「う、ぅぅ……白河さんは……追ってきてない……ぅぅやっぱり刀が持てない私なんて30Gにはいらないんだ」
宿舎を抜け大通りに出た私は後ろを振り返り誰も追ってきていないのを一人確認し私の部隊内での価値の低さに絶望した。
「は、はは、ま、まぁ確かにそうですよね。剣術の腕がいくら良くてもセラフは拳銃タイプ……おまけに銃の扱いは半人前どころか素人レベルの天才ポンコツ剣士なんて誰も必要としませんよね…はは、はは……」
ぁっ、ダメだ涙出てきました。死にたい……。チーズ蒸しパンになりたい……
両手を地面に付けorz態勢を取る。もうここで横になってしまおうか。そんな半分自暴自棄になり始めた私の周りでアラートがけたたましい音を響かせながら鳴り響いた。
「全員、防衛態勢へ移行して下さい」
けたたましい音とは正反対の落ち着いた声がその後に流れセラフ基地に何かしらの脅威が近付いているのが確認できた。
それと同時にorz態勢を取っていた私の懐に入れてある電子軍人手帳から着信音が流れる。
私は地面に付けていた膝を立たせすぐさま着信ボタンを押した。
「はい!30G小笠原です!」
『30G白河だ。小笠原出撃だ、すぐヘリポートまで来てくれ』
「分かりました」
白河さんらしい短い命令に一言返事で返し通話を終えヘリポートに向けて走り出す。状況はまだハッキリとしていないが白河さんからの命令を聞く限り猶予はそこまで無さそうに思える。
先程のアラートにより忙しなく動き出した先輩部隊や同期の部隊の間を潜り抜けヘリポートまで辿り着くと私以外のメンバーは全員ヘリ前で待機していた。
「すみません皆さん!お待たせしました!」
「大丈夫ですよ緋雨さん。私達も今来たところです。白河さん」
大きな尻尾に青色を基調とした露出度の高い着物に身を包んだタマモさんが私の声に反応し隣にいた白河さんに目配せをする。
それに一度頷いたあと白河さんは私を含めた他の隊員を見回し口を開いた。
「七瀬教官からの情報では
私達の任務はキャンサーの殲滅、及び後輩部隊のサポートになる」
「後輩部隊のサポートですか?」
「ああ、今日入隊した31部隊の少数と教官付きで数体を撃破するらしい」
「教官付きって…まるでピクニックの引率みたいだねぇ」
「言ってやるな蔵、それに我たちも最初はそんなだっただろう。人のことを言えたモノではない」
「そうなりますと私達はヘリにて挟み込む形でよろしいですの?」
「ああ、前線は30Dを中心とした部隊で迎撃するらしい。私達はキャンサーの背後を取り一気に殲滅する。全員心してかかるぞ」
『了解』
短いブリーフィングを終えヘリに乗り込む。座席に座り皆さんの様子を伺っていると、ふと今日のこの作戦が私が30Gで行う最後の作戦だという事を思い出す。
「不安ですか緋雨さん」
隣に座ったタマモさんに不意打ち気味でそんな事を言われた。
「な、何がですか?何も不安ではないですけどぉ?」
「いや分かりやすぅ。隠すならもう少し上手く隠せません?」
うぐっ、それはつまりポーカーフェイスが全く出来ていないということですよね……
「そ、その…正直なところ……はい…」
「まあ、お気持ちは分かりますが大丈夫ですよ。他の部隊ならいざ知らず、貴女が送られる部隊は私が敬愛するお方がおられますので、ご主人様相手なら何も気負う事はありません」
「そう言えば何度かご主人様、ご主人様言っておられましたわね。どのような方ですの?」
私達の会話を聞いていたのか菅原さんが会話に加わる。
「聞いちゃいます?気になります?気になりますよね!良いでしょうお教え致します。このタマモちゃんが全てを掛けてご奉仕させて頂かせているご主人様……
普段落ち着いているタマモさんがまるで何かに取り付かれたかの様に饒舌になる。あぁ、これはあれだ。
「(変なスイッチ入りましたね)」
「(ええ、それも特段危険な不発弾を起爆させたようですわね)」
菅原さんと目配せをし二人して溜め息を吐く。タマモさんもそうですが桐生さんと蔵さんも同じような
(私上手くやっていけるかなぁ……)
タマモさんのご主人様談義をしり目にそんな事を思う。願わくばマトモな人が沢山いる部隊である事を願います。
『BBチャンネル出張ばーん!inセラフ基地をお送りしていきます!』
「集合地点と言われたであろう橋の上に来てみると大勢の人が集まっている中で見知った人物が見知った看板と共に大声を上げていた。
……見間違いだな。えっと、集合地点はこっちだから——」
「スルーは酷くないですか先輩!?見間違いじゃないですよ!?」
「ワタシセンパイッテナマエジャナイデス。ワタシノナマエ、フランシスコザビエルッテイイマス。」
「フランシスコザビエル先輩、無視しないで下さい!!」
「その名前ならよかろう」
「よくないな」
「よくねーですよ」
改名しようと画策していたところウサインボルトもかくやと言わんばかりの早さで後ろの二人に咎められた。チッ、折角の改名チャンスを邪魔された。
「衛宮様この人ヤバくないですか?息を吸うように改名しやがりましたよ。しかもまだ諦めてませんよ。目が獲物を狙うそれです」
「ハウス。森へ帰れマスター。君にも理性は残っているだろう?」
酷い言われようだ。この二人に優しさと言う言葉は存在しないらしい。
「優しさがないではないマスター。これは一般常識だ」
「一般常識なら月で培ってきた」
取り敢えずコンビニバイトなら購入商品全部温める事ぐらいは身体に叩き込んできた。
「それしたら瞬間的に首飛ぶぞ♪いやてか、飛ばします」
「なに?待って怖い。目が怖い。やだマリーこわぁい」
「先輩変な声出てますよ。バグですか?月で変なバグ貰ってきてません?」
マリーの有無を言わせぬ声音にビビる私に頭でもおかしくなったのかを訪ねる後輩。
何を失礼なことを言うんだこの後輩は。裏側の
「いや、非常識なの十中八九岸波様の方でしょう。その現場見てないですけど副音声で『あのバカまたやらかしたわね』って聞こえますよ」
「そんな事言われてません。金遣い荒男や後輩に貢ぐ女とは言われたことあるけど」
「非常識以前に人として終わってるでしょ。ちょっと衛宮様BB様何とか言ってやって——なんで二人とも目を逸らしてるんです?」
『いや、ちょっと心当たりが……』
マリーの発言に私としては全くと言っていいほどノーダメージだが、表側からの付き合いである二人には結構な心体的ダメージが入ったようだ。二人して目を逸らし胸を押さえている光景は何とも不思議な光景だ。
まぁ、“スキルを思い出す為に金を貢がれた男”と“思い出を借金させてまで買わせた女”だから仕方ないと言えば仕方ないのか?
『キャンサーの軍勢は現在、第三次防衛ラインまで近付いています。皆さん準備はよろしいですか?』
私達の会話の最中、どこか見覚えのある金髪の女性が橋の上で拡声器を使いながら周囲の人に伝えていた。
……筈なのだが何故か何度か彼女と目が合っていた。何か気になる事でもしていただろうか?
「おっとっと、手遅れになる前に移動しちゃいますか。先輩方こちらですよー」
あっちの視線も気になるけど、この後輩はこの後輩で気になるし…まあいっか。何か問題があれば全部BBのせいにしておこう。
橋の上にいる20余りの人達とは反対の方向へ歩くBBの後をそんな事を考えながら追いかけた。
「……あとで一応報告はしておきましょう」
「七瀬教官、本当に私達だけで相手取るのか?」
「いいえ、貴方達だけではありません。詳しい話は歩きながら伝えます。こちらへ」
「31Z部隊っと、ここか」
すももと共に避難してた最中にここの職員だろう人物から今後のアタシ達の割り振りを教えられ各々の部屋で待機を命じられたあと、アタシは31B部隊に割り振られたすももを同部隊と名乗った恰好が痴女のそれな金髪に預け自分の部隊の部屋の前まで来ていた。
「中は……案外普通、いや良すぎるぐらいか?軍事施設って言ってた覚えがあるんだが…まあ、そこは気にしないでおくか。問題はすももやアタシの記憶の件だな。監視カメラぽいのもねーし同室の奴らが来る前に考えを纏めておくか」
中に入り扉を閉め周囲を軽く見回したあとそう独り言ちる。
まず現状考えられる事は
1:アタシの記憶が全て偽物の可能性
2:すももがなぜ生き返り成長しているのか
3:キャンサーとは一体何なのか
4:ここに集められた目的は?
……纏めてみたが現状じゃ何も判断できんぞこれ。
1がもし真なら2は考えても無駄だ。それにアタシの記憶にすももが死んだことを残しておくメリットがねぇ。アタシ達を効率良く運用させるなら不安材料をわざわざ残す必要はない。なら1に対しての答えは
「アタシを蘇生させた奴がわざと残したって考えるのが妥当か…」
残した理由は分からないが現状では多分一番近しい答えだろう。
次に2は人を蘇生させるなんて技術があれば出来てもおかしくはない。イブの例もある。記憶を保持したホムンクルスとしてアタシも黄泉返させられていても何らおかしくはねぇ。
3は…何だろうな。あの銃弾が全く通らなかったヤツらの事を指してるなら対抗策なんてないぞ。
「それともアタシが死んだ後に出来たのか?」
だとしたらあれからどれだけ経った?トレイン達は無事なのだろうか。
それともアタシの様になってんのか?
……今考えても仕方ねぇか。
最後に4だがコイツは多分
「キャンサーの討伐……と言うよりは絶滅させることでしょうね」
「……何言ってんだお前?そんな扉の前で」
部屋の外で足音がしていたのは聞こえていたが考えが口に出ていた筈はないんだがな……コイツの
「道?いえ、そんな不思議能力ではないですよ。これはただ貴女の心拍数と息遣いから予測しただけです」
「十分不思議能力なんだよそれは。はぁ…岸波白野、衛宮士郎、佐月マリ、水瀬いちご、小笠原緋雨、ヴリティカ・バラクリシュナンこの内のどいつだ」
「そんな警戒しないで下さい。私はヴリティカバラクリシュナンです。電子軍人手帳で調べなくても良いですよ本当の事ですから。だから懐に伸ばした左手も止めて下さい。私見た目通り貧弱ですから貴女達のような武闘派とは真逆の存在なんです」
「警戒されたくなけりゃファーストコンタクトは気を付けることだな。初対面で人の考えを当て続けるヤツにアタシは好い気はしねぇ……名前に偽りはねぇか」
「だから…いえ、私に対人能力の善し悪しは測れないのでいちごさんがそう仰るのならそうなのでしょう」
アタシの言葉に嘆息気味に溜め息を吐く推定ヴリティカバラクリシュナン。……アタシの思考を読んだこともあるがこのネガティブさ…コイツもコイツで訳ありか?
「訳ありと言いますか…産まれて死ぬまで施設暮らしでしたのでまともな対人関係を築けなかったと言いますか」
「それを人は訳ありって言うんだよ。良かったな一つ新しい事が知れて。つかお前もか」
「ええ。変な設定を植え付けられていましたが自我に関して全く問題はありません」
「……お前みたいな天才ってヤツは洗脳とか全く効かない感じなのか?」
「そんな訳、私が群を抜いて特別なだけです。聞きます?洗脳の抜け出し方」
「遠慮しとく。アタシみたいな常人には無駄な知識だろうからな」
話していて何となく分かっていたがコイツ頭のネジが2,3本飛んでんだろ…。
推定から本物に変えても良いだろうヴリティカがどや顔で説明しだすのを片手で制しながらそんな事を思った。
ヘリに揺られ作戦区域に降り立った数十分後、私達は指示通り最後列のキャンサーを掃討していた。
「小笠原、足を狙え!」
「はい!分かりました!ってあっ!?」
白河さんの命令に従いセラフの光弾を放つ小笠原さん。ですが、その狙いは対象の数十センチ下の地面を抉るだけに終わる。
仕方ありませんわね!
「そこッ!!」
外れた事によりフリーとなった体を屈め跳び着こうとしていたキャンサーにセラフから伸びた触手で貫き地面に釘付けにする。
「ナイスだ菅原」
言葉と共に放たれた白河さんの斬撃が縫い止められていたキャンサーに直撃し絶命する。
……さて
「ちょっと小笠原さんどう言う事ですの!?貴女これで三度目ですわよ!さ、ん、ど、めッ!!
しかも私とコンビ組んでる時に限って私に向かって弾丸が飛んでくるんですけどどうなっていますの!?」
「す、すみません!わざとじゃないんです……その……基地に戻ったあとの事を考えると手元が安定しなくて……」
「精神に異常をきたす程!?どれだけ31Z部隊に移動する事を不安がっているんですの!?」
「ふ、不安!?し、失礼な事を言わないで下さい!これでも私は天才剣士ですよ!」
「だぁからなんですの!?精神的な問題に天才剣士どうこう関係ありませんが!?」
「か、関係あります!大ありです!ほら!特にその……なんかそんな感じです!!」
「何も説明出来てない!否定するならもう少しマシな嘘をおつきなさい!」
「ぅぅぅ…」
「ま、まぁ菅原。小笠原もわざとミスをしたわけじゃないんだ許してやってくれ」
私と小笠原さんとの言い合いに困り気味の白河さんが仲裁に入る。
この人は何を言っているのでしょう?
「白河さん。私は貴女にも怒っているのですのよ」
「なにっ!?こっちに飛び火しただと!?」
「貴女はいつもいつも甘いのですわ!小笠原さんのことだけでなく月城さんや蔵さん、桐生さんに対してもですわよ。私とタマモさんが毎回毎回どれだけケツを拭いてると思っているのですの……」
「いや、あの……お前達も中々暴れている時が——」
「――ッ!!(白河さんを睨みつける」
「———何もありません…」
「そこにお座りなさい」
「はい…」
「小笠原さんも」
「え、あ…」
「ハリーッ!!」
「はいッ!!」
荒廃した町中にて私は目の前に座った二人に思いの丈をぶちまけた。
「そもそもとして小笠原さんは天才剣士天才剣士言いますが貴女いつ剣を持ち出すんですの!?部屋に飾ってあるあの刀は飾りですの!?飾りでしたわね!!」
「いやあの、その……ごめんなさい……」
「そして白河さん!貴女も貴女で啓示啓示言いますが毎度断片的な事しか教えてくれない啓示に私達がどれだけ振り回されているとお思いで!?」
「いやしかしだな菅原。啓示は———」
「しかしもおかしもありませんわ!貴女が仰る啓示の内容が私達に有益な情報を与えてくれましたこと!?どちらかと言えば不明瞭な情報ばかりではなくて!?」
「あ、あー……面目ない…」
「面目ないぃ!?謝罪ではなくて行動でお示しなさい!それと今回の啓示を言ってみなさいなッ!!」
「……荒廃した町中にて三人は光に出会う。出会った三人のうち一人を光の下へ預ければ道は開かれる」
「抽象的!それに絶妙に分かり辛い!てか三人だれ!?」
「いやあの、はい……すまない…」
項垂れる白河さんと小笠原さんを視界に収め呼吸と精神を落ち着かせるために一度目を閉じる。
息を整え掛けるべき言葉を吟味し閉じていた瞳を開ける。意気消沈した二人とその後方にいた三つの人影を視界に入れ再び口を開く。
「???」
「……菅原?」
「菅原さん?」
いる筈のない一般市民を見つけた為に開いた口が塞がらない。なぜこんなところに人が?取り敢えず避難誘導でもしましょ———
「……(無言で焚火の上で巻かれている小型のキャンサーを見つめる筋肉質の男性」
「……(無言で鉄の棒に刺さっているキャンサーを焚火の上で回し続ける栗色の長髪の女性」
「……(無言で焚火に燃料を追加する紫髪の女性」
「上手に焼けましたアァァッ!!!(叫びと共に黒煙を上げているキャンサーを片手で上げる栗色の女性」
『おおおおお(拍手を送る男性と女性』
「何しとんじゃおどれらわあぁぁぁ!!!」
『ぎゃああああ!?』
『菅原(さん)!!?』
推定セラフ部隊と思われるアホ三人に思わずドロップキックをかますが全くと言って後悔はない。と言うよりも問い詰めないといけない。
「落ち着け菅原!どうしたんだ急に?相手は一般市民だぞ!?」
「いや、こんな場所でキャンサーの丸焼き作るバカが一般市民なわけないでしょうが!てかキャンサーどろどろに溶けてる時点で火はセラフ確定ですし!つかグロ!?」
「いたたたた、酷い目にあった…」
ドロップキックによって山積みの一番上にいた栗色の女性が起き上がる。
慣れた手つきで小笠原さんが女性を介抱する。
「大丈夫ですか?痛みは?記憶の混濁とかはありませんか?」
「痛み……うッ!なにこの頭の痛みは?名前が思い出せない…私は……確かフランシスコザビエル」
「んな歴史的な名前のヤツが今の時代存在するか!嘘吐くんじゃありませんわ!!」
「ちなみに私は小〇旬だ」
「私はミランダ〇ーです」
「そこ二人!比較的最近なら騙せると思うな!つか貴女に至ってはショップ店員の佐月さんでしょうが!!」
私の言葉にミラ〇ダカーを名乗ったショップ店員が目を見開く。
「なぜバレたのですか…」
「き・の・う!わたくし貴女に特注のオイル売っていただきましたわよね!?」
「いやぁ、私3分前の事は全部忘れちゃうので……ミ〇ンダカーって誰でした?」
「貴女が名乗ったんですが!?私に聞かないで下さる!?てか3分経ってないし!!」
「〇栗旬……まさか本物に出会えるとは…サイン頂いても良いか?」
「良いだろう。名前は?」
「ユイナで頼む」
「任せろ……出来たぞ」
「ありがとうございます。家宝にします……あれ何か名前違くないか?え・みや?」
「そりゃ違うでしょうよ!偽物なんですから!つかこんな色黒の小栗〇いるわけないでしょうが!!」
私から離れた場所で純粋なのかバカなのか白河さんが色黒の小〇擬きに騙されていた。この人特殊詐欺とかに引っ掛かるじゃありませんこと!?
「まぁ、そんなカリカリしないでゴスロリの人。似合ってるよその服。あ、この黒い物体食べる?」
「食べませんがそんな得体のしれないモノ!?あと褒めていただきありがとうございます!」
栗色髪の女性から差し出されたキャンサーを叩き落とす。女性もそうされるのが分かっていたのか私の対応に何も言う事はなく落としたキャンサーに見向きもせずこちらを見つめ続けていた。
「うーん、ナイスノリつっこみ。関西系の人ゴスロリさん?」
「別に違いますが、それと私は菅原千恵と申しますの。まぁ、ゴスロリさんの呼び名でも結構でしてよ」
「じゃあゴっさんで」
「なあんでゴシックアンドロリータすら略してゴスロリになってんのにそれすら略してんですの!?てか、ゴっさんって可愛くないし!」
「可愛かったら良いの?じゃあゴリちゃん」
「ゴスロリと真反対のあだ名じゃないですの!」
「贅沢だなぁ、じゃあ千恵で」
「ゴスロリどこ行った!?……まぁ、それで良いですわ。で、貴女の名前は?あとここでなにをしていたのかしら?」
私の言葉に栗色髪は後ろで話している白河さん達を指差しながら話し出す。
「あっち方面のセラフ基地から徒歩でここまで来たね。あと私は岸波白野、向こうの二人はアーチャーこと衛宮士郎とクラークこと佐月マリだね」
「誰が店員ですか。私も歴としたセラフ部隊なのですがバーサーカーさん」
「言われてるよ千恵」
「どう考えても貴女のことだと思いますけど…」
私の言葉に続くように佐月さんの後ろからやってきた小笠原さんが疑問を溢す。
「そう言えば佐月さんはいつセラフ隊員になられたのですか?」
「正式には今朝ですよ。お話は大体ひと月ほど前からありましたが正式に任命されたのは本日からですね」
「へぇ、そうなのですの」
「はい。それと私は31Zの隊員ですのでこれからよろしくお願いしやがりますね小笠原様」
「えっ、佐月さんが同じ部隊員なのですか?……うん?ちなみにお聞きしますけど岸波さんはどこの部隊ですか?」
「どこって31Zの部隊長だけど?」
「辞退しますッ!!」
「ダメですッ!」
「どうして!?」
「私の一存で決めてるわけじゃないからです!」
「ド正論言われた!?屋外でキャンサー焼くような人に!!」
「あっ、それ勧めたの私です♪」
「最悪だッ!!」
佐月さんの言葉に私の傍で膝を付き叫ぶ緋雨さん。
まぁ、お気持ちが分からないわけではありませんので何も言いませんが、淑女としてみっともないですわよ?火の粉が怖くて言いませんが。
しかし、栗色髪さん改め岸波さんですか……
「岸波さん。貴女、玉藻の前と言う名前に聞き覚えはありませんこと?」
「タマモ?千恵、キャスターのこと知ってるの?」
私の言葉に聞き覚えのない呼び名で返す岸波さん。
キャスター…キャスターですか……
「キャスター?うーん、キャスター要素は…まぁありますわね」
「際どい青い服着てる?」
「着てますわね」
「1本か2本ぐらい尻尾あった?」
「ありますわね」
「ならキャスターだそれ」
どんな確認の仕方ですのそれ…答えた私も私ですが。
ですが彼女が仰られていた岸波さんなのですね。
聡明であり意思も固くそしてなにより……意地汚い。
「銭ゲバで精神面がおっさんで眼鏡に目がない」
「千恵わたしの悪口言ってない?」
「ですがイケ魂で私が世界で一番敬い、仕える者であります。そう続けようとしたのですよね菅原さん」
「音もなく背後に立つのお止めくださいませんこと?」
「あっ、キャスター久しぶり?そうでもないような?」
「はいお久しぶりです。ご主人様からすればそうでもないと思いますが私の目線で言えば久しぶりになりますね」
私の後ろからスッと現れたタマモさんが小首を傾げる岸波さんにそう返し続けて名乗る。
「ご主人様の一番のパートナー玉藻の前ご主人様の下に参上いたしました」
名乗ったタマモさんはこの1年間でも見たことない程の眩い笑顔だった。