『狐ノ余命入リ』   作:レイノート

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どーもクソ投稿者です。
お気に入り登録をしてくれた方々、誠にありがとうございます。
第3話をどうぞ。


第3話「反省」

 

 

 

「くっ……ここは……?」

 

 

晴明の意識が戻り、ゆっくりと目を開ける。

見慣れぬ天井、鼻の奥にツンと香る薬品の匂い。

身体をゆっくりと上げると、医薬品の入った戸棚や何らかの書類の山、そして晴明自身が眠っていたであろうベッド。

ここまでのものが揃っているであろう場所はただ一つ。

何処ぞの研究機関でもない限り、保健室以外はないだろう。

 

 

 

「おっ、目が覚めた様だな」

 

 

 

出入口の扉がガチャッと開き、白衣を来た腰ぐらいにまで伸びたロングヘアーが特徴の女性が入ってくる。

目元の隈が酷いが、顔立ちが整っている美人。

 

 

 

「貴女は?」

 

 

「家入硝子だ、呪術高専(ここ)で医師をやっている」

 

 

 

晴明は納得する。

呪いを扱うこの世界は常に死と隣り合わせ。

大なり小なり傷を負うこともあるだろう。

呪術師専門の医師がいたとしてもおかしくはない。

 

 

 

「これはご丁寧にありがとうございます

 

俺は安倍晴明と言います、よろしくお願いします」

 

 

「あぁ……君が例の

 

五条から話は聞いているよ、面白い子が入って来たとね」

 

 

 

 

晴明を凝視する家入。

興味深いナニカを観察するかのように、ねっとりとした視線を送る。

 

 

 

「あの何か顔についていますか?」

 

 

 

初対面の人間に隅々まで見つめられると流石にむず痒い感覚になる晴明。

檻にいれられた珍しい生き物もこんな感覚なのだろうか。

 

 

 

「おっとすまない

 

つい見すぎてしまった、許してくれ」

 

 

 

晴明は九尾・玉藻の前の憑依者と言う極めて特殊な例。

医師である家入にとっても興味の対象であり、呪力の流れやどう言った体の構造になっているのか気にはなっている。

 

 

 

「はぁ……別に大丈夫です」

 

 

 

秤ら三人らの反応に比べれば、興味の対象として見ている家入の方が気分的にはまだ耐えられる。

まるで某忍者漫画の主人公のような気分になる晴明。

そんな憂鬱な気分でベッドから降りようとした時、

 

 

 

「おおっと目が覚めたんだな!」

 

 

 

騒がしく保健室の扉を開けて入ってくる一人の男性。

黒づくめの服装に身を包んだ顎髭と丸眼鏡が特徴であり、急いで晴明の元へと来る。

 

 

 

「おいおい摩比杜、彼は今目覚めたばかりなんだ

 

あまり大きな声を出すな」

 

「おおっと!それはすいません!

 

五条さんから金次の馬鹿が転入生フルボッコにしたって聞いたもんで!」

 

 

 

家入に注意をされる眼鏡の男性。

親しげに会話をしている様子を見ると知り合いのように見える。

 

 

 

「そんじゃまあ改めまして、俺は摩比杜 七夜(まひず ななや)

 

お前達一年の副担任を務めている、これから宜しくな」

 

「安倍晴明です、こちらこそ宜しくお願いします」

 

 

 

自己紹介をし、晴明に手を差し伸ばす摩比杜。

晴明も手を伸ばし、互いに握手をする。

 

 

 

「悪いな、本当は教室で挨拶したかったんだが任務が入っちまってな

 

それに身体の方は大丈夫か?」

 

「はい、寧ろ実践訓練の前より身体が軽い感じです」

 

 

 

晴明は秤によってタコ殴りにされ、身体の至る所には激しいダメージがあった。

しかし身体には傷痕なども無く、本人の体調もばっちり。

家入が優秀な医師であったとしてもこんな短時間で治せるもなのかと疑問に思ってしまう。

 

 

 

「当然だ、私が診ているんだぞ

 

あの程度の傷なんて朝飯前さ」

 

「いやぁ~家入さんみたいに反転術式使える人じゃなきゃ無理ですわ」

 

 

 

二人が和気あいあいと話している中、晴明は反転術式という単語が気になった。

短時間ながら万全な状態にまで回復させる方法があるなら知りたいという欲が出てくる。

 

 

 

「すみません、反転術式ってなんですか?」

 

「まだ呪術の基礎を習っている君には早いと思うが…………

 

まあ教えても問題ないだろう」

 

 

 

別段説明しても問題ない家入は晴明に反転術式について説明した。

 

 

 

「反転術式は負のエネルギーである呪力同士を掛け合わせ、正のエネルギーを生み出す事が出来る

 

傷を治すのはもちろん、生得術式に対しても応用させる事も出来る

 

まあ、私みたいに他者に対して使える術者は少ないけどね」

 

「マイナス×マイナスでプラスを生み出す計算式を呪術に落とし込んで、呪術単体で出来ない事を可能にし、術式に対する応用を拡げられるという事か」

 

 

 

まだ呪術に関して疎い晴明だが、幼い頃から物事に対する解釈が深く、反転術式を精密な部分までも理解していた。

これには説明した本人である家入も驚いている。

 

 

 

「ほぅ~まさか一発で理解してもらえるとは驚いたよ

 

何処かの馬鹿とは大違いだ」

 

 

 

噂をされた何処かの馬鹿が、大きなくしゃみをしたのは本人しか知らない。

 

 

 

「(昔なんかは感覚的にしか教えてくれなかったな…………)」

 

 

 

当時後輩だった摩比杜は、昔の家入の反転術式の説明が余りにも分かりづらかったのを思い出していた。

天才は感覚派が多いと言うが、ひゅーとやってひょいと言われて出来るわけもなく、今現在でも習得は出来ていない。

それ故に反転術式は扱いが非常に難しい技術なのだ。

 

 

 

「さてちょっとした講義はここで終わりだ

 

特に身体に違和感がなければ、授業に戻っていい」

 

 

「家入さん、ありがとうございました」

 

 

 

そう一言告げると家入は保健室を後にする。

 

 

 

「んじゃあ俺も授業に戻るけど、無理せずしっかり休んでからこいよ」

 

 

 

続いて摩比杜も保健室を後にした。

残された晴明は軽くストレッチをし立ち上がる。

ハンガーに掛けられていた自身の制服を着込み、気合いを入れ直す。

 

 

 

「(皆と会うのが少し気まずいな)」

 

 

 

先程起きた秤との一件で互いに溝が出来てしまっている。

これから教室に戻ったとしても今朝と同じような事が起きるのは容易に想像がつく。

しかし晴明はそれでも歩み寄ろうと決意した。

自分自身で決めた事を投げ出してしまえば、以前の空虚な自分に逆戻りする。

 

 

 

「(俺が諦めたら一生分かり合う事は出来ない)」

 

 

 

新たな自分を目指し、晴明は保健室を後にする。

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

「俺が悪かった!」

 

 

 

教室に戻ってきた晴明を待っていたのは、土下座をして謝ってくる秤だった。

突然の事で困惑するが、近くにいた鬼札が説明をする。

 

 

 

「実はあの後摩比杜先生が来てね……」

 

 

 

任務終えて帰ってきたばかりの摩比杜が秤に対して説教をしたと言う。

相手の事情も知らず自分の価値観で相手を嫌悪する行為に対して咎められ、こればかりは秤自身も反省しており、晴明に謝るつもりでいたそうだ。

そして今現在に至るというわけらしい。

 

 

 

「頭を上げてくれ、秤…あれは俺自身も悪い」

 

 

「いやそれだけ俺の気が済まねぇ!一発ぶん殴ってくれ!」

 

 

 

晴明本人は気にしてはないというが秤自身が納得出来ず、殴って貰わないと気持ちが晴れないという。

然していきなり殴れるわけもなく、晴明が躊躇っていると

 

 

 

「まずはそのふざけた顔面をぶっ飛ばす!」

 

 

「そげぶ!」

 

 

 

突如現れた玉藻の前が晴明の代わりに、秤の顔面に右ストレートをぶちかます。

完全に不意をついた一撃は秤を軽く吹っ飛ばし、またしても黒板を割るという被害を出す。

 

 

 

「おい!玉藻!」

 

 

「はーい~ごめんちゃい~☆」

 

 

 

反省の意のない謝罪をすると再び姿を消す玉藻の前。

本当に何時どのタイミングで絡んでくるか分からない為、晴明は頭を抱える。

 

 

 

「大丈夫か、秤?」

 

 

「痛ってぇなおい!俺じゃなきゃ死ぬぞ!」

 

 

 

所々擦り傷が付いており、無傷とはまではいかないが元気な様子。

そんな秤に手を伸ばす晴明。

 

 

 

「こんな形になってしまったが改めてよろしく頼む」

 

 

「はっ!よろしくな!」

 

 

 

昼間の険悪な雰囲気は無くなり、二人は熱い握手を交わした。

後に最強コンビの再臨と言わしめるのはまた別の話。

 

 

 

 

[to be continued]

 

 

 

 




とんでもない亀更新になり、申し訳ありません。
ウマのゲームやったり、プレゼントボックスの周回していました!許してください!
というわけで次回も良かったら見て言ってください!
摩比杜はオリキャラになりますが、よろしくお願いします。

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