⚪︎月⚪︎日
一人旅に同行者が増えてウッキウキの秀郷くん15歳。
いやー、やっぱ一人で感傷に浸りつつの旅もいいけど、大人数でガヤガヤしてる旅ってのも良いもんだよなぁ。
行きは超特急で来たけど帰りは歩きでゆっくり帰ることにした。
三人トリオは力に貪欲で、何かあるごとに教えて教えてって頼ってくるから大変よ。
いやー参っちゃうなあそんなに頼られると! いやー困っちゃう!
頼れる兄貴分キャラで行きたいんだけどニヤニヤを抑えきるのに苦労しちゃうね……抑えられてるよね?
あと亨子ちゃんがマジ可愛い。
妹分だからあんま気使わんといてって言ってんだけど、断るとしゅんとなっちゃって結局お願いしちゃうんだ。
そしたら満面の笑みで「はい! お任せください!」って……もう心がキュンキュンしちゃうのよ。
あー、弟分と妹分達がこんなにも可愛い。
俺ってばマジ幸せ者だね。
幸せ過ぎて祝福が溢れ出しちゃった。
受け取れ受け取れ!
なんかよく分からんけど良い気分になるらしいぞ!
⚪︎月⚪︎日
なんか加茂君がいきなり血を分けてくれって頼んできたから服脱いだら微妙な顔して服着てくださいって言われた。
渾身のギャグにツッコミ入れないとか許されざるよ。
あと亨子ちゃんは目を隠すフリして指の隙間からガン見してた。可愛いね。
まあボケは置いといて、加茂君は俺の血を参考にしたいらしい。
俺の『剛正術式』は最初から正の呪力を練れるものだが、これには大きな欠点がある。
術式反転が使えないのだ。
理論的には本来の呪力はマイナスであり、マイナス×マイナスでプラスである正の呪力を生むことができるってことなんだが、最初からプラスである俺の力を掛け合わせたところでどう足掻いてもマイナスにはならない。
故に俺は術式反転が使えないのだが、俺の力って稲とか生やしたり祝福したりとかできるから、むしろ反転なんかしちゃったら手当たり次第に呪いを振り撒くことになるので別に良いと思っていた。
けどいざ三人に教えようとすると、どうしても術式反転の教え方がネックになっちゃうんだ、俺使えないし。
そこで加茂君が考えたのが、俺の血と加茂君の血を合わせて解析し、正の呪力の核心を掴むって方法。
赤血操術は血の取り扱いに秀でてるから、わりかしいけそうな気がしないでもない。
他の二人にはその間、とりあえず俺の刀とか弓とか武具を貸してやって、体術を基本に教え込んでいる。
……ぶっちゃけ思ったんだけど、俺の術式的に他人に教えるの向いてないんじゃ無かろうか。
いやや! 三人から失望なんかされちゃったら俺悲しくて泣いちゃう!
何とかして三人を超強化する方法を見つけなきゃ!
とりあえず頑張れ加茂君!
君が頑張ってる間に俺も考えとくから!
⚪︎月⚪︎日
加茂君が反転術式会得した件。
この子天才すぎじゃない?
血を分けてあげたの昨日だよ?
なんか他人の血液まで操ったり、自分の血液を大地に浸透させて地割れ起こして足場崩したり、細かい土石に血液付着させて山津波起こしたりしてる。
血液の大量消費による失血死のリスクも反転術式のゴリ押しで血液を大量に生み出す力技で解決しちゃってるし。
俺のおかげですって喜んでるとこ悪いけど、多分俺の血はきっかけに過ぎなくて、普通に君の努力の結果だと思う。
あと五条君に関してだが、百目鬼を呼び出して個人レッスンさせてもらった。
彼の目は特殊な眼で、相手の術式とかの情報を丸裸にできちゃうらしいんだが、制御が難しくて今まで扱いきれなかったらしい。
そこでおんなじ様な力を持ってる百目鬼の力を分けてやることで、その眼の覚醒を促すって寸法よ。
呼び出された百目鬼もウキウキで五条に教え込んでいた。
なんかこいつも出会った時と比べて人間に近くなってる気がする。
お前も変わったなって呟いたら、「アンタの家臣なんですから当然でしょ、カシラァ」って馬鹿笑いされた。
どういう意味だよ、褒め言葉か?
⚪︎月⚪︎日
今日は禪院君のお稽古。
影を色んな形に変えられるのが影法術の強みだが、イマイチ攻撃力に欠ける。
そこで俺が考えたのが、予め影を決まった形に固定して、完全破壊されたら二度と呼び出せないって縛りをつけることで強度を底上げし、素早い展開力と高い攻撃力を併せ持つ式神を作ること。
俺の拙い指導でも禪院君には良いアイデアだった様で、早速一体目の式神を生み出した。
名は玉犬。
二匹のワンちゃんでそれぞれ白黒の大型犬を模した式神だ。
走攻守のバランスが良く、犬らしく嗅覚にも優れて人間や呪霊の感知もできる。
また、禪院君は新たな縛りを設け、二体目以降の式神を使うには術師自らが調伏しなければならないというルールを追加し、更に式神の強化を行った。今後も縛りを追加するつもりらしい。
正直、そんじょそこらの呪霊じゃ逃げ出す程の出来だ。
……禪院君、俺は確かにアイデアはあげたけども、全部俺のおかげって言うのは違うじゃない?
そりゃ祝福もしてあげたけども……いや、加茂君にしろ禪院君にしろ、君らが天才なおかげなんだからね?
なんかどんどんハードル上がってくる……まあ五条君はまだだから大丈夫だろう。
⚪︎月⚪︎日
五条君覚醒、自分の目を六眼と名付けて呪力操作限界突破してついでに反転術式も使えるようになった件。
……どうすんだこれ、術式の強化が一番遅かったくせに三人の中で一番強くなっちゃってるんですけど。
術式順転、術式反転、それらをぶつけて生み出す虚式、百目鬼に与えられた十秒先までの未来視、めちゃくちゃ細かいレベルの呪力操作……多分こいつに寝込み襲われたら腕の一本は持ってかれちゃう。
正直、三人は見込みがあるとは思ってた。
けどまさかこんな短期間でこんなに強くなるとはこの海のリ⚪︎クの目を持ってしても……。
いやー、天才っているもんだね。
加茂君は空を血液で掴んで嵐を起こしたり出来るようになったし、禪院君は着々と式神を作って調伏して九体目になったし。
もうこれ俺要らないんじゃない?
⚪︎月⚪︎日
亨子ちゃん、俺の祝福により空間操作が強化されたの巻。
加茂君が血液で空を掴むという自分の術式の真似事されちゃって火がついたみたいで、空間を面で捉えるのではなく立体で捉え、立体を内部のものまで爆発させるそれ何て結界師? と言いたくなる術を編み出した。
当然祝福済み+加茂君からの知識によって反転術式も会得しているというチートっぷり。
戦い方次第では五条にも攻撃当てられる気がする。
分けてくださいよ……!
君らの才能分けてくださいよ……!
たかだか呪霊爆殺できる+なんか体直せるぐらいしか能がない俺が馬鹿みたいじゃないですか……!
ふんだ、いいもん!
別に俺だって祝福とかできるもん!
革袋に祝福していっぱい詰め込めるようにしたり俵に祝福して無限に米生み出したり鍋に祝福していつでも美味しい料理出てくるようにできるもん!
悔しくなんてないんだからね!
⚪︎月⚪︎日
【悲報】百足君再来。
五人でワイワイ鍋つついてたら物欲しげに近寄る一匹の百足がいたんでよく見てみたらこの間の大百足君でした。
すっげぇ小さくなってんぜ?
あとフツーに喋れてるぜ?
なんか自由に大きさ変えられるらしいぜ?
四人はめちゃくちゃビビってるのに百目鬼だけは仲良くなっててワロタ。
多分百目鬼と同じ調伏に成功したってやつだろうし、まあ言うてみればお前の後輩だしね。
飯食ってうまうま言ってて可愛いじゃんとか思ってたら、唐突に僕にも名前ちょうだいとか来たもんだ。
なんか前と変わって色が黄金になってるので「黄金丸」って命名した。
すっごい喜んでてこれには秀郷くんもニッコリ。
喜び過ぎて馬鹿デカくなって更にニッコリ。
四人にめちゃくちゃ攻撃されてちょっと痛そうにしてたので慌てて止めてあげた。
改めて考えるとこいつめちゃくちゃ硬いな?
……思ったんだけど俺の術式って呪霊を調伏できるものなのかな?
まだまだ俺の知らない力が眠ってんのか……ニヤニヤが抑えらんないね!
⚪︎月⚪︎日
帰ってきたぜシモツケ!
シモツケって下野って書くらしいね。
まあ何はともあれ帰郷で、まずは実家に報告だ。
家族が増えるよ! やったね親父!
なお親父からは連れている百足だったり四人のめちゃんこつよい気配だったりでチョービビられた模様。
まあな、親父特に強くもないしな。
師範は四人に対して好意的だったけど、黄金丸に関してはめちゃくちゃ感じ悪かった。
もう今すぐにでも斬りかかろうとしてたね。
まあアンタでも黄金丸にゃ勝てんだろうけど。
今後の方針だが、とりあえずはまたバンドウ、じゃねぇや、坂東で四人を鍛えていくことにする。
結構強くなってるけどまだ禪院君が試行錯誤してるし、加茂君と五条君も何やら協力したりしてるらしい。
何を企んでるんだか。
⚪︎月⚪︎日
平良将爺ちゃんが亡くなったので、その葬式にお呼ばれされた。
やっぱ鎮守府将軍ともなればその葬式は結構豪華だ、まあ昔の基準でだけど。
そんな最中平家の小姓についてきてくれと言われた俺。
亨子ちゃんを連れてホイホイお邪魔してみると、どうやら用があんのは息子さん。
昔親父に説明されたバケモンみたいな力持ってる術師で、名前は平将門。
昔よりも顔色悪くなってて心配になったが、そんなのお構いなしに将門のあんちゃんは俺に頼み事をしてきた。
要約すると、俺に人殺しを依頼したいそうだ。
のっけから嫌な気分にさせられた。
親父さんの葬式の最中に頼むことか?
断る気ではあったものの一応話を最後まで聞くと、その対象は俺と同じ年頃のようだが、これまで数えきれないほどの数の人間を殺し、極めて悪辣で自己中心的で赴くままに非道を尽くす、生かしておくわけにはいかないヤツだそうだ。
話が本当なら将門さんの気持ちは分かる。
けどなあ、俺はこれまで人の手足を切ったことはあるが、人を殺さないようには努めてきたんだ。
俺は今後も人を殺すことはないだろう。
誰に何を言われようが、これだけは破るわけにはいかないんだ。
俺の力は人を生かすためにあって、人を殺すためのものではないからな。
ただそんな言いようでは将門さんは納得しなかった。
終いには、後悔することになるぞと捨て台詞を吐いて去っていってしまった。
正直言うと、あんちゃんの根性が気に食わない。
何を犠牲にしても果たしたいことがあんなら、人に頼まずにまず自分から行動するべきだろ。
よし、改めてここに宣言しよう。
何があっても絶対に、俺は人を殺さない。
【決意の涙が頬を伝る……】
⚪︎月⚪︎日
越後国で呪霊が発生、手に負えないとのことで急遽討伐に向かおうと思ったんだが、男子三人組が俺たちにやらせてくれと息巻いている。
良い機会だし、一回こいつらにやらせてみるか。
俺も行くけど手は出さないようにするし。
そうすると亨子ちゃんもついてくって言うだろうし、となるとまた百目鬼に留守番頼むことになるな。
まあいいか、黄金丸もいるし。
……今更だけど呪霊に呪霊討伐させるって意味不すぎるね。
⚪︎月⚪︎日
山を越えると、そこは雪国だった。
嘘です、まだ雪降ってないです。
ここに来たのは俺と男子三人組だけだ。
亨子ちゃんも来たがってたんだけど、百目鬼が俺らだけじゃ無理があるってんでお留守番係になった。
別にこの間だって大丈夫だったし、今回だってすぐ帰るのにね。
ぐずる亨子ちゃんに後ろ髪を引かれつつも旅立つことになり申した。
んで、来てみたらちょうど良い具合の強さの呪霊が三体いるって話だ。
示し合わせたようなタイミングだな、なんか変な予感がする。
周辺には呪霊以外の変な反応は無いし、多分大丈夫だろうとは思うけどな。
三人の戦いだが、結論から言うとみんな勝った。
加茂君と五条君は完勝圧勝大活躍ってな感じで、まあこれは予想はしていたことだったからいいんだ 。
すごいのは禪院君だった。
なんと正の呪力のみで、俺の貸した刀の毛抜形太刀を振るい、呪霊を爆殺してしまった。
なんでコスパの悪い方法で呪霊を祓ったのか聞いてみると、十体目の式神のアイデアを絞り出すためだそうだ。
全体像はうっすらとできているのだが、今一つ決定打に欠けるようで、加茂君と五条君に相談したところ、俺の戦い方と俺の刀を軸に組み立ててみたらいいのではないかという助言を貰ったらしい。
俺の刀は当然祝福済みで、その力は持ち主が五感で対象を知覚すると、それに応じた攻撃手段を獲得するものだ。
それを軸にすんのは分かる。
けど俺の戦い方っていうのはどういうことなんやろか。
俺の戦法って矢に祝力込めてぶっ放すくらいなんだけど。
まあこれで禪院君も糸口を掴んだみたいだし、腕試しは成功という形で終わりだな!
⚪︎月⚪︎日
武蔵から使者が来た。
平将門が挙兵した。
家族が人質に取られた。
あの野郎、やりやがった。
続くかもしれないし続かないかもしれない。
どちらもありうる、そんだけだ。