私がアインズ様になると決めて数年の時が経った。
まずアインズ様といえば劇中で使用する多彩な魔法の数々が魅力の1つと考えた私は、このチートと呼べる魔法の才能を伸ばしていくことを決め、その結果、様々な魔法を作り出すことが出来た。
その多くがなろう系の作品の魔法やスキルが元ネタになっているのだが、創造上の架空のモノを作り出すのは至難の業だった。
だが、その苦労に見合うだけの成果は挙げている。
実際に、ここ数年で作り上げた魔法を理科の実験感覚でぶっ放した結果、周囲の地形を変えて地図を書き換えなければならない被害をいくつも作り上げている。
それに、攻撃用の魔法だけではなく、防御系を始めとしたバフ・デバフ系、転移や幻影などの魔法も習得し、手数の多さならばこの世界でもトップクラスであると自負している。
だが、トップクラスなのは手数の多さのみ、手持ちの魔法の数は多くあっても、それを充分な威力と回数で放つ為の魔力が足りていないし、戦闘経験不足が目立って本来の実力を発揮出来ていない等、実力でいえば未だ自分がアインズ・ウール・ゴウンを名乗るのは不遜もいいところだ。
今の私はまだまだ修行不足、とはいえ修行をつけてくれる師匠もいなければ切磋琢磨出来るライバルともいえる者もいない。
どうすれば手っ取り早く効率的に強くなれるのか。魔法で作り出したログハウスで悩んでいると、その悩みを解決したのはまたしてもなろう系の知識だった。
「そもそも、魔族と人間の違いは角などの外見的特徴だけでなく、その思考回路やある特定の感情の有無に、死んだ際には肉体が崩壊し、魔力の粒子になるといった現象などが挙げられる。そして、私が強くなれる手段として、その肉体が崩壊する現象を利用すればいいと考え着いた」
そうして作り上げられたのが、転スラのリムルのスキルを真似て作り出した『
これは、死んで魔力の粒子、転スラの世界では魔素と呼ばれているからこれからは魔素と定義して、死んで消えゆく魔族限定であるが、その魔素を掌から掃除機のように吸収する事で自身の魔力を底上げするという魔法だ。
同族食いと言われるかもしれないが、これが現状最も効率良く魔力を高める手段なのだから遠慮はしない。
今現在で喰らった魔族の数は両の手では足りないぐらいだったかな?
いずれも、魔力量から見て私よりも格下か精々が同格程度の相手だ。
大抵は不意討ちによる一撃で勝負がついたが、戦闘慣れした個体は回避は無理でも防御に間に合わせて生き残る者もいた。
だが、私がこうして自分語りをしている時点で察してはいるだろうが、その全てに私は勝利した。
その度に消えかけてゆく奴らの死に際の台詞はいつだってこうだった。
「何故だ?同じ同族である我らをどうして殺そうとする?」
「君のその疑問にわざわざ答える必要はあるのかな?ただまあ、私の糧になってくれる君の最後の時だ。こういう時はなんと言ったかな?ああ、そうだ。冥土の土産に教えてやろうだったかな」
必要以上の煽りムーブ。原作でクレマンティーヌやグに対してアインズ様がやってみたことを真似したが、これは存外に気持ちがいいな。
「君に私の考えを理解してもらおうという気はないのだが、敢えて分かりやすく伝えるとするのならば生存戦略というものだ」
「生存戦略……?」
「そうだ、先程も言った通り、君は私の糧となってもらうのだよ。そうすることによって私は更なる力を手にする。つまるところ、そうやって私が強くなればなるほど私の命を脅かす外敵が減るという訳だ」
「……それが貴様の言う生存戦略ということか」
「その通りだ!そして最終的にはそう……私は幸せになりたいのだ。私の命を脅かす者が存在しない、私にとって平和な世界の実現。それこそが私の目指す最終目標なのだよ!!」
そう語り終える頃には魔族は魔素へと変化して
そんな事を繰り返していくうちに、私は齢10歳にも満たない年齢で大魔族と呼ばれる程に強大な魔力を有していた。
もはや魔法の質や量だけで見ればアインズ・ウール・ゴウンを名乗っても恥ずかしくないレベルにまで成長した私は、次にアインズ様が装備している装備品をレプリカだが作成する事を決意する。
今着ている衣服は人間の魔法使いから奪い取ったもので、ゲームなんかじゃ初心者装備と揶揄されそうな出来の悪い品だ。
「ここがこの地方で一番腕の立つ仕立て屋がいる街か?」
「は、はい!間違いございません」
頭の角を隠してボロを被り食料の詰まった袋を持って山道を歩けば野盗の類が現れるのはここ数年で知った事だ。
こういった魔族では知りえぬ情報を得る際には有効な手段になりえる。
そして、私を取り囲んで身ぐるみを剝ごうとする身の程知らずな馬鹿どもを1人だけ残して惨たらしく殺せば残った1人は私の言う事に従順になるといった寸法だ。
「そ、それで、俺……いや、私の事は見逃してくれるんだよな!?」
「ん?ああ、そういう約束で案内させたのだったか。もう行っていいぞ」
「ひぃ、失礼しま~す!!」
尻に火がついたように逃げ出す野盗だが、その先で不慮の事故が起こらなければよいのだがな。
「ひぎゃあああああぁぁぁぁ!!!!」
「おや?どこぞの猪でも私が仕掛けた罠にでもハマったのかな?」
そうこれは不慮の事故、たまたまここに来る前に仕掛けた魔法の罠に運の悪い悪党が踏み抜いてしまっただけのこと。
私は道案内を終えてからは彼には何もしてはいない。だから約束は破っていないさ、このアインズ・ウール・ゴウンの名に誓ってな。
さて、野盗から奪った金もあの漆黒のローブを作成するのに良さそうな魔獣の毛皮も魔法で作られた黒色の糸も手持ちにはある。
あとはこれらを理想の形に出来る職人の腕だけが必要だ。
「それにはまず人間に正体がバレないように
これでどこにでもいる……は無理のある容姿の良さは自覚しているため、あまり人目に触れぬようにローブを被って移動する。
目的の仕立て屋の看板を見つけて中に入る。中は外の外観とは違い、様々な生地や糸が棚に並べられていた。
「すまない、誰かいないか?」
「はいはい、ただいま!!」
奥から姿を見せたのは初老の女性だった。だが年齢の割に肌にはハリがあり髪にも白髪がほとんど見えないところから見た目以上に年齢は若いのかもしれないな。
「本日はどのようなご用件でしょうか?」
「ここで一番腕の良い仕立て屋だと聞いて訪ねてきたのだが」
「ええ、ええ、勿論ですとも。どのような物をお求めでしょうか?」
「ここに私が求める服のデザインを描いたものがある。それとこの服の作成に使用して欲しい素材もあるので、これらを使ってそれと同じ物が作れるか?」
懐から取り出した、予めアインズ様の装備しているローブをデザインした紙と素材を女性に手渡す。
女性は紙に目を通して素材をチェックすると、その表情を明るくさせる。
「素晴らしいですね!!これ程まで凝ったデザインと高品質な素材はそうそうお目に掛かれる物じゃありません。これなら私が今まで作ってきた服の中で最高の一着となるでしょう!」
「そうか、そこまで言われると照れるが喜ばしい」
私が考えてデザインした訳ではないので、心境としては複雑なところではあるが、好きなキャラの装備を褒められるのは素直に嬉しいものだ。
「他にも仕事があるから、今すぐにって訳にはいかないけれど、これだけの品を作るってなら気合い入れて1ヶ月くれたなら満足のいく出来に仕上げてみせるわ!!」
「そうか、時間はどれほど掛かっても然程気にしない。出来上がった品の完成度さえ良ければ文句はつけない」
ガチャンとテーブルの上に金貨の詰まった袋を置いて、これは前金だと言い残して店を後にした。
後ろから物凄い声で「精一杯作らせてもらいます!!」との声が飛んでくる。
あれだけの熱量なら、下手なコスプレレベルの出来栄えの物は出さないだろう。
さて、出来上がるまで1ヶ月か……、長いようで短い微妙な時間だな。
この間にでも新しい魔法の開発か、魔族を探して自身の魔力量を上げる事にでも専念するか。
「ん?これは……」
私は日頃から世界中の様々な情報を入手する為に、
そんな私が支配している、ここより離れた遠くの地方にいる小鳥の視界の先に、数十もの数の魔族が隊列を組んで移動しているのが見えた。
小鳥の視線から見えるだけの情報からは、大半は一般的な強さの魔族だが、それを指揮するような動きを見せる魔族は大魔族クラスの強さを持っているように感じられる。
「ふむ、群れる事の少ない魔族が集団で行動か……。普通ならあり得ないことだが、考えられるとするのなら、恐らくは個人では手に負えない国家への襲撃、あるいは腕の立つ戦闘集団か化け物のような魔物の討伐か……」
なんにせよ、ロクなことではないのは確かだろう。
だが、これ程の集団で挑まねばならない敵か……、情報を集めておくのに損はないだろう。
「少々の危険があるやもしれんが、自分の眼で確かめておく方が将来のリスクは減るだろう」
メリットとデメリットを天秤に乗せて考えた結果、私は小鳥がいる地方へと
念の為に、連中にバレないように隠蔽系統の魔法を複数発動させる。
そうして、充分に尾行がバレないであろう距離まで接近出来たと判断したところで私はその場にいたトカゲを
「それにしても、こんな大人数で攻め滅ぼす必要があるの?」
「そうか、お前はまだこの地方に来て間もないから知らないのも当然か……、これから相手するエルフというのは我ら魔族と同じく魔法を得意とし、我々を脅かす存在だ。それを摘み取るとなれば、この人数でもまだ足りるかどうか?」
「そんなに厄介な種族なの?私達、魔族と違って魔法が使えて多少は強いけれど、そこまで恐れるほどに厄介な存在だとは思えないわ?」
ちょうど都合よく、耳に入ってきたのはこれから攻め滅ぼそうと対象だというエルフの話だ。
どうやら、相手は魔法が使えるエルフのようで、それも厄介な存在のようだ。
「確かに、並大抵のエルフならば我らが敗北することはない。だが、これから挑むエルフは文字通りケタが違う」
ここで違う魔族が2人の会話に入ってくる。
声の感じからするに、この魔族はそのエルフに直接会ったかのような口ぶりだ。
「ゲルククの言う通りだ、そのエルフは前回の進攻でも不壊将軍ダルグマ様を倒し、その勢いのまま俺とゲルクク以外の魔族を全員殺し尽くした化け物の中の化け物だ」
「へぇ~、だったらこの人数も納得だわ~」
いまいち緊張感に欠ける声で納得だと言う女魔族に2人の魔族は溜め息を吐いて会話が終わる。
それから社会性を持たない生物である魔族らしく、特に会話らしい会話もなく、日が沈むまで行進は続いた。
一体いつになったら目的地に着くのかと退屈に感じ始めた頃、漸く魔族たちの行進が止まった。
「到着だ」
一番先頭を歩いていた魔族が歩みを止めると、それに続いて他の魔族もその場に止まる。
そして、動きを止めたことによって私の眼に飛び込んできたのは闇夜に隠れるように佇む小さな村の姿だった。
村の規模はそこまでではないようで、百人もいるかどうかな程度の村。
その村に魔族たちは、村の門が見える場所からは死角となるように巧妙に隠れながらに行動を開始していく。
「気を付けろ、いつ魔法が飛んできても可笑しくないぞ」
先頭に立つ魔族がそう注意をけしかけると同時に、その魔族の頭上から炎で出来た光線が降り注いだ。
それを皮切りに、それは雨のように落ちてきて、群れていた魔族へと襲い掛かる。
数十もの数の光線は現れた時と同様に、一瞬のうちに消えてなくなった。
後に残ったのは、光線によってデコボコになった焼き焦げた地面と今の攻撃を防ぐことが出来た大魔族のみだった。
「ふむ、やはり数合わせ程度の者では戦力にはなりえんか……」
「だが、奴の魔力も多少は削ったのを見れば、連れてきておいて損はなかっただろう」
「しかり、だが気を抜くな。奴を仕留めるまでは例え魔力が一欠けらほどになろうとも油断は死を招くぞ」
生き残った3人の魔族が頭上を見上げると、そこには月をバックに木の上に立つ
そこから先は激戦に次ぐ激戦だった。この世界でもトップクラスの実力者であることは間違いない大魔族達、それが3人掛かりで襲っているという悪夢のような現実だというのに、エルフの女性は冷や汗をかくことなく大魔族からの攻撃を巧みに避けながら、的確に魔法を撃ち込んでいく。
まるで幻想のような魔法の数々に、それに対する2つの魔法と呪いと呼ばれる魔法が激突する。
呪いとは女神の魔法のようなもので、人類では解読出来ない魔族のみが扱える状態異常の魔法のようなものだ。
ここでまさか、この様なものまで見れるとは思わなかった。
あの3人の大魔族は負ける。状況から見るに大魔族の優位な点は数的有利だけだ。
そして、それ以外ならば、あのエルフの方が総合的な能力は圧倒的に上だろう。
まだ私の存在は誰も気が付いてはいない。今ここで逃げれば安全に脱出出来る。
「しかしこれは、火中の栗を拾うチャンスでもあるな」
あの大魔族3人を吸収出来れば私は確実に1つ上のステージに登ることが出来る。
ただそれはあのエルフに確実にこちらの存在と、魔族を吸収して強くなれるという厄介さを知られることになる。
そうなれば、あのエルフは他の何を置いてでもこちらを排除しにかかるだろう。
だが、それも時間の問題に過ぎない。この世界で強くなっていくのならばそうした強者と敵対する道は必ず歩む。
ならば、ここは虎穴に入らずんば虎児を得ず、あのエルフから大魔族を掠め盗って吸収する。
「強くなる為の覚悟を決める……っか、怖いな。生死を賭けた戦場に足を踏み入れるのは初めてだが、これほど恐ろしいものだったとは……」
覚悟を決め、私はエルフや大魔族の3人に気が付かれないように息を殺して隠れながら近づいて行く。
そして、確実に大魔族を仕留める為に放たれたエルフの放った魔法が3人のうちの1人の腹を貫いて殺した。
「まずは1人が脱落か、残りは2人。早く吸収しなければ魔素が完全に霧散して吸収は不可能になってしまう。だが、闇雲に吸収すればあのエルフに発見され、こちらにタゲが向いた瞬間に、残り2人の魔族が離脱して完全強化する前に1対1の戦闘になって詰みになってしまうか……」
冷静に戦況を分析しながら、戦場に突撃するタイミングを計る。
戦況は一秒毎に変化していくが、決して魔族側が優位になることはない。変化していくというのは地形と戦場が刻一刻と変わっているという意味だ。
「よし、あのエルフと残り2人の大魔族もここから充分に離れたか。ならば、
後数秒遅ければ吸収できないぐらいに霧散しかかっていた大魔族の魔素を吸収出来たことで大きく魔力が上がった。
「っ想像以上だな、大魔族の魔力というのは……」
これまで安全マージンを取って、自分と同等かそれ以下程度の魔族しか吸収していなかったが、こうして大魔族を喰らっただけで一気に今までの数倍の速さで魔力が上がった。
これならば、残りの大魔族を吸収さえ出来ればあのエルフとも対等とはいかないまでも、充分に逃げられる程度の力は手に入る筈だ。
私はそう確信して引き続き戦況を様子見するが、何か違和感を感じるような……!?
「やられた!?」
今見える戦場からはほんの僅か程度ではあるが幻影魔法特有の揺らぎが見える。
魔力が上がって舞い上がった隙をつけこまれたか、今見えているあの戦場は魔法で作り上げられた幻影のフェイク!?
いつこちらに気が付かれた!?それとも、伏兵を警戒してのカモフラージュか!?
「とにかく、今はここから離脱を……、いや、逆だな」
もしこちらの存在が既にあちらに把握されているというのならば、逃げるという手は悪手になりえる。
ならば、当初の計画通りに残りの大魔族を吸収して力を得る。これが最善にして最短の逃げ道だ。
「ここからは、慎重かつ大胆に行動せねばなるまい」
これまではどこか俯瞰して見ていた戦況を、今度は自分がその渦中に飛び込んでいくかの如く一直線に突撃する。
「発見され次第、即座に戦闘開始だと念頭に置いておくとして」
──―〈
あちらは幻影によって戦況がどのように動いているのか把握出来てはいない。目を離して幻影だと気が付くまで1分も掛かっていない。
だが、あのレベルの戦闘ならば数秒程の時間もあれば誰が死んでいても不思議ではない。
もしかすれば、本当にどちらか片方、あるいはどちらともが死んでいる可能性もあり、接近した途端にこちらに狙いを定めた魔法が飛んでくるかもしれない。
「だが、ビビッて足を止めれば状況は更に悪化するだけか……」
意を決して幻影が展開されているであろう境界に足を踏み入れる。
魔法が飛んでくるかと警戒したが、どうやら最悪の状況ではないようだが、本当にギリギリのタイミングだったようだ。
戦場を見渡せば、多少の汚れのみが目立つエルフのみが立っており、2人の大魔族は地面に倒れて魔素になって消えかけていた。
「やあ、今宵はいい月が浮かんでいるな。殺し合うには無粋な夜じゃないか?」
「なんだぁ?おまえぇ……」
アインズ様を俺がちゃんと再現出来てるか心配(´・ω・`)