呪術廻戦の世界に転生したので(個人的に思う)悲劇を徹底回避しちゃおうと思います!死なないように。 作:ヨシザエモン
コンコンッ!
軽快な音が響き、半径5メートルに薄い灰色の膜が張られていく。なんだか
「……あーお(わーお)」
そこには般若のような顔をした直ピッピがいた。あちきの術式のせいで動けなくなっているようだ。しょうがない、さっさとご命令するか……。
ふぅと息を吐いて櫛を握り直し、一回コンっと地面に叩く。_______ママ黒のところに行け。そしてママ黒が病気か何かになってないか確認させろ。もし病気ではなさそうだったら今年が明けるまでママ黒を守り抜け。以上のことが終わり次第戻ってこい。頭の中で一気にまくし立て、コンコンと術式を解いた。膜がドンドン上がっていく。
「っ……! う、動ける……。おいお前」
おお、凄い。あのスピードならすぐ着くだろう。病気……あ、やべ、もし病気だったら治療費全額直ピッピが負担して治してあげようと思ってたのに命令し忘れてた。まあいっか、戻ってきたらまた命令しよっと。
あれから三ヶ月。結局直ピは帰ってきていない。女中の噂によれば、パパ黒の家の居候をしているらしい。どうやら病気では無かったようだ。
あとはしっかり守り抜けよ、と遠い地にいる直ピに思いを馳せていると、誰かがオレっちょの部屋にやってきた。誰だろうと身構えるも、すぐに力を抜いた。よしよしと手を伸ばしてくる小さな双子にニッコニコになる。ほんとにこの家での癒やしはこの二人しかいない。他がクズすぎる。あ、女中は別。あの人達はクズじゃない。寧ろかわいそう。
ベリベリキュートなよしよしを堪能していると、玄関からとてつもない怒号が聞こえてきた。可愛い双子ちゃんは恐れおののいて走り去ってしまった。どうやらご使命を果たしてきたらしい。
「ふぅ、ふぅ、よ、ようやっと帰ってこれた……。おいガキ! おるやろ、顔出せ! 一発殴らな気が済まん!」
随分ご立腹である。そりゃそうか。三ヶ月もママ黒の護衛してたんだもんな。でもこれでママ黒は救われ、パパ黒もヤケにならず、大団円! などと自分の初救出にウキウキしていると、
「此処におったかクソガキ! お前ただの赤ん坊ちゃうやろ。あの日櫛掴んだんは俺に命令するためで、実際俺は何故か数カ月間ずっと甚爾くんとこにおらなあかんかった。もう散々や」
「うえい、あっあ、うえい(嬉しかったくせに)」
「うるさい! ずっと甚爾くんの奥さんにべったりくっつかされて、殺されかけたんやからな」
あれ通じてる? じゃ喋るか。ていうか殺されかけたとか
「うえう(ウケる)」
「『ウケる』ちゃうわ! まじ怖かったんやからな!? 甚爾くんに殺意向けられたこと無いからそないこと言えるんや、一度向けられてみぃ」
「いやや」
「関西弁真似すんな!」
やばい会話できるのクソ嬉しい。ていうかこんな赤ん坊の言葉聞き取れるとか、もしかしてこんなツンツンしてるけど、直ピって意外とあたいのこと気にかけてくれてる……!?
「なんかしょーもないこと考えとるやろ」
やべバレた。てかなんで思考まで読まれてんだよぼくちんのこと大好きかよ()。
「あんあええあいお(考えてないよ)」
「ウソつけ。まぁええわ、俺にこないなことさせたんや、ただじゃおかんで」
鋭い目が更に鋭くなる。もちろんこの脅しの対抗策は考えていた。この天才赤子、梨が何の考えもなしに直ピを派遣するわけがないだろう。
「んー、いーえお、おーあんおーえんえ(良いけど、交換条件ね)」
「は?」
「いあいあお、いあい(縛りだよ、縛り)」
顔面が歪む直ピ。笑いころける赤子。カオスな状況。
「……どんな縛りや」
「んふふ」
_____これから直ピがわっちの言うことを素直に聞いてくれるなら、わっちは術式を使わない。逆に素直に言うことを聞いてくれないなら、わっちの術式で一生従順な犬にする。
「……は?」
ふふ、困惑するだろう。困れ困れ、そして承諾しろ。
「なんや直ピって、ふざけんとんのか」
あれそこ〜〜?? いや確かにフザケてはいますがそこじゃなくな〜〜〜い???
「え、いあいあ?(え、縛りは?)」
「……分かった。言うこと聞く。癪やけどしょうがない。……おいガキ」
「んー?」
「俺をパシリにする気やないやろな」
不安げな色が目に見え隠れしている。自分はフッと小さく吹き出して言った。
「あんいんいえ。あいいあんえいあい(安心して。パシリなんてしない)」
「ホンマ気色悪い赤子やな……」
うえ、と舌を出す直ピに、「ん」と櫛を差し出した。
「あえう(返す)」
「……ん」
こうしてあたいは、第一回目の人命救助を果たすとともに、強力な助っ人も手に入れたのだった! ちゃんちゃん!(ヤケクソ)