藤原秀郷って誰だよ   作:モッティ

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オリ主in俵藤太

 

 

 

 ⚪︎月⚪︎日

 やあやあ皆の衆。

 俺の名前は藤原秀。

 気軽にヒデって呼んでくれたまえよ。

 

 早速だが本題に入りたい。

 もし自分が突然過去の世界に転生したら、どんな反応する? 

 

 いやまあ分かるよ、これを見てる奴らは皆「またありがちな転生者かよ」とか「ラノベ乙」とか思ったじゃんね? 

 俺がみんなの立場だったらおんなじこと思うよ、うん。

 でもマジなんだ、マジで千年前くらいの日本に来ちゃってんだわ俺。

 ちなみに昨日数え年で5歳になったのを祝ってたら現代の記憶蘇ってテンパっちゃって、今も誰に見せるでも無いのに語りかける口調で日記書いてるんだけどさ、ハハ、ウケる。

 いややっぱ笑えんわ、自分で言っといて何だけど。

 

 

 てかさ、ざっくり千年前とか言ってっけど俺全然日本史詳しく無いから今何時代なのか皆目見当もつかんのやけどもどうすりゃいいん? 

 なんか俺の今生の名前は前世によく似た名前の藤原秀郷っつーらしいんだけど全く聞いたことないし。

 生まれもシモツケ? の国とか言ってたしもうこれワンチャン日本によく似た異世界とか無いか? 

 

 

 切実に帰りたい。

 娯楽もねぇし食いもんもまずいし周りは通りがかりの坊さんに矢を射掛ける蛮族ばっかだし、もうやんなるね。

 ……マジに帰りたい。

 

 

 

 

 

 ⚪︎月⚪︎日

 なんかお化け祓えた。

 うん、唐突だな。

 でもマジな話。

 

 いや、そういえば昔からなんかお化けいるなーとは思ってたんよ。

 でもまあ基本俺とか家族には近づいてこないし無害かなーとは思ってたんだ。

 でもさー、こないだうちの荘園にお化けが悪さしてんのを見かけたからさー、こりゃ居てもたってもいらんねーぜって思いっきりぶん殴ってやったのね。

 そしたらもう爆散よ、爆散。

 手榴弾でも投げたんかってくらいに辺り一面に散らばっちゃったもんだから逆に俺がビビっちゃった。

 まあ村の長からは五体投地されたし俺も褒められて気分良かったからその日は良かったんだ。

 

 翌日に経緯を聞きつけた親父が怒鳴り込んできてからはもうすごかったね、展開が。

 親父には朝餉も碌に食わんうちから「術式使えたんかワレェ!」みたいな感じで怒りと喜びを足して割らないぐらいの勢いで高い高いされたし、お袋とか家中の皆にもめちゃくちゃ喜ばれてその日の夕飯は塩ジャケ(めっっっっちゃ高級品)出されて大宴会だったし、更に翌日には武芸の稽古をつけてくれる師範が来てくれることになった。

 

 聞くところによると、術式っつーのは異能とか特殊能力みたいな感じらしい。

 負の感情から呪力って力を生み出し、それを各々が持つ術式に合わせて放出する……的な? 

 細かいことは抜きにして取り敢えずお化けを祓える力だってのは分かった。

 あとお化けじゃなくて呪霊って呼ぶっぽい。

 

 ただ、負の感情を利用するってのが俺にはよく分からん。

 悲しみとか、憎しみとか、怒りとか、そういう感情を制御する必要があるらしいんだけど、正直俺にはあんまセンスない。

 楽しいこと考えると力が出るんだけどなー。

 まあ、あんまふざけたこと言ってっと師範にぶん投げられるから言わんとくけど。

 

 

 

 

 ⚪︎月⚪︎日

 色々あって書くの遅れた。

 あれから結構頑張ってはみたんだが、どうにも上手く呪力を扱えんってなって師範から匙を投げられた。

 終いにゃ「ホントに祓えたんかワレェ!」みたいなこと言われてカッチン来ちゃった俺は、山に入って手頃な呪霊見つけておもいっきしぶん殴って見せた。

 ざっとこんなもんよとか思いつつ師範を見ると、イメージしてた反応と違って青褪めてる。

 

 いやなんかこれおかしいなー、怖いなー怖いなー、とか思って聞いてみると、俺が纏ってるのは普通の呪力じゃないらしい。

 正確に言うと、負の呪力じゃなくて正の呪力ってこと。

 正の呪力ってのは負の呪力同士を掛け合わせて生み出すモンらしいんだけど、それを利用して傷ついた体を治したり、正の呪力を呪霊にぶつけて消し飛ばしたりできるんだと(多分この間俺がやったやつ)。

 まあ、呪力消費がめっちゃ激しいらしくて多用できないそうだ。

 だが俺はデフォルトでそれを使い、あまつさえ常時体に纏えるって訳だ。

 

 また呪力を練る作業においても、他の術師とは違って負の感情からではなく正の感情──要するに楽しいとか嬉しいとか、そういうポジティブなものから練っていたようだ。

 道理でうまくいかん訳だな。

 

 まああれだ、俗に言う転生チートってやつだ。

 こういうのでいいんだよこういうので、ただでさえこんな碌でもない世界に来ちゃったんだから、せめてこういうとこぐらいでは恵まれていたいじゃない。

 まあぶっちゃけチートって言えるほど強くもない気がするけど。

 

 なお、俺の術式については『剛正術式』と名付けられた。

 良いじゃん、カッコよくて好きよ。

 

 

 

 

 ⚪︎月⚪︎日

 

 呪霊ハジケトバシ祭り絶賛開催中! 

 ハハッ、シネ! (ミ⚪︎キー風)

 

 冗談はさておき。

 あれから正の呪力の練り方を鍛え上げた俺は同時並行で体術と剣術も身につけ、日夜荘園に湧いた呪霊を狩りまくっている。

 日夜ってこれ、比喩じゃないからね? 

 ガチで朝から晩まで呪霊爆殺を繰り返し続けてクタクタですよ。

 サボってると親父と師範が矢を飛ばしてくるし怠けられねぇから地獄もいいとこだわ。

 

 まあウチにいる呪術師も師範を含めて十人足らずだからなー、呪霊特攻持ちの俺をブラブラさせとくわけにもいかんってのは分かるんだが、いかんせん俺まだガキだぞ? 

 世が世なら小学校にも行っとらんっちゅーのに……。

 

 あと俺の呪力は正の感情のみで練られるため、俺が生み出す力は呪力ではなく祝力と新しく名を与えられた。

 中2心擽られてビンビンに感じまくってます! 

 

 

 

 

 ⚪︎月⚪︎日

 呪霊が家臣になった。

 近くの山で馬鹿強いバケモンがいるってんで射掛けて爆殺したら、すごい勢いで蘇ってあんたの未来は面白そうだから従わせてくれって言われちゃって、なし崩しで……。

 師範が言うには呪霊の調伏は専用の術式持ち以外が成功した例は少ないそうだ。

 

 名前は百目鬼。

 体全体に百個もの目玉が犇き、刀みたいに鋭い髪を持った呪霊。

 本人が言うには、その目はありとあらゆるものを見透かし、詳らかに出来るらしい。

 何でその目を使って俺の攻撃を避けれなかったのか聞いたら、速すぎて見えなかったし、見えたとしても避けれねぇとさ。

 意外と弱いんじゃねぇのこいつ。

 やたらとニヤニヤしやがって気持ちわりぃし、怪しいことこの上ない。

 

 まあなんかあったらまたぶっ殺せばいいしいいか。

 

 

 

 

 ⚪︎月⚪︎日

 よその土地の呪霊狩り中に領民に悪さしてる馬鹿発見したから両腕斬ってやったらお隣の貴族の家臣だった件。

 親父から思いっきしブン殴られたんだけどこれ俺絶対悪くない。

 そもそも新品の刀の切れ味確かめるために女子供斬るとか、ついでに食料全部徴収ってのがそもそも論外。

 あの馬鹿がそんなもん武士なら当然とか抜かしやがったから、2度と刀振れないように両腕ぶった斬ってやった。

 

 まあ当然後日お隣さんから怒りの突撃くらったけど問答無用で全員両腕ぶった斬った。

 お隣所属の術師も出てきたけど同様。

 俺としてはこのままにして身の程弁えさせようかなと思ったんだけど、親父の仲裁もあって妥協することにした。

 2度と領民に無体を働かない縛りを強制的に結ばさせて、仲直りの印に腕を元通りにしてやった。

 

 親父からはまた拳骨だろうなと思ったんだが、逆に頭をわしゃわしゃ撫でられた。

 当主同士の話し合いで、お隣の荘園半分割譲と水利権の融通を確約させたらしい。

 「お前の力が有ればバンドウを手中に収めることも夢じゃない」的なこと言われたけど、多分バンドウってここら一体の地域の名前なんだろな。

 力が全てを決する時代……つくづく嫌な時代だ、反吐が出る。

 こんなんだから呪霊の発生が後を絶たないってんだよ馬鹿どもが。

 

 ……俺が当主になったら、領民を飢えさせないようにしてやろう。

 

 

 

 

 ⚪︎月⚪︎日

 俺の呪霊狩りの噂を聞きつけたお偉いさんにお呼ばれされた。

 平良将って名前の爺さんなんだけど、親父もその他の偉そうなオッサン連中も皆頭下げてるし、バンドウの中じゃトップに近い人なんだろな、鎮守府将軍なんて大層な官職名引っ提げてるし。

 

 皆互いに親しそうに見えて腹ん中じゃ蹴落としてやるって息巻いてる奴らばっかりで嫌になったが、俺に対してはガキのくせにやるじゃねぇかってわしゃわしゃ頭を撫でてくれて、案外悪くなかった。俺って意外とチョロいのよ。

 

 けど1人だけ妙な顔で俺に近づいてこない奴がいた。

 良将爺さんの息子の1人らしいそいつは、親父曰くバンドウ第二の術師で、七人に分身出来る上に傷一つつかない鉄の肌を持ってる不死身の怪物だそうだ。

 いやバケモンやんか、ホントに同じ人間か? 

 

 ちなみにバンドウ第一が誰か聞いたら、自慢げに「お前以外に誰がいる」って笑われた。

 やめろよキュンときちゃうだろ。

 

 

 

 

 

 

【日記を捲る……】

 

 

 

 

 

 

 ⚪︎月⚪︎日

 無事元服完了。

 いやー長かった、もう十年前から大人の仲間入りしてたしなんなら前世の記憶合わせてとっくに大人気分だったけど、今日でこの世界での大人認定を正式に頂くことができてまずは一安心。

 まあ色々やらかしすぎて流罪を言い渡されたりしたけども、知ったこっちゃないんで無視無視。

 

 だがこないだ悪いニュースが来ちまった。

 京の都あたりで百足の呪霊が出たそうなんだが、あっちの術師じゃ歯が立たないってんで、俺に御出馬願うそうだ。京都……マジで日本だったんだなここ。

 あっちの術師が弱いのか、それとも百足が強いのか、はたまた乱行(俺としては正義の執行)を重ねた俺を釣り出す罠か。

 

 こちとらシモツケどころかコウヅケとムサシまで出張って呪霊退治してるってのに、俺がいなくなったら頼りになんの師範と百目鬼くらいなもんだ。

 ……いけるか? 百目鬼もわりかし強いし、俺の言うことには絶対服従だし人間を襲うことはないはずだ。

 

 どちらにせよ行かにゃならん。

 まあいけるっしょ、よゆーよゆー。

 

 

 

 

 ⚪︎月⚪︎日

 私が(京都に)来た!! 

 

 いやー、道中かっ飛ばしてきたらみんな驚いてて逆にびっくらこいたぜ、こんなもん術師なら出来んだろ諦めんななんでそこで諦めるんだそこで! 

 まあ驚いた理由はそれだけじゃなくて、大百足のいる山じゃなくてなんでここに来たんだ? ってのもあるだろう、実際すぐにそこに向かえって書いてあったしな。

 

 ぶっちゃけて言うと京都観光がしたかった。

 そりゃね、せっかく過去に来たんなら昔の京都観光してみたいじゃん? 

 実際見てみたらなんかふつーだったけどね。

 まあ現代に比べりゃそうだよな、この時代なら大都市なんだろうし。

 

 ついでに天皇陛下にも会って来ちゃったぜ。

 初めて見る生の天子様の威光にビンビンに感じまくってました! 

 けど下手に出てたら逆に感動されて困惑しちゃった。

 この時代って陛下に対する扱いって悪いのか? 

 一番偉いのにあんま敬われてないってどーよ。

 ちょっとかわいそうだったからさりげなくフォローして、百足退治の宣言してきたった。

 

 あと他の術師連れてけよって言われたけど断った。

 邪魔にしかならんし。

 

 

 

 

 ⚪︎月⚪︎日

 百足のいる三上山に到着したら術師でいっぱいでしたの巻。

 一瞬罠を疑ったが百足の足止めと俺の応援でスタンバってたそうな。

 んもー、別に俺1人で退治できるのにねー。

 

 ていうかこんだけ人数いるならお前らだけで十分だろって思って聞いてみたが、マジで祓えなかったらしい。

 バリアみたいなの張れるやつとか、血を槍みたいにできるやつとか、影を操るやつとか、結構良さげな術式持ちはいたんだが、いかんせん技術がなってない。まだ若いしこれからだろうが宝の持ち腐れと思わんでもない。

 指摘してみたら顔真っ赤にして手本を見せてみろって言うから、結局1人で行くことになった。

 

 遠目から見ても分かるデカさ、マジで山7巻半ぐらいでこれには流石の秀郷くんも唖然。

 取り敢えず二矢射掛けてみたが効果なしで2度目の唖然。

 いつもならどんなに強かろうが一発で沈めてやんのに、二発撃ってもピンピンしてるとかマジで強い。そりゃあいつらじゃ勝てんわ。

 

 本気を出して祝力を矢に集中し、祈りの口付けを鏃に施して放った三発目は、今度は百足を弾け飛ばし、山を赤褐色に染めた。

 

 どんなもんよと外野を見れば、辺り一面青い顔。

 山の赤と顔の青でコントラストがよござんした。

 

 

 

 

 

 ⚪︎月⚪︎日

 一仕事終えて一泊し、さて帰ろうかと思いきや術師4人組に行手を阻まれた。

 顔を見てみれば昨日集まってた術師達で、どうやら俺に教えを乞うために隊を抜け出してきたそうな。

 まあちやほやされんのは嫌じゃないから俺も二つ返事で了承した。

 

 無下限呪術の五条。

 赤血操術の加茂。

 ()()()の禪院。

 そして名無しの少女。

 

 少女は空間を掌で自由に捉えて操れるそうだが、術式の名はおろか自身の名前すら与えられていなかったらしい。

 藤氏直属の暗殺部隊の一員だったそうだが、聞くからにヤバそうなところだ。

 

 可哀想だったので俺が独断で2つの名を与えた。

 『穹窿操術』の『烏鷺亨子』。

 思いつきだが意外としっくりきたらしく、亨子は飛び跳ねて笑っていた。

 

 やっぱ子供の笑顔はいいな。

 

 

 




続かない(確信)
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