダーとする家だからな」
まじか。転生当初は「わーチート術式ラッキーやったー」みたいなテンションだったのに、今や呪術廻戦内の均衡を壊してしまう存在になってしまっている。
また無音。誰も、身じろぎ一つしない。
「……遅いな」
口を開いたのは扇さんだった。見れば、もう10時45分。5分くらいしか経ってない気がしたのに、時間感覚が完全にバグっている。
「しゃーない。梨、様子見に行くで」
「えっわたしも?」
「当たり前やろ。アイツらの面倒見れる奴お前だけなんやから」
ほら行くで、と背を向ける直ピッピを慌てて追いかける。どうやら真希真依ちゃん、吾輩以外にはあまり心を開けていないらしい。大丈夫かな、と心配になりつつ、義兄の後ろを歩いていく。
ガラッ
「「あっ梨〜〜〜!!!」」
「ぶっ」
「パパ!?」
直ピッピが焦ったような声を出す。見ると、部屋の奥でプルプル震え、背中をさするナオヴィトンの姿。
「おぉようやく来たか。いや、お馬さんごっこをしろとねだられて、それをすれば大広間に行ってやると言われてな……」
「毎回毎回アホなん!? それで言うこと聞いた試しがないやろ!」
キャッキャとあたいに群がる双子をなんとか受け止めながら、オレっちは今までの予測が全て間違っていたことを理解した。
この二人は禪院家に心を開かなかったのではなく、気を許しすぎて皆の悩みのタネになっていたのだ。