ハイスクール・フリート ~深海の乙女たち~   作:みん提督

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第1話 出航とピンチ

「海の神様ってなに?」

私の問いに、父は答える。

「翼たちを守ってくれる存在だよ」

私はさらに問いかける。

「じゃあ、おとうさんのことも?」

父は答える。

「そうだよ、おとうさんも翼も、みんな海の神様に守られてるんだ。世界は海を通してずうっと続いてるからね」

父の話を聞いて、私は嬉しくなった。

「じゃぁ、おとうさんがちゃんと帰ってこれるように、海の神様に毎日たのむね!」

父は嬉しそうに笑った。

「そうか、そうか。翼が海の神様に頼んでくれるなら百人力だ。おとうさんお仕事頑張るぞ!」

私は首を傾げた。

「ひゃくにんりきって?」

父は笑って教えてくれた。

「すっごく頼りになるってことだよ」

父の笑顔は人懐っこくて、子どものような無邪気さがあった。

父の笑顔、言葉、力強い所。そのどれもか大好きだった。

そして、父はいつものように仕事に出かけ、帰ってこなかった。

 

父は死んだ。

 

学校から帰ると、母が泣きながら父が死んだと伝えてきた。私は全く現実感が湧かず、嘘だそうに違いないと叫んで、部屋にこもって泣いた。

翌日のニュースで、父が乗っていた潜水艦が沈没したと報じていた。そのニュース映像も、それを見てすすり泣く母の姿も、忘れられない。

 

「……鳥島沖で訓練中だったホワイトドルフィンの潜水艦『はるなみ』が沈没圧潰し、艦長深海守三等保安監督官以下、乗員41人全員が亡くなったと海上安全委員会が発表しました」

 

そのニュースを見て、呆然と立ち尽くす私を母は泣きながら抱き締めた。現実感のないあまりにも唐突で、衝撃的な知らせ。当時6歳だった私はか細い声で、絞り出したひとつの問いを母に投げ掛けた。

「ねぇ、おかあさん。どうしておとうさんは死んじゃったの?」

母は答えた。

「海の神様に連れていかれたから」

私はさらに尋ねた。

「どうして海の神様につれていかれたの?」

母はまた答えた。

「おとうさんが海の神様に気に入られたから」

私は母を突飛ばし、叫んだ。

「なんで、海の神様は守ってくれるんじゃなかったの!」

母の涙が溢れた。私は大粒の涙を流していた。

「おとうさんの…………おとうさんのウソつき!」

走って自分の部屋に行き、そして部屋でまた泣いた。

成長した今では、私はほとんど泣かない。おそらく、この時一生分の涙を流してしまって涙の井戸が枯れてしまったのだろう。

 

そうか、父の死から9年も経ったのか。波の音を聞きながら、思い出すのはあの日のことばかり。

父の事をずっと忘れられなかった私は海に出た。

父と同じ道を歩むために。

 

「……私、艦長になれたよ。……おとうさん。」

 

15歳になった私こと深海翼は、潜水艦艦長であった父と同じ道を歩もうとしていた。

潜水直接教育艦『伊126』の艦長となった翼は、その初航海に挑んでいた。

 

 

 

一人で艦橋に立っていると、ハッチからふわふわした黒髪がひょこりと飛び出てきた。

「かんちょ、なにしてんの?」

ふわふわした黒髪の少女は潜水直接教育艦『伊126』の副長草川ひばり。翼のことをかんちょと砕けて呼ぶ元気な少女。

「見張りをしてたよ。そろそろ硫黄島につくから」

ひばりは軽い身のこなしでハッチから飛び出すと、すばやく翼の真横を陣取った。たじろぐ翼に構わずひばりは続ける。

「真面目だね、かんちょは。監視装置があるからわざわざ艦橋に立たなくたっていいのに」

ニヤけて言う彼女の笑顔がまぶしい。キラキラ学生生活とは程遠い存在だった翼にはまぶしすぎる。

「えぇっと……うん……」

口ごもって何も言えない。こんな時に喋れないのがもどかしい。

「なんだかツれないなぁ、かんちょ。もっと笑顔になりなよ」

とびきりの笑顔で言うひばりにドキリとする。というかあまりに距離が近い。

「私も意識はしてるんだけど……どうも……ね……」

どこを見ればいいのかわからず、宙を見つめながらまた口ごもる。こうして他人からずっと逃げてきた。今も父からそうして逃げている。

表情が曇った翼に気付き、ひばりは思わぬ行動に出る。

「かんちょ、こっち見て」

「え、何草川さ……」

言い終わらぬ内に翼の顔を引き寄せ、そしてほほにキスをした。ひばりの行動を数秒遅れで理解し、翼は顔面が沸騰する。

「は、は、は、え? く、く、く、く、草川さん!?」

わかりやすく動揺して慌てふためく翼に、またしてもとびきりの笑顔を見せながらひばりは言う。

「ひばり、でいいよ。草川さんとか、副長とか、堅苦しいし」

ひばりの言葉に再度固まる。5秒ほど時間をかけてようやく復帰する。

「い、い、い、今そんな話じゃ……!?」

手足をバタつかせて必至に感情を表現するも言動は一致しない。

テンプレートな動揺を見せる翼に、ひばりはまたしてもあの笑顔を見せる。

「そうそう、悩みがなんだか知らないけど、そうして賑やかにしてるそうがかんちょらしいよ!」

彼女の笑顔で気持ちが落ち着いていたことに気付いた。

父の事で悩んでいるのを瞬時に見破られていたことと、それを気遣っての行動であるのは理解したが、それにしても……。である。

「じゃ、先に発令所行ってるからね、かんちょ」

そう言うとひばりはあっという間にハッチに飛び込んでいった。

再び一人になった艦橋で固まる翼。まだほほに残る感触を指でなぞりながらポツリと呟く。

「……普通の女子高生……って……みんなあんな感じなの……?」

夢にみた潜水艦艦長、長浦男子海洋学生としてスタートした学生生活は波乱の展開を予期させた。

 

 

 

海上安全整備局(J A P A N - N A V Y)硫黄島要塞。

旧式戦艦の主砲などの各種火砲、戦艦の艦橋をそのまま山頂の観測レーダー設備として使用している世界的にも類を見ない大規模要塞。

日本国内では珍しく、ブルーマーメイドとホワイトドルフィン両組織の部隊が駐屯することでも知られ、その艦隊戦力は破格。南海を守る要衝としてその存在感を発揮している。

2023年4月。長浦男子海洋学校の教育艦隊は新学期初の課題航海のため、硫黄島要塞へ入港していた。

桟橋には白い船体のブルーマーメイド、ホワイトドルフィンの作戦艦に混じり、灰色の船体に赤い帯を塗装された教育艦が停泊していた。

乗員である長浦男子海洋学校の生徒たちは、3日間の補給作業の間、硫黄島要塞でしばしの休息をとっていた。

 

「かんちょ、補給作業順調だよ。1315(ヒトサンヒトゴー)までには予定通り終われそう」

副長のひばりの報告に頷き、書類を確認する。

「……うん、ありがとう、草川さ……ひばりさん」

途中で先程の言葉を思い出して訂正する。ひばりの方を見ると満面の笑みで見つめていた。

「そうそう、その調子だよかんちょ」

グーサインを作って笑いかけるひばり。正直まだ慣れないが、圧しの強い彼女だ。少しずつ適応するしかない。

観念して苦笑する。

この2日後、補給と休息、整備を終えた長浦校教育艦隊は出航した。

 

水上教育艦隊として、大型巡洋直接教育艦『利根』、小型巡洋直接教育艦『香取』、『大淀』。航洋直接教育艦『柿』、『蔦』、『葛』、『欅』、『楡』。給油支援教育艦『石廊』。給糧支援教育艦『早崎』。工作支援教育艦『山彦丸』の11隻。

潜水教育艦隊として、潜水支援教育艦『剣埼』。潜水直接教育艦『伊405』、『伊407』、『伊15』、『伊19』、『伊33』、『伊44』、『伊126』の7隻。

実習航海の第2クール開始のため計18隻の長浦男子海洋学校第69期生遠洋航海実習部隊の各艦艇が出航した。その中には男子校に見合わない女子学生のクラスがあった。

「おぉおぉ、見てるぞ見てるぞ男子校の助平ども」

『伊126』の艦橋では出航のため慌ただしく動く各艦の様子を観察する人影が複数あった。

「長浦の連中、気合いが入ってますな」

『伊126』と併走する艦の甲板では慌ただしく乗員が動き回る様子がよく見えた。男子校艦隊においてただひとつの女子クラスを意識してか、機敏に動き回っていた。

その様子を愉快に観察するのが航海長の春雨愛沙。その横で合いの手を打つのが航海科員の時雨純子。悪ふざけ、もといふざけ合いでは右に出る者がいない『伊126』随一のお調子者コンビ。

「艦長、航海長意見具申!」

小さな身長をより大きく見せようと背伸びしながら言う春雨に、嫌な予感を覚えつつ翼は意見具申を許可する。

「一応聞くよ……一応」

そう言うと天真爛漫溌剌、可愛げのある彼女からは想像できない下品な意見具申が飛び出す。

「乳振れしましょう、乳振れ!」

翼は間髪いれずに可否をぶつける。

「却下!! 私が!! 怒られる!!」

残念そうな顔をする春雨の横で、時雨も同じような顔をする。

なぜ2人してそんなことしたいのか。全くわからないと頭を抱える。

「艦長~、そんなこと言わずに、伝統墨守は旧海軍からの慣わしですぞ~、乳振れも」

便乗してねっとり話しかけるのが困ったおふざけコンビのもう片方、時雨。

「そんなことした暁には特別クラス解散……」

2人のおふざけは止まらない。

「暁ちゃんはいいって言いますよ絶対~」

「多数決はとらないからね!?」

艦橋にいる2名のおふざけウーマンに辟易しているとハッチからいつもの人影が飛び出してくる。

「こらこら、航海長どのたち。かんちょを困らせないでよ」

副長のひばりがそう言って場を収めるのがもはや日常の風景となっていた。

「でも副長。艦長ノリ悪いんですよ~」

「そう言って、副長もやりたいんじゃないのか、乳振れ」

おふざけコンビに詰め寄られたひばりは珍しくムッとした顔で反論する。

「私のこの乳でやって何がおもろいねん!」

軽くキレるひばりにたじろぐ2人。

「需要はあるって」

「元気出してよ副長~」

一転して慰めに回る2人。ひばりは少し溜め息をしてやり場のない怒りを虚無感に変換する。

「慰めないで、ちょっと虚しいから」

3人の漫才みたいなやり取りを見ながら笑いを堪えるのに必至な翼。

こうして平和に言い合っている光景が、憧れの学生生活を送っていることを実感させる。

まだ言い合いをする3人の和やかな光景を尻目に、『伊126』の右舷前方を航行する艦影に目を向ける。20.3cm連装砲4基を艦首甲板に集中配置した独特なフォルムが目を引く。

『利根』のマストにはUW旗が翻っていた。これを掲げさせたであろう『利根』の竹沢伸艦長の顔が浮かぶ。

「そっちこそがんばれ、のびる」

UW旗を掲げる『利根』に対し、『伊126(イニム)』は返答旗UW1旗を掲げる。

 

 

 

3日後、アスンシオン島沖集合地点。横浜分校の潜水支援教育艦『平安丸』と、教員艦『ちはや』の周囲には集合を済ませた各艦が投錨して待機していた。中には横須賀校や大竹校、海外校の艦も含まれており、その規模は硫黄島出航時より拡大していた。

教員艦『ちはや』のCICでは集合艦艇の点呼がとられていた。

「全艦艇が概ね集合。各艦大きな異常ありません」

副官の報告に、鋭い目付きの長浦校教官利根川は頷く。元ブルマーの経験豊富な彼女は新任の教官ながら生徒や教員からも信頼が厚い。

「よろしい。まだ集まってない艦は?」

副官はタブレットを確認する。

「は、『利根』と『伊126』です。内『伊126』は……遅刻です……」

 

アスンシオン島集合海域から北西に42kmの位置にあるマウグ島。その沖に1隻の潜水艦が停泊していた。

 

「あ~~あ~~、まっっっったくとんだ災難だよ」

発令所の操舵席で愚痴るのは航海長の春雨。エンジンに不具合が生じた『伊126』はゴール地点を目前に錨泊修理を余儀なくされていた。

「機関の故障は致し方なしっす。『126(イニム)』は元々扱いづらい潜高大型のテストベッドですし」

砕けた言い方で同じく発令所で暇しているのは油圧員(潜航時のバラストタンク管理を担当)の白雪鶫。自由人多めな『伊126』クルーの例に漏れず、万年ボケ要員の1人。

「その分壊れやすいんだよね。何度直してもエンジンだけはやたらと壊れる。そのせいですぐに教育艦になったらしいし」

水雷盤を丹念に磨くのは水雷長の橋本水鶏。やさしめな口調で毒を吐く、ウソがつけない故の正直な性格だが故に誤解を生みやすい。

「んで、そのせいで学生にも扱いきれず、長年ドックで放置されていたのを女子クラス用に改修したと。……んな扱いづらい艦に乗せんなっつーの。あー、またソナー感度悪っ」

ヘッドフォンを片耳だけ外して雑談に交じるのが水測長の不知火雀。数少ないツッコミ役で、故に苦労は絶えない。

「……艦長と副長どこ行ったか知らない?」

雑談と愚痴で盛り上がる発令所に音もなく入ってきたのは記録員の光川ツバメ。衝撃的なほど歩く音が小さく、暗殺者とあだ名されている。

「うわぁ! ツバメちゃん真後ろ立つのやめて! 艦長は機関室で副長はたぶん艦長んとこ!」

「驚きながら答えてあげてる……やさし」

驚きで声を上げる水鶏と冷静なツッコミをする不知火。発令所でしっかりツッコミが飛ぶのは不知火がしゃべる時くらいだ。

「ありがと」

ツバメはまた音もなくハッチをくぐり、機関室へ向かっていった。

「水雷長いつもツバメちゃんにびっくりさせられてるっすね」

「しゃーなしよ。ツバメちゃんマジで音が無いんだもの」

「音はあるっしょ」

「水測長が言うと説得力あるな」

発令所はいつも賑やか。潜水艦としてどうなのかと思うほどに。

 

 

12時間後。4月7日 20時13分。アスンシオン島沖。

「結局修理に半日かかるとは……」

翼はがっくり肩を落とす。遅刻も遅刻、大遅刻。集合時間は6時きっかりだったのに半日以上遅れるなど、いったいどんな言い訳をすればいいのやら憂鬱な気分だった。

「元気だしなよかんちょ。私も一緒に怒られるからさ」

翼をハグしながら優しく言うひばり。

「ありがとう、ひばりさん……」

この後待ち構える利根川のお説教を思うと泣きそうになる翼。ひばりの言葉でなんとか気を保つが、依然泣きそうなのは変わらない。

「すっかり暗くなっちゃったね。全速であと20分ぐらいだけど」

副長と艦長のやり取りを無視して仕事に勤しむ航海管制員の響信夫。双眼鏡でアスンシオン島方面を覗くと同時に違和感に気付く。

「あれ……今のって……ねぇ、艦ちょ」

言葉はそこで途切れる。艦のすぐ横に大きな水柱がたち、艦が大きく左右に揺さぶられたからだ。

「え、何!?」

突然のことに動揺し、バランスを崩して転倒するひばり。同時に大量の海水が頭上から降ってくる。

「状況知らせ! 全艦戦闘配置!」

間髪を入れずに非常事態を察知した翼は戦闘配置をかける。動揺はしていても、新米艦長。考えるより先に動いていた。

「艦長、やっぱり見間違いじゃなかった……。『平安丸』が砲撃しています!」

「『平安丸』が……?」

飲み込めない状況に困惑する。双眼鏡を覗くとその先には備砲をこちらに向けている『平安丸』の姿が見えた。

「なぜ、どうして?」

ひばりも困惑して『平安丸』の方を見る。またしても主砲弾が飛来する。

「着弾!」

また艦が大きく揺れる。今度は艦尾方向に着弾する。

「艦尾資材庫に浸水! 応急長向かいます」

「機関科員室浸水! あぁあぁ、ウチの部屋が!」

「電機室パイプ漏水!」

「ダメージコントロール! 浸水を食い止めて、特に電機室、足を止めないで!」

機関室方面から阿鼻叫喚の報告が飛んでくる。ダメージコントロールを即座に指示するひばり。

(このままじゃ怪我人が出る……)

翼はすぐに次の指示を出す。

「急速潜航、潜れ!」

「了解、急速潜航!」

翼の指示をすぐにひばりが復唱する。と、同時に響は潜航準備をして即座にハッチを滑り落ちていく。

発令所では。

「なに、上で何が起こってるの!?」

水雷長の水鶏は水雷盤にしがみついてなんとか体勢を保っていた。

「それどこじゃないよ、急速潜航だって。ベント開け、メインタンク注水」

響に続いて発令所へ降りてきたひばりが続けて指示を出す。

「ベント開け、メインタンク注水」

油圧員の白雪が復唱し、無数の操作弁に食らいつく。

「機関室、機関停止。電池駆動切り替え」

艦の奥底から響いていたディーゼルの唸り声は止み、静音モーターの音に切り替わる。

最後に発令所に降りてきた翼がハッチを閉鎖すると同時に三度目の砲撃が来る。

「うわ!」

大きく揺れる艦内。海水をかぶってスラックスまでずぶ濡れになった翼が指示を出す。

「潜横舵下げ舵、深度30!」

航海長の春雨が復唱し、下げ舵がかかる。

耳が気圧の差でキーンとなる感覚はなかなか慣れない。

「深度10m……20m……30m。艦を水平に戻します」

春雨の報告にクルーは安堵する。

「ほっ、なんとか逃げれた……」

水雷長の水鶏は相変わらず水雷盤にしがみついている。

「それにしても、いったいなぜ『平安丸』が砲撃を……」

「遅刻したから怒られたんすよ」

「だからって無警告で砲撃なんて」

「まだ撃ってくる……半日の遅刻の罪は重いね」

「だから、そんくらいで砲撃なんて無いでしょって」

発令所で言い合うクルーたち。発令所の中央で考え込んでいた翼は、すでに一つの仮説を立てていた。信じたくはない最悪のシナリオを思いつき冷や汗が垂れる。

「……ひばりさん。横須賀の晴風の活躍って知ってますか?」

頭をひねっていたひばりは当然と前置きして答える。

「横須賀の晴風といえば、東京湾事件の立役者。乗艦していた先輩方の活躍もあって伝説的な艦と言われてるけど……なんで急に晴風の話を?」

発令所の一同も翼の真意をつかめず、彼女の話に耳を傾ける。

「晴風が遭遇したピンチの中で、これと似たような状況になったことがあるんです。ちょうど7年前の今日くらいに」

クルーもようやく翼の考えを察する。凍りつく発令所の空気。7年前、つまり2016年といえば最悪の艦隊暴走事件と言われたあの……。

 

「RATsウィルス……」

 

発令所に最大強度の動揺が走る。

 

 

 

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