気が付いたら私はこの世界に生れ落ちていた。
そうまるでふと夢から醒めたように私はだだっ広い草原の上に立っていたのだ。
どういった経緯でここに立っていたかは分からない。だが、何故だか自分が何者か自然と理解できた。
今の自分は人間ではなく魔族であると理解する。人を喰う化け物にして、魔法を扱うのに長けた種族、それが魔族だ。
そんな物語でいうところの悪役のポジションが今の私のこの世界での立ち位置だった。
私には前世といえる記憶が存在している。前の世界では私は平凡な人間で、アニメや漫画が好きなただの一般人だった。
その中でも特に好きなものは異世界系のチートと呼ばれるファンタジーな物語で、なろう系には散々お世話になった。
「さて、これからどうしましょうか?」
いきなりこの世界に魔族として生れ落ちてどうするか?数分程だけ悩む。
そして、私は簡単に答えを出した。
「そうだ、折角なら前世で好きだったアニメキャラのなりきりをしましょうか」
前世では平凡な一般人である私は人生に退屈していた。
だから、何か特別な事をしたかった。
こうして、私の新しい人生は始まった。
この世界がどんな世界なのかは分からないけど、折角だから好きなアニメや漫画のキャラになれるかもしれないとテンション上げてワクワクしながらまずは自分の容姿の確認をする事にした。
「
魔族に転生したお陰か、もしくはよくある転生チートとでもいえるご都合主義によるものか、私はなんとなく出来ると確信してこの世界における魔法を発動させてみる。
すると思った通り、私の目の前に空中に浮かぶ水球のようなものが現れた。それは鏡のように私の顔を映し出しており、そこに映っていた私の顔は角の生えた黒髪ロングの偉丈夫な男といった風貌だった。
前世基準だが、世間一般的に見ればコスプレしたイケメンに見える。
とりあえずモブっぽい顔立ちじゃなくて良かった、いくら主人公がするようなカッコつけた言動をしてもモブがすればただの中二病だ。
つまり、なりきりというのはイケメンや美女に限るということだ。例外があるなら極端なまでにブサイクがすればそれはギャグ要員として許容されるというぐらいだろう。
さて、なりきりが許されるイケメンだと確認が取れたら、次の問題は誰を真似て行動すべきか?
なりたいキャラはいくらでもいる。憧れて、尊敬して、崇拝までしたキャラは両手では数えきれないほどだ。
だが、折角なりきりが出来るのに、安易に真似て行動するのは面白くない。
どうせなら他の誰よりも飛び抜けたキャラを演じてみたいものだ。
「……だったら、あの御方を真似てみようか」
ふと思い至ったのはなろう系の中でも最も大好きだった作品【オーバーロード】の主人公であるアインズ・ウール・ゴウン様になりきってみること。
ちょうど今の自分は骸骨ではなくとも、人間ではなく魔族という異形種だ。設定としては悪くない選択ではないだろうか。
私がアインズ様に憧れたのはその強さだけでなく、思慮深く狡猾ともいえる先読みの考え方、装備しているロマン溢れる武装の数々、支配者としての一面と一般人としての臆病な一面のギャップ。
全てが私にとって心に刺さり、あの御方のような圧倒的な強さと思慮深い考えを併せ持ったキャラになりたいと思ったものだ。
それを今から演じてこの世界にその名を轟かせる。そう妄想しただけで胸の内からワクワクが抑えきれなくなってくる。
「ああ、楽しみだ。一体どれ程の人間が私を見て恐れ慄き、恐怖と絶望を味わうのだろうか?」
だが、私程度の者がアインズ様と全く同じ事など出来はしないとも思っている。
だから、私が真に目指すのはアインズ様のあの世界での立ち位置、つまるところ圧倒的な強者にして支配者らしい立ち振る舞いをして生きていくということだ。
つまり、あくまでアインズ様の偽物として行動するというスタンスだ。
別に完璧を演じなくていい、好きなように己の中にあるアインズ・ウール・ゴウンになりきればいいのだから。
そう、これはただのお遊びだ。故に気軽に名乗りを上げてみようではないか。
「そうと決まれば、出発の名乗りをあげようか!そう、私こそが死の支配者アインズ・ウール・ゴウンである!!」
ここに本来ならば存在し得なかった大魔族、アインズ・ウール・ゴウンが爆誕した。
プロローグゆえに短いですが、次回はそれなりに長くします。