ハイスクール・フリート ~深海の乙女たち~   作:みん提督

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ようやく完結します。


エピローグ

第2次RATs事件の終息宣言から2ヶ月後、7月12日。

 

混乱の真っ只中にあった東京湾は徐々に立ち直りつつあった。フロート艦群の煌々とした輝きが夜空を眠らせまいとして一生懸命に光っている。

 

そんなフロート艦の1隻、ブルーマーメイド中央統制艦、情報保全室長執務室。そこには2人のブルーマーメイド隊員がいた。

1人は情報保全室を預かる室長、独特なクセっ毛が特徴で、波打つようなロングの髪を後ろで一つ結びにしている高官、宗谷真霜一等保安監督監(中将)。そしてもう1人は彼女の召喚命令により統制艦に来艦していた彼女の実妹、宗谷ましろ三等保安監督官(少佐)だった。

学生時代にポニーテールにするほど長い髪がトレードマークの彼女だったが、今はショートヘアに揃えている。ストレートヘアは姉ゆずりのクセっ毛になっている。

そんなましろは艦長制帽(・・・・)をわきに抱え、目の前に座っている実姉兼上官に質問をする。

「宗谷監督、今度は何の用件でしょうか」

あくまで上官として、儀礼的に質問するましろ。その質問を聞き、真霜はフッと笑みをこぼす。

「そんな堅苦しくしなくていいわ。楽にしててちょうだい」

執務室に備え付けられている応接用のソファーに腰かけるように促す真霜。ようやく姉の意図を確信できたましろも1拍だけため息をつき、ソファーに座る。

「やっぱり、そういうことか……」

また姉の面倒ごとを押し付けられる、とましろは察した。

「そう。あなたたちの大好きなピンチごとよ」

笑顔でそう言う真霜にましろは今度は大きなため息をつく。

「はぁ、ブルマーになってからもこれだから……ツイてない……」

真霜の副官が淹れたコーヒーをすすりながらも今度の厄介ごとはなにかと、人心地つかなかった。

「簡単な話よ、ましろ。……あなたに私の任務を引き継いでほしいの」

「……任務?」

「えぇ」

真霜もコーヒーを一口すする。

空気が張りつめる感じがした。『晴風』に乗っていた時、ブルーマーメイドの任務中にも感じていた修羅場の空気感だ。

身構えると同時に、横に控えていた真霜の副官がアタッシュケースを開ける。

「うわ……びっくりした……」

集中しすぎていて横に副官がいたことも忘れていたましろ。副官が開けたアタッシュケースの中身を手渡される。

それは使い古されたノートと、古いタイプのUSBメモリーだった。

「姉さん、これは?」

真霜は一瞥して頷く。見ろ、ということだと受け取ったましろはページを1枚めくる。また1ページめくる。だんだんとめくるペースは早くなり、隅々まで、信じられない内容が記載されていた。

「……当時要塞艦隊所属の艦長だった青木先輩が残した、非公式報告書よ。これがすべての始まりね」

とんでもないものを渡されてしまったと冷や汗が出る。詳細なデータが入っているというUSBメモリーの扱いにも難儀する。

真霜は困惑するましろに続けて説明していく。

「ナルガ海戦の際、ブルーマーメイドとホワイトドルフィンの作戦は完全に海賊側に漏れていた。海戦自体には勝利したものの、ブルーマーメイドに内通者がいることはほぼ確定に……この年は要塞事件やあなたも当事者になった、第1次RATs事件など……大規模な事件が多発。ブルーマーメイドは内部工作の可能性が高いと判断して、特殊潜入課が極秘裏に調査を開始したわ」

ここでましろは一つのウワサを思い出す。ブルーマーメイド特殊部隊を管轄し、諜報にも携わる特殊潜入課と言えば、現代でも撫子作戦のノウハウを受け継ぎ、国家規模の陰謀にも関わるという思い切りのいい陰謀論的なウワサがあった。

どうやらウワサではなかったらしい。ましろには姉が帯びているという任務も見えてきた。

「なるほど……つまり、その内部工作調査を行ってるのが……姉さんたち、というわけか……」

「そういうこと」

真霜はようやく本題に入る。

「ということで、私の任務は所謂、特殊潜入課併任隊員。普段の業務をこなしつつ、ブルーマーメイド全軍を監視し怪しい人物をピックアップすること。硫黄島の青木先ぱ……青木司令官と神余副官も同じ任務を帯びているわ。他のメンバーについては私も詳しくは知らないけど」

説明を聞きながらふと、横に控えている真霜の副官に目線を動かす。2人を除けば唯一部屋にいる人物になるが。と、気になっていることを察して真霜が付け加える。

「あぁ、そっちの子も併任だから安心して。この部屋には関係者しかいないわ」

「そういうことなら……」

 

 

そうして、ましろは2人の併任隊員からの引き継ぎ資料を受け取り、口頭での情報交換、正式な辞令日(当然に極秘)を伝えられる。

一通りの引き継ぎを終えたましろだが、ふと気になる疑問がわいてくる。

「あの、姉さん。3つほど質問したいんだけど……」

真霜は一段落ついてコーヒーのお代わりを飲んでいた。

「なに、ましろ?」

「まず1つ目だけど、私まだイエスと言ってない気が……」

真霜はとぼけて答える。

「そうだっけ?」

「勘弁してよ……別に受けること自体はやぶさかじゃないけど」

姉の無茶振りも上官として接する内に慣れてしまっている自分に驚き、またなんだかんだで了解する自分のお人好し加減にもため息が出る。

「2つ目は?」

話をはぐらかされな気もするが続ける。

「2つ目はなぜ私なのか……。母さんは無理としても、真冬姉さんに任せることも出来たんじゃ?」

たしかに。と頷きながら真霜は答える。

「真冬でも問題はないでしょうね。あの子は何でも出来るから。でも、この任務に限ってはあなたの方が適任だと私が直感した……という感じかな。こんな任務、信頼できる身内じゃないと任せられないしね」

納得の行く答えが返ってきて頷く。

「たしかに。真冬姉さんがスパイやってるなんて、イメージつかないな……」

「そういう柄じゃないものね」

2人はもとい、真冬のこともよく知る副官も少し笑い出す。スパイというこそこそ動くような仕事は絶対に似合わないと、なぜか確信できるのが真冬というブルーマーメイドだ。

「じゃあ、最後に質問だけど……。そもそもなぜ任務の引き継ぎを? 終結宣言から2ヶ月経ったとはいえ、まだ全部が片付いたようには思えないけど」

これについては真霜は不可解というか納得のできない理由があるとは何となく受け止めていたが、任務を引き継ぐ以上、正式な理由を聞いておきたいという思いがあった。

真霜も副官も、納得できないことであると受け止めていたらしいことがすぐにわかる理由だった。

「全く不可解なんだけど……私、1ヶ月後にハワイへ異動になるの」

衝撃的な人事にましろは思わず立ち上がる。

「は、ハワイ!?」

横に控える副官が説明する。

「年度途中で、しかも国内大混乱があった後。全く異例です。情報保全室長の後任は交代でハワイから赴任します」

「……ハワイ赴任後の私の肩書きはブルーマーメイド総司令部幕僚監部第3企画部主任調整官……各国部隊統合運用や訓練のスケジュール管理が主な仕事よ」

ハワイ本部への異動など、通常なら大栄転扱いだろう。だが、時期もポストも作為的であるように受け取るのは何もこの場の3人だけではないだろう。

「まるで左遷……」

ましろの戦慄く声に真霜も肩をすくめる。

「まったくね。このタイミングでこれだと、疑わざるを得ないわ。まぁ、ハワイ真珠湾なら世界中のブルーマーメイドの情報が集まる。併任解除も発令されないし、任務続行と捉えて、良い機会にしておくわ」

「……真霜姉さん…………」

思えば姉とはずっと一緒だった。子どもの頃も、学生時代も。ブルーマーメイドになってからも上官として姉として頼りっぱなしだった。切ない顔をするましろに気付き、真霜は彼女の頭を撫でる。

「……何してるの……」

真霜は笑顔だ。小さい頃から自分に向けてくれていたあの優しい笑顔だ。

「ん~? なんか寂しそうに見えたから、たくさん構ってあげようと思って」

ましろはもう22歳にもなって姉に甘やかされていることが堪らなく恥ずかしいはずなのに、心地よいと感じていた。

「私、もう22歳なんだけど……」

顔を真っ赤にするましろに構わず、撫でるのを止めない真霜。

「私にとってはね、あなたはずっと妹よ。こうして姉らしくもさせてちょうだい」

末っ子のましろには姉の気持ちはよくわからない。だが、妹であることも悪くはない。

「ましろ、頼んだわよ」

最後に真霜はゆっくりとましろを抱き締めた。頭を撫でてもらう手や、胸の温もりが心地よい。

こういう時だけ頼れる姉貴面をするのが悔しい。なによりこれで言いくるめられる自分も悔しい。

だが、甘えるとはこういうことだと、ましろは彼女(・・)との生活で実感していた。ましろの左手薬指で指輪がキラリと輝く。

「うん……任せて、姉さん」

色々言いたかったが、これしか出てこなかった。

 

 

 

この2ヶ月後、彼女らは全日本を巻き込んだ第2次RATs事件が、単なる序章であったことを知ることになる。

しかし、まだ何も知らない彼女たちは、平和に学生生活を送っていた。

 

 

 

 




原作キャラ動かすのムズいったらありゃしない。

とりあえずこれで完結。
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