呪術廻戦の世界に転生したので(個人的に思う)悲劇を徹底回避しちゃおうと思います!死なないように。   作:ヨシザエモン

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おそろしく速い動き、俺でなきゃ混乱しちゃうね

 幼き直ピに拾われて一ヶ月。この前世の記憶持ちベイビー梨(自称)は禪院家で育てられている。

 一日に一度は誰かに舌打ちされながら。

 えっと、素直に言うね? メンタルきちぃーーー!

 やばいこれは前世とは別の理由でメンタルヘラるわ。しかも両親を殺したヤベイビー(ヤベーとベイビーを組み合わせた造語)らしいアタクシには未だに名がつけられておらず(多分市役所には何かしら出されてるんだろうが一度も耳にしていない)皆から「忌み子」と呼ばれている。可哀相に思っているのか、女中さんは「いーちゃん」って呼んでくれるけど……。

 そんなある日、直ピッピがいきなり私の寝室にやって来た。「忌み子」とか呼んでくる割には高そうなベッドをご用意してくれているのだ。ミルクも超美味い。酷い扱いしないどころか良家のお嬢さんばりの待遇を受けている現実から、多分このぼくちんは呪術界に残しておくべき人材なのだろう、と信じたい。色々あって処刑が伸びているみたいな可能性は考えたくないし考えてない。うん、考えてない(震)。で、やって来た直ピッピはベッドにぼーっと転がっているヤベイビーをじっと見つめ、

「……おい忌み子、出掛けるで」

と抱っこしたかと思うと、いつの間にか玄関にやって来ていた。

 ……はっっっっっっや!

 あービビったわぁー。投射呪法、だよね?? おぉすげぇ……ほとんど目で追えなかったけど速いということは理解できた。やっぱスゴいなこの術式。一家に一台直ピッピ()とかどうかな。ってその前に!

「んぶぶ〜?」

「あ?」

 ひぃ怖。え、この直ピッピ12歳くらいだよね? 圧力やば。いやけど何処に行くのかくらい教えて欲しい。確かに貴方様からすれば言葉のコの字も知らない赤ん坊でしょうけど中身は普通に理解できるんですよ。もしかして処刑かもとか考えちゃうわけですよ。お願い教えて教えて教えて!!! ということで駄々こねてやる!()

「んぶあーーっ!! んぎゃあぁ〜〜っ!」

「なんやうっさいなぁ! もしかして急に外出されてビビっとんのか? も〜〜面倒くさいっ。お前の術式諸々調べに行くだけや、はよ落ち着き」

「ぶあ??」

 えっ、あっいや処刑じゃないことには万々歳なんだけど……。術式を調べに行く? この梨(自称)、もしかしてチョベリグな術式を持っちゃってるって……コト……!?

「んぅ〜(嬉)」

「うわっ、急に機嫌良うなった。気持ち悪いなぁ、はよパパに渡して来よ。っち、なんで俺がこんなガキの使いせなあかんねん」

 なんかグチグチ文句言われてるけど気にならないくらい嬉しい。どんな術式かなあ。どんな名前かなあ。えへへへニヤケが止まんないのぅ〜〜〜。

 と、ポカポカ夢心地だった。

「その赤子に決して物を持たてはなりませぬぞ。その娘の術式には何人(なんぴと)たりとも敵わんですじゃ。たとい御三家であっても、楯突いてしまえば終わりですじゃ。ああ、恐ろしや恐ろしや……」

 目の前の婆ちゃんが、そう言いながら顔を覆うまでは。

 私は直ピに抱っこされた状態で野を超え山を超え、森の奥深くの神社のような場所に連れてこられた。中には禪院家の面々が座っており、一番奥にはどことなくオガミ婆を思わせるお婆ちゃんがうちわをパタパタさせていた。いろんなことが立て続けに起きて、季節など認識する暇も無かったが、どうやら今は夏のようだ。

「よく来ましたね、禪院の坊っちゃん。……それと、忌み子か」

 お婆ちゃんはこちらに気づくとその手を止め、目だけでこちらを見た。忌みモノを見る目。一体自分はなんなんだ……と以前からの疑問が頭によぎる。直哉っちは返事をせず、プイッと顔を背け、直毘人さんにオレっちを預けると、またもや物凄いスピードで去っていった。

「照れ屋は相変わらずですな」

 特段気にしていない様子でまたうちわで顔をあおぎ始める。もうこちらはチラリとも見ない。

「で、其奴(そやつ)の術式を調べて欲しい、ということじゃったかな」

「ああ、それが分からん限り、安心して酒も飲めん」

 カカッ、と直毘人さんが豪快な笑い声を上げる。めちゃくちゃ酒臭い。ちょ、息すんなヤメテまじ臭い。こいつどんだけ飲んでんだよ。やばい、これ以上匂いを嗅いでいると吐きそうだ。……よし!

 必殺!ギャン泣き! これで他の人のところに移してもらう!!

「おぎゃあああああ。ぎゃあああああ!」

「ん? 急にぐずり始めたな。しょうがない。八卦見(はっけみ)ババ、もうササッと調べてもらえるか」

 ありっ? そんなつもりじゃなかったんだけどなー。ま、いっか。アタクシも早く術式知りたいし。

「ああ、早く持ってきな」

 持ってきな、って! あたちは物じゃないんだけど! と内心プンプンしているうちに自分の身体はハッケミババ?に渡っていた。ハッケミババは私を小さな仏様の前に置いて、私にうちわで風を送ってきた。顔に直で風が当たるのでくすぐったい。

 しばらく耐えていると、いきなりハッケミババがうちわをコトリと落とし、震え始めた。そして、あのセリフを口にしたのである。

 

「ああ、申し訳ないがその子はもう連れて来んでくれるか。結果はこの封筒に入れておいた。将来使えるようになるであろう領域も書いておいた。だからもうその子とアタシを関わらせんでくれ……!」

 そう呻きながら封筒を放り投げ、ハッケミババは神社の扉を勢いよく閉めた。禪院家の面々と自分は外に放り出された状況である。

 自分は困惑していた。あのお婆ちゃんがあそこまで恐れる術式……一体どんなものなのだろう。

「仕方ないな。麓まで降りて、そこからはタクシーだ」

 扇さんの一言にその場にいる全員(禪院だけに全員って? やかましいわ)が頷いた。こうして自分たちは帰路につくことになった。

 

「半径5メートル以内に居るものを閉じ込め、その全てに好きに命令できる術式!? そんなもの存在するのか!」

「現にこう結果が出ているのだから受け入れるしかないだろう!」

「これからどうするんだ。五条家には伝えたのか?」

「未知数の呪力量で一級呪霊をおびき寄せ、結果病院が破壊され、その内部や周囲の人間が死亡。こちらから伝えるまでもなく嗅ぎつけてきたから、この赤子のことは伝えた。しかし術式のことはまだ言っていない」

「コイツを上手く使えば禪院家の立場は圧倒的に上になる。切り札として隠蔽しておいたほうが良かろう」

「もし監禁生活に耐えかねて術式を発動したらどうする!」

 やいのやいのと言葉が飛び交う大広間の端っこで、自分は震えていた。どうやら自分は、とてつもない能力の持ち主らしい。震えが伝わったのか、真希ちゃんの抱きしめる力が強まった。

「よち、よち」

「だいじょぶ、だいじょぶ」

 真依ちゃんが優しく頭を撫でる。その体温に少し安心感を覚える。首も座っていて、喃語も喋れるところを見ると、今の二人は1歳半くらいだろうか。まだまだ赤ん坊なのに妙にしっかりしていて、どれだけのことを耐えしのいでいたのか心配になる。

 ……正直に言うとどっちがどっちなのかクリソツなんで分からねえ()。

 暫く双子に挟まれた状態で癒やされていると、いつの間にか騒ぎが()んでいた。その場の意見をまとめるように、扇さんの声が響く。

此奴(こいつ)は、この禪院家で呪術師として育成する。隠蔽はせず、御三家とも関わらせる。良いな」

 こうして我氏は、禪院家で育てられることになったのだった。

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