来年はもっと更新出来るように励むのと、ほぼ凍結状態の小説を書きあげたい気持ちでいっぱいです。
彼女からの全力発言後は文字通り死闘となった。
完全防御に回りきっているというのに、一手のミスで挽回が不可能になるくらいの攻撃がバンバンと撃ち込まれてくる。
まるで、前世でプレイしたことのある鬼畜ゲーの最終ステージをやっている気分だった。
逃げるにしても防御するにしても魔力を大幅に消費させられる。
まだ余力は残っているとはいえ、このままの状況が続けばジリ貧なのは間違いない。
「この切り札はまだ取っておきたかったのだが、こうなってしまえば使わねばゲームオーバーか……」
とっておきゆえに、これを使用する際は対抗策を取られない為にも、相手を確実に殺せる状況でしか使いたくは無かったのだが、リアルでラストエリクサー病のせいで死にましたは洒落にならない。
俺は覚悟を決めて、切り札を切ろうとしたのだが……。
その刹那、突如として後方から雷鳴が轟くと同時に莫大な魔力の放出を感じ取り、咄嗟に俺は回避行動をとった。
「ごっ!がっ!」
結果から言うと攻撃自体は回避出来ていたのだが、その後に起きた衝撃によって俺は大きく後ろに吹き飛ばされた。
「おや、避けられてしまったか」
「まさか、分身まで使えるとはな」
そう、背後から攻撃してきたのはゼーリエと酷似している白黒のエルフだった。
いや、それだけじゃない!今の雷鳴と共に襲い掛かってきた雷の魔法アレは……!?
「私が先程使用した
驚愕の表情で睨みつける俺に、ゼーリエは満足そう薄っすらニマリと笑う。
余裕あるなぁ、おい!こっちは一手も二手も先を読まなきゃならなくて、脳味噌フル回転しているっていうのに。
「2体1は嫌なんじゃないのか!?」
「嫌いなのは足手纏いなだけで、私の分身なら充分に戦力になるからね」
「なるほど……、納得だっ!!」
分身も本体と変わらない威力と速度で魔法を使えるようで、魔法の撃ち合いになったらこっちが不利になる。
これでは切り札を切るタイミングが無い!?完全に手詰まり状態へと追い込まれた。
この状況で何か有効な魔法といえば……!!
「
パチン!と指を鳴らすとアインズとゼーリエの分身の立ち位置が入れ替わる。
これにより、アインズに迫っていた魔法は全てゼーリエの分身が受け止めることになった。
「こちらのタイミング次第で同士討ちを誘う。自ら作った魔法といえど、中々に悪辣な効果だな」
「まったくだ。それもわざわざ分身を狙って使ったのも本体である私には通用しないと見越してのことかな?」
「さあ、どうだかね?もしかしたら、今回の選択も君を騙すためのブラフであるかもしれないぞ」
腹の探り合いではゼーリエにも負けてはいないつもりだ。
勿論、この魔法が警戒している本体に通じる可能性は低い。わざわざ危険を冒して交代するメリットは少ないが、頭の中に僅かでも交代されるかもという不信感を残すのは、勝利へと繋がる重要な伏線だ。
頭の中で幾つものルートを考えながら、俺は次の一手を模索し続ける。
あの分身も消えこそはしなかったが、かなり痛々しい姿になっている。
あと数発魔法を叩き込めば消滅するだろう。ここいらがとっておきの切り札の使い所かもしれない。
「防げるようならやってみろ!
実際に、ゼーリエ目掛けて発動した
「っぐ!大魔族3人分を吸収した魔力が一気にすっからかんだな。実験でも一度は使用したが、はは……、あの頃より数段魔法の威力が上がっているな」
アインズの肌はその熱量で大火傷を負っていながらも、目の前の自らが作り上げた光景に歓喜の声を上げていた。
今のアインズの機嫌は過去最高頂のものだった。まるでゲーマーが高難易度ゲームで最高記録をはじき出したかのような、そんな満足感と高揚感をアインズは感じていた。
これで彼女を倒していたなら本当に笑いものだったが、そんな簡単に倒されてくれるほどゼーリエは甘くない。
「あはっ、本当に……、お前は本当に私の心を躍らせてくれる……」
焼け焦げた髪、爛れた皮膚、右腕を犠牲にしたのか吹き飛んで片腕となっている。
まるで、地獄から舞い戻ってきた亡者のようなその有様だが、ゼーリエの浮かべる笑顔にはそんな姿すらも美しく見えた。
彼女の胸中を占めるアインズへの賞賛は止まることを知らず、むしろますます熱量が増していく程だった。
「は……、はは……、ここは称賛と敬意を以てこの言葉を送らせてもらおう。この、化け物め!」
「ふふふ、その言葉を褒め言葉にしてきた奴は、きっと後にも先にもお前だけだろうな」
この状況のみを見れば優勢なのはアインズの方だろう。しかし、実際に魔法使いの戦闘、それも回復魔法を所持している者との戦いであればHPの差は然程問題ではない。
なれば、両者の勝敗を決着づけるのは、残っている魔力量といえるだろう。
いま現在の両者の魔力量はアインズとゼーリエそれぞれ3:7の割合だろう。
流石はゼーリエと言うべきか、あれだけの魔法を使用した後とはいえ、アインズの倍以上の魔力を保有しているのは驚嘆に値する。
「こちらもとっておきの切り札を使って仕留めきれず、更には魔力量では倍近くの差をつけられてしまった。そろそろ勝ち目が薄れてきたのが実感してきたな」
「なんだ、まさかもう諦めるつもりか?」
「そうだな。
実のところ、本音を言えば私は油断と慢心をしていたのであろう。
3体もの大魔族の吸収、これまでに作り上げてきた魔法の数々、戦況もこちらが多く攻撃をヒットさせてきた。
しかし、実際に現状を見れば実のところ追い込まれているのはこちらの方だ。
最初は完全に逃げる気でいた。原作でもアインズ様は確実な勝利を得る為には偽の情報を与える為に何度も負ける事を許容してきた。
それだけの勝利への執念と敗北を受け入れる度量、そのお姿にも憧れたというにこの体たらく。
いや、アインズ・ウール・ゴウンを名乗ったことで、知らず知らずのうちに敗北は恥であると逃走という名の敗北を受け入れるという選択肢を排除していたか。
それはなんと愚かな事だろうか!目先の欲に眩んで、偽りの情報を渡すことなく、切り札をみすみす見せてしまった。
いかんいかん、後悔も反省も後回しだ。
今は逃走ルートの確保を急がねばなるまい。
私は遠く離れた地方にいる小動物に
これで
「後は逃げるタイミングだが……」
「逃がすと思うか。ここまで女の体を傷つけといて」
「はっはっは、確かに女性に対してこの非道はあんまりだろうが、こちらは命大事をモットーに行動しているのでね」
アインズの左手には魔力が凝縮されており、それが一気に解放される。
まるで爆発するかのように空間を蹂躙したエネルギーはアインズ自身を吹き飛ばした。
吹き飛ばされるアインズは
「だから、逃がすと思ってる?」
杖の一振りで一瞬のうちに無数の魔法がアインズに襲い掛かってくる。それに対し、アインズは懐からマジックアイテムを取り出すと、発動させる。
これは人生で3つしか作成出来なかった非常に貴重なアイテムであり、
これを自らの肉体でやっていれば破裂するのは自分の体。便利な魔法ではあるが、吸収した攻撃魔法を完全に無効化出来ないがゆえの貴重なマジックアイテムに封じたのだ。
しかも、このアイテムは使い捨てであり、一度使えば壊れてしまう。しかし、今回の場合はそれで十分だった。
「時間は充分に稼いだ。また逢う日までさらばとしよう
バシュン!!という効果音と共に遥か彼方の空へと消えていくアインズの背を眺めながら、魔法を撃つ構えを解く。
もう既に魔法の有効射程外だ。今から撃っても当たらないだろうし、仮に命中出来るとしても、また先程のような
「アインズ・ウール・ゴウンか……、久しぶりの獲物、いや、強敵だな」
ゼーリエ……エルフらしからぬ好戦的で苛烈な性格を持ち、洗練された魔法使いを未だに追い求めてる求道者。
そんな彼女が久方ぶりに見つけた獲物をそう簡単に諦めるわけが無い。
彼女の寿命は軽く千年を超える。探し出して殺すだけの時間は充分過ぎる程にあるのだ。
故にゼーリエは笑う。心の底から楽しそうに獰猛な笑みを浮かべるのだ。
自らの野心を満たすため、強敵と戦う喜びを思い出しながらゼーリエはその日からアインズの足取りを追うことになったのは言うまでもないだろう。
♦
ゼーリエから無事に逃げ切れたアインズは魔法でログハウスを生み出し、椅子にもたれかかることでようやく一息つくことになった。
「それにしても、生まれてこの方、死闘を経験したことがなかったが、あれはあれで心躍るものがあるな」
まるでジェットコースターに初めて乗って満喫したような感想を漏らしながら、先程までの死闘を思い出す。
そして落ち着いて考えることが出来たからか、ふとゼーリエという名前と姿に心当たり……というよりも、前世の知識から思い出すことが出来た。
「あっ、というか、ゼーリエってよくよく思い返せば葬送のフリーレンに出てきた最強キャラじゃん!YouTubeで最強ランキングの動画で登場していたっけ?」
なんで今の今まで忘れていたんだと、自らの失態パート2に頭を抱える。
まあ、あの戦闘中に思い出して隙を作っていれば今頃自分は死んでいただろうし、今回のミスは成功の範疇という事にしておこう。
しかし、ここが葬送のフリーレンの世界だと判明したアインズはこれからのことを考えることにした。
別に原作厨という訳でもないアインズからすれば、原作改変ぐらいは何とも思っていないが、別に好き好んで介入するつもりはない。
そもそも、葬送のフリーレンで大規模な戦闘シーンがあるのはまだ完全に明かされていない勇者ヒンメルとの旅路と断頭台のアウラ戦、それと黄金郷でのマハト戦くらいしか知らない。
それらの戦いに介入したとして、どちらの戦力に肩入れするか?
魔族だから魔族側に与するか?はたまた、主人公側に与して魔族を吸収するか?
「どちらも面倒だし、そもそも主人公は魔族が大嫌いだったしな。ゼーリエとも戦ってしまった今ではもはや主人公側にはつけないか……」
ならば残るは魔族側ではあるが、そこに態々与するメリットも少なければ主人公とやりあうデメリットも生まれる。
ではどうするか?答えは単純明快に、原作をガン無視して好き勝手動くという選択肢しか残されていないだろう。
「そもそも、原作どうこうなど深く考える必要はない。私がアインズ・ウール・ゴウンである限り、世界はやがて私を中心に回るのだ」
原作のどの場面だったか忘れたが、デミウルゴスとの会話で万年先を見通した王国を作り上げるとうっかりと勘違いで建国するみたいなシーンがあったな。
「やってみるか、魔族である私が作り上げる国家建国を……」
この世界の人間は弱い。魔族だけでなく魔獣という災害が具現化したような生物も存在している。
一応、それでも国や街は作られてはいるが、絶対の安全は保障されてはいない。
確か、原作で魔王軍が進攻した結果、人類の生存圏は3分の1に減少したのだったか。
今が原作前かどうかは知らないが、文明のレベルを見るにまだまだ人類が生態系のピラミッドの頂点に立つまでは科学あるいは魔法の進歩する為の時間が足りないだろう。
「魔族の寿命がいくつかは知らないが、私が成長が確約している人類のレールを敷いて導くことが出来れば、より私の平和が約束される」
その為にはやはり力が必要だ。それも圧倒的な力が。それこそ、アインズ・ウール・ゴウンという最強の存在が。
それに、人間が魔族を警戒している現状で、どう信用と信頼を獲得するか。
「必要なのは実績による結果と、盲目的なまでの信仰心かな」
夜空に浮かぶ月を眺めながら、アインズは己の未来を思案しながらニヤリと笑った。
皆様方、よいお年をお迎えください。